第91部 もうお父さん、……少しは恥じらいなよ。
今回は書き方を変えてみました。下半分は通常の書き方ですので、読まれなく
て、いや読まなくていいです。
二人の黄疸が酷いの。ほぼ全量を輸血と入れ替えればそうなるのかな。自分の血液が造られてから、身体の全量が自分の血液に置き換わるまで続くんだね。人から頂いた血液は大事にしたいけれども、血液は使い捨てでいずれ無くなる。だけど私たちの命としては死なない限りは続いていくのね。
翌朝の目覚めは……良くなかったんだけど、最低と言えるような事はないな。でも、私よりも回復が早い大地はそうでもないらしいが、未だに力が入らないと言うのよ。ホンと! 二人しての困ったちゃんだ。そんな私を見てか……? カムイコロさんの啖呵が朝一に私の耳を通して脳みそをほじくってくれたの。
「おうおう、ホンと! 情けないな~、これが巫女かいな!」
「だって、とてもじゃないけれども、身体に力と活力が無くなったままですもの。毎日沢山食べると良くなるかもよ?……期待してますよ。」
「ケッ!……巫女の気力でどうにかしろ!」
私が感じた巫女としての状況を言ってみたの。
「カムイコロさん。私……もう巫女の力は出ないようです。すっかり女の子になった気分なんですよ。」
「じゃぁ、大地はどうなんだい。」
「どう……と言われても強張った筋肉ならば、解せば元に戻りますからカムイコロさん、お願い出来ますか?」
「俺はイヤだよ。病院のリハビリテーションに通えよ。」
私はカムイコロさんに大地のマッサージを頼んでみたが断わられた。有料のリハビリテーションに通えと言うのよね。という事は病室へ看護師さんを呼ぶ必要があるな。できるだけ他人は入れたくないのだが、どうしようか。
この時、ドアをノックする音が聞えた。カムイコロさんは自分のベッドの上を四つん這いになって越えて行った。
「おう、早かったな。……これだけかい。」
「はい。あ、まだ藍ちゃんが遅れて持ってきてくれますよ。」
「まぁ良いだろう。先に朝飯を食わないと力も出ないからね。」
「そうですよね。私たち、学校へ行きますので亜衣音ちゃんにも食べさせて下さいね。」
「おい双子。俺にはそんな器用な事が出来ない位は知っているだろうが。二人に喰わしてから学校へ行きなよ。」
「藍ちゃんが残りますし、美歩ちゃんも来るかと思います。では、よろしく。」
「もうしゃ~ない、藍に頼むとするか。」
「はい、ヨロピク。」
翠は通路に在るカムイコロさんのベッドの上を、四つん這いになってヨタヨタとして通ってきた。それから翠はベッドの上に上半身を寝せて、碧との間で買い物袋を受け渡ししている。大地の目の前には翠の可愛いお尻が蠢いていて大地の眼がその一点に釘付けだな。私は、「ゴホン!」と、咳払いをして大地の視線を逸らせたいのだが、私はそんなに器量は小さくはないよ、大地。
私も双子の遣り取りを見ていたら、碧はベッドを越えようとはしていない。その理由は直ぐに理解できた。今度は買い物袋に濡れた制服を詰め込んでねまたベッドの上に上半身を寝せて、翠と碧がその袋を受け渡しをしていた。
「翠、見えそうなんですけれど……。」
「あ?……これ位はいいわよ、目覚ましに見せてあげる。大地くんも起きるでしょうね?」
「あ……~? 翠のH!」
「翠、忘れ物は無いよね。」
「碧、大丈夫。元々が何も持っていなかったもの。」
「そうだね、じゃ亜衣音ちゃん。」
立花の双子は制服を丸めて抱えて部屋を出て行こうとしている。昨夜の検査服のままだから病院内はいいとして、自宅まではどうするのだろね。気になるので尋ねた。
「ねぇ、二人はどうやって帰るのよ。」
