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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

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4話 現世帰還への道 その7

「なぁ、あのエリアに目的の物があるのか?見た限りそんな物は見当たらなかったが」


扉からは、会場と椅子と骨か何かで構築された物体しか見当たらない。まさかあの物体が?と思ったが、どうやら違うらしい。


「エリア65には無い。ワタシの目的地はその先のエリア。そこに、ヘブンシステム完成の為に必要な動力源がある。エリア65は通り抜けるだけなら全力で走ればいいけど、それを許さない為か、エリア65には沢山の笑顔が蔓延ってる」


笑顔……あいつか。


「エリア2に初めて来た時に、俺と常盤を襲って来た奴か」


「そう、笑顔の行動原理は、人を食べるけど縄張りの外に行けば諦める。といった感じだけど、あのオーケストラ会場の薄暗い環境が災いして、笑顔が多く集まっている。笑顔は薄暗い環境を好み、過度な光は苦手だけど、何も見えない暗闇も嫌う。

エリア12がいい例。暗さを求めるが笑顔にも視覚があって、その視覚を使い対象が獲物かどうか判断する。

笑顔には物理的な攻撃は全く効かない。

だけど、懐中電灯とかの明かりやワタシが使った閃光弾みたいな光を浴びせれば、姿を隠して逃げて行く。

基本的にこのホテルは明るい場所が多いせいで、多くの笑顔は丁度良い感じに薄暗いエリア65に集まった。そのおかげでエリア65の難易度は爆上がりしている」


流石に、今までのエリアよりも殺意が高すぎないか?と、ただ疑問に思い、これからすることを想像して頭が痛くなって来た。


「それで、前回はどうやって通過したんだ?」


「元々現世帰還隊にあった素材を使って懐中電灯と閃光弾を作った。この2つを使って最初は順調だったけど、途中で閃光弾を切らして、最後の生命線だった懐中電灯は、笑顔の攻撃と汽車の突撃が重なって木っ端微塵に……懐中電灯を新たに作れる分の素材は、全部ヘヴンシステムに使っちゃったし、なんとか作れたたった1つの閃光弾はこの前使った」


あれが最後だったのか……


「そこでキミたちに懐中電灯を持って来てもらった!」


成程、その為の懐中電灯か。取り敢えず、やることは分かったので懐中電灯のバッテリーを一度確認する。


俺の懐中電灯と常盤の懐中電灯の残量バッテリーを確認し、バッテリーが充分あることが分かると、白銀は安心した様子で3分時計の準備を始めた。


「不安だな……」

「そうだね」


汽車に対抗するのは腕時計。笑顔に対抗するのは懐中電灯。ナイフや銃よりも、信頼は薄い。


……そうなると、またしても銃を使う場面が無いな。


ただ、いつか使う可能性を信じて持っていく。まさか懐中電灯に命を掛けることになるとは。念の為もう一度バッテリーを確認していると、そういえば白銀に重要なことを聞いていなかったことに気がついた。


「白銀。聞き忘れたんだが、俺等みたいに明るくする道具はもっているのか?」


「無い」

即答した。


やっぱりそうなるのか。さっきの説明の中で、懐中電灯の素材は全てヘヴンシステムに使ったと言っていたし、閃光弾も使い切ったとも言っていたからな。


となると、俺と常盤で護衛しながらになるのか。色々と考えている内に白銀が3分時計から頭を上げた。


「準備は終わったか?」

「ああ、今すぐにでもエリア65に入る準備はできた」

「そうか」


白銀は深呼吸をして心を落ち着かせていた。深呼吸を終え扉の前に立ったが、白銀は笑顔に対抗できる明かりを持っていない。


そこで、俺は良い案を思いついた。


「わ、ちょ、ちょっと?!」

「新條君…………」

「こっちの方が効率的だろ」


俺は今、白銀を米俵のように肩に担いでいる。


はたから見ると犯罪臭がするが、そんなことを言える場合では無い。3人で別々で走り目標地点に向かうよりも、白銀を守り足並みを合わせて向かうよりも、1番重要な3分時計を持っている白銀を担いだ方が1番安全だ。


