悪口言う時だけ仲良くなれる関係はくだらない
その日のギルドは騒がしかった。
「ウェイドのゾンビドラゴンが倒された!!!」
途端にオオオオオオオオオオオオオ!!と歓声が埋め尽くす。
「あのゾンビドラゴンは8つの中のドラゴンでも最も厄介なドラゴンだったからなぁ」
「ああ、噛みつかれたら自分もゾンビになるんだもんなぁ」
冒険者たちは、ゾンビドラゴンが倒されたことに喜んでいた。
しかし喜んでいないものが何人か、中でも男性4人で集まっているグループにその人物はいた。
「ゾンビドラゴンがぁ、倒されたのか、あ、あ、俺たちが倒す予定じゃあなかったか?ウェイト」
「はぁ、でも、まあ、倒されちゃったものは倒されたんだし」
コウイと呼ばれた青髭の年配の男性はそう言って、皺が目立つ太ったおっさんのご機嫌を取るように笑顔を浮かべた。口元だけがにんまりしていた。
「そっすね、コウイさんの言う通りっすね、俺たちが遅かっただけですし」
「あのねぇ、ハヤヒルさん、そう言う言い方どうかと思うよ???」
そうツッコミを入れるのは、ハヤヒルと言う太った眼鏡の男。
そのツッコミに対し、コウイは少し怒る。
「まあ、いいじゃあないですか、やっかいなね、ドラゴンがね、いなくなったんですよ
それで良いじゃないですか」
そう言ったのは痩せた眼鏡の男。
「まあ、タカのいうとおおりだな。まあ、でも、おれらぁがもうちょっと、もうちょっとなんとかしてりゃあ、そいつらよりはやあく始末できなんじゃあないのかなってえ、思うんだが?」
語尾を伸ばして厭味ったらしく皺のおっさんはそう言う。
「・・・・・・」
男たちは何も言えなかった。
「じゃあ、もう今日は良いや」おっさんはそう言って、その場を離れた。
「・・・・あのさぁ、いい加減、リーダーの機嫌とんのホント疲れない?」
そう口を開いたのは、コウイ。
「まあ今日みたいにね、コウイさんがね、もう、ブフッ、ニンマリ顔してりゃいいんじゃないですか?」
「やんだよ、俺、もう、あの人の名前忘れたもん、てか、本人も忘れたでしょ」
「もうボケてんじゃね?」
「そうそうボケてんだよ、そう思いません?タカさん」
「いやあ、もう私はあの人の考えることは分かりません」
3人はそれぞれリーダーの文句を言っていた。これまでのうっぷんを晴らすように。
しかし「あ、そうだ、オタ君、君、あしたロベルスの丘に集合だから」
とコウイは一人の少年に言う。
「あ・・・は・・・はい」
少年はそう弱々しく言った。
するとコウイが「ていうかさ、オタ君さ、君、この間さ、休んだ時、何で休んだの?」
と聞いてきたので少年は「それが、40度の熱で、皆さんに迷惑かけてしまうんじゃないかと・・・」
と言うとコウイは「あのね、俺が親だったらさぁ、這ってでも行け!!!て無理矢理だすよ!?だってそうじゃない!?君、ヒーラー役だよ!?分かってるの!?」
「えっと、だからヒーラー役が迷惑かけないように・・・」
見ると、男たちは、はぁと言う雰囲気を出していた。
「お前のそういう態度がダメだって言ってるんだ!!この、大体、体調管理がなっていないんだ、お前は、良いか!?ちゃんと体調管理していれば風邪なんてひかないんだ!!お前は体調管理がなってない!!」
「は・・・はい、すみません」
とタカはオタをしかりつける。
「オタ君にとって仕事とはなんぞや?」
と唐突にハヤヒルが聞いてきた。
「えっと、やらなくてはいけないもの?」
すると、「やらなくてはいけないもの・・・」
とオタの言葉を復唱した。
そして、「じゃあ、ちゃんとやらないとだめだよな」
とオタを窘めようとした。
「は・・・・はい、すみません」
オタは疑問だった。ヒーラー役が機能しないのに来ても良いのか?
それが邪魔になることはこの人たち分からないのかな?
それとも、倒れたら責めないで助けようとするのかな?いや、そもそも
それでも文句を言われる。そもそも、体調管理がなってないって・・・・
オタの思考は回り続けて答えが導き出せない。
「ああ、君、もういいや」
男たちはオタを締め出すようにしてあしらった。
「は、はい・・・・・・・・・」
オタは、その場を去った。
「ああ、あいつ、昨日くれば、おとなしく魔物の餌にして
やったのにな」
「ちょっと~、コウイっさん、そりゃあ、本音を言いすぎでしょ~」
「いやいや、タカさんだって、そう考えているでしょうに、も~」
男たちは、誰かの文句を言う時だけは団結している。