第95部 修学旅行の夢と……クリスマスケーキ
1970年12月24日
*)行けなかった修学旅行……
私と大地は退院の予定を考えている。ここの主治医は欽次郎にどえらい事をしでかしたという、汚名を抱えてしまった為にか私たち二人には面と向かって話しかけて来なくなった。診察なんてありはしないのだ。検温と脈を看護婦さんに測定させて、はい、終わり。もうウンザリだわ。
「大地、お正月は自宅で過ごすわよ! 初めてのお正月だものね。」
「あぁ……そうだな? 俺は餅を食えるのかと思うと、直ぐにでも退院したい。亜衣音、家で餅は搗くのだよな。」
「そのはずよ。今年は徹さんが居るから、楽勝かな。」
「俺も出来るのかな、一度餅を搗いてみたかったんだ。」
「だったら早めに出所しないと、お餅は搗けないわよ。」
「どうしてだよ、正月に餅搗きだろう?」
「だったら鏡餅はいつ飾るのよ。」
「……正月か……、」
「だから、今日は十二月二十四日だから……二十八日には自宅に居ないとめだからね。」
「決行は……二十七日だな。荷物を纏めておこうぜ。」
「数枚の服しか持ってないから、今から片付けたら着替えが無くなるよ。」
もうアホとバカの会話でしかない。
吉田一美が見舞いに来てくれて私は大いに喜んだ。
「わ~、久しぶり!……もう何日会ってないかな。」
「そうね、二十四日振りかしら!」
「へ~、もうそんなになるのね!」
(この女、チョロイ! 先週会ったというのにね。)
「どうかした?」
「あ、あぁ、直ぐにでも藍ちゃんと美歩と未来も来るからね。」
「えぇ?……どうして?」
「今日は終業式でしょうが、もう忘れたの?」
「うん、だって毎日が日曜日だものね。通知表が貰えないのは最高よね!」
「代わりに留年の辞令書が貰えるかもよ、きっと校長先生はそう考えているかもね。」
「え~やだ。」
「決定権は校長だよ?」
「ぶ~お父さんだよ。」
「そう……良かったね。あ、そう言えばお正月はどうするの?」
「その前にクリスマス! 一美、病室を綺麗に飾り付けをしてくれないかな。」
「またあんたの……おパンツを飾る気なのかしら?」
「あ、あれは……って、一美は知らないはずよね。」
「ぶ~知ってるもん。でも喜びなさい、亜衣音は随分とバカだったとは……知らなかったからね。」
「いいもん、あれでお母さんが帰ってきてくれたから、万々歳よ!」
「うそ!……。」
「ホンと。」
「…………。」
「一美……お手洗い。」
「?……私も行かせたいの?」
「うん、ハズいけれども、その……私のスリムな両足を見たら納得するよ。」
そう言いながら私は勢いよくベッドのお布団の左端を右手で掴んで右側に撥ね飛ばす。そこに見えたのは、か細くなった私の両足であった。
「あんた……無駄に胸が大きくなっただけなのね!」
「うん、大地がさ……、」
「へ~喜ぶように大きくさせたんだ。それって私への嫌みかしら?」
「一美……右の耳が可愛いわよ。さ、私をトイレに連れてって……。」
「わ、私のトレードマークを褒めても何も出ないわよ。いいかしら?」
「はい、か細くなった私の脚代わりに、両手を借りたいだけなの。いいかしら?」
「私の真似をしてもダメだからね。でも、そんな脚では退院しても歩けないよね、一階のリハビリに通ったらどうよ。」
「あ……ホンとね! 考えもしなかった。この後に行けるようにバカ主治医にさ、頼んでみる。」
「お正月には間に合うといいね!」
「うん……!」
私は一美の一言で喜んでしまい、自分一人でトイレに立つ。一美はやや胸は薄い方だから気にしているのかも知れない。そんな一美の胸に視線を落として横を通り過ぎた。だがカーデガンを羽織っていたら、んなものは関係なく見えるものだ。
「今日は……あんパンか!」
一美は私の背を見送って(チョロイ! 女だわ)と、思っている事だろう。私がトイレから帰って来たら、藍ちゃんと美歩が見舞いに来てくれていた。
(嬉しい……。)
美歩が小さな冊子を手にしていたのが見て取れた。……こ、これは、写真集だと、直ぐに判断した私。でも、ここは気が付かない振りをしてベッドに進む。今年の初冬は暖かくて過ごしやすかったのだが、昨日からは雨模様でやや肌寒い。
