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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第八章 あれもこれも穏やかな幕間(まくあい)

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第87部 母の深紅の花嫁衣装と……紅の曼殊沙華……


*)狙撃される


「ピシッ!」

「大地。今、変な音が聞えた!」


 十一時となり、数発の花火が上げられ音だけが大きく鳴り響く。


「うぐっ、……、」 「ドンドンドン!」 「ヒヒ~ン!……ブルル……。」 「バンバンバン!」「ガハッ!」「ヒヒ~ン!……ブルル……。」「うぎゃ~、」「ドンドンドン!」「クロ、落ち着いて、大丈夫よ、大丈夫だからね。」「ブヒ……。ブルル……。」「大地……?」


「くそ~、狙撃されたようだ。亜衣音は大丈夫か!」

「うん、腰に当たった。後一周をこのまま回れるかな。私たちの所為で桜花祭を中断させたくはないわ。」

「そ……だね、皆が楽しみにしているからな。半周だ、何とか……する。」

「うんお願い。……クロに当たってなくて良かった。」

「そ……うだな。何処から狙われたのかが分らない。」


「大地、汗が酷いよ。」

「亜衣音、済まない、二発も喰らった。俺が付いていながら……悔しいぜ。」

「うん、大地。……腰が熱い。お母さんの花嫁衣装が私の血で染まっていくわ。大地、テントの中に入って……、」

「あ、そうする、だが俺には無理かもしれない。」

「うん、……クロ、お願い、テントの中に急いで、クロ、お願い。」

「ブヒヒ~ン!……ブルル……。」


 クロは小走りになって、ブルル……と泣き出した。


「大地、もう少しだよ……大地、、、!」


 そのままテントに入ってしまう。大地は必死になって倒れそうな上体を維持していて、私も必死で大地を支えていた。



「きゃ~!」「亜衣音ちゃん。もうどうして突っ込むのよ!」

「こら~、亜衣音!……大地!?」


 私と大地の二人はテントに入ると崩れるように落馬してしまった。


「お、お~~い、大地くん! 亜衣音、どうしたんだ!」

「きゃ~! 大地くん! 亜衣音ちゃん。どうしたの?」


「お父さん。お母さんの深紅の花嫁衣装が……、台無しになってごめんなさい。」

「亜衣音、どうした。大地くんはどうしたんだ!」

「うん、撃たれたんだ。お父さんどうしよう、」

「きゃ~! 先生、血が、血が流れています!」


「大地を早く病院へ連れて行くから、お父さんは急いで追いかけて来てね。」


「亜衣音、どいうやって行くんだ。」

「うん、クロに運んで貰うわ。大地をクロに乗せて頂戴。」

「……これでは出来ないよ。背が高いから無理だ。」

「うん、分った。私が乗せる。だからみんなはテントが飛んで行くから出て行ってね。……早く、時間が無いわ。」


「お~い、全員テントから出てくれ。澪、大丈夫か!」

「は、は~はい、大丈夫ですが、亜衣音ちゃんは?」

「このまま病院に向かうから、駐車場まで走ってくれ!」

「徹さん、どうしよ~。」


「クロ、私と大地を乗せて病院の入り口まで跳んで頂戴。」

「ブヒヒ~ン!……ブヒヒ~ン!……ブフッ!」

「ゴ~~~!」「バ~ン!」「きゃ~!」「テントがぶっ壊れたぞ。」

「どうした、何があった…………、」


「あ~、テントは放置して構いませんから、……。あ~~~美歩ちゃんも来てくれないか。」

「は……い、教頭先生。」

「この車だ、多いか。徹くんは前だ。奥に澪、美歩ちゃん。未来ちゃんは~二人の膝の上でいいか、」

「は、はい、構いません。急ぎましょう。」

「あ~~~~~、」


 お父さんは舞い上がってしまい、車の発進に手間取った。それでも何とか発進できた。学校から病院には車で五分程度だが、その五分は長く感じられた。




