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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界
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3話 自称世紀の天才発明家 その3

ノートを閉じる。横にいる常盤と目をあわせノートを差し出すと、常盤は首を振った。


ちゃんと読んでいるか分からないが、取り敢えず白銀に返す。


面倒だが、知らなければならないことを知った。怪物以上の怪物がいること。敵があの怪物達だけでは無いこと。


このノートはこれらを確定させる物だ。そんなことを考えていると、1つの疑問が浮かんだ。


「質問。何故これほどまでに信用する?」


白銀は会って間も無い俺と常盤を信用して来た。


そして、防護服に身を包んだ怪しい人間を、元いた世界に帰る為の生命線であろう拠点に。


ノートを、何処から持って来たのか疑問しか無い小さめの金庫に厳重に仕舞い込み、俺と常盤と目を合わせ白銀が口を開いた。


「信用する理由は、大きく分けて3つ。

1つ、完全装備。この世界でその装備を作る技術があるか、その装備でこの世界に侵入する為の技術を持っていると推測した。

たとえキミたちの話が嘘だとしても、持っている装備や荷物で技術の高さは分かった。反応を見ても、元々こんな世界を知らなかったみたいな質問をするし。

2つ、別世界調査チームにスカウトされる。ある程度の身の上は調べられているだろうと考えた。

だだ、ワタシはそんなに素直では無い。性格とかを無視してスカウトされた場合を考え、歩き方とか仕草とかで判断した。

3つ、笑顔に追いかけられていた。よっぽど仲が悪かったりしない限り、笑顔は基本的に怪物同士で戦わない。利益が無く、そして笑顔は怪物の中では温厚な方だからだ。怪物の中には人間の皮を被り、人間に擬態するのもいる。

だが、このことを鑑みて怪物が化けていないと判断した。あ、あともう1つ。全部で4つだ。最後の理由は、なんか良い人そうだったから」


「それだけ?」

「うん」


白銀が信用してくれる理由を話してくれた。信用してくれて助かった。俺と常盤だけでは、この世界を生き残れる自信は無い。


白い怪物(スノーモンスター)も含め、あの黒い顔、

笑顔などの怪物に遭遇すれば間違い無く死ぬだろう。銃が効かなかったし。


「しつもーん」

常盤が手を上げた。


「副隊長さんが残した時計はどこにあるの?」


No.443にノートと共に時計を置いたと書かれていたな。失礼だが、ちゃんと読んでいたのか。


「あー、時計か。ちょっと待って」


白銀が椅子から立ち上がり、発明品らしき物が並べられた床を漁り始めた。


そう時間は掛からず、目覚まし時計の形をした時計を持ち椅子に座り、俺と常盤に見せる為か、自身の前に出して来た。


副隊長が残した特殊な時計は、ノートに書かれていた通り少し特殊だった。針は一本しか無く。時計に書かれていた数字は、1から24の数字が順番に左回りに書かれていた。


「前任者が残したこの時計の名は24時間時計。時計に唯一ある針が一周すると、丁度24時間が経過する。仕組みは分からない。そして、この時計の中心から少し下。そこに3桁の数字、見える?」


時計の数字が書かれ、針が回る場所の下部分。その位置に372、と3桁の数字が書かれていた。


「見える」

「見えてるよー」


「針が一周した時、この数字が1増える仕組みになっている。初めて見つけた時に時計の数字をリセットしたから、ワタシがこの世界に来てから372日が経過した。

24時間時計の数字の最大数は999。ノートと共に見つけた時には数字が999だった。リセットしていないと考えるなら、前任者がこの時計を手に入れて既に2年半年以上が経過している。この世界にはこの時計のように、人間の技術には実現不可能なアイテムが数多くある。作成者は分からない。残された資料を見る限り現世帰還隊にも分からなかった」


副隊長が手に入れる前から、恐らく何年も。仮に、そんなに時間が経っていれば、普通なら時計が停止してもおかしく無い。だが、目の前の時計は動いている。


少しずつ。


いよいよ混乱して来た。別世界だからって、流石に無茶苦茶で狂い過ぎだ。何が起こるか分らな過ぎて疑心暗鬼になりそうだ。こんな世界の物品、生物、食料……食糧?


「そうだ、質問。食糧や水はどうしてる?この世界にまともな食糧があるかどうかすら疑問だが」


ノートには食糧班が食糧を調達しに行ったと書かれているだけで、詳しくは書かれていなかった。書かれていたのは日常だったから、か?


