大吉の友達作りは、なぜかタイマン勝負から始まる
六村とのバスケ対決を制した福良大吉。勝負の場に居合わせた者たちは、天才的なバスケセンスを持つ超新星の出現に沸き立った。しかし、当の本人である大吉は、バスケットボールのルールすらまともに知らない。
ただ、運が良いだけで、偶然に偶然が重なって、六村に勝利してしまっただけなのだ。その事実を六村に伝えるタイミングを逃したまま、大吉の武勇伝は学園中に広まり、新たな火種を生むことになった。
「おい福良、今日集会やるから顔出せよ!」
昼休みの廊下で声をかけてきたのは、福山鉄男。不良集団のボスであり、学園の裏番長的存在だ。鉄男は185センチの長身で、金髪にブルーコンタクト、鋭い目つきだが、端正な顔立ちをしていた。大吉は、ゲームで見た異世界の貴族とよく似ていると常々思っていた。
「え、集会って抗議集会のこと?」
大吉は、不良が政治的な抗議集会をするものと勘違いして、関わらないように家に帰った。
「うちの学校の不良は意識が高いな……」
そう一人ごちる大吉の背中は、いつも以上に清々しかった。
……翌日。
「おい、福良てめぇ、なんで昨日来なかった?」
鉄男は、大吉の教室に乗り込んできた。教室中の生徒が、一斉に二人の方に視線を向ける。
「いや、外で政治と宗教の話にはかかわるなってお母さんにも言われているし……」
大吉は、至って真面目な顔でそう答えた。鉄男の怒りのボルテージは、一気に最高潮に達する。
「何言ってんだてめぇは! もういい、今日の放課後体育館の裏に来い! もうタイマンには拘らねぇ、お前もダチを連れてきていいぞ!」
鉄男は、そう言い捨てて教室を去っていった。
「友達か……」
大吉は、自分の唯一の親友の顔を思い浮かべた。不動明王、17歳。大吉と同じ高校に通う同級生だ。身長195センチ、筋骨隆々、見た目は名前の通り、護摩焚き祈祷のご本尊様そのものである。将来は警察官になることを目指し、柔道や剣道などあらゆる武道に精通している。そして、趣味は不良を更生させること。
「不動君、放課後体育館裏に来てくれる?」
大吉は、不動明王に声をかけた。不動明王は、大吉の誘いに二つ返事で快諾した。
放課後、体育館の裏。鉄男とその仲間たちが、大吉を待ち構えていた。
「鉄男さん、福良の奴来ますかね?」
「ああ! 来なかったら、明日、ぶち殺すだけだ!」
鉄男がそう言い放った時、一人の1年生が慌てて鉄男に何かを報告しに来た。
「て、鉄男さん、なんか福良のやつヤバい奴連れてますよ!」
「なんだてめぇ、ひよってんのか! 誰が来ようがぶちのめしてやるよ!」
鉄男が1年生の胸倉を掴んでいると、大吉が一人の男を連れて現れた。
「おい、福山君! 友達と一緒にきたよ!」
鉄男は、大吉が連れてきた男を見て、茫然とした。
「……不動、明王……」
鉄男は、その男の名を呟いた。不良界隈では、知らない者はいない存在。警察官を目指し、不良を更生させることを趣味とする、最強の男。
「大吉に呼ばれて一緒に来たが、ワシらに何の用じゃ?」
不動明王は、仏像のようにどっしりと構え、鉄男に問いかけた。その声は、重厚で、まるで低音の読経のようだ。
「いえ、福良君や不動さんとお友達になりたいと思いまして……」
鉄男は、思い切りひよった。
「友達……? ワシらは、不良と友達になる気はない。改心して更生する気があるなら、いつでも話を聞こう」
不動明王は、鉄男たちに向かって、そう告げた。鉄男は、不動明王の言葉に、何も言い返せない。
「福山君、また明日ね!」
大吉は、鉄男に手を振り、不動明王と共に、その場を去っていった。
……翌日。
鉄男は、一人、大吉の教室にやってきた。
「おい、福良」
鉄男の声は、昨日とは打って変わって、どこか覇気がなかった。
「どうしたの、福山君?」
「お前……友達になってくれ」
鉄男は、そう言って頭を下げた。大吉は、鉄男の言葉に、目を丸くする。
「友達?」
「ああ。お前みたいなヤバい奴と友達になって、不良の世界から足を洗いたい。そして、不動明王に更生させられたい」
鉄男は、真剣な眼差しで、大吉にそう懇願した。
「え、更生させられたいの?」
大吉は、鉄男の言葉に、戸惑いを隠せない。しかし、鉄男の真剣な眼差しを見て、何かを感じ取った。
「わかった。俺でよければ、友達になろう」
大吉は、そう言って、鉄男の肩を叩いた。
こうして大吉と鉄男は友達になり、鉄男はなんだかんだと大吉に付きまとっては、不動明王に怒られるという日々を送るのであった。




