第69部 港区の倉庫街
1970年7月15日
*)இஇஇ……亀甲縛り?
この日は初めてカムちゃんに私の奇跡を見せた日だった。それからは毎日の散歩と言いながら母の病室に足を延ばすの。
自宅の修理兼防犯の強化が終わって私が退院した後は、ホロお婆さまが夜に宿泊に来ている。カムイコロさんはやや重傷気味で特別室にてお休みで、カムイコロさんが動けるようになればホロお婆さまと交代かな。このホロお婆ちゃんは何と言えばいいのかな、神出鬼没、そ、これがピッタリするよね。いつの間にか居なくなっていつの間にか現れてくるのだから。「ホ~ッホッホ~只単に忘れ去られているだけじゃよ」というのだが本当かな~。
私はカムイコロさんにお礼にと毎日ハンバーガーを買って病院へ行った。それからお母さんの娘、私の妹の二人へ授乳を行う。この時ばかりは興味半分バーガー食べたしで、母の病室に詰めるカムイコロさんは眼を丸くするのはいいとしても、カムイコロさんは何処が重傷なのか理解出来ない。お腹に銃創があるにも拘わらずに沢山のコーラを飲んではお腹の銃創からガスを出しているし、ハンバーガーと三度のご飯は腹一杯になるまで食べるのよね。勿論ハンバーガーの買出しには大地が走って買いに行くのよ、行かせるの間違いかな~?
私は恥ずかしいのでカムイコロさんの前では赤い顔になるが、明子姉さんはそんな私を眺めて授乳しているし、もういっもニコニコと笑っているのよね。
明子姉さん曰く、こんな美味しところを見ているとお乳の出が良くなると言うのだから、私は何だかご飯のおかずにされた気分になる。
初めてカムちゃんに私の奇跡を見せたんだ。だってハンバーガーを食べて腹ごなしにと母の病室に付いて来たんだからね。
「亜衣音、いつ子供産んだんだ。」
「やだね、お母さんよ。」
「亜衣音が母だと言ったんだがな、いつ産まれた。」
「バカ・グマ!」
「いや俺は信じられない。クマだって子を産まないと乳は出ないぞ。あ~大地。お前、禁断の種付けをやったな~? このう~が!」
「いやいや俺はまだだよ、学校もあるし……。」
「カムイコロさん、大地で遊ばないで下さい。バーガーは買いませんよ。」
「お金ならさ、渡すからお願いします。」
「はいはい、お爺ちゃんからの見舞金よね、それは頂けないわ。」
「俺が貰うから大丈夫だぜ。」
「ウフフ……。」と笑うのは明子姉さんだ。
「亜衣音、クロの様子はどうだい。今回はバァ様の偵察は無いのか。」
「それがねホロお婆さまはクロの世話をしながら娘ッ子の世話をお願いしているの、でもでもクロの様子はいつもと同じなんだって。」
「娘ッ子の世話? 誰だい。」
「立花の双子なのよ。馬術部は解散したのだけれども双子ちゃんは毎日行っているのよね。どうも退部したくないみたい。」
「ほ~……それはそれはなんだろうね。」
「うん、大地はあまり信用するなとも言うのよ、どうしてか分らない。」
「大地には野生の勘が身についているから何か臭うのだろう。」
「そうなんだ、私、毎日お風呂入ってるよ?」
「亜衣音は、そのなんだ、巫女の鍛錬はやっているのか。」
「家の庭で裏の公園に向けて練習していてね、毎日バーガーの三個を夜食にして励んでるよ。大地はねもう身の熟しがとても上手いのよ。」
「おいおい俺のバーガーが少ないと思っていたら、途中で消滅かよ。」
「あ~なんのことかな~、あ~聞こえな~い!」
「ケッ、バ~ロゥ~!」
「ヒグマ、すまない。俺が食べている。」
「あ~なるほどね~動く的が必要だね、うんうん。大地になら喰わせてやってもいいぞ可愛いしな。なんなら俺の胸饅頭も喰ってもいいぞ。」
「いやだよ、鉛の弾が混じっているだろう。」
「そう言えばさ、この俺様も散々お前の母さんから的にされて扱かれたのを思い出したよ。あのお転婆の娘がね~、(どんだけ強いのか。)」
カムイコロさんは宙を見つめて懐かしい昔を思い出していて、うっとりとした笑顔は可愛い、クマだけれどもね。
「亜衣音。俺もそろそろ退院するよ。あの小娘たちが解放されたという、港区の倉庫街を見に行かないか。」