「うん、タクシーを呼んでもわうわ。さすがにこれではね~。」
碧と翠はそれぞれが両手を挙げて、自分の着ている診察服をマジマジと眺めている。乙女としたら恥ずかしい服には違いないよね。だから私は、
「うん、ゴメンね。」
と、言って謝った。可愛い双子には何を着せても可愛いのだが、丸くて可愛い顔の評価は間違いなく下がるものだね。それにお化粧もしてはないからか、お顔の明暗が……その分も間違いなく減点されて見られるの。
勿論、二人とも服とお化粧の事は理解している。でも、どうしようもないのも事実。ほんの少しだけ暗い表情になって私に返事してくれた。
「いいよ、亜衣音ちゃんは早く良くなってね。」x2
嬉しい、それから二人はニコリと笑ってくれたのだ。この時に、
「コンコンコン。」
「藍ちゃん! 早かったね。」
「うん……二人はもう帰るの?」
「そうね、下宿屋の両親も心配しているからね。」
立花の双子の両親は博多に在住しているはずだが、渋谷の下宿先の両親とはどういう意味だろ。謎よね、入学式に来ていたのが渋谷の両親かな。
そう言って双子は藍と入れ替わりに帰って行った。藍は私に優しく語りかけてくれた。……う~ん、まさしく天使だわ!
「亜衣音ちゃん。お待たせ、お腹空いたでしょう。」
「コンコンコン。」と、今度は看護婦さんも朝食を運んで来たのだが、部屋の様子に開いた口が塞がらないのか、黙ってカムイコロさんのベッドの上にね、二人分の朝食を置いていったわ。それとも着替え中のカムちゃんが悪いのかもしれないね。
「カムちゃん。いくら何でも……少しは恥じらったらどうなのよ。」
「俺の着れる服が無いんだ、胸のポロリくらいは大目に見ろよ。」
「モロですよ。着替えるのですよね。」
「あの女が小さいので、気が引けただけだろう?」
カムイコロさんは胸の乳房の大きさを強調したいのだろうが、どうだろう。比較された看護婦さんが惨めだと言っているのかな。
カムイコロさんは背中の桜並木の入れ墨がとても綺麗に……って、違いますよ、上半身をむき出しにしてしまっている。私がカムちゃんを睨んでいたら、明らかにカムイコロさんは不機嫌になったご様子なのよ。マジィ……。
気まずい私とカムちゃんの間に、天使のような藍ちゃんが入ってくれた。
私の勝手な思い込みで天使の微笑みに見えた藍は、二つのお膳を両手で押すようにして、ベッドの上で押しながら正座の姿で両足を少しずつ動かし、二つのお膳を押しているのだった。最後まで行き着いたら右のお膳を左側へ寄せて、今度はベッドで膝立ち歩きをして端まで行くと、今度は反対向いて後ずさりし
た。右足を床に着け左足を着けて無事にベッドを越してきた。
振り向いた藍ちゃん! 笑顔が可愛かったな。
「亜衣音ちゃん、大地くん。食~べよ!」
私もつい、釣られて微笑んでいた。でも、私は大地を忘れてはいないよ。
「うん、大地からお願い。」
大地は私の言葉に即答したんだ。
「いや、藍から先に食べろよ。俺は後でいい。」
藍は何を考えたのか、二つのお茶碗を持って……、
「じゃぁ、右手と左手を使って二人とも一緒に! はい、あ~ん。」
藍ちゃんはまた、ニコリと笑ってて……イタズラだよね、それ!
「ご飯のお茶碗ごと押し付けるのか……とても食えないよ。」
大地は藍のイタズラを真に受けていたのよ、もう可笑しい。この時にまたお客さんが来た、誰だろうね。
「コンコンコン。」
「カムイコロさん。お願い。」
この時、ドアをノックする音が聞えた。カムイコロさんは自分のベッドの上を四つん這いになって越えて行った。今度はパンツのお尻を大地に見せつけてくれちゃって……もう、カムちゃんのバカ!
