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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第七章 激情から狂気へ

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第68部 母の奇跡……私の奇跡


 私は翌日に目が覚めて友人の失言をきっかけにして、明子姉さんから事実を聞かされた。


 六人は警察より色々と事情を聞かされて怒りたくてもやり場のない怒り。はけ口は当然、私と大地になる。私にグジュグジュと言いたくて面会に来てくれてもお父さんからは、まだ話してくれるなと依頼されたから条件付きの面会である。お父さんも六人は誘拐のとばっちりを受けているからと、どうしても私との面会も許さざるを得ないのだ。



 だが、この日迎えるのは私と大地だけでは無かった。これはお父さんの策略なのだろうか、謂わば予約済みの面会の時間だ。


 夕方になる。コンコンと、ノックがあり大地が出た。


「大地くん、お見舞いに来ました。いいかな!」

「いいぜ、入りな。」

「お邪魔しま~す。」x6


「みんな、ありがとう。」

「うわ~、黒木先生……そっくり。」x2

「あ、私のお母さんだよ、澪お姉さまとお母さんは双子なんだ驚くよね。」

「う、うん、そうだけれどもさ、お姉さまも綺麗だし……双子が二つ……。」

「どぉ? 可愛いでしょう。私の妹なんだ。」

「うん凄く可愛い。それで可愛い亜衣音ちゃんにはお饅頭を二個ね!」

「わ~ありがとう……胸に仕舞っておく。」

「……?」


「あ、こちらのベッドが明子姉さんでこっちがお母さん。……でもごめんなさい、お母さんは昏睡状態で起きないから紹介出来ないね。」


「あ……、私たち馬術部の姦し娘です。」x6

「まぁ可笑しい、いつも亜衣音ちゃんをもり立ててくれてありがとう。」


 私はこの時の明子姉さんの顔の変化には気づかなくて、同時に大地の申し訳なさそうな顔の変化も見逃していた。六人は笑顔で話しかけてくれるのが、つい嬉しくて燥ぎだしていたのだった。