*)病院はパニック状態



 病院の玄関前に突如として現れた黒い馬に驚く人も居たが、多くはなくて少し安堵した。誰もが急に走って現れたとしか思ってなくて、助かったものだ。


「クロ、病院の中までお願い。」

「ヒヒ~ン!……ブルル……。」


 クロは落ち着いて病院のエントランスへ入った。前回同様に大騒ぎになってしまう。


「きゃ~! また黒い馬が来たわよ。急患なの~?」「婦長さん~!」

「誰か、大地を助けて……お願いします。」「おい、花嫁が落ちたぞ!」

「おい、どうした、きみは……、」

「大地を助けて、銃で撃たれました。だから早く……。」

「分った、」


「おい、救急搬送~、急げ!」

「はい、」

「処置室は……二号室だ!」

「はい、」


 救急搬送されて行く大地の姿を私は見送った。


「これで安心出来るか……、クロ、帰って、お願いね……。」

「ブヒッ! ブルルル・・・。」


 クロはこのエントランスより消えてしまうが、もうどうでも良かった。こんな馬が消える事なんて誰も信じないし、群衆の注目は私たちに集まっているから今なら大丈夫よ。


「先生!……先生~、この花嫁も出血しています。意識がありません。」

「え”! なんだって……この子も同じ二号室だ! 急いでくれ!」

「はい、」


 私の着ている花嫁衣装の帯は、紅の曼殊沙華まんじゅしゃげのように鮮やかな色が咲いていた。


 大地も私も意識が飛んでしまった。お父さんは先に祖父に電話して狙撃された旨を連絡した。自宅のお母さんにも連絡して、お義父さんが迎えに来るからと、指示していた。杉田家の五人と明子姉さんの三人も智治お爺ちゃんの車で病院へと来てくれたそうだ。


「すまんが、早く服を脱がせて傷口を出せ。」

「はい、」

「い~や、これでは全身の検査も必要か。」

「花嫁には腰だけです。花婿は背中と脇腹に二つの合計で三つです、先生。」


「先生。麻酔……?」

「麻酔は……必要ない。もう待てないだろう。」

「はい、」


「先に花嫁の傷口洗浄、花嫁が一つだから先に終わらせる。その間に洗浄を済ませておけ。花嫁は直ぐに縫合出来る。済まないね結婚式だったんだろうが傷は残さないからね……。」

「終わった、事後処置はいつものようにな。」

「この花婿も大した傷ではないようだが、でもどうして意識がなくなる。」


 集中治療室へ運ばれて二人とも傷は大した事では無いと判断されたのだが、共に脈拍は衰えて酸素吸入の事態にまでなった。それでも呼吸は浅く、心拍数も少なくなりつつあった。二人揃って輸血を受けた。


「う~、これはなんだ、どうしてこうも回復の兆しが出ないんだ。弾創は多くても弾は小さい。」

「先生。心電図の振れが段々と小さくなっています。」

「う~~輸血だ、もっと血を持って来い。」

「ですが先生。O型の血液しか利用が出来ないのです。もうこの二つのパックで終わりです。」


 先生は少し考えて、


「家族に頼もうか。もう猶予は無いはずだ。全員をここに呼んできてくれ。」

「はい、直ぐに。それと血液検査も準備しておきます。」


「あ~、そうだ、これでは二人を死なせるよりも一人でも助けようか。この子から男の子に緊急直輸血を行う。準備するから二人が手伝ってくれ。」

「先生。そんな……余りにも無謀です。」

「いや、この子には不思議な力がある。この前の瀕死でもう助かる見込みのないこの男の子が蘇っている。だから直輸血を行う。」

「は、はい。」


 こうやって再び大地に私の血液が送られた。僅かしか送れないというもどかしさが先生を苛立たせている。


「先生。お姉さまの血液が利用出来ます。お父さんは娘さんにだけしか使えません。」

「え? お姉さんは二人に使えるのか、それならば、娘に三百ccと、男の子には百ccを輸血をしてくれ。お父さんの輸血は輸血パックにして、終わり次第に点滴方式で与える。あ、あ、あ、親父だろう、この際だ、五百ccで頼む。」

