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第十話

「お、お金を全額使われた? ご、ご冗談ですよね? だって、2500億エルドですよ。2500億エルド」


 エデルタからの使者は私が冗談を言ったのだと思ったのか、愛想笑いを浮かべながら私が頂いた金額を連呼します。

 我ながら豪快な使い方をしたと思いました。一生かかっても使い切れない大金をたったの一ヶ月くらいで全部使ってしまうとは。

 人間、急に大金を持つと感覚がおかしくなるのかもしれません。


「私がただの出奔者にも関わらず爵位を賜ったのは何故だと思います? この辺り一帯が私の領地ということは聞かれましたか?」


「し、爵位はアレイン様の聖女としての力が認められてのことかと。この辺り一帯がアレイン様の領地ということは、まさかあなたは」


「そうです。全てを買い取りました。あと、ジルベータ王室に税金を百年分納めましたので、本当にお金が無いのです」


 嘘を吐くつもりはないので、私はお金の使い道を正直に話します。

 そもそも、盗んだとか騙したとかではなく正式に書類を作成して慰謝料と退職金を頂いただけなので使い道を教える義務はないのですが。

 罪悪感も薄れてきています。あれほど言ったのに無理矢理渡してきて、今度は使者を用意してやっぱり返せ、とは何事かと。


「そ、そんな。それでは殿下がこのまま多大な責任を取らされるだけではなく、エデルタ王国の治安まで急速に悪化してしまいます」


「それは大変ですね。お金は返還出来ませんが、金額次第ではエデルタの治安維持のお手伝いをしても構いませんよ?」


「ど、どういう意味ですか?」


 私はエデルタ王国からの使者に提案しました。

 聖女としての仕事と同じ要領で魔物の駆除を生業にしても良いと。相応の金額に応じて動くことを話したのです。


 さらに領地の中で生活している他種族の方々も腕に覚えがある方がかなり多くて、そういった方はジルベータ内の治安維持の為に雇われる所を探していたりするのですが、その人材もエデルタ防衛に回すことも可能であると伝えました。


「いや、それはありがたいのですが……。先程も申しましたとおり、お金が無くてですね」


「お金でなくて、土地でも構いませんよ。国境付近の領地を私に下されば、それをこちらで分配しますので」


「り、領地を割譲しろと言うのですか!? い、いや、しかしそれが妥協点なんでしょうね。アーヴァイン殿下と一度相談してきます」


「どうぞ、ご自由に。彼には新しい婚約者とお幸せにとお伝えください」


 我ながら性格が悪いと思いますが、アーヴァイン殿下には痛い目に遭って欲しいと思ってしまいました。

 エデルタ王国や殿下はどういう答えを出すのか分かりませんが、どんな答えを出すにしろ渡したお金が返って来ないことは理解したでしょう。

 魔物の駆除を放置することは出来ないでしょうから、素直に提案を飲み込むことを願っています。

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