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第十三話

「勇敢なエデルタ皇国の兵士の皆さん! あなた方には大切な家族や恋人がいらっしゃると思います! ですから、最初の魔法には手心を加えました! しかしながら、次は緩めません! ジルベータ王国の領土に入るのでしたら、氷の槍があなた方の体を貫きます!」


 魔法の連打の後は脅してみます。

 恐らく殆どの兵士は半ば無理矢理アーヴァイン殿下に駆り出されているに過ぎないので、何としてでも戦わなくてはという意志はないはずです。

 

 脅し文句の効果はてきめんで、兵士たちはざわついて、歩みを止めるに至りました。


「バカ者共が! アレイン一人の戯言に何を恐れている! 逃げる者は即刻死刑に――っ!? うぴゃあッ!」

「逃げないとはご立派ですね、アーヴァイン殿下。どうか、勇ましいままでいて下さい。焼死体となっても」


 火炎の剛球(ファイアボール)をアーヴァイン殿下の目の前で破裂するようにコントロールして放つと、彼は涙目になって腰を抜かして後退りします。

 彼は兵士には無理な特攻を強制しようとするクセに自分にはその気がないらしいです。


「さぁ、アーヴァイン殿下。選んで下さい。続行して焼け死ぬか、反省して撤退するか。今なら国王陛下に怒られるだけで済むはずですよ」


 私は指を鳴らして火球を百個ほど発現させながら、アーヴァイン殿下に通告しました。

 兵士を率いて出てくる勇気は認めますが、将を討取ればこの戦いは終わるはずです。ですから、

 私はアーヴァイン殿下の命を全力で狙うことを仄めかし、彼に降伏を求めました。


「おのれ、おのれ、おのれ~~! アレインめ! 僕に捨てられたからって陰湿な仕返しをしやがって! こうなったら、切り札だ! エミール!」

「もー、アーヴァイン殿下。見てるだけで良いって言ってたじゃないですか~~」


 アーヴァイン殿下の背後から出てきたのは後輩で私から婚約者を奪い取った女、エミール。

 その美貌は国内で知らぬ者はなく、千の魔法を操る天才聖女と言われています。


「悪いな、エミール。君の先輩がちょっと調子に乗って僕たちに仕返しを企んでいるんだ。君ならあの悪女を黙らせられるだろ?」


「まぁ、先輩ったら。わたくしたちが幸せになることに嫉妬してますのね。先輩なんて私の高等魔法で簡単に蹂躙出来ますわ」


 ふわりと浮遊魔法で私と同じ目線の高さまで上昇したエミールは魔力を両手に集中させます。

 彼女の魔法の多彩さは私とは比較になりません。

 あれは古代の大魔術、雷神の鎚(トールハンマー)――。

 エデルタ皇国であれを使えるのはエミールしかいないでしょう。


「アレイン先輩~。丸焦げになって下さ~い」


 蒼白い巨大な雷光が私に向かって容赦なく放たれました。

 火力不足は手数で補う――それが私のやり方です。

 エミールの術は強力ですが、初級魔法1000発分の威力を合わせれば何とか対抗出来るはず。

 

雷光の矢(サンダーアロー)ッ――!」


 パチンという指を鳴らした音と同時に放たれる1000本の雷光の矢。

 それが次々に雷神の鎚(トールハンマー)に突き刺さります。

 そして、一発、一発が突き刺さる毎に、雷神の鎚(トールハンマー)の威力を拡散させて、遂には吹き飛ばしてくれました。


「な、なんですって……、私の魔法がアレイン先輩の貧弱な初級魔法なんかに――」

「まだ、終わってませんよ。エミール」


 雷神の鎚(トールハンマー)を消し去っても私の雷光の矢(サンダーアロー)はまだ800本程残っています。

 

「があああああああっ――!!」

 

 とはいえ、私も後輩をいたぶる趣味はありませんから。

 一本だけにしてあげました。

 それでも、雷光の矢(サンダーアロー)に腹を貫かれたエミールは苦悶の表情を浮かべて……地面に墜落してしまいましたが。

 殿下、切り札はまだありますか? もう終わりにしましょう――。



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