「いいえ、そのような事はありませんのよ。逆にとてもありがた~い部長さまでございます。」

「そういう事でしたら真面目な部長ではないようですね。」

「はいお姉さま。実は……ここだけのお話ですよ、いつも二人で何処かに行ってしまうから部活らしい事はないのです。私たちはサボってばかりですね。」

「う~んごめんなさい、亜衣音には叱っておきますね。」

「特大をお願いします。」

「それに~熱々の二人にはいつも当てられてですね~、目のやり場が無いと申しますか~、私も早く彼氏を欲しいなと思うようになりました。」


「わ、わ、わ~、何を言ってくれちゃって、明子姉さんは真に受けないで下さいよね。ねぇ~大地。」

「ほらこれですよ。この調子でいつも亜衣音ちゃんは大地、大地と呼んでですね、もう私たちは『ごちそうさま!』状態ですわ。」


「ふふふ……もうごめんなさい。姉としても気にはなっていますが、その、親が公認していますから、私も注意はしていますがそれ以上はですね。」

「お姉ちゃんウソばっかり、私は何も注意は受けていません。」


「亜衣音、お前が右から左へ流すからだろうが、俺は覚えているぜ。」

「わ~大地は私を裏切るのだね、もう胸には触らせません。」

「きゃ~亜衣音ちゃんのH!」

「あ~言っちゃった、あ~どうしよう。もうバレバレじゃん。」

「いいのよ学校中にはばら撒かないからね。」

「それってどうよ。二人でも教えたら明後日には全校に知れ渡るのよね。」

「亜衣音ちゃ~ん。それは違うわよ、今日中に・知れ渡るのよね、だってとても有名な『生徒会キラー』ですもの。」


「私はそんなに有名なんだ。大地どうして教えてくれないのよ。」

「お前バカだな~俺も知るわけないだろう。」

「どうしてバカ呼ばわりよね。」

「お前……バカだな。俺が知るわけないだろう。」

「教えてよ、」

「俺が知らないという事はだな、『生徒会キラー』はウソという事だぜ。」

「あ……そうなんだ。未来の意地悪。」


「先輩。本当は『学校キラー』ですよ。校庭を荒らして花壇や生け垣を壊しまくっていますよね。」

「いや、あれは部活の練習で今年は国体出場で優勝しなくてならないの。それが条件で特待生扱いの学費免除の条件なのよ。」

「先輩ありがとうございます。先輩、肩揉みましょうね、胸~ですか~。」

「バコ~ン!」「イテ!」

「一年E組の岡田眞澄、言い過ぎだ。」

「うへっ!」

「アハハハ……。」x7


「お姉さま、うるさくてすみません。」

「いいですよ久々にガールズトークを聞けて嬉しい。この子らもよく眠っていますから……それにお母さまにも何かの刺激があるのかなって思っています。ねぇ亜衣音ちゃん。」


 明子姉さんは二人の娘に視線を落として微笑んでいて、それから頭を軽くなで始めるのだった。


「うん気にしないで。でも大地は苛めないでよね、ウブなのだから。」


「あ、真っ赤な田中先輩。今度の事件はなんですか?」

「おい一年E組の山口智子。それは内密だぜ教えられない。」

「大地、今回の件よね。みんな知ったんだね。」

「はい、しっかり拉致られました、あ!……。」

「……?……智子、それ、どういう意味よ、教えなさい。」

「う、田中先輩。……すみません。」

「大地……。」


「亜衣音ちゃん。実はねこの子たちと澪お姉さまが昨日攫われしまったの。勿論、この六人は直ぐに解放されているから無事なのだけれどもね、その今度は澪お姉さまが行方不明のままなのよ。いずれお話をしなくてはならないから、それにこんな時で亜衣音ちゃん、本当にごめんなさい。」


「亜衣音ちゃん。知らされていなかったのですね、もう、ごめんなさい。智子謝りなさい。」

「だって私も被害者だし……逆よね。」


「智子さんですね、そうですね貴女の言い分が正しいわ。迷惑をお掛けして申し訳ございません。どうかお許し下さい。」

「あ、お姉さまかが謝る事はないですよ。今回も被害者なのですから。」

「いいえこれは私の事が発端なのです、ごめんなさい。」


「大地、お父さんを呼んできて、」

「おい亜衣音。落ち着け、お義父さんは色々と探し回っているから今日明日は無理だよ。」


「智子ごめん。それに未来、藍、翠、碧、眞澄ごめんなさい。部長失格です、あの日はお母さんに会いにきていたから、その部活に行っていたら防げた。」


「あ、実はね。自宅襲撃の犯人は全部を捕らえたのよ。だから馬事公苑の件は防げたと思う。」

「でしたらここに休んであるのはもしかすると、黒木澪先生だって事になるのですか。」

「恐らくそうだと思います。私とこの二人の娘は攫われていました、もう二度目になります。」


「え”~、そんな、なんでこんな事件が起きているのですか。」

「本当に心配掛けてごめんなさい。もう貴女たちには被害は出させませんし警察にも馬事公苑の警備をお願いしますから。」


「お姉さま申し訳ありません。一年E組の山口智子、精一杯にお詫び申します。ごめんなさい。」

「ううん、いいのよ。私のためにご迷惑を掛けたのですから。」

「あ、目的は白川先輩もでしたよ。私、三回は胸揉まれて気持ち良かったんですから。先輩は何か恨みを買ってあるのですか?」


「未来、藍、翠、碧、眞澄、智子。それホンとよね……ごめんなさい。私どうしよう。大地、どうしたらいいか教えて!」


「亜衣音ちゃん、先に身体を休めて力の使い方を練習する必要があるわね。」

「亜衣音、俺もそう思う。ポンポンと力使ってさ、最後は伸びていたら直ぐに捕まるのは目に見えている。」


「そうね、そうよね。明子姉さんありがとうございます。」

「ううん、私はいいのよ。」


「ねぇ亜衣音。もしかしたらお母さんも被害者なの?」

「え?……うん、そうだね。私が暫く休んだでしょう、あの時に事件があったの。無事に助けは出来たのよ。でもね、くそ~あ~~、わ~~~~!!!」


「亜衣音ちゃん……、」x7

「亜衣音……、」


 部員から見舞いを受けて澪お姉さんと皆が拉致されたよ、と聞いた時には涙さえ流れなかった。でも今は母が攫われて酷い仕打ちをされたと思い出してしまい、泣きだして激しい憎悪が改めて流れ出して私は悔しい思いを大地にぶつけた。


