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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第七章 激情から狂気へ

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第59部 手がかりと……邂逅


 1969年6月12日


*)この梅酒は泡盛で漬けるから


 高校二年生の初夏……。


 あの日、あの時に自分が眠った事を悔やんで泣き続けてもう一週間にはなる。だからと言ってもどうすることも出来ない自分を呪いたかった。夜には私の眼が赤く光りだし意識が飛ぶような感じもした。とても不安に駆られてしまい、私は大地に溺れて立つ瀬を見失っていた。毎晩のように大地に抱かれたら私は眠れたの、大地からはたくさんの力を貰った気分よ。



 一番の気がかりが母は身重だという事。母の出産予定日の七月はもう直ぐ目の前だ……どうする私。大地に溺れて泣くだけだろうか、学校さえも休んでしまっている。こんな私に大地は文句も言わずに付き合ってくれるが唯一の救いだっただろう。明子姉さんにはもうすぐご両親と同居になるのだから、私よりも気は楽だろうな……私は卑怯だね。でも、新しい両親というのも杉田家の智治お爺ちゃんと桜子お婆さまだから、私から見ても気が休まるとも思えないかな? あの我がもの凄~く強い凸凹夫婦なのだからね。



「亜衣音、学校……行こうか!」

「うんゴメンね。今までずる休みに付き合わせてしまった。」

「いいぜ、そんな事で心配するな。」

「でも、……うん、ありがとう。」


 大地は私と違って冷静だったのかな、あの日の出来事を考えていてそして行き着いた問いが、


「なぁ亜衣音。なぜ俺らは馬事公苑でレースをする事になったんだ。」

「それは……あの校長先生がサンダーを、雷神を買ったからでしょう?」

「だよな。ならばなぜ行方不明だった馬が現れたのだよ。これは偶然か?」

「判らない。でもどうして雷神を引き合わせるだけだったのが、ダービーになったのは不自然かな。」


「だからさ、こうやって家で泣いていたらこの先はどうする。何も情報は入らないよな、だったら泣くだけ損だろう。」


「そうだね……大地、頭が悪いね。」

「亜衣音がだよ。お母さんは七月出産予定だから急いで手がかりを探さないと、馬事公苑は嫌いと言っていても埒は明かない。お父さんも心配しているよ。」

「はい大地。ありがとう元気が出てきた。」


 私は翌日から登校した。授業が終われば直ぐに馬事公苑に赴き何かしらの痕跡を探して回った。でも見つかりはしなかった。


「泣くな、泣く暇があれば勉強とお前の巫女の感覚を磨け。今はこれが最大の防御になる。澪お姉さまはいつが予定日だ、今度は澪霧さんも狙われる。」


「澪お姉さまは多分、九月の出産予定だと思う。双子だからまた帝王切開かもしれない。」

「ならば勉強と九月の攻防戦に控えろ。」

「うん乗馬もだね、皆の授業料が掛っているもんね。」

「あ~そうだとも。早く元気になってくれないか。」

「私、元気になったよ、大地ありがとう。」

「いいよこれ位。でもお父さんには謝っておけ。きっと喜ぶと思う。」

「うん、今晩にいっぱい謝るからね。」


 高校でも父の部屋で連日会議は行われたが、校長先生からの情報だけでは何も進展はなかった。


「亜衣音。同時にホロお婆さまも行方不明になっているね、何処に行かれたのかな。」

「そうなんだよね一番予想されるのが犯人の追跡。これは希望的な考えだけれどもね、この可能性が一番高いと思う。」


 私は帰宅した父さんに直ぐに謝ったら父さんは直ぐに許してくれたよ、大地助言をありがとう。



 数日後の夜、北海道の田舎から訪問を受けて出迎えた私。


「亜衣音ちゃ~ん元気にしてたかな~。」

「麻美お母さん。今晩は。」

「うん、大地くんも元気だよね。」

「はい、いつも元気してます。それが仕事ですから。」

「ふ~ん、……そうなんだ、うんうん、しっかり励めよ青年!」


「穣~また来たよ~……。」


 麻美お母さんは今ではすっかり家族のような感じになってしまい、更にというのか、父さんを呼び捨てにするようになった。これが麻美お母さん流の父への励ましなのかも知れない。もし母が居れば近しい間になっても、父さんを呼び捨てにはしないだろうね。


