第84部 私のクラスメイト……雨宮 藍
これは私=雨宮 藍だから亜衣音が知らない事だ。
*)私は雨宮 藍……主役よ!
私が両親より離縁された後の事だ。私は亜衣音ちゃんのお姉さんや妹さんが誘拐されたのは、私の父によるものだと説明して、お詫びをして大泣きをした。それで亜衣音ちゃんのお父さんが私にある提案をして頂いたのだ。ううん、他には亜衣音ちゃんのお母さまと澪お姉さまとホロお婆さまに協力を頂いているの。
頂いているというのも変ではない、まさに現在進行形なのだからね。感謝! 私は両親から放られたのだから身寄りは誰も居ない。だからアパートを借りる事すら出来ない。今の家賃さえ直ぐに払えなくなり、追い出されてしまう処で未来に助け船を出して貰って、バイト先も見つけられた。でも、未来はお嬢様で実務は皆無……出来ない、いや知らないのだった。そう、保証人が無い私にはもう先には進めなくなっていた。だからね、
「藍ちゃん。考えたんだがご家族は蒸発したんだよね。」
「はい何処に行ったのか、私には教えてもくれんとよはがいか~。」
「え”……!」
「あ、ごめんなさい。それ以前に……恥ずかしいのですが、その生活費は先月に貰った三ヶ月と少ししかありません。もう完全に縁を切られました。」
「それは両親の事を私たちに話した所為でこうなったのでしょう?」
「そうかもしれませんが、私の父が悪い事をしていると考えて、ず~っと悩んでいました。でも、亜衣音ちゃんの産まれてくる妹さんのお話を聞いていましたら胸が苦しくなって、もう学校から逃げ出したいほどになってしまいました。」
「だったらこうしようではないか。私たち夫婦が後見人になってあげよう。学費は交渉済みだから特待生扱いで無料だが、その他の費用は私が払ってあげようどうだろうか。学校は辞めずに亜衣音の傍に居てはくれないだろうか。亜衣音だって事件の事で別れたくはないだろう。逆に知ったら悲しむと思う。あれは
あれでとても心優しいからね。」
「う~……あ、ありが……す。」
私は有り難い気持ちで胸がいっぱいになって、私は殆ど泣いた事すらない気丈な女だと思っていたのだが、シクシクと恥ずかしげも無く泣いてしまった。
「先生、私は働いて生活費は稼ぎたいです。勿論、馬術部は辞めません。勉強も頑張ってみますので、もう少し見ていて下さい。」
「そう言うのであれば成績をみておくよ。もしそれで下位に落ちたら、その時は遠慮なく口出しをさせて貰うからね。これが最大の譲歩だよ。いいね。」
「はい! とても助かりますので、よろしくお願いします。」
これが六月くらいのお話で、その後の七月には拉致されて池の鯉のエサにもされかけた。十七歳の女子高生なんて人に頼らなければ生きては行けない。
だが、私の決心は鈍ってしまう。成績は落ちる一方だし、お家賃を払う事で家計は火刑のような火の車になった。
「藍ちゃんの生活費だけれどもね、悪いとは思ったが喫茶店のマスター訊いたよ。あんな金額では生活はとても無理だ。近々お金が入る目処が有るから教頭に任せてくれないか。」
「え、そんな事は出来ません。ご迷惑です。それに亜衣音ちゃんや大地くんの生活もありますし、ご自宅では妹さんが四人もでしょう。」
「アハハハ……。俺の金では無いから心配は要らない。だが、たぶん大金になるかとは思う。だから無条件ではないぞ、けっしてないぞ。使い道を誤らずにいたら取り敢えずはそれで良しとすしようか。」
「はい、ありがとうございます。」
と、入金の事項は聞けずに終わった。それから直ぐの文化祭の前日に未来ちゃんと会談があったようだ。これは後での想像でしか無かったのだが。
恐らくはこうだろうか、
「未来ちゃん。亜衣音の親としては大変申し難いのだが、これらのバザーの商品を、その、高い金額で買っては頂けないだろうか。私からのお礼としては校長への学費の免除の依頼しか出来ない。どうだろうか。」
「先生。そのお金の使い道次第ですわ。勿論、こんなお宝は私にしか評価が出来ません。だから惜しげも無く出されるのかと思っています。」
「すまない。じつは藍ちゃんの生活費に充てさせて貰いたいのだ。私だって家族が多くなってしまってな、それに馬の維持費も嵩んでいる。正直なところ俺にも藍ちゃんの生活費に回せる予算が無い。どうだろうか。」
「まぁ……先生。とても嬉しいです。私はもしかしたら藍は学校を辞退するのではないかと心配しておりました。藍の為に私も父に頼んでみます。」