「一応、食糧や水はある。まぁ問題があるけど……いや、飲んでもらった方が早いか」


白銀はさっき飲んでいた水筒を取り出し、小さなコップに中身を注いだ。


「これ飲んで」


質問主である俺に、何かの液体が入ったコップが渡された。白銀から渡された謎の液体が入ったコップ。


色は無色。匂いは無し。一見すると水に見えるが、こんな世界にまともな水があるとは思えない。しかし、白銀が飲んでいた。だからこそ安心出来る。


だが、本当に飲んで良いのかと疑問が浮き上がって来たが、こんな時に嫌々言っても何も変わらないので、覚悟して液体を一気に飲み干す。


「どんな味?」


常盤が心配そうな声で聞いて来た。


「微妙、凄く微妙……」


微妙な味だった。微妙過ぎて、俺の顔は真顔になっているのだろう。


特別美味い訳でも無いし、不味い訳でも無い。辛過ぎたり、甘過ぎない。酸っぱいとも苦いとも、何とも言えない。


飲めることは飲めるが、率先して飲もうとする程でも無い。色んな味をごちゃ混ぜにして、水で何回も割ったような味だった。


要するに微妙だ。


常盤にも微妙な味の水を勧めたが、俺の反応を見ていたからか、すぐさま断った。


「この水はあそこのウォーターサーバーから持って来た物」


白銀が指をさす。その先には想像通り見たまんまのウォーターサーバーがあった。


「現世帰還隊命名の無限ウォーターサーバー。文字通り水が無限に出てくる。現世帰還隊が確認している中で1番安全に飲める飲料水。まぁ、すっごい微妙な味だけど」


無限……さっきも読み流していたが、3分時計とやらも同じ括りだろう。書いていた通りの力を持っているなら、完全に人類の科学力を超越している。


そう言う物として受け入れるしか無いか……


「食糧はエリア24果実楽園って言うエリアの果実取ってを食べてる…………ほいっ!」


いきなり俺と常盤に向かって真っ黒な豪球を投げつけられた。急に投げて来たが、野球経験がある俺には遅く見え、難なくその豪球を手に納めれた。


ついでに、常盤に向かっていた真っ黒な豪球は瞬く間に常盤に止められその手に納まった。


「すご……えっと、まぁ、食べてみて」


投げつけられたのは真っ黒な丸い物体。先程の発言から推測するに果実だと思うが、全く食欲が湧かない。しかもこの物体、硬い。


野球ボールのように投げられたことから察していたが、硬さはそこらの桃や林檎の比では無く。


触れた感触では少しだけ溶かした氷。硬いが絶対に食べれないほどでは無い。だが、微妙な味の水然り、食べる気は完全に失せている。


「せーの!」


隣から常盤の掛け声が聞こえた。一緒にかじれとのことらしい。道連れか……


「せーの!」


今は食欲は無いが、流石に色々と起こり過ぎてお腹が空いた。矛盾しているが。


まともな味でありますように、と祈りを込めて常盤とほぼ同時に黒い物体をかじった。途端に舌が痺れる感覚と共に、なんか、急に視界が暗く――――――


「…………まさか2人同時にハズレを引いた?運悪過ぎ……」



◆◇◆◇



「第一評議長様。貴方様の予測通り、第二評議長様が独断で動き出した模様です」


「そうか…………やはりつまらん。自分同士のチェスはつまらん!おい、お前が我の相手をしろ」


「了解致しました」


「そこまで心配しなくても、新たな実験対象を見つけて浮き上がっている、珍しいがいつもの事だ。最近の研究、実験が芳しく無いのも影響しているのだろう。チェック」


「参りました」


「早い!もう少し粘れ!お前は諦めが早すぎる!はぁぁ……皆に叱られたが、将棋を試してみるか」


「ちょっと待って下さい?!いつの間にそれを手に入れているのですか!」


「買った」

「買った?!…………ヴェルデント商会に殴り込んできます」


「いや、この将棋盤はヴェルデント商会とは関係無い。別世界にいた青年から買い取った。いやはや、確か日本出身の人間と言っていたか?高次元存在の恩恵で巨万の富を築いているとは。

偶には我の異常範囲外に行くのも良いかもしれないな。そうだ!皆で魔法と剣の世界。とやらに行くのはどうだろう?」


「…………将棋盤をトリガーとした暇潰し宇宙大戦争は何だったのか……」

「聞いていないか。さて、将棋を始めよう」

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