「はい、急ぎます。」


「これで落ち着いてくれればいいのだが。まだまだ輸血は必要だろうが、どうする。」

「あのう先生。また家族の方々がお見えになられまして、今、血液の検査を行っております。」

「それはいい、いいぞ。適合する人から四百ccを抜いてくれないか。同じく輸血パックを作っておけ。」

「急ぎます。」


「この弾はなんだ。一つの穴が空いているのが気になるな。と、これもか、全部が穴があって中に毒を仕込んだとしか思えん。それに銀の弾丸って、まさかね、ドラキュラや狼男でもあるまいに。」


 このドクターの見立ては間違っていなかった。亜衣音の母や姉妹、それに本人は元より、産まれた赤ん坊の血液を集めて研究して、開発された何某なにがしかの有毒成分が仕込まれていた。だが解毒はできはしないのだった。


「俺は暫く二人の血液を調べてみる。順次輸血を続けてくれないか。」

「はい、輸血の間隔は如何致しましょうか。」

「女の子は脈が強くなればそれまででいいが、男の子は脈が強くなるまで続けておいてくれ。」

(同じじゃないか、バ~カ!)

「なんだ?」

「いいえ、そのようにいたします。」


 ドクターは自分の研究室で顕微鏡を覗いて血液の成分を見てみた。


「輸血を続けて血が薄く、いやこの場合は毒素が薄くなる方法しか残されていないのか。」

「こ、これはどうした事だ、血液が解けていく。うわ~これでは手の施しようが無いではないのか。え、え、え、残った血は輸血の分なのか。……う~ん。」


 ドクターは走って二号処置室に急いだ。


「どうだ、容体は!」

「はい、依然安定しません。脈は細るばかりでです。」

「う~、やばやばやばい、どうする。血液が不足してどうする。」


「あ、あのう~先生。馬事公苑から沢山の応援に来て頂きました。直ぐに血液の適合する人を探します。」

「もう、全員を入院させても良いから、血をいっぱい抜いてくれ。二人とも全量を入れ替えにする。」

「は、は~い……、」


 看護婦は走りながらに返事をしていた。それ程に緊急らしいのだ。多数の若い男性の血液が次第に多くなると脈も強くなりだした。本当に危機的状況が改善し出したのは、もう夜中になってからだったという。


 私と大地は深い眠りの中で、お父さんやお母さん。それに桜子お婆さまと智治お爺ちゃん。澪お姉さまにホロお婆さまの夢を見ていた。大地はどうだろうか。私の可愛いお乳の夢であればいいな! だったらとても嬉しいな。


 夜明けと共に全身から流れる汗の量が半端なく多かった。私は、ハズいのだがお漏らしもしたらしい。勿論、誰も教えてくれないのだが、何だかそのような夢を見ていた。大地は、私の件があってホースが取り付けられている。


 私と大地の流れる汗を絶え間なく拭ってくれたのが、美歩だった。親の言う事も聞かずに、美歩は寝ずの番をして看病をしくれたと聞いた。朝からは未来と藍、それに立花の双子も看病を申し出たのだが、お父さんは一年生と採血を免れた騎士の方に依頼して、馬術部の曳き馬だけは続けさせたという。だが、未来だけは残り看病してくれた。午後からはそれぞれに入れ替わっていたらしい。私と大地は三日三晩眠り続けていた。


