表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/78

4話 現世帰還への道 その6

3分時計。腕時計の形をしたその時計は、一風変わった見た目をしていた。


通常の時計の文字盤には1から12の数字があるが、3分時計の文字盤には1から3までの数字しかない。


その上、時計が一周する時間は180秒。たった3分の時を刻む時計。






エリア7みたく暴走したら目も当てられないが……


「見てて、まずは2倍速!」


白銀が3分時計を少し弄り、近くにあった小さな破片を何も無い場所に向かって投げる。


破片が手から離れた瞬間、破片のあらゆる速度が動画などで使うことのできる倍速機能のように動き、いつの間にか床に落下していた。


「挙動は分かった…………で、効果時間は残り……40秒」


ブツブツと白銀が呟くとすぐそばにあった1セント硬貨を手に取り、コイントスの姿勢で数十秒ほど動かずに……


「5……4……3……2」


白銀が2を数えると、硬貨を親指で押し上げコイントスをした。


その硬貨は倍速で高く打ち上がり、硬貨が下に落下するタイミングで倍速から通常の速度に戻った。


「時間が切れたら速度は元に…………」

「検証は終わったか?」


呟きを遮り声を掛けると、白銀は横に首を振る。


「まだやっていないことがあるから…………あと1分30秒待って」


3分時計を片手に持ちながらそう言い、俺と常盤は言われた通り1分30秒待った。






「成程。この間は使えなくて、同じ時間が経過しないと…………か。やはりあの暴走は別の……?けど今は必要では無いし、保留かな。さて、次はこれを逆に。よし、見てて、1/5倍速!」


言われた通りの時間が経過すると、また白銀が3分時計を弄り、片手にさっきよりも大きな残骸を持って投げた。


その大きな残骸は先程のように倍速で動かず、ゆっくりと、非常にゆっくりと空中を移動していた。


「白銀。あとどれくらい継続するんだ?」


余りにもゆっくり過ぎて心配になり、

この低速化がどれくらい継続するのか疑問が浮き上がる。


「えっと…………15分」

「なっが……」


3分時計を覗きながら返答した。しかし15分は流石に長い。


「3分時計は基本的にワタシが使うけど、異論ある?」

「無い」「ないよー」


それは正直に言うとありがたい。俺と常盤は前衛で白銀を守り、白銀はその3分時計で時間の速度を操作して援護。


ついでに、意味が分からないアイテムに脳のキャパを割かなくて済む。


「良かった。で、3分時計の効果と注意点を念の為教えとくから、頭に入れといて」


そう言って、俺と常盤に見えるように3分時計を近くの作業机に置いた。


「3分時計は周囲、大体500mの時間の速度を操作できる。って書いてあった」


書いてあった?……あー、恐らくあの山のような書類の中に書いてあったのだろう。


「この3分時計は最大で5倍、もしくは1/5倍にできるみたいで、効果時間は3分を基準に2倍速なら1分30秒間、1/5倍速なら15分間。倍速だと効果時間が減って低速だと効果時間が増える。効果時間を確認したいなら3分時計の針を見れば分かる。それで――――」


「?!」

「?!……びっくりしたー」


ガーキーンっと、ゆっくりながらも大きな音がホールに響いた。音の主は白銀が投げた大きな残骸。ゆっくりと落下し、床に接触したのだろう。


「……ただ、デメリットというか反動が1つ」


白銀はその音に驚きつつも、無視して話を続けた。


「時間速度操作をすると、操作が終わったタイミングで操作した時間分、3分時計の時間速度操作が使えなくなる。

さっきの2倍速の効果時間は1分30秒。そして、時間速度操作が終わると1分30秒間、3分時計が使えなくなる。1/5なら15分。効果時間は低速の方が長いけど、その分クールタイムが長くなり、倍速は効果時間は短いけどクールタイムも短い」


