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第四話

「お父様、冷静にお話を聞いてください。アーヴァイン殿下は――」


「聞いておる。エミールと恋仲になったのだろう? お前に人間的な魅力がないから、そうなるのだ。全く、面白みの無い娘だと思っていたが悪い意味で期待を裏切らん女だ」


 何とか慰謝料が法外な金額だったと伝えようとしましたが、父は聞く耳を持たずに私の人格を否定します。

 父曰く、私のような人間は遅かれ早かれアーヴァイン殿下に愛想を尽かされたのだそうです。この結末は意外でも何でもないと……。


 アーヴァイン殿下にも父にも人間的な魅力が無いと言われて、私は悲しくなってきました。


「王家との関係を穢したお前をこれ以上、家に置くつもりはない。勘当だ。勘当! 多少は慰謝料を貰ったときいている。それは手切れ金代わりだ! 即刻家を出なさい!」


 父は準備させていたらしい私の数少ない私物などを放り込ませた大きな袋を渡して、虫でも追い払うかのように手を動かします。

 使えない者は娘であっても切捨てる父は本気で私のことを要らないと考えているのでしょう。


「……分かりました。家を出ます」


「家だけではなく、この国から出て行くんだな。お前の居場所はここにはないのだから」


 国から出て行けと言われた私は言うとおりにするつもりでした。

 父の言うとおり、この国の聖女でもなくなった私にはこの国に居場所はありません。

 隣国に行って、細々と食べていくしかないでしょう。

 

 ――もう、この慰謝料も使ってしまいましょうか。


 最初はこんなお金を使うなんて……と思いましたが、よく考えてみるとアーヴァイン殿下に気を遣う必要なんて皆無です。

 これだけお金があれば、隣国で家を買っても一生困らないはずですから、気楽にいきましょう。


「二度とワシに姿を――」

「大丈夫です。お父様、二度と姿は見せませんよ」


 パチンと指を鳴らして、荷物を時の収納庫プライベート・ボックスに入れて……身一つで実家から出て行きました。

 ここから最も近い国は山を二つ越えた場所にあるジルベータ王国です。

 早速慰謝料を使って、駿馬だと評判の馬を一頭購入した私はそれに跨り……ジルベータ王国へと馬を走らせました。


 ◆ ◆ ◆



「ふぅ、この辺りも魔物が随分と増えましたね。私の張った結界もあと一年以上は保つと思いますが、心配になってしまいます」


 目の前には、初級魔法である氷の槍(アイスニードル)によって貫かれたゴブリンやワーウルフの死骸が約50体……。


 よくもまぁ、こんなにも集まったものです。

 最近は山道を使う人間が減ったのも頷けます。こんな物量に対抗するにはかなりの兵力を割かねばならないでしょうから……。


 私は初級魔法を同時に1000まででしたら発動することが出来ますので、こういった物量に対して有効な戦術を取ることが出来ます。

 高等魔法を使いこなすエミールには脳筋戦術などと揶揄されて笑われましたっけ……。


「さて、もう少しで人里に到着するはずですが……」


「聖女様――! お助けください!!」


 ジルベータ王国の国境付近にたどり着いたとき――私に声をかけてくる者がいました。

 

 月明かりに照らされて見えたのは銀色に光る体毛――あれは白狼(フェンリル)……?

 そう思った瞬間に白狼(フェンリル)は瞬く間に銀髪の青年へと姿を変えて――。

 これが私の初めての獣人族(アニムス)と呼ばれる種族との出会いでした――。

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