第66部 襲撃された明子姉さんと……巫女の力と
*)異変
私は窓に歩み寄りガラス戸を全開にして遠くを見やる。これ位だと外の風を部屋に入れているようにしか見えないが、直ぐに私は窓に右足を乗せてキツい顔をして祖父母に目を遣った。
「おい、亜衣音ちゃん。」
私の異常さに気づいた智治お爺ちゃんが窓に身を乗り出す私を止めようと駆け寄るも早く、私は四階の窓から飛び降りた。こんな巫女の魔法は初めてなのだが、飛び降りる事が出来ると直感的に思えて私は叫んだ。
「エアー・ドライヴ!……私を守れ!」
「亜衣音~~!!」
私の身体に旋風が纏わり付いた。スカートが身体のバランスを乱してくれているがこれ位は何ともない。私には頭上で叫ぶ智治お爺ちゃんの声なんか聞こえない。
着地は軽い衝撃だったから問題なく地面に立てて私は脱兎の如く走りだした。家までは五分で着くだろうか、いや三分で着かなければ……。
「亜衣音~~!!」
と、私を何度も呼ぶ智治お爺ちゃんの声が届いたので一瞬止まってお辞儀をして走りだした。
病室の祖父母の事は考えてはいられない。
窓から吹き付ける大粒の雨交じりの風は、お母さんの頬にまで届き涙のように見えたという。桜子お婆さまは慌てて孫を覆い、智治お爺ちゃんは私を見送って窓を閉めた。
「あ、あ、あ~、智治。何が、どうしちまったんだい。」
「亜衣音は自宅に誰が居るのかを訊きました。もしかしたら明子さんが襲撃されたのかもしれません。」
「そんな、私らだけで出てきたのは間違いだったかい。」
「いや、警察も警護しているからそんな事はないだろう。」
「早く、み、穣さんへ連絡を~……、」
「直ぐに穣くんに連絡する。それからここも襲撃されたら堪らんから、亜衣音が言うように待機するから。」
「そ、そうだね……智治。」
桜子お婆さまには巫女としての力は無いようだ、すっかり気弱になっている。いつもの気の強さは昔の行動を思っての虚勢だったのかな。
智治お爺ちゃんは待合室に降りて、事務所に待機している警察病院のドクターを呼んで事態を報告した。ドクターは二人の看護婦を病室へ寄越してくれる。
智治お爺ちゃんは父さんに電話をして事の顛末を報告して直ぐに自宅へ帰るように頼んだ。それを受けてお父さんは直ぐに祖父へと連絡する。
「あ、あ、穣さん、いいえ白川教頭先生を呼んで下さい。はい、このまま待ちますから……。」
「穣くん。亜衣音ちゃんが沙霧の病室から飛び降りて~~~いや違う、何だか様子が変で……いや、自宅へ戻りました、……はい、明子一人です……、」
「私たちはこのまま病院に残ります……自宅の護衛は頼みました……よろしく、」
智治お爺ちゃんは受話器を置いて額の汗を拭き取ってため息をついている。
「甘い飲みの物を買って上がろうか……。」
大地とカムちゃんはハンバーガーのお店でシコタマ買い込んで帰路に就いていた。この時点では親子みたいな感じで帰宅していた。
その頃自宅にはホロお婆さまが居た。
*)……襲撃
「カムイコロさん自宅前ですよね。ホロお婆さまでしょうか。」
「そのよだね、骨休めの温泉から帰ってきた……、」
「違います、戦っていますよ、」
「おい大地。急げ!」
「はい、」
多勢に無勢、ホロお婆さまは一人で三人の男と戦っていたが家の中はまだ確認が出来ない。
「ガォォーン!」「がうぅぅ~」
「うりゃ~、お前たちは……なんだ~、」
「大地、お前は家に行け!」
「はい、」
「う、撃て~あのデカ熊は殺せ~!」
「はい直ちに……、」
直ぐに「パンパン。」と発砲音が響く。
「カムイコロかえ?……。」
「やぁ久しいな、ババァ……。」
「なんだい、家の敷物になりにきたのか!」
「そうだな…って、ババァ俺の後ろに隠れるなよ。」
「お前は死んでも皮を残す、わしゃ死んだら借金しか残さんから家の明子を助けに行く。ワシがクマを美味しく喰ってやるからな。」
