いつまで経っても子供のままでいいじゃない☆
「もういい年なんだから、手に職をつけなさい」
大学を卒業してから、毎日のように言われるようなった。俺は無職だ。
「俺の手をそんなもので塞ぐ気はない!」
いつものようにそう返すと俺はパトロールに出る。何をパトロールするかって?そりゃ、難しい質問だなぁ⤴︎
周りからは不審者にしか見えないような、絶妙に声が漏れている、控えめに言っても気持ち悪い笑み。本人はそれに気づかずに心の中で誰かにずっと語りかけている。
「今日はラーメンだなな!」
これで俺の胃袋が救われる!
私欲である。親からお小遣いがもらえないため、アルバイトを気持ち程度にやって溜まった雀の涙の貯金をすぐに使い果たす男。
「ん〜次は、っと?」
男が目にしたのは泣いている子供だった。
すぐに駆け寄り、どうしたのか訊ねるが子供がさっきよりも大声を出してない涙を流している。男が安心させようと笑顔で話しかけたが、むしろ顔が引き攣ってて怖いせいだろうか。しかし、男は周りの目など気にしない。ちょっと待っててと言ってジュースを買ってきて子供に渡した。もう周りから見たら誘拐犯にしか見えないだろう。
「…お兄さん、ありがとう」
「おう、そんでどしたよ?」
「ママが…」
「はぐれちゃった?」
「怖い男の人に連れて行かれちゃった…」
「あ〜そのパターンは初めてだ〜」
男はヘタレである。
正直怖い男の人に連れて行かれるこの子供の母親の方が怖い。一体何をしたら連れて行かれるんだ。その男の人は絶対そっち系の仕事で事務的に連れて行っただけでしょ…
「よし、わかった!とりあえず探すか!」
「ママを助けてくれるの?」
「ん〜ママ次第かな〜」
心なしか子供が嬉しそうになった。手掛かりなんてひとつもないのにどうやって見つけると言うのだ。
しかしこの男、無敵であった。
「この子のお母さんいますかー?」
公共の場で、大声で探し始めたのだ。そして無垢な子供はそれが最適だと思ったのか、一緒に大声を出して「ママどこ〜」と言う。
この行為はすぐに功を成し、誘拐犯とは勘違いされなくやった。
「ママ…」
全然見つからない母親が心配になり、不安な声が隣から聞こえる。いつもならすぐ見つなるからこの方法でやったけど無理か〜。
「おい」
そこには見るからにムキムキのマッチョメンが立ってて感動した。そっち系でもマッチョはムキムキなんだ!
この男、馬鹿すぎる。
「先程、あちらで子供探している女性がいた
ぞ。その子の母親じゃないか?」
「マジ!?よかったじゃん!」
子供は見るからに嬉しそうに「うん!」と返事をした。
そして、マッチョメンの案内に従って…あれれ〜だんだん人通りが少なくなってる気がすんな〜…
母親の死体が転がっていた。
「あ、そういう…」
「この子に関わったのが運の尽きだな。念の
ためだが…」
懐から拳銃が取り出され…る前にとりあえずマッチョメンの顎に1発右ストレートを入れておいた。すると、マッチョメンは無言で倒れてしまった。
「なぁ、逃げるぞ」
子供は目の前で倒れてる母親を見て動けなくなっていた。仕方ないからおぶって無理やり連れて行くことにした。
「ママどこ行ったんだろうなぁ〜」
「ママは天国に行ったよ」
男の無意識に出た心のない言葉にも子供はすんなりと返事する。
「天国?マジであんの!?」
この男はアホだ。
じゃあ、地獄もある…ってこと!?スゲーじゃん!俺は絶対天国に行けるけどなぁ⤴︎
「うん、やっぱり殺されちゃうよね」
「ん〜お前なんか知ってんのか?」
「ううん、何も」
「何もってことはないだろ〜」
これ、この子もやばいパターンじゃない?念のため俺も殺すってマッチョメン言ってたよね?あ、これ俺だけなんも知らんでやばいやつやんけ。
「家まで送るぞ〜場所わかるか?」
「帰りたくない。逃げ出してきたの」
あ〜、そっか〜それはもうロイヤルストレートフラッシュだな〜。
「わかった。お前はどうしたいよ」
「わからない。これからどうしよう」
「あ〜じゃあ、一緒にヒーローになるかぁ」
「ヒーロー?」
「そうそう、さっきみたいな悪いマッチョ倒
したりするの」
「無理だよ」
んだこの子供生意気だな。子供らしい反応しやがれ…。つか、ヒーローの説明雑すぎたかな…
「おい」
「え、何、今マッチョの中でその挨拶流行っ
てんの?」
俺の疑問に回答はなく、銃を突きつけらてしまった。その筋肉は飾りなのか?
「おいガキ〜ヒーローてのはなぁ!」
銃など気にしない。脇腹、腕、足と銃弾が掠めたりしたがそれも気にしない。だって俺はヒーローだからなぁ!!
