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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第八章 あれもこれも穏やかな幕間(まくあい)

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第92部 多数の入院患者と……お父さん……


*)多数の入院患者……と、お父さん。


 カムイコロさんがお父さんを連れて向かった先は、同じ病院だが五階の男性専用の病室だった。大部屋で若い人ばかりが入院していて、カーテンの代わりには……、


「関東八州連合の旗……!」

「あぁ、そうだ。そこの欣ちゃんにお礼を言って貰いたい。昨日助けた三人を、ある意味で守ってくれた、族たちだ。」

「いや、どうしてそうなる。」

「こいつらはよう、攫われて殺されるはずだった、藍と翠、碧を結果的には助けたんだぜ。攫った連中に喧嘩を嗾けていたんだぜ? バカだからさ。」

「攫った連中に喧嘩を仕掛けていたんですね、……ありがとうございます。」


 お父さんはカムイコロさんより簡単に経緯を聞いていた。カムイコロさんは殆どの事を知らないのだから適当か。


 カムイコロさんはお父さんに欣ちゃんを紹介した。当のお父さんは桜花祭で見かけた程度しかないはず、記憶は無いだろうね。カムイコロさんはニコリとして、お父さんを欣ちゃんに紹介している。思惑があるのか……。




「欣二郎、親父を連れて来たぜ。うんと慰謝料を請求しとけよ。」

「いや、ボスの子分さん。それは出来ません。この前の関東九州連合のゲスから美歩を守って頂きました。それに全員をムショ送りにして貰っています。まだまだそのお礼にもなっていません。」


 このタコ部屋には総勢で十二名の怪我人を押し込まれていて、他に通院でも二十名は居るようだった。ボスの子分さんとはカムイコロさんの事だ。ボスとは勿論私のようなのだが……。


 女の子たちが攫われて放置されていた理由が、これだという事が理解出来た訳だが、数人相手の男に多勢で向かった八州連合……殆どが返り討ちに遭ったのが実情か。だから藍の親父は警察沙汰になるのを気にして退散したらしい。所詮は族がらみの闘争と処理される程度に抑えておかないと、先々で苦労する事にもなると藍の父は判断したのだろうか。



 お父さんは、


「娘たちを守ってくれて、どうもありがとうございます。」


 そう言っただけで病室を後にしたらしい。その理由は……、何とも言いようのない目つきでお父さんに言い寄ったらしい。


「私ら関東八州連合を、お嬢様の部下にさせて下さい!」


 手足や顔に痛々しい包帯姿の野郎共に、可愛い目つきで迫られたら返す言葉も出てきはしない。後退りするほどにキモい……はず!


 これは先々の事だが……。


 その日の夜には多大なお見舞いの品々が祖父より届けられていた。段ボール箱にはワインやウヰスキー……も?



「お父さん。何ですか、あんな酒まで届ける必要はありませんよね!」

「そうカッカと怒るな穣。あいつらは孫の親衛隊に育てようではないか。」

「……へっ、あ、そうですね……それはいいですね、あ……そう……。」


 お父さんは祖父から意表を突かれた回答に声が出なかったらしい。祖父は独自に関東八州連合の調査を行っていたに違いない。そうして得た情報に祖父が考えた事は、正しく私を守る事が優先された内容か、あり得ないのだ。



「穣。あいつらを全員……学校へ送る。いいか!」

「勿論、高卒以外ですよね。」

「全員が高校中退や中卒だろう。関東農業大学付属高等学校にプレハブ校舎を建てて、穣、お前が教育しろ。金は国から出させる。」

「うぎゃ~…………。」


 この事によりお父さんの受難が起きてしまった。祖父は従前の職業で政治家の弱点を多数押さえているのだろう。祖父は自前でお金は出さない質らしい。



「当たり前だろう、堅気の生徒たちと机は並べる事は出来ない。先生も雇えないから、沙霧さんや澪さんにも手伝った貰おうか。あの二人は秀才だったよな、ガハ、ガハハ……。」 


 教頭先生のお父さんが就任すればお給料も発生しない、ただそれだけの理由で専属の先生に指名された。校長先生の反論は許されない。


 暴走族に耐久性のある教師はいない。あるとしたら丸暴対策室の刑事位か。あ、税務署さんも厳つい顔の人、ぎょうさん居てます……。グラサンの人も!


