第九話
「アレイン様! 本当に賃料は要らないのですか!? 元々の土地の二倍の広さを好きにしても良いなんて……」
エーゼルシュタイン伯爵から全ての土地を買い取り、ジルベータ王国の辺境の国土一帯の領主となった私は獣人族たちから賃料を取らないことを約束しました。
ロゼルたちには以前までの集落にプラスして山を2つ与えると、彼は驚いて私にそれで良いのか確認に来たのです。
「もちろんですよ。取り敢えず、百年分の税金はジルベータ王室にまとめて支払いしましたから、お好きなように土地を発展させてください。こちらの王族は物分りの良い方でしたから、税金さえ納めればある程度の自治は許して下さるみたいです」
「ぜ、税金まで。一括で百年分も……?」
「おかげで殆ど素寒貧になりましたが、要らないお金を誰かの為に使うことが出来ましたので良かったです」
2500億エルドという大金をどう使うのか考えても、持て余すイメージしか無かったので、こうして誰かの役に立つお金の使い方をして良かったと心の底から思いました。
婚約破棄と退職に追い込まれた慰謝料なんて、持っていても辛いだけですから。
私は清々しい気分になっていたのです。
「獣人族以外にも、住むところに困っている他種族を受け入れようと思っていまして、族長さんからドワーフ族やエルフ族にもコンタクトを取ってもらっているのです。辺境の土地ですが、静かに暮らすには適した土地ですので」
「そのために2500億エルド近くの大金を使われたのですか? アレイン様、あなたという方は……なんて懐の深い方なんだ……」
そんな褒められたものではありません。
婚約者や親に捨てられた、やり場のないイライラをお金を大量に使うという方法で発散しただけですから。
私はそれを良い人のフリをして行っただけにすぎません。
アーヴァイン殿下はきっと国王陛下に怒られているでしょうし、もしかしたら一年後か二年後に返せと言うかもしれません。
まぁ、盗んだ訳じゃないので返す義務はないのですが……そのうち面倒なことが起きるでしょう。
だからこそ、お金で形のあるものを残したかったのです。
◆ ◆ ◆
「アレイン様、エデルタからの使者です。何でも辺境伯となったあなたに慰謝料を返還して欲しいのだとか」
私はジルベータ国王より爵位を頂きました。
何でも多額の税金を一度に納めたことと、他種族間の紛争を一度に鎮めた功績が評価されたそうです。
ドワーフの鍛冶技術やエルフの魔導学などの研究を自由にさせる特区を作り、無料で土地を与えただけなのですが、それだけで国内各地で起こっていたイザコザが消えたのは計算外でした。
そして、そんなことをしている内にアーヴァイン殿下の手の者が私を見つけ出します。
どうやら思っていたよりも早く彼は怒られたみたいですね。
とはいえ、今更お金を返して欲しいと言われてももう遅いのですが……。
「エデルタ王国は国防費も足りなければ、聖女を失って戦力も足りません。ですから、どうかアレイン様には戻ってきて頂いた上で、慰謝料の返還を――」
「もう全部使いましたよ?」
「へっ?」
エデルタからの使者は私が一ヶ月足らずでお金を使い果たしたと聞いて素頓狂な声を出しました。
さて、どうしましょうか――。




