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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第八章 あれもこれも穏やかな幕間(まくあい)

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第90部 これからは長い入院生活が……


                           1970年11月11日


*)四人の訪問者は入浴中!


 カムイコロさんに大地をお風呂に入れて下さいと、おねだりをしてはみたが大地はまだ血の気が足りないながらも、必死になって赤い顔で断わっている。大きな身体のカムイコロさんに抱かれて浴室へ運ばれる。だがその前には……、


「臭いぞ大地。今入院服を脱がしてやるからな。」

「ぎゃ~亜衣音、助けろ。俺はひん剥かれてしまう~。」

「大地、私も一緒に入るからさ我慢してね。だって大地はにおって仕方が無いのよね。私の為にも我慢だよ。」

「亜衣音も臭いから同じでいいだろう。」

「ギャボ!……乙女に向かって臭いとはなによ。」


「ほら亜衣音の旦那さま、……パンツの時間ですよ。」

「うぎゃ~……、」

「まぁ可愛い。少しおお**してあげる!」


「カムちゃん。遣っちゃって!」

「ほら、奥さんの了解は得たよ。こうなれば浮気でも何でもないからね。これは入院治療の一環だからね。」


「うぎゃ~……、」

「きゃ~!」x3


 この悲鳴は大地が、クラスメイトの女の子の三人の中に放られたからだ。うら若き女の子は悲鳴と共に浴室から飛び出そうとしたら、出口には大きなクマが栓をしている。


「ホラホラ……ほら! あんた達、私の言う事を何でも聞くからと、言ってたわよね。だから言う事を聞きなさい。旦那さまを隅々まで洗うのよ、これは命令だからね。」


「う~、そんな事……出来ません。第一に亜衣音ちゃんに悪いです。」

「ホラホラ…ほら旦那! これが介抱というやつさ。こうやって身体を洗って貰えるなんて、最高だろう?」

「あんまりです……でも、とても……嬉しいです。」


「カムちゃん。遣っちゃって!」



 私は情けない大地の声を聞いたら無性に腹がたって、カムイコロさんに大地を殴れと頼んだ。直ぐに大きな撲殺音が浴室に響く。


「バコ~ン!」

「伸びたが良いのかい?」

「はい、構いません。それよりも私もお風呂に入れて下さい。」

「亜衣音、生憎ともう満員さぁね。後にして!」


 私の冗談が招いた事は、それが悲痛な私の悲鳴へと変化した。


「え”~! そんな、大地が弄ばれてしまうわ。」


 でも時は既に遅し、だ。動けない私としたらどうしようもないのだから。病室の浴室はとても狭い。そこに五人もの人間が入れば芋の子状態になるのは察しが付く。ドアを閉められて私には中が見えない。


「そこで指を咥えて見ていろ!」

「え~、見えないよ~、」

「ほら、背中。……ほら、脚。……ほら、胸。……ほら尻も!」

「ギャバ!……ギャボ!……ギャビ!……。」

「煩いな~、指咥えていないのか!」

「そんな……私も入りたい……。」


 カムイコロさんの声に一喜一憂、いや、憂いしかない。得体の知れない私の短い悲鳴。


「此処だけは俺が洗ってやるからな。」

「はい、お願いします。」x3

「次、一番臭い頭。シャンプー開始!」

「ギャバ!……ギャボ!……ギャビ!……。」


「私は手も足も出ないコケシか~?」


 カムイコロさんは一糸纏わずに、これまた一糸纏わずの大地を抱いて浴室から出てきた。……もう動けない私に取っては半殺しにされた気分になった。咥えているのは私の汗で臭くなった毛布の端。その毛布を両手で引っ張っていた。上目遣いの憎たらしい目つきで、私はカムイコロさんを睨むしか出来ないのだ。……グヤジィ~!


 大地は私にとっての王子さまだ。私の目の前でヒグマからいじられていたら、これはもう自分の自意識は華麗に爆発しそうになる。……諏訪之瀬島状態……



「さぁ~大地。綺麗になったから頭をフキフキしようね~。」

「ギャバ!……、」

「さぁ~大地。綺麗になったから身体をフキフキしようね~。」

「ギャボ!……、」

「さぁ~大地。綺麗になったからタ*タ*をフキフキしようね~。」

「ギャビ!……。」

「さぁ~大地。綺麗になったから服着ようね~。」

「わ~、わ、わ~、やめて~!!」


 カムイコロさんは私の言った意味をはき違えたのか、汗ばんだパジャマを着せる事無く大地を左側を下にして、すっぽんぽんで横向きにして寝かせていた。


「カムイコロさ~ん。亜衣音ちゃんを連れてきて~、」

「あ~いいよ~。」


「ぎゃ~大地、助けて~。私はクマにひん剥かれてしまう~。」

「ほら亜衣音さま、……パンツの時間ですよ。」

「わ~、わ、わ~、やめて~!!」

「おやおや……オムツ……なのね。どおりで臭いはずだわ!」

「うぐぅ~。だって大地はホース付きだもん。」

「アハハハ……。」


 と、大声で笑いが止まらないカムイコロさん。私もすっぽんぽんにされて女の子の三人の中に放られた。口以外で動くのは目玉くらい。指は動くが力は入らない。私と大地の二人が反抗出来るとしたら、悲鳴を上げるのがやっと。


「うぐぅ~。」

「亜衣音ちゃん。気持ち良いんだ!」

「うん、足の裏が水虫になったみたい。きっと輸血で水虫になったんだ。」

「ほほう……すると頭の五円禿も、貰ったのかな?」

「亜衣音ちゃん。ここの皮膚病も貰ったんだね。」

「いや~……もう冗談はやめて~!」


 からかわれているのだとは理解は出来る。でも先ほどのカムイコロさんによる大地の弄ばれようを、目の当たりしたら私の理性も何処かへ飛んでいるようだ。その理性に反して身体は素直に従順にしている。大地もこんな境地でいたのだろうね、……ゴメンね!……大地。