「こうすれば守りやすいだろ。何かあれば言ってくれ」

「まぁ、うん。特には……効率的なら、まぁ、特に言うことは、無い……と思う。けど…………」


何か思う所があると言わんばかりの様子だったが、取り敢えず無視する。

俺の意図は伝わったみたいだから、まぁ良いだろう。


「俺は白銀を担ぐから、常盤は俺の周囲に来た笑顔を頼む」

「了解」

「白銀は3分時計の用意を」


「……ワタシ自身、体力はあまり無いし、仕切るのなら別に良いよ」


ムスッとしながら、吐き捨てるように白銀が言った。粗雑な扱いに怒っているのだろう。だが、今は効率重視で行く。無事にエリア65を通り抜けたら、あとで謝っておくか。


「少し重いな」

「黙れ!」


廊下に少女の声が響いた。






俺は片手に白銀を担ぎ、もう片方の手に懐中電灯を持った。常盤は常盤自身の銃と白銀の改造銃と俺の銃の計3つを背負い、片手に懐中電灯を持った。


「3、2、1、ゼロ!」


白銀がカウントダウンを終えた時、俺と常盤は同時に扉に突撃する。


エリア65に踏み込んだ瞬間、白銀は3分時計を使い時間の速度を1/5倍に変更。これでエリア65の生物以外の速度が15分間遅くなる。


あの物体や汽車に効果が及ぶかどうかが心配だったが、物体の点灯間隔は1秒弱から5秒ほどに代わり、汽車も目に見えて遅くなっていた。


「ブーオーォーォーォーォー!」


ゆっくりになっても汽車の速度は大体20キロメートルほど。通常時は100キロメートル近く出ていたことになる。


現世帰還隊の隊長も、こんな質量と速度で突撃されたのか。


「危な……!」


常盤の方を見ると、至近距離にまで空中に浮かぶ黒い顔、笑顔が近づいていた。その笑顔が口を開くと同時にその場から消え、代わりに常盤の手から懐中電灯の光が溢れる。


「右から来る!避けて!」


片手に持っている懐中電灯を右に向けた。その言葉通り右から笑顔が接近しており、懐中電灯を右に向けたことで笑顔が消えた。


白銀の声で助かった。本当に油断ならない。


「白銀ちゃん!笑顔の噛みつきの威力ってどれくらい?」

「たしか鋼鉄を粉砕するくらい!」

「マジで……?」


常盤の顔が少し青ざめた。俺としても、想像以上の威力だ。


白い怪物(スノー・モンスター)やスキンリーパーのように、笑顔も容易にこの防護服を破壊するのだろう。荒起博士もこんな怪物を想定して作っていないだろうからな…………


汽車のように、攻撃を受けたら即死と考えた方が良さそうだ。それで、さっきからまぁまぁ全力で走っているのに、会場に依然として辿り着かない。


「なんか、思ったよりも遠いんだが。白銀。扉からあの物体までの距離はどれくらいなんだ?」


「500mだったはず!言い忘れてたけど、この異常界は視覚が絶対じゃ無い時があるから!このエリアがまさにそう!」

「はぁ?!」


視覚すら信用できないのか。


「ブーオーォーォーォーォー!」


それはそれとして、遅くなったとは言え汽車はまだまだ速い。笑顔に対応して足を止めた瞬間、汽車に轢かれることは無いようにしたい。


「上!」


とっさに懐中電灯を上に向ける。上から迫っていた笑顔は消えていった。


「後ろ!」


とっさに懐中電灯を背後に向ける。背後から迫っていた笑顔は消えていった。懐中電灯を背後に回すと、いきなり目の前に笑顔が現れ……たが、常盤の方から光が伸び、笑顔が消えた。常盤に助けられた。


しかし、問題がある。急に笑顔が俺の周りに増えたという問題が。その代わりか、常盤に近づく笑顔の数が減った。


片手が塞がっているこっちを集中狙いか。数が増え、さばくのが辛くなって来ると、俺の横を走っていた常盤が俺の背後に移動し、背後からが迫って来ていた笑顔が全て消えた。


常盤に背後から近づく大量の笑顔の処理は任せ、前方に懐中電灯を向けて全力で突っ走る。椅子が並ぶ場所を抜け、会場に上がる階段に足を乗せ駆け上がる。


「?!」

「避けて!!」


目の前から汽車が――――


「ブーオーォーォーォーォー!」

「いったぁ……」


危なかった。会場の階段からわざと落ちることで何とか回避できた。白銀は頭をさすっているが、俺自身を下敷きにしたので痛みは少ないはずだ。


俺は防護服のお陰で痛みは無い。会場に到着した瞬間に仕掛けてくるとは…………


汽車が通り過ぎたことで、次に汽車が来るのは約20秒。


「白銀!何処に行けばいい!?」


そう言いながら白銀を担ぎなおし、後ろから常盤も追いついた。


「あの物体の後ろ!」

もう一度階段を駆け上がり、白銀が不気味な物体と称した物の後ろに到着した。


「降ろして!」


白銀を降ろす。


「ここでジャンプ!」

ジャンプ…………ジャンプ?!


ジャンプをする意味は分からないが、その言葉に従い、常盤と白銀と共にその場でジャンプをした。


その瞬間、会場の床に体が沈み、そのまま――――――






「へぶ?!……………………ここは?」

灰色の粉が舞い上がる。そこには、地平線まで続く雲海に囲まれた、灰色の世界が広がっていた。



◆◇◆◇



『―――――異常存在の侵入を検知。空中都市防衛プログラム、栄光防衛軍始動。排除開始』


「……………」

新條蓮の経歴一部

・高校野球 全国大会出場チーム所属(初戦敗退)

・駅伝マラソン大会 優勝チーム所属/アンカー担当


小中学生時代、そして高校生前半、

新條蓮の万能な身体能力は学校や周辺の地域で有名だった為、

様々なチームや部活に引っ張りだこだった。

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