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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第八章 あれもこれも穏やかな幕間(まくあい)

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第81部 私の悪阻騒動……


「大地、私……悪阻つわりが出てきたわ吐き気がしてきた。」

「おいおいおい、大丈夫かよ。」

「保健室に連れて行って!」


「え”……?」

「亜衣音、……ウソでしょう?」

「う……本当よ、苦しいわ……。」


「未来、少し休んで来るからね……、」

「え、そんな、……白川さんが、」




 1970年10月18日


*)私の悪阻騒動……


 私は苦しそうにして床に膝を突いて大地の脚にしがみつき、眼には涙を浮かべて半分泣きそうな顔をした。


「立てるか!」

「うん、恥ずかしいけれども抱っこして欲しい。」

「それだと見えるが、いいのか?」

「いいわ非常事態よ。顔を埋めるから平気、それに大地は廊下の窓側を通ってくれれば見えないよ。」

「解った、少し目を閉じていろ。」


「あ、あ、あ、衣音。私が付いて行くわ、」ミク

「未来、来ないで!!」


 私は強い口調で未来の申し出を断わった。


「……、」

「……白川さん……。」ミホ


 大地は私を立たせる事無く、しかも膝を突いていた状態で私を軽々と抱き上げる。同時に私は顔を大地の胸に当てると直ぐに女の子たちの黄色い歓声が上がった。


「きゃ~!」x?

「お義父さんはどうする。」

「後で来ると思うからいい。大地は私の傍にいて!」

「分った。」

「亜衣音……。」ミク


 私のか細い声を大地はあの喧噪の音の中から拾ってくれた。大地はひと言、


「どけ~!」


 私は無事に保健室へ送られた。教室の者はまだ少ないが今からが一番多くのクラスメイトたちが教室に入ってくる。もう噂は隣のクラスにも伝播したかな。しかしながら職員室の担任の先生に報告しに行く者は居ない。見て見ぬ振りがクラスに蔓延るのは昔も今も同じか。


 職員室では校長室への闖入者で騒ぎが現在進行形だから、授業が始まるまでは先生方には知られなかった。


「未来~……何よこの騒ぎは?」

「藍ちゃん、亜衣音が悪阻で吐き気がするからと、大地くんを連れて保健室へ行ったのよね。」

「未来は付いて行かなかくて良かったの?」

「それがねどうしてか亜衣音から断わられたの。だから、」

「ふ~ん亜衣音ちゃん、どうしたんだろうね。」


 それから立花の双子も登校してきて話しに加わる。不思議な事に、私は席に居ないのにいつものような私を囲んだ四人のお尻が並んでいて習慣とは恐ろしいものだ。美歩はいつの間にか自分の教室へ戻っていた。  チャイムが鳴った。



 保健室では、


 私は悪びれた顔の笑顔を作って大地に謝る。


「大地、ごめんなさい。」

「そうか仮病だったか。朝からどんぶり飯を喰うから可笑しいとは思ったぜ。だけどいいのかい?」

「仮病だから大丈夫よ。私の家では六人もの赤ちゃんが産まれたから、つい、悪阻と声が出ただけだと説明するわよ。」


 保健の先生は未だに空席のままだ。生徒の急病はクラスの担任の先生が担う事になっているが、女子に関しては任意の空いた女性の先生に委託される。


 お父さんは校長室で接客中で、私たちの事が知らされたのが授業開始後の十五分後位だった。チャイムがなって暫くしてお父さんが保健室に来た。プラス男が二つ……。


「亜衣音……本当か!」

「お父さんごめんなさい。……あ、美歩のお父さんも……、」

「そう立花さんだ、何でも今朝の新聞を読んで見えたのだが、お前たちは心当たりがあるのかな。」


 うわ~美歩のお父さんが居たら事情が話せない。予定外の番狂わせ、野球で言えば大きな空振りの三振だ! どうする私。黙秘……、


「亜衣音、黙っているのは肯定した事になるのだがな。どうした。」


 私は横に立つ大地を見上げる。もちろんだよね大地も混乱するよね。


「お父さん。お水を下さい大地、お願い。」

「いいぜ、バケツでいいか。」

「うん、コップとバケツで!」


「亜衣音、本当のようだね。どうする学校はまだ半分も残っているよ。」

(あ、お父さん、話しをずらしてくれているのね。)

「そうなんだ~……う~!!」

「おい大丈夫か、朝食い過ぎただけ……いや食い物が何か悪かったのかな。」

「亜衣音、水だ。」

「コクコクコク……楽になったわありがとう。」


(大地、もうこうなったらウソを通すわよ、大地をかけての戦争よ!)