「亜衣音!」
と、ニコニコ顔の一美が私のベッドの布団に手を掛けていた。そして左手をベッドの上で、トントンとしている。私に早くベッドに入るように誘っている。私は、
「うん、ありがとう。」
「冷えるからさ、そう度々とトイレには行きたくはないよね。」
「え? ま、そうね。腰を冷やすと行きたくなるのよね。外の気温は十三度位かな。それともまだ寒いの?」
藍ちゃんの後ろの椅子にはマフラーが綺麗に畳んで置いてある。だからもっと寒いのかもしれない。
「たぶんそれ位。でも小雨だから体感温度はもっと寒い。」
「女って損よね。寒いのに拘わらずにスカートを強要させられるし。」
「毛糸のパンツでも真冬はしのげないのよね、雪降るし。」
「美歩は東京産まれの東京育ちだもの、典型的なお嬢さま育ちよね。」
「ね~!!」x2
私は藍ちゃんの意見に賛同の声を上げる。藍ちゃんも数年は北海道で暮らしていたから、これ位の寒さに耐寒は出来たのかも。しかし、私は温々と病院暮らしですっかりの温室育ちになってしまっていた。
「あの~私も寒いのは苦手なんですけど!」
「あ、一美もお嬢さまだったか……。」
私の布団は見事に一美に奪われてしまった。そう、私の一言で怒った一美はそのまま後ろの大地のベットに腰掛けて布団を膝掛け代わりにしてしまった。私は意地になり布団を掴んで強く引っ張るが、布団を持つ手に力が入らない。
「え?……どうして。」
「亜衣音ちゃん。……どうかしたの?」
「一美が布団で遊ぶからでしょうが。早く亜衣音に戻しなさい。」
「は~い、」
「キャッ!」
一美が私に頭から布団を被せてきた。私は怯んで可愛い声を出してしまった。
「んも~、やめてよね。」
この騒動で私の異変を、友人らには気取れることが無くて良かった。そう、私の筋力が大幅に落ちていたのに気が付いた。これはおかしい、大地が退院してからは確かに歩く事が少なくなってはいる。だが、布団の取合いで負ける程私の筋力が落ちていたのには驚いた。私は甘える声で、
「お布団、掛けてよね。」
「はいはい、か弱いお嬢さま!!」
「う……弱い乙女ですよ。美歩ちゃん、早く見せて!」
「へ~、さすがですね私の持参した写真を見たいのですね。」
それは予想どおりの今年の修学旅行のスナップショットだった。私と大地が行けなかったその写真集は、皆の笑顔が満載だった。美歩は丁寧に説明してくれている笑顔がとても幸せそうだった。
「うん、……みんな、可愛いな!」
この日の夜は、行けなかった修学旅行の夢だった。私と大地はメリーゴーランドの馬に乗っていた。喜んで手を振っていたら馬から落ちていた。
「ドスン!」 「イテ!……テ。」
バカ大地がベッドから落ちていた。……私の胸の周りが乱れているのよね。
「可愛い大地! 私が寝てから戻っているなんて、何処に行っていたのよ。」
翌朝大地に問いただしたら、
「お前が俺を尻でベッドから押し出したんだろうが!」
と怒られた。でもこれはウソに決まっているわ、だって私には大地を押し出す力は無いよね。大地は行き先を言いたくないようだから訊くのはやめた。どこだろう、そう言えば大地からは他の女の子の甘い匂いがするよね?
「コンコンコン!」
ドアをノックする音が聞えて来ると、大地の口が緩んでいた。昨日は姿を見せ無かった未来がやってきた。
「メリークリスマス。大地くん、お待たせ!」
「え、なになに。どうしたの!」
流行る気持ちを抑える事が出来ない私がいた。未来の手に白くて大きい紙箱が見えていたから。
「やった~!!」
ラノベ……読んでいました。二作品なのですが一つは二十巻でも続いている作品。もう一つは十巻ですが、これも今後期待したい作品。共に批判したくはありますが、ここでは我慢……。職業とされたら苦労が多いかなと?勝手な感想。
随分とご無沙汰いたしました。99話まで書きました。100話は少しお待ちくだ
さい。
誤字脱字はあるのですが、中々指摘を受けません。故意に残してみたいと思う
事もありますが、都度訂正しております。ま、ご愛敬で……。