「ま~た……ホタテの干物かよ、馬肉の燻製は無いのか。」

「無いよ、有ったら亜衣音ちゃんに怒られるからね。なんならシシャモがいいとか?……持ってきたよん。」

「大地が喜ぶよ、亜衣音に焼いてもらおうかね。」

「ダメダメ、きっと炭にしてしまうさ。」

「お母~さんったら、ま~た亜衣音ちゃんをからかうのだからやめて下さい。」

「明子姉さん、私が焼きますよ。コンガリとですね!」


「う~怨念が籠もっています~亜衣音ちゃん。お母さんは焼かないで欲しいんですがね。」

「麻美お母さん、もうすぐ桜子お婆さまも到着いたします。ふふ~ん、……電話……しましたからね。私へのお土産がありませんでしたね!」

「う~しまった、口止めを忘れたかな~アハハハ……。」


 表通りにクラウンが止まってドアが閉まる「ドスン!」という大きな音が聞こえた。まだ蚊はいないのでお座敷のガラス戸は開けて風を通していたから聞こえたのだ。新築中なので今の杉田家は祖父母の家に下宿中~。


「麻美~、」

「桜、また旦那には飲酒運転をさせたのかい。悪い女だね~。」

「あれは飲んでも底なしだからね、酔っ払うことは無いのさ。麻美とおんなじ。」

「言うじゃありませんか、桜にはサクラだね。」

「これはクジラの肉だろうが、途中で飲んできたんだね。」

「あ、バレた?……アハハハ……。」


「麻美さん。澪霧夫婦も呼ぶが、いいかな。」


 と、言う父。


「ん~新婚さんだよね。いいよまた直ぐに地方巡礼になるしさ。」

「そうか、そうだよな。」


「麻美お母さん。直ぐに夕飯が出来ますからね、飲んでいて下さい。」


 それを機に麻美さんが真顔になった。


「穣さん、あの雷神の出所でどころが判ったんだよ。良かったら明日から亜衣音ちゃん夫婦を借りてね、その日高に飛びたい。クロも連れて行ったがいいのだろうが、ここは亜衣音ちゃんの巫女の力を信じて探してみたいの。もしかしたらだよ、その~見つかる保証は全く無いがいいかな。」


「実は校長先生にもただしていたのだが、全く誰にも知らされていなくてね、馬の輸送の件は諦めていました。もし経路でも見つかれば少しは進展するやもしれませんね。ですが……、」


「お父さん私は行きたい。だってこのまま家に居てもお母さんは帰って来ないもの、お願い大地と行かせて。」


 智治お爺ちゃんも私の援護に回って父さんに言ってくれた。


「穣くん、明子さんらと澪霧の事は私たちが守るから穣くんも一緒に行ったらどうだろうか。いくらしっかりした亜衣音さんと大地くんだけでは何かあれば保護者もやはり必要でしょう。」

「お義父さん、留守番をお願いします。父にも頼んで警察も寄越してもらいますので、桜子お義母さんもよろしくお願いします。」


「任せ頂いて構いません。」

「あぁ、四六時中面倒を、」

「ありがとうございます。」


「桜子お母さん、四六時中も私がお世話させて頂きま~す……でしょ?」

「明子は既に私の娘になっておるわい、嬉しい~の~。」


 父さんがお礼を言っているが明子姉さんの突っ込みが冴えている。しかし、とても若く見える桜子お婆さまには年老いた言葉遣いは似合わない。いったい何処で老けたのかな?