「大地、悔しいよ~もの凄く悔しいよ、大地。」

「あぁ、そうだな。俺が守るからな。」

「うんお願いだよ、だったら私は全力を出せるからね。」

「半分にしておけ。今回のように二カ所も襲撃に遭うとも考えられる。」



「亜衣音さんいいかな、この病院も対象に上がっていたようよ。ここにも偵察をしていたような言い方だったわ、今思い出したゴメンね。」

「藍ちゃんありがとう。お父さんに報告しておくよ。」

「うん本当に……ごめんなさい。」

「え? 何がかな。」

「いえ私もあの犯人に言い方が悪かったのよ。だから攫われたのよね、それだけだよ。」

「うん……。」


 亜衣音さん、私こそどう説明すればいいのか分らないの。もし話したら、それだけで私は海に沈められてしまうからどうしよう、と藍は心で呟いた。


 重い空気が流れた。どうしてか赤ちゃんの四人が一斉に泣き出した。私たちは近くの赤ん坊に目をやるのだが、むくっと起きて惜しげも無く胸をだして授乳する明子姉さんに目が集まる。私は妹たちに救われた、高鳴る憎悪が抑えられた。


「おんぎゃ~、」「おんぎゃ~、」「おんぎゃ~、」「おんぎゃ~、」


「わ~瞬時に泣き止んだよ。」

「綾香ちゃんと彩香ちゃんだよね、次は小百合ちゃんと水脈ちゃん!」

「亜衣音ちゃん、小百合ちゃんと水脈ちゃんは頼みましたよ。」


「おんぎゃ~、」「おんぎゃ~、」

「え~? なんでよ。お乳は出ないよ。」

「いいからいいから白川先輩、胸を出して下さいよ~。」

「やだよ~大地、助けて。」


「明子お姉さん?……。」

「許可いたします、」

「はい~……許可頂きました、直ちに作戦に移行します。」


 私は大地から押さえられて見事に乳房をポロリと出されてしまう。いつもの事だからか私の身体が素直なだけか、自分でも謎だな。……岡田眞澄、お前は強制的に女の子に造り替えてやるのだからね。


「イヤ~ン!」

「ほれ、ほら!」

「うぐぅ~。」

「ほら亜衣音。俺は分らんが、」

「うん、こっちは水脈だよ、」

「では小百合ちゃんだな。」


「うん小百合、水脈、お乳だよ。」

 

 この二人も直ぐに泣き止んだ。


「亜衣音ちゃん。沙霧さんと澪霧さんが産まれた時はね、霧お母さんは死んでしまったのよ。母らの双子を産み落とすだけの体力しか無かったと聞いたの、命の引き替えと言えばいいのかな。あの時はね、亜衣音ちゃん、」