「行く、行きたい。私も体調は何だかモヤモヤしているけれどもね、発散させる機会がないのよ。お乳をあげている時間は心は安まるのだけれども、大地を相手にポンポンと魔法は撃てなくてね持て余しぎみかな。」
「実はな、港区には終戦後だがロシアからの復員船が到着していて、その復員に混じって人狼が沢山入国していたんだ。これは双子に訊けば……あ、今は無理だな、そのような場所が今でも残っているのかもしれね~ぞ。」
「だったらホロお婆さまがお鼻が利くよ。誘ってみる。」
「あ~そう言えば婆さんが居るな、本家本元の元生活安全課だったな。」
「え、それは知らない。ホロお婆さまは公務員だったんだ。」
「ほれ、いつもワシらを監視しているパパラッチの二人が署長夫妻だったか。」
「でも今は見かけないよ。犯人を追跡しているのかな。」
「もう年齢も相当だろう……いや違うかな?」
「そうだね、まだお爺ちゃんの部下なのかも知れないな。」
「あ、そういう事ね。分ったわ。あ~身体がむずむずしてきたからもう自主退院するよ。」
「うん、お願い。」
私は前日に馬事公苑を訪れてクロに明日の予定を話して聞かせる。
「ブルブルルル……。フ!」
「そ、……良かった、明日はお願いね!」
「ブルブルルル……。フ!」
1970年7月19日
小さく跳べば移動は出来るからと私はクロを馬事公苑から連れ出した。大地は雷神を連れて行きたかったが四代目はワープは出来ない。何故かカムちゃんはホットしていたんだな。
今日は七月十九日、決行の日だ。
「亜衣音、ここでどうだ飛べるか。馬事公苑からはそんなに離れてはいないと思う。」
「うん試して見る。大丈夫だよ厩舎には『クロ、本日借り出し中……!』と張り紙をしておいたわ。」
「そうかい、間違っても雷神を呼ぶなよ。」
「うふふ、本当にカムちゃんは雷神に弱いのね、では呼ぶよ。」
「亜衣音、しっかりな。」
「うん大地。」
「クロ!……聞こえる?……聞こえたらここまで跳んで来て、お願い……。」
「ヒヒ~ン!……ブルル……。」 「ブフッ……、」
「キャ!」x2
「へっ……!……なに、この女の子。」
「あ! 双子ちゃんだ、」
其処には立花の双子がクロと共に飛んで来たのだった。翠はクロに騎乗していて碧は残念な格好だ、クロに襟首を咥えられての子猫スタイル、足と手を丸めていたので私と大地は大笑いした。カムちゃんは困り顔だ。
「アハハハ……って笑えないよ、クロ、どうしてこの二人を連れて来たのよね、もう……どうしよう。」
「亜衣音、しゃ~ないだろう。ここは強制記憶消去魔法を発動だな。」
「そうね、」
「だったら俺が一撃でおネンネさせてやるよ。」
「ヤ、やめて……、」x2
「何でも致します、どうか顔が歪むような事はお許し下さい。」x2
「あは~それは無理だよね、カムちゃん。」
「亜衣音、俺にだって出来ないな。」
「いいじゃんかよポカッと一発いや二発。そうすればお前の気が晴れるだろう。」
「だったら私が憂さ晴らしにさせて頂戴、エアー・ドライヴ!」
私は巫女の最強呪文を使って双子ちゃんを恐怖支配しようとしたが、
「キャ~、」x2
「ゲゲッ!」
「うんもう亜衣音ちゃん。酷い事しないでよ翠は驚いたじゃないの。」
「だね、碧も驚いたわ。」
「お前らはあの魔法を喰らっても何とも無いのか!」
「大地、今のは強い風を身体に纏わせただけだから、私が高い所から飛び下りる時に使う巫女の魔法よ、だから中は何とも無いよ。」
「へっ……そうなのか!」
「あの~亜衣音さま、お許しは頂けますのでしょうか。」
「そうね、今日の働きで考えてあげる。秘密をばらしたら……、」
「おいおい亜衣音。俺は海に投げ込む命令はゴメンだぜ。」
「うん、大地には……そうね、ふん縛って貰おうかな。」
「いいぜ、亀甲縛りか!?」
「へへへ……亜衣音ちゃんはそういう趣味なんだ、大地くんが羨ましいよね……ね~碧。」
「うん翠。私たちは大地くんの二号さんになりたいね。」
「うん、なろうよ碧。」
「இஇஇ……。」x2
私と大地はこの双子ちゃんに付いていける自信がなくなった、どうしよう……。
「バカかよ、こいつら……இ。」
とは、カムイコロさんだ。
「うぐぅ~。」
「ブフッ!」 「ヒヒ~ン!……ブルル……。」