「お義父さん、亜衣音は守るから心配はありませんよ任せて下さい。」

「大地くんは頼りになるからな~安心していますよ。」


「お父さんそれってどういう意味よ。私が大地を守ります。」

「お前は大人しく守られていろ。前に出たら大地くんが遣りにくいだろうが。」

「うぐぅ~இ……。」


「明子さん、明日は校長に伝えておいて下さい。夜明け前に発ちますから。」

「はい分りました、いいですよ。」


 明子姉さんは父さん達には小皿料理があるからと言って小さい鍋をテーブルの中央の右に置いた。私たちの前には大きな鍋をドンと置いてくれたのだ。それは、


「貴方たち、……若いからしっかり食べるのよ。」


 明子姉さんは優しい顔でそう言ってくれたのだよ、嬉しいね大地。それに私たちにはお肉が多かったのよ、極めつけは鍋の底にはカニが隠されていたしね。


「明子姉さん、このカニは?」

「勿論、麻美さんからですよ。黙って若い者どうしで食べましょう。」

「そうだね、」



 お父さんたちには焦げたシシャモでごめんなさい、やっぱり焦がしてしまいました。



 父さんたちの鍋は減らずにお酒はドンドンと減っていった。明子姉さんはお鍋の中身を小皿に取り分けて皆の前に置いて、新しいお野菜とお肉を入れている。


 お座敷に置いた大きい火鉢が大忙しだ。大きめの薬缶やかんに燗を付けられたお銚子が行ったり来たりしてて明子姉さんは忙しそうだ。


 そして不思議なのが床の間には双子が寝ていて……お土産扱いかよ、笑えね~。


 私はホロお婆さまの秘伝の梅酒を思い出して、図に乗って大地に氷を入れたグラスに注いであげたのよ。大地は「これ、美味しい」と言って一気に飲み干したんだけれどもね。そう言えば明子姉さんはニコニコと笑っていたな、どうしてだろうか。そして私には「飲まないがいいわよ」とも言っていたな、でも飲んだんだなこれが。



その夜、私は大地から構って貰えなかったんだから悔しい。朝になって文句を言ったら……これだもんね、


「亜衣音、お前が悪いんだぜ。あんなウミヘビの精力剤では意識が先に飛ぶに決まっているだろうが、効果は翌日だよ翌日。」


「へっ……ビ────、ウ……ミ、」


「あぁ、そうだな。大きい塊が沈んでいたぜ!」


 それから私の意識が飛んだ……私も少し飲んだからだ。何時ぞやのホロお婆ちゃんから飲まされた事はスッカリと頭から抜けている。


 明子姉さんが私たちを起こしにきたら、


「大地くん、……亜衣音ちゃん────?」

「こいつはお婆ちゃんの梅酒の中身を知って気絶しました。」

「あら~そうなのね、……お可哀想~! 飲んだのね。」

「バカだよ、全く。」

「あれ~? バカはどっちかな、どうして大地くんが亜衣音ちゃんに教えるのよ。中身が何なのかを聞けば当然……こうなるわよね。ちゃんと謝るのよ、いいわよね大地くん。」

「……はい、そういたします。」

「でも、私に任せていいわよ。」


 それからの明子姉さんは、台所に出されていたホロお婆さまの梅酒を片付けて白川家の梅酒の瓶を食卓に置いていたのだった。瓶はスーパーで買うから同じ銘柄で区別は付かない。流石の明子姉さんもウミヘビを取り出す勇気は無かったみたいだね。