 私は足の痒みで目を覚ましたので、悍ましい事を考えた。


「お父さんって、水虫だったよね。足が痒くて堪らない。」

「あ、亜衣音ちゃん。眼が覚めた……良かった~、もうこのまま起きないのかと心配……わ~エ~ン……、」

「美歩ちゃんね、ありがとう。うん、とても心配掛けたわね。もう~私ってどうしたんだろうね……? あ、大地はどうなったの?」

「うん、まだ眠っています。まだ毒が抜けないのかもしれません。まだ流れる汗が多いのですよ。」


「大地は何処? 横で寝ているのかな。」

「はい、私、邪魔だからどいているね。ほら、私の後ろだよ!」

「……大地。美歩、起こしてくれないかな。大地の顔を見たいのよ。」

「はい、奥様。直ちに~、アハハハ……。」

「うん、ありがとう。……大地、元気になってね。弾を多く撃たれたのかな。」

「それはお医者さまから聞いて頂戴ね。もうすぐ見えるはずよ。」

「ありがとう。立たせて……お願い、大地の顔に触れさせて……、」

「うん、後でね。お父様にお願いしてよね。呼んでくるから待ってて!」

「あ、うん、お願い、……ありがとう。」


 美歩は未だにクスンクスンと鼻水をしゃくっていた。それ程私の身体が臭っているらしいのだが、私本人としては鼻が麻痺しているから分らない。


 悔しいかな、急いで入室する先生も顔を歪めていた。マスクで顔を半分隠していても、眼がモノを言っていた。


「やっと目覚めたな、良かった。それで何処か悪いような処は、違和感は無いかな。少し心音を聴くが……我慢できるかな。」

「先生。私が許しますので、思いっきりお願いします。」

「分った、ちょっと冷たいよね……うん、背中を少し……うん。大丈夫だ。」


 私は素直に看護婦さんから胸を曝け出されていた。いつもは拒否していたのがウソのように大人しかった。


 先生は美歩に向かって語りかける。


「君には思いっきりお世話になってしまった。病院からのお礼だ。三食昼寝付きで入院出来るようにしておいた。君も早く休んでくれないか。然もないと、君も服を脱いで貰う事になるのだが?」

「え~、そうさせて頂きます。もうすぐ交替になりますから休ませて頂きます。」

「そうして貰えると私の首が飛ばなくなるよ。」

「あ~もしかして父がそう言っているのですね?」


「違うよ、他にも居るのだが秘密だね。血圧測定が終わったから白川さんは、」


「は、はい、大地はどうなりますか。」

「この後直ぐに輸血する。済まないがまた君の血液を直接この男の子に輸血させて貰えないだろうか。この前の奇跡を信じたい。」


「先生! 絶対に助けて下さい。私からは最低でも六百ccは抜いて構いません。よろしくお願いします。」

「そうなんだ、それ位は欲しい。だから採血が終われば君にも再度輸血を行う。なに、大丈夫だからね。」

「はい、お願いします。」


「先生。亜衣音ちゃんと大地くんのベッドを並べて頂けませんか?」

「勿論だとも。この後直ぐに横付けして作業に掛るからね。」

「その後もお願いします。そうすればきっと二人は良くなります。」


「君は家族を呼んできてくれ。二十分程度で終わる予定だから廊下に待っているようにしてくれないか。」

「はい、大地くんをよろしくお願いします。」


「先生。もう力が出ません。少し休ませて……く……、」

「そうか、もう少し頑張ってくれ。」


「いつもの点滴とブドウ糖の点滴の準備を頼む。」

「はい。今、応援が来ます。」


 それから六人の看護婦さんらが来て、私のベッドを大地の横に付けてくれた。とある看護婦さんは私と大地の手を繋げてくれていて嬉しかった。


 救急搬送用のベッドの上に移された大地は、ベッドの足が畳まれて床上三十cmの高さに置かれた。こうして高低差を付けて私の腕から大地の腕へと輸血される。とても嬉しい瞬間なのに残念ながら意識は途切れたままだった。


「これで終わったか、大地くんをベッドの上に戻す。……せ~の、一,二,三!」


 大地は瞬時にベッドの上に移された。


「さ、今度は貴女の番ですからね。またお手々を繋ぎましょうね。」

「そうしてくれ、輸血の次はブドウ糖の点滴を頼む。」

「はい、承知致しました。」


 父や姉達が未だに入院している訳は、増血剤を打たれながらも採血が続けられていたからだ。お母さんは未だに動かせないらしい。それはそうだろう、我が娘の為ならば命すら投げ出せる母なのだから。でも、無事に私が回復するまでは絶対に死なないとも言っていた。ならば三段論法で死にたくはない。