「保育所も造りますか!」

「おう、造ったれ! 族の女も子持ちが居るらしいぞ、ガハ、ガハハ……。」 


 校庭の片隅に急ごしらえの校舎が出来た。教室棟と保育棟兼父兄室が。ここに杉田一家と黒川一家の昼間の居所とされた。


 事実は、ストーブに火を入れない部屋……。誰もが反対して入室さえも拒否されていた。


 祖父の仕打ちは酷かったらしいのだ。欣ちゃんたちには偽の逮捕状や少年院送致命令書を作成させて脅かし、ぐうの音も出ないようにしていた。蜜は車やバイクの保持を許したらしい……保持……だけが……。車の保持は違法でない。


 

 さて、現在に戻って話しを続けましょうか。



 帰って来たカムイコロさんに、私は微笑んでとある言葉を投げた。


「ゆうたん!!……。」

「……ううう、う~寒気がしてきたぜ。なんだい、そのゆうたんとは。」


「臥薪嘗胆……。熊胆ゆうたん。」

「ギャピー!!」


 カムイコロさんは大声で叫んで逃げて行った。お昼には戻ってきたが、私は今朝のカムイコロさんに切り返ししようと、


熊胆ゆうたんで巫女の気力をどうにかします。」

「お、俺の肝は喰わせないないぞ!」

「君の肝臓を食べたい……。」

「ダメだ!」


 これでは何処かのアニメ映画のタイトルだな。



 昼食の時間となった。澪お姉さまも私たちと一緒になって食べている。


「あらま~、亜衣音ちゃんは健啖家けんたんかだね~。」

「亜衣音ちゃんのお姉さま、その健啖家とはなんでしょうか?」


「はい、藍ちゃん。健啖家とはね、なんでも好き嫌いなく、仰山食べる人の事を言うのですよ。大地くんも同じですね。」

「あ、これはカムイコロさん用の朝食なのですが、ブドウやマスカット、それとアケビに梨にリンゴ。マンゴーと柿にキウイ、ザクロにカリン。」


 テーブルに置いてある果物類の名前を言う藍だが、これを食べる大地でもなかった。梨にリンゴは皮を剥いて貰って食べる位だ。私が食べたいと言うのだからね。


「それって、私も食べたい。」


 と、澪お姉さまも手をだしている。藍はとても大きい柑橘類の晩白柚を取り出して澪お姉さまに勧めていた。恐らくは澪お姉さまに皮を剥いて貰いたいというのが本音だろう。世界最大級のザボン類で、一個の大きさは直径約二十センチメートルから、重量も二~四キログラムの超特大なのだ。でも此処に在るの

は三キロ以下だろうか。(熊本県八代地方の特産です!)



「晩白柚もありました。これってカムイコロさんの胸を二つ合わせてもまだ足りない程の大きさですね。」

「スイカでいいわよ、一個百円の小玉で十分でしょう。」


「あ、道沿いにおいて車の移動販売で売られているモノですね!」

「あれね、『羊頭を懸けて狗肉を売る。』あの看板方式ね。台の上に立派なモノが目立つように並べてね、その実、売るのはとても小さいものだったり個数が遙かに少なかったりするのよね。」


「う~……すみません。これらは全部そんな売れない果実ばかりです。」

「へ~……あの二人は味覚も無く食べていたんだね。」

「はい、全部くず物品でした、すみません。」

「……値切ってきたの……?」

「はい、三十円まで値切りました。」


 水菓子だ、直ぐにお腹はいっぱいに膨れる。残った果物を食べたカムイコロさんはババを引いた、毒が混ぜられていたのだった。カリンの果実は香りがとても良いのだが、果肉は木質な為に食べられるものではなかったが、事、ヒグマにはとても美味しいらしいのだ。だけどもカリンに毒は仕込めるはずはない。


「藍~、お前は俺を殺したいのか~、」

「いいえ、そんな~……。」


 蒼い顔をした藍も驚いていた。でも内心は、(亜衣音ちゃんが食べなくて良かった。)だろうか。


 この病室にカムイコロさんも入院したと聞いて美歩ちゃんは、大笑いをしていた。外で天ぷらをたらふく食べて、一個五百円のスイカの食べ合わせで腹を壊したのが本当。




 桜花祭も無事に終わって校内にはいつもの喧噪が戻っていたが、私と大地の二人の机にはまたしても牛乳瓶に生花が添えられる事件が起きていた。



 それからというもの、藍と未来、それに美歩は毎日のように見舞いに来てくれているが、立花の双子だけは年末が近づくにつれて来ないようになった。下宿先の食堂が忙しくなるからだ。




 1970年11月13日~12月29日


*)大地が藍に狙われるの?