「ケッ! お前の腹の足しにはなりたくはないわ。ほら、投げるぜ!」
「ほわ~っ……、」
「ガォォーン!」「がうぅぅ~」
「もう、玉切れかぁ?」
「う、はい、もう下の玉しかありません……、」
「そうだよな、菌下痢すれば???? 字が違うが15歳以下でも読めるだろうさ、次はお前の又見せろや~ガォォーン!」
「ヒェ~!」
「二人あがり~っと。次はお前だ、がうぅぅ~、」
「あ、あ、ありません、です~……、」
「?……女か、ケツ……つまらん。」
「お下品です~、」
「知るか!」
大地の前には七人の男たちがいて、明子姉さんは壁にもたれて二人を抱きしめて震えてこの騒ぎをみている。勿論、正体不明の男二人が漏れなく付いているのが残念か。対しては老父婦役の警察官と若夫婦役の警察官の睨み合いだった、これでは手が出せないのも頷けた。
「明子姉さん、」
「大地くん……、」
「お願い、逃げて!」
「ダメですよ、今どうにかして助けます。」
「大地くんと言うのか、相手は二人が銃を所持している。マスクで顔は見えないが外国人で腕っ節が強いぞ。」
「そ、そうみたいですね、どうするつもりですか。」
「援軍は呼んでおいたから増員を待つしかないだろう。簡単に発砲は出来ないから俺も考えている。」
明子姉さんには男が二人、銃を持ったのが二人。残りの三人は格闘家の類いになるのかと大地は考えた。
「あんた警察官だろうが、一斉に掛かれないのか!」
「無理だ、飛びかかって撃たれたらあとは女だけだろうが、この距離でしくじるようなバカは護衛には指名されない。」
「そうですよね、だったら……カムイコロさ~~ん、」
「は~い呼んだかな~、」
先に塀を越えて飛び込んで来たのはホロお婆さまだった、人間ロケットか! カムイコロさんも直ぐに塀を越えて地面と対面していた。
「バキ、」「ウッ、」「ボカ、」「ぎょ、」「これでもか。」「痛!」
「おう、すげ~婆さんだわ。惚れ惚れしてきた、」
「カムイコロさん、銃の二人をどうにかお願いします。」
「大地、あいつらを外に追い出せるか! 出せたら何とかなるよ。」
「やってみます。先に大きい窓を全部壊します、後で一緒に掃除して下さいよ。」
「誰かするだろう、俺は反対側の窓をぶち破る、」
「あの銃の男の後ろですよ、死にますよ。」
「また自慢の脂肪で防いでみせるよ。あ、今は半分以下だねこりゃ~死んじまうな。」
「だ、ダメですよ、まだ早いですからね、もう少し牽制をして下さいテーブルを持って来ます。」
「あぁ、判った。」
ホロお婆さまの決死の飛び込みも直ぐに収まった。いや押え込まれた方か、銃をまともにそれも至近距離から向けられたら自慢の右足も引き下げるしかない。
「儂の自慢の回し蹴りが使えない、大地どうする。」
「大地ならテーブルを取りに下がったよ、いいかい、あとは出来るよな。」
「おう任せな、逃げるだけだろう?」
「ま、そう言う事だ。大地を投げてあの男を抱き込んで窓から逃げるよ、」
「ワシは明子を守る、クマは外で乱闘だろう?」
「外にも居るのか、」
「たぶん裏庭の二人はボスと見張りだろう。」
「ボス……ねぇ、」
「良い男だぜ!」
「見ないで良い男だと判るのか!」
「間違いないよ……大地が来たぜ。」
「よし行くよ……、」
「大地~テーブルに隠れていろ~、」
「超特大・バコ~ン!!」
「ぎゃ~尻が痛い~、、、、」
「ウヒャ~!!」x3
飛んで来る大地に押されて二人が庭に落ちて更に一人は怖がって庭に逃げる。カムイコロさんは銃を持った男に体当たりだった。ホロお婆さまも自慢の回し蹴りで男を庭に蹴飛ばして明子姉さんのガードに飛びかかる。
「ビュ~ン!!」と強い突風が部屋を抜けて行った。残った男は堪らずに庭に転げ落ちるように逃げて行く。勿論、忘れてはいませんよ、警察官の四人も庭に飛ばされたのだ。