「ウブなんだから、これなら遊び甲斐が出てきますね~。」

「うぎゃ、」

「口を閉じないとシャンプーが入りますよ。」

「目も閉じていないとシャンプーが入りますよ。」

「うぐぅ~、」

「うん、とても可愛い赤ちゃんだね!」

「いいもん、……(ありがとう。)」


 そうは言われても……とても気持ちが良かった。気分もホッかりとして心もウキウキだ。今晩からは穏やかに眠れるはずだ。


 カムイコロさんは浴室に入ってきて私を抱きかかえる。お姫さま抱っこで運ばれて、ベッドに広げられたタオルの上に優しく横たえられた。それからはぞんざいにタオルで身体の水気を拭いてくれた。何だか爽やかな刺激だと私の脳は受け取っている。最後はゴシゴシと頭を拭かれた。……痛い!


 ホッかりとした私の心を打ち砕くヒグマのひと言だ。


「亜衣音、また…………オムツかえ? ギャッハッハ~!」


 私の顔は瞬時に赤く染まり、必死に声だけで反論するのだが、感謝の念も欠かせていない。


「もう……カムちゃん。苛めないで下さいよ。お陰様で身体の調子も良くなりました。そんなモノは必要ありません。」

「ちょっと大地に抱かれていてくれ。ベッドを三つ調達してくる。それと布団と~パジャマもな。」


 嬉しいかな、カムイコロさんは私を大地の横に寝かせてくれたのだ。大地も嬉しいそうにタヌキ顔を作っている。……タヌキ寝入りなのだから、もう。大地の右手が……行動開始か!


「はい、よろしくお願いします。」

「あいよ、任せな!」


 ケラケラと笑いながらカムイコロさんは病室から出て行った。



「あ~面白かったね。また明日遊べるかな。」

「亜衣音ちゃん。カムイコロさんはベッドの調達ですよね。」

「うん、とても張り切って出て行きました。」

「早く戻って来て貰わないと、風邪を引いてしまいます。」


 今更ながら塩水で濡れた制服は着る気にもならない。


「へ~くしょん!」「クシュン!」「こほっ!」

「ねぇ皆、私のベッドに入らない?」

「クチャイもん。」

「く~!! イヤだ、まだすっぽんぽんの方がマシだよ。」

「わ~、酷~いよ皆。」

「絶対にヤダ!」


「……大地、……見てるよ!」


「きゃ~!」x3

「バコ~ン!」x4


「亜衣音、黙っとけ!」

「いや~ん、大地にぶたれた~~~……。」


 三人の女の子の悲鳴に続いて三回もぶたれた私。四回目は動けないはずの大地からぶたれたのだ。


 女の子の三人は濡れたバスタオルを身体に巻き付けたままだ。私を叩いた大地の手は……私の胸の上で止まっている。通常の大地なら鼻血ブ~!の光景だろうが、出せる鼻血は無い。モミモミも……。





「カサカサカサ……。」

「出た~!」


 病室では黒いモノが音を立てずに走り抜けるが、廊下にも物を擦る音が遠くより聞えてきた。カムイコロさんがベッドを押して、引き摺りながら運んでくる。藍が恐る恐るドアから顔を出して確認したら、パラリとバスタオルがほどけて床に落ちた。藍は大地の視線を感じていた……。


「きゃ~!」

「藍ちゃん!……どうしたのよ。」

「な、何でもないわ。ちょっとバスタオルを落としただけだからね。カムイコロさんが……もう凄いのよ、一度に四つのベッドを運んできているのよ。」

「翠と碧ちゃん。部屋のベッドを動かしましょうか。ぜ~んぶを横一列に並べて寝ましょうね。」


 藍は色々と口ずさむ事で恥ずかしさをごまかしている。


「おう、待たせたな。お前らの着替えも持ってきた。検査用の衣類だが、これしか無くてよ、尻がす~すするが堪えてくれ。」

「えぇ、これで十分です。ありがとうございます。」

「亜衣音のオムツも在るぞ!」

「いえ、結構です。」x3


「それを着たら寝具の調達に行く。乙女の三人とも付いて来い。」

「ラジャー。」x3

「へ~くしょん!」「クシュン!」「こほっ!」


 と、廊下からくしゃみの声が聞えてきた。目指すはリネン室の寝具だ。


「バレないって、……構わね~って言ってんだろう?」

「はい、暫くお借りしま~す!」


 四人は看護婦さんに内緒で倉庫を漁って布団類を持ち出してきた。病室に着いた四人から、私と大地の寝具も総入れ替えをさせられてとても嬉しい。


 私と大地の二人は窓際に置かれた。それから立花の双子と藍。廊下というか入り口側は警備を兼ねるから、カムイコロさんは通路にベッドが置かれた。


「もう疲れたから寝るよ。」

「おう、」

「は~い、」x4


「易き眠りを……。」


 私は輸血をして頂いた方々の顔の夢を見ていた。その内の一人は顔が真っ黒だったのだが、朝になると覚えてもいなかった。


 これからは長い入院生活が始まる。


 当初考えていた案は出し切りました。亜衣音は年内を病室で過ごします。学校で

も病院でも事件は起きていくでしょうが、亜衣音は皆から守られていきます。穏や

かだった過去の事が語られて行く予定です。出来ない時はサッサと方向転換をいた

します……。ご了承を!

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