「なんだい、俺は使い回しにされた気分さぜ。」
「あら、ホンとですわね。」
「ケッ!……誰だ。」
「コンコンコン。」
「っるさい! 黙れ。」
「澪です……。」
「あいよ、今開ける。……よう~元気になったようだな────○○
…………ぎゅひゃ~!」
「わぉ……これは朝からとても大きい山を見られた。」
「スケベ爺! 見るな。」
カムイコロさんはドアをいきなり開けるのだから、直ぐに後悔して悲鳴を上げてしまう。カムイコロさんの乳房の前にはお父さんの眼があった。
「アハハハ……お父さん、良かったね、大きいモノを見られて。」
「これでは大地くんの居場所が無いだろうに。……なぁ大地くん。」
「はい、その通りですよ。昨日から見せつけられて我を忘れていました。」
もうお父さん、少しは恥じらいなよ。自分の言うべき言葉を大地に言わせるなんて卑怯ですよね。カムイコロさんはお父さんに、「あっかんべぇ!」をして舌をだしていた。そんなカムイコロさんの前を下を向いて歩いて過ぎる。
「よっと、……これを越えるのも身体を使うな。これでは退院もまだまだ先か!」
お父さんはカムイコロさんのベッドの上を、皆と同じように四つん這いになって越えてきた。続いて澪お姉さまも同じくである。端まで行くと反転してあとすざりで着地。
「藍ちゃん、ありがとう。」
お父さんは直ぐに藍の様子を見て取ってお礼を言う。続いて澪お姉さまも同じく藍を思いやるの。
「いつも妹夫婦をありがとうね。私が代わるから藍ちゃんは学校へ行って頂戴。」
澪お姉さまは微笑みながら藍の横に立ってくれた。これに対して藍ちゃんは肩肘を張るようにして言葉を返している。
「いいえ、日頃の恩返しですので少しでもお役に立てていればいいのですが。今日はこの夫婦に付き合っておきます。」
看病は家族の役目ですよ、と、澪お姉さまは申し訳なさそうな顔を作っていているが、ここはどうしようかと悩んでもいる様子。
「でも、それでは藍ちゃんに悪いですわ。」
藍もお姉さまにそのように言われて伏し目になってお膳を見ている。これに対してお父さんは言葉が悪いのよ。
「俺の力量で課外授業扱いにさせるさ、教頭職もいい身分だよ。」
お父さんは自慢げにしているが、これでは誰も打ち合わない。だからお父さんに続く者はないの。少し可哀想かな。
藍は決心したのか、お膳から視線を上げて眼に力を込めて言うの。私は「眼皺が目立つよ、藍ちゃん!」と言いたかった。
「お姉さまこそ、……黄疸でお顔が優れませんですね。」
うっわ~、藍ちゃんは反抗的だ! 澪お姉さまは藍に言われて、はっ、としている。眼が少し大きくなっているよね。
「え?……あ、ホンとだ! お化粧を忘れてる!」
直ぐに気が付いた澪お姉さま! 頬がほんのりと紅くなりだした。
「お姉さまも今日くらいまではお休み下さい。明日からは……あ! そうですわ。教頭先生とお姉さまはこの病室へお引っ越しとか、どうですか。丁度ベッドも空きましたし。」
藍は真面目に考えたのだとは思う。でも、それでは大地が可哀想よね。だって大地は私に手を出せなくなるものね~?……だ~いち!