どっこいどっこいと言った所か。


「あと、もう分かってると思うけど、3分時計の時間速度操作に影響され無いのは生物と生物が触れている物。手に持ったナイフが急に錆びつくみたいなことにはならないから」


エリア7で見た時も薄々思っていたが、こんな法則諸々ガン無視アイテム。緋色信仰も欲しがるはずだ。


「あ、そうそう。あらかじめ言っておくけど、次に向かうエリアは懐中電灯とかの明かりが絶対必要だから。絶対に必要だから」


白銀に2回念を押され、俺は静かに頷いた。






エリア7に向かった時と同じように準備し、白銀に念を押された通りに懐中電灯を持った。


俺と常盤の準備が整うと、白銀は3分時計を持ちすぐさま出発した。


次の目標はヘヴンシステムの動力源。


3分時計はその為に必要と言っていたが、何処で使うのかイマイチ想像ができない。もしや、無機物の怪物がいるのか?と考えても、今まで見た景色や怪物は俺の想像と常識をぶち壊した。


何が起きても良いように、次のエリアは覚悟を決めるしか無いか……






白銀のナビの元、何事も無く目標のエリアに続く扉に辿り着いた。


途中スキンリーパーや百手に遭遇したが、できるだけ戦わず逃げ、なんとか振り切れて辿り着いたのは寒色の光に照らされた廊下。


その廊下に何も書かれていない扉と、664号室と書かれた扉があった。数字と寒色の光以外はエリア7に続く扉があった廊下と同じだ。


俺が周囲に視線を向けていると、白銀が急に664号室と書かれた扉を開けた。急なことに驚いたが、白銀がこうするということは、エリア7のように突発的に扉から何かされるエリアでは無いと言うことだろう。


その扉の向こうを覗き込み、常盤も次いで覗き込んだ。


「雪原、ホテル、春夏秋冬と続いてこれかぁ…………」


色々なことがあって麻痺しているのかもしれないが、個人的には今までで一番驚きが少なかった。


扉の先にはヨーロッパなどの西方に似た少し薄暗く広い屋内、その奥の会場と無数に並べられた椅子。


一言で表すなら、扉の先にはコンサートホールが広がっていた。


「このエリアの奥……会場の上に乗っかってる一際目立ってる不気味な物体。見える?」


会場のど真ん中。そこに何かの骨みたいな物で構成された大きい物体があった。


「あれか」

「最初は説明しようかなって思ったけど、言葉では表現しきれないし、実際に体験した方が早いかなって思ったから、ついて来て」


白銀が足を踏み入れ、俺と常盤もそれに続く。足を踏み入れると、奥にある物体に1つ光が点いた。その光に続きその隣にまた光が1つ点いた。


一定間隔、1秒弱で光が1つ。大体3秒ほどで4つの光が点いーーーー


「ブオォォォォォォォォ!!」


「?!」「?!」

「さて、戻れ!!」


え?は?は?は?はぁ?!


俺等の混乱を無視し白銀が背後の扉に入り、エリア2に戻った。俺と常盤も全力で追いかける。


息が切れつつも、何とかエリア2に避難できた。

……汽車だった。蒸気機関車がこっちに向かって突っ込んで来た…………


「大丈夫か?」

「大丈夫じゃ……無い。何なんだ、あれは……」


何故こんな世界に汽車が、しかも何故壁から出現したのか、意味不明過ぎる。


「あの汽車はワタシが知っているエリアの中で1番の最悪な初見殺し。エリア65神無きオーケストラ会場。現世帰還隊の隊長もなす術も無くこの初見殺しにやられた」


さっき思ったことは訂正する。今までで1番驚いたし本気で死ぬかと思った。


「無茶苦茶過ぎるだろ…………」

「こんなのが普通だから、諦めて」


白銀が遠い目をしながらそう言った。


「汽車が出現する条件として、あの不気味な物体の点灯は、エリア65にいる生物の誰かの心臓の鼓動と連動してる。あそこにある光が点いていないのが全部で4つ点灯すると、汽車が出現して連動していた生物に向かって通り過ぎる。

4つ点灯し汽車が過ぎたら点灯は始めからになる。要するに、生きてる生物がいる限り、際限なく汽車が突撃してくるエリアと思えばいい」


その説明で何とか理解できた気がする。だが意味不明だ。


「そしてこの3分時計があれば、この初見殺し汽車を遅くできる。はず……」


……あの汽車が3分時計の範囲外である生物でなければ大丈夫だと思うが。そう頭の中で思っていると、白銀が深呼吸をし、大き過ぎない程度の大声でこれから何をするのかを言った。


「目標地点は会場台に陣取っている不気味な物体の周辺!3分時計の時間速度操作を使い、最大低速時間である15分以内に駆け抜ける!」


「…………ん?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