 車椅子に乗ってお父さんが来た。美歩が押してくれていた。澪お姉さまも来てくれた。先生ら処置の内容が説明されて、私は左手を父から握られていた。お父さんの温もりと大地の温もりを感じながら、直ぐに疲れて寝たようだ。


「亜衣音ちゃん。幸せそうですね。」

「あぁ……とても穏やかな顔だな、もう安心出来るのか、良かったよ。」

「お父さん。大地くんを見て下さい。ほんのりとベニが差してきましたよ。」

「美歩ちゃん、私たち家族に代わって看病して頂いた、ありがとう。」

「ううん、私は亜衣音ちゃんに助けて頂きましたから、今度はお返しです。」

「美歩ちゃん、ありがとうね、お陰で二人とも生き返ったのですよ。」


「大地くん、早く目を覚まして下さいね。」




 大学病院の一階の窓は全てに施錠されていて、裏口は閉鎖。出入り口はエントランスのみにされている。この待合室に一人の女が常に警備していた、屈強なカムイコロさんだ。血液が不適合で警備を買って出たという。私服の警官もまた配備されている。



 私は輸血と点滴のお陰か、お昼過ぎに目覚めた。そしてこの日の夕方、大地が目覚めた。良かった……大地。


 私に魔法の力が無くなった、そう感じた時に大地が目覚めたのだ。


「大地、おはよう、」

「亜衣音か、情けない顔をするな。お前……大丈夫よな。(胸……あるよな!)」

「うん、私は今朝起きたのよ。……もう大地のお寝坊さん!

                     あ~! 私の胸を見てるのね。」

「あぁ、すまないな。つい……いつもの癖かな。」

「私は普通の女子高生になっただけだから、これでいいのよね。」


「へ~お互い、何処を心配しているのかな?」

「私、後で家族の方々に知らせてくる。それと一年生の二人はもう帰ったからね。明日来たらお礼を言うのよ。」

「うん、ありがとう。美歩。」


「未来……、」

「うん、なぁに? 亜衣音ちゃん。」

「ありがとう。未来は随分とHななね……。」

「もう誰かに毎日のように当てられていたからだよ。ならば少しは自重せよ!」

「うん、でも出来ない。私も大地の赤ちゃんを欲しいな。未来、……代わりに産んで?」

「いいよ、任せて!」



 ドクターも直ぐに駆けつけて、初見で大地の安全宣言を受けて私も喜んだ。


「今晩からまた例の……。」

「うぎゃ~、鳥と牛と豚のレバー料理! うぎゃ~です。」

「アハハ、冗談ですよ。普通の流動食ですので、全部を無理してでも押し込みますからね。」

「先生。お代わりはありますか。」

「わぉ、それはどうかな~、」


「先生。私があ~んさせて食べさせます。」

「お、いいね~……でも二人して大地くんを狙っているのか。花嫁に呪われても知らないぞ!」

「未来、じゃんけんで決めようよ。」

「いいわよ、邪険でポン!」

「あは~未来ちゃんの負けだね。大地くんを頂きだね。」

「いいわよ、私、亜衣音ちゃんが好きだものね。」


 私は見ていない藍と立花の双子が気になって尋ねた。


「ねぇ未来。藍ちゃんはどうしたの? それに双子ちゃんも、」

「美歩、藍ちゃんは翌日から見ていないよね。」

「あ、そう言えばそのような気もする。文化祭二日目の夕方には亜衣音ちゃんのお見舞いに来ていたよね。」

「うん、居たよ、間違いない。明日担任の先生に聞いてみよう。」

「それで双子ちゃんは?」


「うん、消えた。それも亜衣音ちゃんが倒れた後には居なかったと思う。」

「そんな、攫われたのかな……イヤだよ、どうしてなのよ。」


 私には安息という言葉は無いのだろうか。


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