そんな事を考えて大地に視線を送ると、どうも、同意見らしいのよ。H! でもね、お父さんが私の考えを代弁してくれたの。
「藍ちゃん! 若い夫婦の部屋に親はさすがに同居は出来ないだろう。それ位は理解しているつもりだが。」
「あら……先生。怪我人ですよ、患者には人権は存在いたしませんわ。力こそ全てですわ。服を剥がすのも……看病のうちです。」
ギャバ!……私たちの人権を踏みにじっているわよ、藍ちゃん! でも、澪お姉さまはもっと過激な事を言うのよね、困っちゃうわ。
「まぁ、亜衣音ちゃん。とても綺麗になってるわね。昨晩は……ムフッ!」
私から大地に視線を変えた澪お姉さまの眼が笑っている。もう小悪魔なんだから……。って、私の顔が異常に紅くなっていたの~? もう見逃してよね。
「澪お姉さま!……はい、皆して身体を洗って頂いて幸せでした。」
「大地くんは……今日は私が面倒見ますね?」
もう澪お姉さまは私をからかって遊んでいますよね!
「いや、ダメ!……お姉さまはダメです、浮気です!」
こんな下ネタのY談の間でもカムイコロさんは、ベッドを外に出して室内の環境を整えてくれていた。……ありがとう、カムちゃん。序でに服も着ていたら良かったんだけれどもね。下着姿ではねぇ~……。
「ほら、二つを出したからこれで十分だろう。早く喰わせてやれよ。」
カムイコロさんが言った二つとはベッドの事で、通路と部屋の二つが廊下に出された。一つを少しずらしたら私と大地には自由に給餌!? が出来るというものだ。子ツバメのように大きく口を開けたい私たち。
「そうでした、まだ腕も上がらないからと看護婦さんは言ってましたね。」
澪お姉さまは私への給仕を買ってくれた。藍は大地へ、これこそ給餌か!
「澪お姉さま、ありがとうございます。」
「藍……すまない。」
私はお姉さまにお礼を言った。大地は、やはり藍には恥ずかしいらしいのね。うん、可愛い! だって大地のお腹がグ~だよ?
カムイコロさんは診察服を脱いで昨日の服を着るか、どうか……と思案していたのだが、お鼻でクンクンして顔を歪めていたのが可笑しかった。結局は少し小さい予備の診察服を着込んでいたわ。
着替えを済ませたカムイコロさんは、お父さんに何かを相談したいらしいの。それで真面目な顔をしている。お父さんも直ぐに意味を汲んでいた。
「あ、父ちゃん。ちょっと外で話そうか。」
「カムイコロさん。そうしようか。」
それからカムイコロさんは私の同意を求めるように声を掛けてくれたの。
「亜衣音、暫く父ちゃんを借りるぜ。」
「はい、どうぞ。」
私の視線は目の前のスプーンに釘付けだ。返事の声はどの方向へでも届く。カムイコロさんはきっと呆れているだろうね。お姉さまは笑ってスプーンを差し出してくれている。口を開けて……パクリ!
カムイコロさんはお父さんに、藍ちゃんや立花の双子が攫われていた事実を細かく報告しているはず。
(下は通常版として残しておきます。)
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二人の黄疸が酷いのだ。ほぼ全量を輸血と入れ替えればそうなるだろう。自分の血液が造られて、身体の全量が自分の血液に置き換わるまで続く。
翌朝の目覚めは……良くなかった。大地はそうでもないらしいが、未だに力が入らないと言う。二人しての困ったちゃんだ。そんな私を見てか……?
