一番強いモノ
とある休日。
小学校一年生の息子がリビングで一生懸命なにかを書いている。
「パパ、この世で一番強いモノってK面ライダーかな? それとも敵のジョッカーかな?」
俺はリビングでテレビを見ながら寝っ転がり、息子の質問に適当に答える。
「K面ライダーもジョッカーも一番ではないんじゃない。あいつらも金貰って演じてるだけだし……」
「じゃあ、K面ライダーがいつもお花を渡してる、お姉さんかな?」
「あ~あのヒロインの。あんなの駆け出しのアイドルだろ、K面ライダーより金持ってる番組プロデューサーの方が好きなんじゃないの?」
「ふ~ん。女の人はお金に弱いの?」
「そうだな、ママも俺が大手に勤めてるから結婚したみたいだし、まあ、金だな!」
「そっか、お金が一番強いのか……」
俺は息子の質問に適当に答え、テレビを見続けた。
……1週間後
「はい、今日はみなさんの授業をお父さん、お母さんが見に来てくれてます。元気よく書いてきた作文を読んでくださいね!」
今日は授業参観、担任の先生が生徒たちの書いてきた作文を一人一人読ませる。
テーマは『この世で一番〇〇と思うもの』。
「はい、元気に読んでくれましたね。じゃあ、次は佐々木君いいかな?」
次は息子の番。
俺は妻と顔を合わせて微笑み、息子の作文内容を聞く。
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『1年A組 佐々木一郎 『この世で一番強いと思うもの』』
僕はこの世で一番強いのはお金だと思います。
お父さんに聞いたらK面ライダーもジョッカーもお金で言うことを聞くし、
女もお金に弱いと聞きました。
僕のお母さんもお父さんがお金を持っているから結婚したそうです。
僕も将来、お母さんのような人と結婚したいので、お金持ちになりたいと思います。
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息子が作文を読み終わる。
俺は妻から殺気漲る視線を向けられ、親として教育の大事さを改めて学ぶのであった。