「どーよ、これがヒーローだぜ」
マッチョメンは全員気絶していた。そう、俺がやったのだ!
「これが、ヒー、ロー?」
「そうだ!人助けをするのがヒーロー!」
「人、助け?」
「そう!今お前を助けただろう?」
「そっか、助けてくれたんだ」
待て待て、その反応は絶妙すぎる。うん、絶妙にやばいよなこれ。こういう子には関わっちゃいかんのですよ。
この男、勘だけは鋭い。
「ま、この後用事あっから俺はここで」
「待って!」
あ〜呼び止めないで欲しかったなぁ〜。それに反応すんのが悪いけどよぉ〜
「まだなんかあんのか?」
「ヒーローになりたい!」
「おうおうなら一緒にパトロールするぞ」
この男、……もう何もいうまい。
なんだ話のわかる子供じゃねぇか!ヒーローになりたいなら最初から言えばよかったのになぁ!
「よっしゃ、お前今日から俺の相棒な」
「相棒?」
「そうそう、お互い助け合って、多くの人を助けんだよ!」
「うん!わかった!」
「よっしゃ!じゃあ早速行くぞ!」
いや〜今日はいい日だ〜うまいラーメンも食えて話のわかる子供に会えて最高だなぁ⤴︎
「おい」
「あ、まだいたの????よっしゃぁ相棒!早速ヒーロータイムだ!!」
「うん!!」
マッチョマンがタワーのように積み上げられている。いや〜パネェ〜この子パネェ〜。絶対人間の力じゃないって〜。
「やったよ!!ヒーロー!!」
ここにきて無邪気な反応もいいなぁ〜。この子何者だ〜。
「なぁ?その怪力なんだ?」
「生まれつき!!」
「そっかぁ!!!!」
じゃねぇよ!!!!!!そんなことあるか!!電柱抜いて振り回そうときてたじゃねぇか!!俺が止めたけど!!!
「おい」
「はいは〜いもうマッチョはいらんよー?」
おお。目の前にはフードを深く被った男が立っていた。見るからにヒョロそう。でも今日の感じヒョロいほうが強いんかね?
「お前はその子のなんだ」
「なんだろうなぁ〜」
「相棒!!」
さっき相棒なんて言わなければよかったと後悔するよりも先に相棒と言ってくれたことが嬉しくてもうこの状況がどうでも良くなってきた。
「あんたは?」
「私はある研究をしている研究者だ。その子は人工的に作られた人間。いわゆるモルモットだ。返してくれないか?」
「返せと言われたら返したくねぇなぁ。返しても命が狙われるならなおさらだぜ」
「素直に返してくれたらもう君の命はとらないさ。それに口止め料としてある程度のお金を支給しよう」
「うむ、具体的には?」
「残りの人生遊んで暮らせるくらい」
「良い子は帰る時間だぜ相棒」
この男……クズすぎる。
大金じゃん!!もうバイト辞めれるじゃん!!これからずっとヒーロー活動に専念できるぜ☆
…ヒーローか。ヒーローならこんな端金で動くかな?まぁ、ヒーローはそれぞれ違うしまぁいっかぁ⤴︎
「ねぇ、相棒も裏切るの?もつ痛いの嫌だよ」
あ〜首突っ込んだの俺だしなぁ〜。
「そいや新作のゲーム買ったんだった。相棒〜俺の家で一緒にやろうぜ〜」
「!!うん!!」
「それが君の選択か…残念だよ……」
今度はヤバめの集団に囲まれたんだが?人生詰んだか?いや、元々人生詰んでたかも☆どしよ☆
「話し合いで解決しない?」
「さっき交渉決裂したばっかりじゃないか」
「そだっけ?」
あれーーー???そうだっけ????俺なんか言ってたっけ?
「すまないと思うよ。君には、来世ではいい人生を」
「あ、俺転生するってこと????」
それが俺の最後の言葉だった。そして転生しちゃった☆☆☆
日付を確認するとあの子供と戯れてた日の2日後だった。
2日も経ってるのかぁ〜大丈夫かなぁ〜。まぁ行くかぁ⤴︎
「俺ダァ⤴︎⤴︎」
黒ずくめの男たちがそれぞれ驚きの声をあげる。そりゃあいきなり天井突き破ってきたら驚くだろうなぁ…
「ガキはどこだ!!あ、見つけた。元気か!!」
「相棒!!助けに来てくれたの!!」
「もちろんだぜ☆」
「貴様!確かに殺したはず!!」
「へへ!転生したぜ!お前が言ってた通り来世はいい人生の予感がするぜ〜!!」
研究所があったところをとりあえず更地にしといた。害を生む場所はないほうがいいしなぁ⤴︎
「ありがとう!相棒!!」
「よっしゃ〜!ヒーローパトロール行くかぁ!!!その前にメシだ!!!」
「うん!!」
これにて一件落着。さぁて、またまたいつも通りの日常に戻りますかね☆