「おうおう、ホンと! 情けないな~、これが巫女かいな!」
「だって、とてもじゃないけれども、身体に力と活力が無くなったままですもの。毎日沢山食べると良くなるかもしれません。」
「ケッ!……巫女の気力でどうにかしろ!」
私が感じた巫女としての状況を言ってみた。
「カムイコロさん。私……もう巫女の力は出ないようです。すっかり女の子になった気分なんです。」
「じゃぁ、大地はどうなんだい。」
「どう……と言われても強張った筋肉ならば、解せば元に戻ります。カムイコロさん。お願い出来ますか?」
「俺はイヤだよ。病院のリハビリテーションに通えよ。」
私はカムイコロさんに大地のマッサージを頼んでみたが断わられた。有料のリハビリテーションに通えと言う。という事は病室へ看護師さんを呼ぶ必要がある。できるだけ他人は入れたくないのだが。
この時、ドアをノックする音が聞えた。カムイコロさんは自分のベッドの上を四つん這いになって越えて行った。
「おう、早かったな。……これだけかい。」
「はい。あ、まだ藍ちゃんが遅れて持ってきます。」
「まぁ良いだろう。先に朝飯を食わないと力も出ないからね。」
「そうですよね。私たち、学校へ行きますので亜衣音ちゃんにも食べさせて下さいね。」
「おい双子。俺にはそんな器用な事が出来ない位は知っているだろうが。二人に喰わしてから学校へ行きなよ。」
「藍ちゃんが残りますし、美歩ちゃんも来るかと思います。では、よろしく。」
「もうしゃ~ない、藍に頼むとするか。」
「はい、ヨロピク。」
立花の双子は制服を丸めて抱えて部屋を出て行こうとしている。昨夜の検査服のままだから病院内はいいとして、自宅まではどうするのだろね。気になるの尋ねた。
「ねぇ、二人はどうやって帰るのよ。」
「うん、タクシーを呼んでもわうわ。さすがにこれではね~。」
「うん、ゴメンね。」
「いいよ、亜衣音ちゃんは早く良くなってね。」x2
そう言って藍と入れ替わりに帰って行った。看護婦さんも朝食を運んで来たのだが、開いた口が塞がらないのか、黙ってカムイコロさんのベッドの上に二人分の朝食を置いていった。
「カムちゃん。いくら何でも……少しは恥じらったらどうなのよ。」
「俺の着れる服が無いんだ、胸のポロリくらいは大目に見ろよ。」
「モロですよ。着替えるのですよね。」
「あの女が小さいので、気が引けただけだろう?」
カムイコロさんは胸の乳房の大きさを強調したいのだろうが、どうだろう。
カムイコロさんは背中の桜並木の入れ墨がとても綺麗に……って、違いますよ、上半身をむき出しにしてしまっている。
天使のような藍ちゃんが私とカムちゃんの間に入ってくれた。藍は、
「亜衣音ちゃん、大地くん。食~べよ!」
「うん、大地からお願い。」
「いや、藍から先に食べろよ。俺は後でいい。」
「じゃぁ、右手と左手を使って二人とも一緒に! はい、あ~ん。」
「ご飯のお茶碗ごと押し付けるのか……とても食えないよ。」
「コンコンコン。」
この時、ドアをノックする音が聞えた。カムイコロさんは自分のベッドの上を四つん這いになって越えて行った。
「カムイコロさん。お願い。」
「なんだい、俺は使い回しにされた気分さぜ。」
「あら、ホンとですわね。」
「ケッ!……誰だ。」
「コンコンコン。」
「っるさい! 黙れ。」
「澪です……。」
「あいよ今開ける。……よう~元気になったようだな────○○
…………ぎゅひゃ~!」
「わぉ……これは朝からとても大きい山を見られた。」
「スケベ爺! 見るな。」
カムイコロさんはドアをいきなり開けるのだから、直ぐに後悔して悲鳴を上げてしまう。カムイコロさんの乳房の前にはお父さんの眼があった。
「アハハハ……お父さん良かったね、大きいモノを見られて。」
「これでは大地くんの居場所が無いだろうに。……なぁ大地くん。」
「はい、その通りですよ。昨日から見せつけられて我を忘れていました。」