「なに、どうしたのクロ……、そう、信用してもいいのね、うん、ありがとう。」
「へ~亜衣音ちゃんはクロの言う事が分るんだ。」
「あんた達こそ何者よ、どうしてクロに近づいていたのよ。」
「はい私たちは亜衣音さまの護衛役として採用された、餡蜜です。」
「翠、隠密だろう。餡屋は実家だからさ、いつも、あん、アン、餡、言ってますんで、すみません。」
「だろう? 亜衣音。こいつらはやはり変質者だぜ!」
「うん大地。趣味は合うかも……。」
「バコ~ン!」
「お前、やっぱバカだわさ。」
「大地くん、ナイス突っ込み!」x2
「カムイコロさん、この二人どうしよう。いったい誰のコマなのかな。」
「そんなこと身体に訊けばいいだろう、大地その~なんだ、亀甲縛り!」
「ブフッ!」「ブフッ!」「ヒヒ~ン!……ブルル……。」
「大地、クロが遊ぶな・先を急げって、」
「……。」
「亜衣音、この人数は多すぎないか、クロは跳べるかい?」
「うん双子ちゃんを置いていくよ、それとカムちゃんもね。」
「おいおいどういうこったい、俺は最初から置いていく予定だったのか?」
「違うわよこの二人を連れてきて頂戴。」
「亜衣音さま、先に翠を連れていって下さい。この前の倉庫に行かれたいのでしょう?」
「後は碧がお二人を案内して追いかけますから、タクシー代をお願いします。」
「碧~、お願いね。……翠、クロから落ちないでね。」
「亜衣音さま、落ちるのは碧でございます。クロに喰われたのはどっちでしたでしょうか?」
「うん、碧だったわね。どちらでも同じよね、行こう翠。……クロ!」
「ブヒヒ~ン!」
私と翠は一瞬にして倉庫街へと跳んで転移が出来た。残りの三人は待つ事……二十五分で到着だ。
「いや~碧! どうしたのよ!」
「あ~やっと来た。遅いよ~大地。それに碧はどうして伸びているのよ、それにお姫さま抱っこだし……。」
「あぁすまね~タクシーが無くてよ、走ってきた。」
「へ~それで大地の抱えるその女は何よ! 道ばたの石ころよね?」
「あ、あ~なんだろうねアハハハ……。犬コロだったりしてね!」
「大地、許すから直ぐに海に投げなさい、大地にはお仕置きよ!」
「う……直ぐに捨てるから許して……下さい亜衣音……さま!」
私から怖い顔して睨まれたから大地はその場で碧を地面に落とした。
「亜衣音、これでいいか。」
「うん、いいわよ。胸の支えが取れたわ。」
「きゃ~碧!……あんまりです亜衣音さま、」
「ふん知らないわよ、みいどり~……。」
「クシュン……。」
「……クション!」
大地が落とした地面とは浅い海だった。港には落ちた時の為にと所々に階段が造ってありその階段の踊り場だった。高さにして大凡の三メートルはありそうだが海面までは二,五メートルという高さかな。
冷たい海の水で起きた碧は片目を瞑り右手でピースの二本指を顔の前で作り、両足は畳んでの女の子座り。はにかんだ顔を作って……もうあり得ない、この子は……何なのよ。
「テヘッ!」
「翠、着いたのよね、何処が倉庫かしら!」
「はい向こう三軒両隣の新しい倉庫は別です、少しだけ見えているあの小さなオンボロです。」
「紛らわしい、行くわよ。」
「テヘッ!」
「碧、もういいから付いて来なさい。」
「亜衣音さま、先に二人で偵察に行ってきます。」
「いいわよこのまま進みます。警察が散々調べているのでしょうが誰も居ませんよ。」
「あ、そうですね。」
「テヘッ!」
「இஇஇ……。」x3
期待はしていなかったけれどもやはり手がかりは何も無い。
「この倉庫です。中には何も無い倉庫でした。」
「おい亜衣音、どうした、」
「どうしたじゃないわよ大地、何か探しなさいよ。」
「……何もないよ、見れば分るだろうに……亜衣音?」
「ヒヒ~ン!……ブルル……。」
「クロ、何か見つけたの?」
「ブフッ!」
「こいつ、オナラだぜ、クサッ!」
「ブフッ!」
「バカね大地。ウンチをするのよね~クロ。」
「ブフッ!」
するとクロはゆっくりと歩き出した。倉庫の裏側に出て……ジョー……。ヤダ、クロ!
クロは汐留まで歩いて行く。この先はだだっ広い浜離宮恩賜庭園だった。