(いいぜ付き合うよ。)

 私たちの密談が成立した。もう、どうにでもなれ~の状態。


「お父さん。ごめんなさい大地の子が出来た。どうしよう。」

「ん~白川くん。これは何ですか、遺憾ですわ。」


「なぁ~教頭先生。大地くんは養子なのだろう? 直ぐに堕胎させなさいそして美歩と婚約させてくれ。」

「え”~~!?!?!」x2


「立花さんそれは出来ません。ましてや孫が出来たとなるとですね、私としても自分の養子にしてまでも、その亜衣音には産ませます。どうかご容赦下さい。」


「ちょ、ちょっとお父さん。大地を婿養子に出すなんて酷いわ!」

「亜衣音、これは立花さんからの一方通行であって俺は断わっているのだよ。立花さんの美歩さんが大地を気に入ったからと今朝両親へ言ったのが始まりで、直ぐにご両親が勝手に決めてしまわれた~だな。」


「お父さん落ち着いて!」


「亜衣音、今朝の美歩の様子が可笑しかったのがこれだったのかよ。」

「ウゲェ~……そうみたいね。」

「まだ芝居を続けているのか!」


「美歩のお父様、私は大地に嫁ぐつもりでおります。きっぱりとお断りさせて頂きます。それに大地だって私を貰うと言ってくれています。」


「いや、まだ先は分らん。費用は出すから別れてくれないか。」


「ダメです。」x3

「なぁ白川くん。ワシとしてはだな、う~……。」

「校長、申し訳ありませんが退職してでもこのお話はお断りさせて頂きます。」


「教頭先生……今日は引き下がりますが、後日に改めて……まいります。」


 嫌悪な表情で帰宅する美歩のお父さんでは無かった。丁寧に頭を下げてから校長先生を校長室で待つと言って退室された。美保のお父さんはまた来るからと語気を強めて帰っていかれた。あ~台風の再来とか勘弁して欲しい。


「お義父さんありがとうございました。」

「お父さん。うそついてごめんなさい。」

「白川くん……。」

「校長先生申し訳ございません。せっかくの寄付を無駄にさせてしまいました。深くお詫び致します。」

「お父さん。美歩のお父さんは幾ら提示したのですか、」

「高校に一千万。」

「ふ~ん、」

「俺に年俸二千万。」

「へ~、」

「大地には全財産!」

「ほぇ~大地……離縁しよう!」

「バコ~ン!」x2

「亜衣音のアホ!」x2

「ギャバ!」


 美歩のお父さんは結局一千万の小切手を条件付きで置いていった。置き土産みたいな娘を置いていくのだ。


 AクラスよりEクラスへ美歩が編入してきてもう驚きなんだな。机ごと引っ越ししてきた美歩の居場所が暫く決まらずに難儀している。


 それから一週間後にまた美歩の両親が学校に来て、美歩抜きで話し合いの場が設けられて私と大地は困惑する。


「大地くんを下さい。」

「私は亜衣音さんに貰われた身ですから今更出来ません。」


 これは挨拶のような会話で重きはない。本題は、


「大地くん亜衣音さん……ありがとう。お陰で娘の夜間非行が収まりました。このお礼は何としたら良いのか判りませんが先にお礼だけは申させて頂きます。今後とも美歩をよろしくお願いします。」

「そうですか、私たちには何の事か分りませんが良かったですね。」


「もう一つお願いが御座いまして、美歩は生徒会副会長を辞任いたします。後は馬術部の皆さんにお願いします。鍛えてやって下さい。」

「え”~~!!」x2


 もう平和なビキニ環礁に原子爆弾を落とされたようなもの。海の魚は狂い死になるのと等しい。未来にはどんな仕返しをしようかと思い悩んだが、どのみち同じだっただろうという私と大地の結論に達した。


 ちなみに、海の魚とは私だな。守れよ……大地。そう言えば学校の掲示板に、生徒会役員候補生募集という張り紙は本当だったのか。もうスッカリと忘れていた私だった。


 これ以降から高校と馬事公苑で度々大型バイクの目撃情報が上がるようになる。美歩の幼なじみの欣ちゃんが様子を見に来るようになった。



 未来は私が教室に戻ると……ひと言、


「ごめんなさい。」


 と言った。私もひと言で返す。


「うん、」


 だが二言目が出てきた。


「亜衣音、いつなの?」


 驚いて未来の顔を見たら違った、直ぐ横にもう一つの顔があった、藍だ。


「藍、冗談だからね。」

「いや、産んだがいいよ!」


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