「あ~助かるよ。」
「いいえ、私のお金ではありませんのが、少し心苦しいでしょうか。」
「いや~学費免除も同じだよ。全部亜衣音の国体優勝のトロフィーと賞状を引き替えにして校長を説得したからね。それで校長室へ、献上させたのだからね。俺も偉くはないんだよね。」
「まぁ、先生ったら可笑しいですわ……。」
「ありがとう。」
「お芝居、ありがとうございます。役は、教頭先生・白川穣。未来・明神未来……以上のお二人でした。」
私の機転は早く訪れてくれた。翌日の文化祭だった。予想外の出し物があった。亜衣音ちゃんが、お母さんと澪お姉さまの依頼を完全に忘れていた事があった。それは文化祭当日の朝、
「亜衣音。今日のバザー会場は出来ているよね。澪も張り切っているのよね。」
「お母さん。忘れていたわ。バザーの商品はもう売り切れて開催は無いよ。」
「それ、どういう事よ。」
「うん、未来が全部買い取る事になったのよ。買い取りの金額は会ってからね。」
この会話を聞いたお父さんが慌てだした。
「亜衣音、沙霧と澪さんがバザー会場を手伝うのは本当か!」
「えぇ、一人しか出来ないから交替でするからと、言ってました。」
「沙霧、そうなのかい。」
「えぇそうですよ。とても楽しみにしているんですよ。残りは私と澪で売りますが、亜衣音もお手伝いをお願いね。」
「お母さん。もしかしてまだバザーの商品があるの?」
「そうよ、妹たちの分が在るのよ。これも直ぐに完売かな。でも、未来ちゃんには売らないからね。」
「へ~そうなんだ。きっと未来は驚くだろうね、お父さん。」
「そうだな……。」
「あ~、そうだ沙霧。澪さんを呼んで来てはくれぬか。バザーの商品の代金の件だな、相談がある。」
「いいわよ、楽しみだな、ワクワク……。」
「あ~~沙霧。俺も行く。」
「そうね、亜衣音ちゃん。娘をよろしく!」
「え~、妹だよね。」
「どっちだって、同じじゃん!」
と、私が知らない処でバザーの商品の代金の、お母さん姉妹の金額が決まっていったのだ。各三万円だそうだ。お父さんから事情を聞いた姉妹は、次のバザーに期待を掛けるのだが……。
この品物を見た未来は、「後日の支払いでお願い、全部売って下さい。」と懇願していたが、もうお金は無い。無論今朝の百万で父からは打ち切りにされているから、数体の人形を買って痕はもう指を咥えるしかなかった。
「これ、お幾らでしょうか。」
「貴女、藍ちゃんね。そうね、十円でいいわよ。……未来ちゃんはダーメ。」
「うぐぅ~。」
「妹の真似をしてもダメだからね。四十円でいいわよ。」
「買った! 全部で五百分を頂戴。」
「はいはい、毎度~あり~。」
私は手足が動く人形を見てピーンと閃いたのだ。こんな人形はまだ見た事が無いので創ろうかと。それからの私は倹約して多くのお金を残した。だが大学の入試は無しの、関東農業大学農学部へ持ち上がりを、教頭先生へお願いして実現した。同じく学費さえも免除して頂いたのだ。嬉しかった……。
私はとても頼めた内容では無かったが、アイン・クラフト株式会社の立ち上げを、勢いで教頭先生にお願いしていた。
「うぎゃ~藍ちゃん。会社は一人では出来ないよ。最低でも五人ほどは必要かな。……チーン! 何処かの休眠中の会社を買い取ろうか。これならば早い。藍ちゃんも十八歳を過ぎたしな。」
「え”! 出来ますか。予算は全部で六十万ですね。これから製造させる為の資金も必要ですからお時間が掛ってでも是非ともお願いします。」
「そうだね……チーン! 先にそのフィギュアの人形を創らせて売ったらいい。その利益でアイン・クラフト株式会社を設立しようではないか。」
「わ~、ありがとうございます。亜衣音ちゃんには秘匿ですよ!」
「分った、そうしよう。俺も取締役になるが、いいかい?」
「はい、奥様もホロお婆さまにもお願いします。」
「代表は、雨宮 藍。決まりだ。アイン・クラフトの名前だがもしかして?」
「はい、亜衣音ちゃんからです。それにクラフトは魔女ですね。亜衣音魔女! ですわ。」
「こりゃたまらん!?」
こうして、アイン・クラフト株式会社 代表 雨宮 藍が誕生する事が決まった。最初のロット生産は試行錯誤だったから、大学は殆ど欠席。年末にはもうバカ売れ状態のヒット商品になって、翌四月には会社設立が出来た。
これは私しか知らない事だよ。だから私のお友達には内緒にしてね。by藍。