「亜衣音!」x3
「私の家で何している、明子姉さんをまた攫いに来たのかしら。」
「亜衣音、あんたは、まさか……。」
「ホロお婆さまは下がっていて下さい、そこの塀に全員をぶつけてみせます。」
「う、撃て、いから撃て、早くあの小娘は危険だ、撃て~、」
私は両手を上に挙げて叫んだ。
「エアー・ドライヴ 。」「パンパン。」「パンパン。」「パンパン。」「パンパン。」「パンパン。」
と、連射される銃に怯まない私だ。
「おいどうした、弾が当たらないのか、」
私に飛んで来る銃弾は全部私を取り巻く強い風で、銃弾は逸れるか風で止まるかするのだった。ここに居る全員が理解出来ずに身体が固まっている。
「警察の方は逃げて下さい、巻き込まれてしまいすよ。」
「え”……。」
それから私は襲撃犯に眼を向けた、私は右手を突き出して、
「私、怒っているのよね、覚悟はいいかしら!」
「いいから撃て撃て撃て~、」
「エアー・ショット 。」「ぎゃ~、」「エアー・ショット 。」「うぎゃ~、」「大地、どいて!」
私は左腕を前に伸ばして叫ぶと空気弾のような攻撃だ。
「エアー・イン・パクト、」 「ドン、バタン。」
私は右手を上から下斜めに振った、炸裂する空気の刃か!
「エアー・スプラッシュ、」「あれ~@@@。」
私は両手を前に向けた、渦巻く空気の攻撃か。
「エアー・イン・パクト、」「ドン、バタン。」
裏庭に飛んだカムイコロさんとホロお婆さまは犯人の四人を表に追い出した。
「亜衣音~いまそっちに四人を追いだすよ、」「ガォォーン!」「がうぅぅ~」
裏庭から出てきた男に私は答えては貰えないような質問を投げた。同時に私は最強呪文のエアー・ドライヴを唱えて身体に風の渦を纏わせている。
「あんたちは何なのよ、」
「言えるか!」
「あっそ、では死んで!」
「え”!」
「エアー・ドライヴ、フム! 」 「うわ~、」 「ぎゃ~、」 「やめて~、」「チーン!」
「私の最強・最大の風魔法よ!」
私の風魔法が発動する度に自分に容赦なく当たる雨粒がとても痛いのだから、みんなの顔に当たる大粒の雨もとても痛いと思った。小雨の天気ではバイク走行は時速八十キロが限度だ、それ以上は痛くて堪らない。大粒の雨はどうだろうか。
「ふ~終わったかな……、」
「おいおいおい……ありゃ~親以上につぇ~ぜよ、なぁババァ。」
「クマ、お前も飛んでみろ!」
「イヤだよ、もう血が足りない。」
過去に人狼たちと戦った者にだけ判る会話だ。大地は眼を丸くするだけで言葉はでないが一言。
「亜衣音~……お前、すげ~な~。」
「え! 亜衣音ちゃん。どうして……こんな事が出来るのよ……、」
と、明子姉さんは眼を丸くする。直ぐに泣き叫ぶ娘をあやしに掛るが二人を抱きかかえる事は出来なかった。腰も抜けていて当然かな。
「亜衣音……、」
「うん大地。……終わったわよね、怪我はないかしら。明子姉さんお怪我はありませんでしたか。」
「あ~衣音ちゃん、だ~い丈夫だよ、この子たちはお婆ちゃんに守られました。」
「うん良かった、……大地、抱っこして……、」
「あ、亜衣音……バカだな~こんな力をどうしたんだい。今、部屋に運んでやるからね、」
「うんお願いね。」
私は大地にお姫さま抱っこされて気を失った。こんな時にお父さんが到着してお父さんは周囲を見渡して大地に、いや私にかな、近づいて、
「大地くん、遅れてすまない。」
「お義父さん。」
「なんだ襲撃は本当だったな、こりゃ~参る、亜衣音は無事なのか。」
「こいつ、また病院がいいかな気を失った。」
「いや~こんなにドロだらけだからさ、風呂だろう。」
「そっか、脱がしてもいいかな!」
「……。」
勿論、襲撃は此処だけでは無かった。並行して別な場所でも……、そんな事は知らずに私は大地に抱かれていた。
目が覚めた私は三度、いや四回もどん底に落とされたのだった。




