第八話(アーヴァイン視点)
「お呼びでしょうか、父上」
アレインを追い出してエミールと婚約し直した一週間後の朝、僕は父上に呼び出しを受けた。
珍しいな、父上が僕を呼び出すなんて。エミールとの挙式関係のことかな。
昨日、彼女と婚約したことを報告させたし。
式は豪勢にやりたいものだ。僕らの愛の大きさに相応しい……それは絢爛豪華な式に。
んっ? 父上、何でプルプル震えているんだ?
「お呼びでしょうか? ではないわ! このバカ息子が!」
「はぁ? 何をそんなにお怒りなのです?」
呼ばれて早々に父上は僕に怒鳴り散らす。
バカ息子とは随分な態度じゃないか。まったく、僕が何をしたというのだ。
うーん。全然、心当たりがない……。
理不尽に怒鳴られているとしか思えない……。
「アレイン・アルゼオンが国を出奔したのを知っているか?」
「はぁ、アレインがこの国を出たのですか。それは、知りませんでした。それが、何か?」
「アーヴァイン! 貴様、何故アレインに2500億エルドもの大金を手渡した!? 今年は魔物の数が国土全体で急増したから、特別予算としてプールしておいた金庫の金が必要だというのに、それを空にするとは何事か!?」
プールしておいた金庫の金を空にしただって?
バカを言っちゃあいけない。
僕は自分の金からアレインに2500億エルド渡した。いやー、これは伝説として語り継がれるだろうな。
愛のためにこれだけの対価を払った男など僕くらいだろうし。
「父上、私は誓って国庫の金には手を付けていません。アレインにはちゃんと僕専用の金庫から金を渡しましたから」
「貴様専用の金庫など無いわい! 何かあった時の為の金を皇太子たるお前の裁量でも自由に使えるように金庫の鍵は渡したが、私情で使って良いと言うたことなど無いわ!」
よく分からん。
何かあった時に自由に使って良いと言われていたから、婚約を解消したいという事態があって自由に金を使ったまでなのだが?
僕に金庫の鍵を預けたのなら僕専用の金庫だろう。常識的に考えて……。
「しかも、腕利きの聖女を辞めさせるとは何事か! アレイン一人で兵士何人分の魔物を討伐していると思うとる!?」
「アレインが何人分? あいつは初級魔法しか使えないんですよ。せいぜい2人か3人程度でしょう」
「この阿呆が! アレイン一人で千人分は下らん働きをしとるのを何故知らん!?」
はぁ、アレインが千人分も働いてたのか。だったら、退職金も弾んでおいて良かったな。
じゃあ、天才であるエミールは1万人分は働いてるんだな。彼女こそ国の宝と言っても差し支えないだろう。
「エミールの十倍以上の働きをしておったのだぞ。どうやって、その分の仕事を取り返す!? 人を雇うにも金が無い! 貴様、国を傾けた自覚はあるのか!?」
「ぼ、僕が国を傾けた? そんなバカな……」
「バカは貴様だ! 即刻、アレインを呼び戻せ! そして、頭を下げて慰謝料とやらを返還してもらうのだ!」
バカを言うな。なんで僕がアレインなんかに頭を下げなきゃならんのだ。
だが、父上はお怒りだ。このままだと、エミールとの結婚も許されないかもしれん。
そうだ。アレインに金をこっそりと返してもらえば良いんだ。僕は渡したっていう契約書を持ってるんだし。
そうと決まれば、さっさとアレインに帰って来てもらおうっと。