「うん、戦争中で乳母が見つからなかったのよね。」


「そう……それでね見かねた麻美さんが泣き止むようにと、乳房を姉らに含ませたら泣き止んだと。」


「うん、そうだね、それから奇跡が起きて麻美さんからお乳が出たと聞いた。」

「なんだ知っていたんだね。」


「亜衣音、俺は知らないぞ。」

「亜衣音ちゃんお乳は出ていますか?」

「出るわけ無いじゃんか、まだ未婚で十六歳なのよ。」

「うそ~……。」x6


「え~田中先輩はまだ狙えるんだ~良かった。」

「あ、智子。大地はダメ、私のだからね。」

「はいは~い承知しております、今は白川先輩だよね!」


「亜衣音ちゃん。双子ちゃんはゴクゴク喉を鳴らしていますよ。」

「え、やだ、本当よ……。」


「亜衣音ちゃん良かったね、妹が娘になったね。」

「ちょ明子姉さん。冗談ですよね、そんな~高校へ子連れで登校ですか~あり得ないです。」


「でもね亜衣音ちゃん、赤ちゃんはお乳が全く出ないと直ぐに泣き出すのよ。だって本能で柔らかい乳房を押して乳の出を良くしているとか知らないよね。でも本当よ!」


「そうですよ白川先輩。二人は泣きませんよ。」

「ホントだ!」x5


 この場の女子は納得して明子姉さんはもしや? と思ったそうで私の授乳を見つめていた。麻美さんの時と同じ奇跡が起きたようだ。



「明子姉さん何だか乳房が熱くなりました。それに吸われると大地よりもとても痛いです、本当にお乳が出ていますか?」

「フムフム、それで!」x6

「キャッ、大地。六人を追い出して。」

「いいぜ、俺は亜衣音の乳房を二人に譲るよ。」

「きゃ~……。」x6


 ここに唯一のジェンダーみたいな岡田眞澄がいるというのに、今では全く無視されている。優男だったかな?


「亜衣音ちゃん、そうなんだよ。乳房を吸われたらとても痛いのが母としては我慢が出来るから不思議よね~、……これが慈母なのかな。」

「ふ~んそうなんだ、これがお母さんの愛なのね。……痛っ!」

「亜衣音ちゃん時々噛まれるからね。だからかな赤ちゃんには歯が無いのはそう言う理由かしら。」

「そうだろうね明子姉さん。こんな話は母親の対話だよね私まだ産んでいないよね。どうして会話が成り立つのよ。」


「ふふふ……可笑しな亜衣音ちゃん。お母さんに報告しなさいな、こんな楽しい事があったよとね。」

「うん、そうするよ。」

「……。」x6


 女性として聞いている女子高生の五人、何だか神秘めいた会話に感心していた。大地は明子姉さんに耳打ちした、「明子姉さん。亜衣音の瞳が赤くならなくて良かったですね。」と。

 



 この日からお母さんの胸が母乳の匂いが漂ってきた、これは間違い無く母乳が漏れ出している証拠だ。私はお父さんに相談して懇願した。


「お父さん。お母さんが目覚めるかもしれないのよ、双子にお母さんのお乳を飲ませてくれませんか。付き人はとても大変だとは思うけど、私は夜だけは毎日協力するから、ね?」


「沙霧に乳が出るのだよな、少しでも娘を傍に置いたのが良かったのだよな、本当に奇跡のようだ。」

「うん明子姉さんから聞きました。ね? お父さん。」


「この際だ、家の修理が終わったら退院させようか。」

「でも、点滴があるよね。」

「あ、そうだったね、点滴を家まで来て頂くには忍びないし、明子も用心の為に入院させたままにお願いしてみるか。」


「うんお願いします。」

「亜衣音は馬術に励んでくれ。」

「そうするよ。」


 お父さんと校長先生に頼んで馬術部は解散して貰っていたが、自然と再結成の流れになってきた。それって私と大地が乗馬する姿に惚れたとか?



 私は退院したその足で馬事公苑のクロに会いに行ったら、大地は雷神には毎日のようにブラシ掛けに行っていたんだよ。私もクロにブラシを掛けながら、


「ねぇクロ、今度はね澪お姉さまが誘拐されたのよ。クロは澪お姉さまの行き先が分るかな。」

「ブルル……。」

「そうよね、お母さんの時も分らなかったのよね。また北海道とか遠いのかな。何とか言ってよクロ。」

「ヒヒ~ン!……ブフッ!」 

「うん、乗せてくれる?」

「ヒヒ~ン!……ブルル……。」


「おい亜衣音。馬事公苑はまだ走れないよ、どうするんだい。」

「乗っただけだよ明日からは学校で走るよ。」

「いいぞ。」

「大地はまだ残るの?」

「亜衣音が待てるまで雷神の元に居るよ、それとも帰って休みたいか。」

「うん今日はタクシーで帰る。」

「そっか帰ろうか……もうクロから降りろ。」

「これ……タクシーだよ?」

「雨降りだから諦めろ。」

「は~い、」


「ブフッ!(タクシーと呼ぶな!)」 


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