竜王から世界を救う
福良大吉17歳、彼は普通の高校生。
だが、大吉は人並み外れた強運な男であった……
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大吉は「RTしたら寿司全皿無料になるかも!」というネットの抽選に参加し、幸運にも寿司の無料券をゲットした。
「家から近いし、お昼に食べに行くか」
大吉は日曜日で学校も休みだったので、無料券の当たった回転寿司チェーンの「寿司吉」に行ってみることにした。
大吉は無料券を店員に見せて座席に座ると目当ての大トロが回ってくるのを待つことにした。
「大将、アイツが無料券ゲットした奴みたいです!」
「あの野郎か! 大トロだけ狙われたら商売あがったりだ。あいつの大トロだけわさび大盛にしてやるぜ!」
寿司屋の大将と店員は無料券企画に当たった奴には激盛りわさび握りを食べさせようと企んでいた。
大吉が大トロのお皿を楽しみにして取ると、なんだかネタとシャリの間が不自然な盛り上がりをした大トロが回ってくる。
「なんか不自然な形のお寿司だな……」
大吉はお腹も空いていたので気にせず、大トロを一口食べるとわさびの強烈な刺激で意識を失ってしまった……
「あれ、ここはどこだ?」
大吉が目を覚ますと何やら洞窟の中みたいな所にいる。
「なんだか暑いけど、なんだこの暑さは?」
大吉は異様な暑さに気づき、ふと下を見ると、マグマがグツグツと音を立てて沸き立っている。
「え、何ここ? あの世? え、じゃあ地獄?」
……そこは地獄ではなく竜王が住む異世界だった。
大吉は誰かいないかと近くを彷徨っていると、目の前にゲームで見たことある、いかにも勇者パーティらしき一団といかにも竜王らしき男が戦っていた。
「何これ! え、コスプレイヤー?」
大吉は目の前の出来事を理解できないでいる。
「君はどうした? ダンジョンに迷い込んだのか?」
勇者らしき男が大吉に話しかける。
「え、ダンジョン……。 そういう設定ですか? え、撮影会か何か?」
大吉は目の前の勇者も竜王もコスプレイヤーだと思っている。
「ゴチャゴチャとうるさい連中だ! 死ね!」
勇者と戦っていた竜王は竜巻を起こすと勇者パーティは吹き飛ばされて、皆倒れて虫の息になっている。
(え、コスプレイヤーじゃないの……。 本物……)
大吉は異世界らしき所に来たことに気づいた。
(どうしよう? いきなりボスキャラの前かよ。武器とかないし、武術も通信教育の空手しか習ったことないし……)
「次は貴様の番だ!」
竜王は禍々《まがまが》しい剣を抜いて近づいてくる。
大吉は恐怖したが一か八か通信教育で学んだ空手の正拳突きを竜王に当ててみた……。
腰の入っていない正拳は竜王の胸部にコツンと軽く触れて一瞬両者の時が止まった。
(やばい! やっぱり通信教育で習った空手ではダメだった……)
大吉は自分でもわかる威力のない正拳突きに絶望したが、意外にも竜王が苦しみだした。
竜王は勇者との戦いで胸に傷をつけられていた、そこに「激盛りわさび大トロ」のわさびが手の甲にべったりとついていた大吉の拳が当たったのだった……
竜王の傷口にわさびがべったりとつき、竜王はこの世界では味わったことのない痛みにのたうち回り、最後は足を滑らせマグマの底へと落ちて行った。
「なんという強さだ! 君は伝説の勇者か何かか? 名前を教えてくれ!」
竜巻で吹き飛ばされて倒れていた勇者たちが立ち上がり大吉のもとに集まる。
「いや、俺はただの高校生で大吉っていいます」
大吉はよくわからないが、自己紹介をする。
「君は英雄だ! 『高校生の大吉』」
勇者たちは大吉こそ真の勇者と称え、王様に伝えると言う。
「え、いいですよ! 王様とか面倒くさい奴が多いし!」
大吉はゲームの世界でだいたい王様とか貴族というのは面倒くさい奴が多いと知っている。
大吉は一生懸命勇者たちに断っていると、どこからか大吉を呼ぶ声がする。
「……おい、君、大丈夫か!」
目を覚ますと救急隊員が目の前で大吉に呼びかけていた。
気を失って倒れた大吉に慌てた大将が救急車を呼んだのだった。
「お客さん、目を覚ましてくれてよかった。 こいつは俺の責任だ。 これからは二度とこんなことはしねぇ! お詫びに永久無料チケットを渡しますんで許してください!」
大将は大吉に謝罪し、大吉はお詫びにと永久無料チケットを手に入れた。
大吉はそのあと、寿司を堪能した。
(なんか、大騒ぎにはなったけど、永久無料チケットを手に入れたし、寿司も美味しかったし、なんだかラッキーな一日だったな。でも、あの夢は何だったのだろう……)
大吉は気を失った時のことを考えたが、気を失って夢でも見ていたのだろうと思った。
……。
「さっきの竜王倒した奴は何者だったんだ?」
勇者パーティは竜王を一撃で倒し、突如消えて行った大吉のことを話していた。
「きっと神が使わした救世主だろう」
「『高校生』というジョブの『大吉』という名の勇者様」
異世界Aでは、この先、何百年と伝説の勇者として「高校生の大吉」のことが語り継がれていく……




