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何度も同じことを繰り返す上司っているよね

「おお、今日の勇者様の登場だ」



俺は、とある居酒屋のような場所に来ていた。

入り口が板張りでウェスタン風になっており、中には、たくさんの

人たちが酒を飲んでいた、どいつもこいつも屈強な体をしている。



「おお、にいちゃん、あのゾンビドラゴンを倒したんだって?」

酔っぱらっている男たちがそう絡んでは「な、どうやってえ倒したんだか

教えてくれよ」と耳打ちしてくる。



ゾンビドラゴンを倒した方法は俺ですら分かっていないのに、どう答えたら良いんだ?と言葉を濁していると、アダムが「はいはい、企業秘密ですよ~」と

男たちを払ってくれる。



すると、頭皮が太陽で光っている男が「おお!!アダム!!無事でなによりだ!!」

と俺たちの方に向かった。



「あ、ガンテツさん!!」

アダムはそう言って、ガンテツさんを抱きしめる。

「おお、良く帰って来たなぁ」よしよしと言う風に

アダムの頭を撫でる。



「もう、ガンテツさん、やめてよぉ、私はガンテツさんの

子どもじゃないんですよ」

アダムはそう言っていても、どこか嬉しそうだ。

撫でられるのは、悪くないと言うようだ。



「お、兄ちゃん、いや、勇者様、俺の名はガンテツ、一応この

冒険者ギルド、『ロシアンルーレット』の主だ。よろしくな」



そう言って、俺に手を差し出した。

俺は、少し戸惑ってしまった。

なぜなら、これまで、こうやって人から手を

差し出されたことなんてなかったからだ。



「あ、ああ、よろしくお願いします」

素直に嬉しかった。そうか、他人に感謝されるのは

こんなにも嬉しいことだったのか。



「君さぁ、この仕事辞めたら?」

「あの、俺らと同じ土俵に立ってどうするの?」

「今日から君の机、無いから」



こんな人がいるんだったら、ここの生活も悪くないな。

俺はそう思った。



すると、「おおい!!何やってんの?!」

と怒鳴り声が聞こえた。



見ると、黒い眼鏡の青髭で、妙に長髪の不健康に痩せた男が、少年に

怒鳴りつけていた。

少年は、どうしようと言う風に困った表情をしていた。



「あのさぁ、君、これ何分かかったの?」

「えっと、10ぷ

「おせえよ」

「は・・・はい!!」

「返事だけは良いんだよな、返事だけは、もう君の仕事返事だけにしたら?

まあ、そんな仕事、だれも取ってくれないけどさ」



眼鏡の男は、侮蔑と苛つきが混じった目をしていた。

「あ・・あの、次は・・頑張ります!!5分!!5分以内で終わらせます!!」

少年は声を震えさせてそう言った。



しかし、眼鏡の男は「あのさぁ、そう言うことじゃないの。わかんないかなぁ、

そう言う返事が欲しいわけじゃなんだよなぁ、そもそも、もう君遅れているでしょ?

それ自覚してるの?」

「は・・・はい!!頑張ります!!!」

「だからさぁ」



そう言うと、眼鏡の男は苦笑した。

「君は!!もう!!遅れてんの!!なんで分かんないのかな」

「はい、ですから、次は・・・」

「そういうことじゃないの!!!!!!!」



最早、会話は成立していなかった。

その会話に俺は懐かしく思っていた。



そう言えば工場で働いていた時、俺もこういう上司がいたな。

こちらが何を言っても拒否をしてくる。正解が見えない。

会話が成り立たない。勿論、俺が悪いことは分かっていた。

しかし、上司は何度も何度も同じことを繰り返し言う。



すみませんでしたと言っても、そういうことじゃないの一点張り

どうすればいいのだろうか、と俺は思わざる負えなかった。



「ねえ、どうすんの?このまま遊んでる?」

「いえ、一生懸命働きます!!なので・・・」

「だからさぁああああ!!!はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・もう良いわ」

眼鏡の男はそう言って剣を抜きだした。

「そ、それだけは勘弁してください!!」



少年は床にへたり込んで後ずさりをした。

「もう、いいよ、君・・・」

そう言って、男は剣を振り下ろそうとした。



「その辺で辞めておけ」

男は剣をふり下ろすことが出来なかった。

何故なら、俺がいたからだ。



「あの、他のパーティの事情に口を挟まないで欲しいんですけど」

男は振り向きざまにそう言った。

「もう良いだろ、この少年も反省している」



少年をみると、少年はブルブル身を震えさせている。

「あの何ですか?人の事情に首突っ込まないでください」

と男は良い、剣を離そうとした。すると、剣がボロッと

崩れ始めた。



「は?はあああああああああああああああ!!!!?????」

男は、突然叫び出した。



「おいてめええええええええええええ!!!俺様の剣になんて

ことしやがるんだああああああああああああ!?」

男は、乱暴にそう叫び、舌を出しながら、気が狂ったように、腕を

ぶんぶん回し、近づいた。



俺は、それを難なく躱していく。

男は、酒樽の中に頭をつっこんだ。



「おい!!店の商品、勝手にこわすんじゃねえ!!」

ガンテツさんが怒鳴り散らす。



「うるぜえ、ごいつはぁ、俺の剣をおおおおお、おでのおおおお

げんごぉおおおおおおおお!!!!!!!!」

最早、錯乱状態にあった。話の通じる相手ではない。



男は奇妙な恰好をしながら俺につっこんできた。

俺は、それを躱すと、男の頭を掴んで、そのまま

地面にドゴオオオ!!!とはんこを押すように、打ち付けた。



「おい!!店の床、ぶっ壊してんじゃねぇ!!」

再びガンテツさんが叫ぶ。

「あ、すみません」

俺は男の方を見る。男は気絶をしていた。

眼鏡はもうぶっ壊れていた。



「だ、大丈夫でしたか!?」

アダムがそう言って俺に近づいてきた。

「ああ、大丈夫だ」



すると、俺の周りから拍手と歓声が囲みこんだ。



「ヒュー!!かっこいいねぇ」

「ああ、見ててスカッとしたぜ!!!」

「あの男、新人クラッシャーで有名だったからねぇ」

「あの男の子が無事でよかったぜ!!」



凄かったぜー!!そう言った歓声が俺を包み込んだ。



「あ、あの!!」

声のした方を振り向くと、少年が立っていた。

「あ、ありがとうございました!!」

そう言って、丁寧にお辞儀をした。



「ああ、いや、大したことはしていない、ところで

君はこれからどうするんだ?」

すると少年は手をいじりながら

「行くところはないです」

と言った。



ああ、この少年は俺と同じなのだ、行くところ

を失ってどうしたらいいか分からない。

俺には分かる、痛いほどわかる。

「じゃあ、俺の所に来るか?」



俺の口は自然にそう言っていた。

すると、少年は信じられないと言うように

目を見開かせて「え?いいんですか?僕なんかで?」

と聞いた。



それを見て俺は「ああ、良いんだよ、君はここにいて」

そう言うと、少年は、パッと太陽に照らされるヒマワリ

のような笑顔になり「ありがとうございます!!」と言った。



あたりは、少年の祝福の拍手が広がった。


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