「よっと……これを越えるのも身体を使うな。これでは退院もまだまだ先か!」
お父さんはカムイコロさんのベッドの上を同じように四つん這いになって越えてきた。続いて澪お姉さまも同じくである。
「藍ちゃん、ありがとう。代わるから藍ちゃんは学校へ行って頂戴。いつも妹夫婦をありがとうね。」
「いいえ、日頃の恩返しですので少しでもお役に立てていればいいのですが。今日はこの夫婦に付き合っておきます。」
「でも、それでは藍ちゃんに悪いですわ。」
「俺の力量で課外授業扱いにさせるさ、教頭職もいい身分だよ。」
お父さんは自慢げにしているが、誰も打ち合わない。
「お姉さまこそ、……黄疸でお顔が優れませんですね。」
「え?……あ、ホンとだ! お化粧を忘れてる!」
「お姉さまも今日くらいまではお休み下さい。明日からは……あ! そうですわ。教頭先生とお姉さまはこの病室へお引っ越しとか、どうですか。丁度ベッドも空きましたし。」
「藍ちゃん! 若い夫婦の部屋に親はさすがに同居は出来ないだろう。それ位は理解しているつもりだが。」
「あら……先生。怪我人ですよ、患者には人権は存在いたしませんわ。力こそ全てですわ。服を剥がすのも……看病のうちです。」
「まぁ、亜衣音ちゃん。とても綺麗になってるわね。昨晩は……ムフッ!」
「澪お姉さま!……はい、皆して身体を洗って頂いて幸せでした。」
「……大地くんがですね。今日は私が面倒見ますね?」
「いや、ダメ!……お姉さまはダメです、浮気です!」
こんな下ネタのY談の間でもカムイコロさんは、ベッドを外に出して室内の環境を整えてくれていた。……ありがとう、カムちゃん。
「ほら、二つを出したからこれで十分だろう。早く喰わせてやれよ。」
「そうでした、まだ腕も挙がらないからと看護婦さんは言ってましたね。」
「澪お姉さま、ありがとうございます。」
カムイコロさんはお父さんに何かを相談したいらしいのだ。
「あ、父ちゃん。ちょっと外で話そうか。」
「カムイコロさん。そうしようか。」
「亜衣音、暫く父ちゃんを借りるぜ。」
「はい、どうぞ。」
カムイコロさんはお父さんに、藍ちゃんや立花の双子が攫われていた事実を細かく報告していた。
桜花祭も無事に終わって校内にはいつもの喧噪が戻っていたが、私と大地の二人の机には又しても牛乳瓶に生花が添えられる事件が起きていた。この事はまだ先に知る事になる。
「あらま~、亜衣音ちゃんは健啖家だね~。」
「お姉さま、その健啖家とはなんでしょうか?」
「はい、藍ちゃん。健啖家とはね、なんでも好き嫌いなく、仰山食べる人の事を言うのですよ。大地くんも同じですね。」
「あ、これはカムイコロさん用の朝食なのですが、ブドウやマスカット、それとアケビに梨にリンゴ。マンゴーと柿にキウイ、ザクロにカリン。」
「それって、私も食べたい。」
「晩白柚もありました。これってカムイコロさんの胸を二つ合わせてもまだ足りない程の大きさですね。」
「スイカでいいわよ、一個五百円の小玉で十分でしょう。」
「あ、道沿いにおいて車の移動販売で売られているモノですね!」
「あれね、『羊頭を懸けて狗肉を売る。』あの看板方式ね。台の上に立派なモノが目立つように並べてね、その実、売るのはとても小さいものだったり個数が遙かに少なかったりするのよね。」
「う~……すみません。これらは全部そんな売れない果実ばかりです。」
「へ~……あの二人は味覚も無く食べていたんだね。」
「はい、全部くず物品でした、すみません。」
「……値切ってきたの……?」
「はい、三円まで値切りました。」
水菓子だ、直ぐにお腹はいっぱいに膨れる。残った果物を食べたカムイコロさんはババを引いた、毒が混ぜられていたのだった。
「藍~、お前は俺を殺したいのか~、」
「いいえ、そんな~……。」
蒼い顔をした藍も驚いていた。でも内心は、(亜衣音ちゃんが食べなくて良かった。)だろうか。
この病室にカムイコロさんも入院したと聞いて美歩ちゃんは、大笑いをしていた。