「亜衣音ちゃん。」

「あ、未来!」

「ふふ~ん、大地くんが退院するってね、同情しちゃうわ!?」

「余計なお世話です。」

「ご家族の方も、お母さんが最後だったてね。でも、良かったね!」

「うん、家族はね、私抜きで大地が退院した時点でよね、お祝いの宴会をね亀万で開いたのよ、どう思う?」


「そうね、大地くんの紐を切っておくべきだね。糸の切れた凧みたいにさ、彼方此方に飛ばせて遣りなよ。何なら……?」

「澪お姉さまに食べられてしまいます。」


 未来は細目で私の顔に近づいて私の大地が、藍に寝取られると冗談で言うのだから鳥肌が出てきた。もう本当にイヤらしい目つきなのだよ。



「案外……近くにいる、藍だったりして……ね?」

「ギャビ……! そ、それ~は困る。大地は私のモノなよ。藍にも渡せない。」


 いやいやいや、それはそうなのだけれどもね、私の退院は決まらないし、脚力だってようやく立っておトイレに行けるまでは回復したよ。


「へ~……この前の裸のお付き合いで、大地くんを狙っているかもよ……? どうする?」

「ビャバ! うぐぅ~。」


 冷や汗を掻いて私の身体が火照てり、頭には血の気が上り、もうまともな思考が出来ない状態に陥ってしまう。だから面食らう言葉しか出ない。


「ほら、亜衣音ちゃんはそうやって直ぐに降参するよね。悪い性格だとは思わないのかしら。」

「私の性格よりも、未来の悪い性格には文句を言いたい。」

「何よ、」

「未来………………『バカにするな~!!!』」

「ギャバロン……、」


「なによ、そのギャバロンって!」

「亜衣音ちゃんに処方したい、脳の損傷により起こる脳筋肉の強ばりを直すお薬よ。……この脳筋バカ!」

「うわ~……言ったね、この永遠の処女・アマテラスが! 明神という性はここから生まれたのでしょうが……! このアマ!」

「う~……ビッチで阿婆擦れの処女喪失女が!」

「ガボ!……ツクヨミで女男が!…… 悪魔!」


「亜衣音、もうそれ位にして負けておけ。ドアの外ではお見舞いに来ても入れないクラスメイトでいっぱいだぜ。」

「え?……ホンとなのかしら。」

「そうだな……十人かな。今呼んでくる。」


 大地はそう言って直ぐに入り口のドアを開けた。見舞い客とは大地のウソである。私と未来の罵詈雑言を止める為にウソを言った……ウソである。作者の脳が足りないが為に私と未来を仲裁したようなものか。


 未来の洞察力は鋭い。大地は黙って部屋に入る姿で導かれる答えは、ウソ。大地に続いて入ってきたのは藍の一人だ。


「亜衣音ちゃん。皆は呆れて帰って行ったわ。よっぽど亜衣音ちゃんを怖がっているのね。」

「誰がよ、名前を教えなさい。」

「ほらほら、ホラ。そんな処が怖がられているの、自覚を持ちなさい。」

「やだ、……ベ~だ! 誰も来てはいないよね……?」


「鼻の頭に皺を作って、はしたないわよ。」

「未来には関係ないよ。」


 未来の矛先が藍に向けられる。未来よりも藍の方が付き合いが長い。


「ねぇねぇ藍。亜衣音ちゃんって、中学の時はどうだったの?」


 未来は私の中学時代の事を藍から聞きたいらしい。これは拙いと思い、先に私が弁明した。要は藍の口封じを狙っての事である。でも効果はないよね。


「私って、普通の女の子よ。特別も何も無いわ。」

「そうね、クロに乗ってばかりの乗馬バカだったね。あ~そう言えば亜衣音ちゃん。友達は居なかったよね、ねぇ~亜衣音ちゃん。」


「う……グゥ~……居たもん。」


「それは一人だけだよね。五人は居たのかな?」

「藍、煩い、黙れ!」

「未来、この返事でもう解ったよね、たぶん一人も居ないのよ。」

「うわ~亜衣音ちゃん。随分と寂しい人生だったのね。……お~よしよし。泣くんじゃないぞ。」

「私、泣かないもん。え?……藍ちゃんは小学校時代は居なかったよね。」

「あ~わわわ……そうだったかな。居たと思うよ?」

「ウソだ~い、バカ藍!」


 私の過去は悲しい事が多い。巫女の力が暴走しないようにと、麻美ママからいつも言われていた。「感情を出すな!」と。そうなると友達なんか作れないし、喧嘩も出来ない。人と接するから衝突する。衝突を避けるには人を避けるに限るのだ。これが私の悲しい哲学。


 こんな私の哲学は実を開いたのが、藍とのタイマンだ。最後まで自我を通すことが出来たのだ。叩かれても殴られても冷静で居れた自分が意識できた。藍に負ける気はしないのだけれども、維持でも突っかかってくる藍が可哀想とでも私は考えたのか、泣いて私の負けを宣言して帰ろうという、卑怯な手段に出

たのだった。


 藍は直ぐには解らずにいた。嘘泣きしながら帰る私の後ろ姿を眺めていて、考えて、そして「私は亜衣音に負けたんだ!」と、思ったらしい。この点は本人からは聞いていないので判らないな。


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