「亜衣音ちゃん、この梅酒は泡盛で漬けるから直ぐに意識が飛んじゃうのよね。」

「これって、泡盛で漬けられた梅酒なの?」

「あら亜衣音ちゃんが出したままだよ。今晩も飲むのかしら。」

「梅しか……入っていなよね……だ・い・ち────○」

「う~ごめんなさい。あれは酔った勢いのウソです。」

「そうなんだ、あ~良かった。今晩、責任とってよね。」

「はい~、」


 私はお目出度い性格だ、昨晩の明子姉さんとの会話はすっかり忘れているのよ。


 それから皆はビュ~ンと日高山脈の沙流郡日高町に飛んだ、ワープだね。



*)邂逅……


「亜衣音ちゃん着いたわよ。此処がクロ、いえ雷神を育てられた牧場よ。どぉかしら何か感じないかな。」


 麻美お母さんにそう言われて周りを見渡しはしたのだが、小さい牧場という以外はいたってシンプルな牧場だ。沙流川の横に道を通している林道だから牧場も沙流川の横に在る。


「もう馬たちは居ないのでしょうか?」

「えぇそうなのよ、でも何某かの情報が巫女の力で解明出来ないかと期待しているわ。亜衣音ちゃん……どうかしら。」

「はい周辺を散策してみます。」


 私と大地の二人だけでは危険だからと麻美お母さんが付いてきた。それも紐のように長くなって……。


 今日のメンバーはお父さんに私と大地、麻美さんと明さん。この場所を探して頂いた麻美さんのお知り合いの男性が二人だ。お父さんと麻美お母さんたちのみで熊出没の情報が共有されていて、私と大地には教えてくれなかったのよね……麻美お母さんは酷いよね。合計の七人で捜索が開始された。


 私は周囲に巫女の気を送りながら何かしらの事象を捉えようとしていた。でも空振りだった。


 明さんの家から車で150キロの沙流郡日高町の山の中、とっくに昼は過ぎていて私のお腹はエンプティーだ、警報が鳴る。


「誰かな、」

「はい大地です麻美お母さん。よろしくお願いします。」

「へ~大地くんはあんなに先に居るのに亜衣音ちゃんにも聞こえたんだ。巫女の耳はとても性能が良いのでしょうね、私には聞き取れないよね。」


「えへへ……そうかもしれません、一度戻りましょうか。」

「そうね、ヘビが出たらイヤだし。」

「へ……び……で……しょうか。そ、そ~うですよ、も、もう。戻りましょう。」

「へ~亜衣音ちゃんはお婆ちゃんの特製を飲んだんだ。」

「え?……麻美お母さんは何をご存知でしょう……か?」


「北海道では飲んでありました。それだけですよ、ふふふ……気にしないで!」


「きゃ~大地。ヘビ~!」


 私は驚いた芝居で大地を呼び寄せたら勿論、直ぐに、


「バコ~ン!」

「戻るのか。」

「うん、お姫さま抱っこ。」

「バコ~ン!」


 本日二度目の大地の挨拶だ。麻美お母さんが用意したお昼はサンドイッチ、それも野菜とハムだけの凄く簡単なもので、飲み物はあるがお肉を使った煮物とかは無い。


「え~これだけ~? 大地のお腹が持たないよ。」

「邪魔らっしゃい、ここでお肉の匂いプンプン出しましたら熊さんも昼食に出てきます。私は熊さんのお弁当は作りませんよ。」

「麻美お母さん……ごめんなさい。」

「よろしい、一つ勉強になったね。」

「それでここに熊が出るとか言っていませんでしたよね、」

「亜衣音ちゃんは知っているよね、地元だし。」

「……大地が知らないのよ。」

「そこはそれ、妻が教えるべきではないのかしら? あ、あぁん?」

「はい……すみません、私の気が回りませんでした。」


 父さんと明さんは笑っているのだが、父さんは追加で震えているから怖いのだよね。


 暫くしたら何だか昔に経験したような感じを受けた。あの時はお弁当に沢山のお肉が入っていたのを思い出した私は、


「みんな気をつけて!……何か来る。」

「え”……!」



 森から河原に向かって旋風つむじかぜが吹いてきて、木々は大きく揺れていて落ち葉が沢山舞い上がった。ガササッ、という落ち葉がこすれる音が何度も聞こえてくる。


「クォーン!」「クォーン!」 なんだか可愛い泣き声が聞こえる。


「亜衣音ちゃん小熊だよ。だったら親も近くに居るから注意して!」

「大地……。」

「おう、俺に任せろや。」

「うんお願い。」


 可愛い仔熊だった、しかも二頭。「はは! 母の双子の生れ変わりだ!」とは思わない。仔熊が二頭山の斜面から下りて来て一頭はドジだった。一等賞で転がり落ちてきた。


「クォーン!」


 まだ高い所にいる仔熊が啼いている。お前はズルい? とでも言ったか。河原で二頭が揃ったところで沙流川を渡り近づいてきた。



「ガォォーン!」


 ひときわ大きい声がして続けて仔熊が吼える。

 

「クォーン!」

「クォーン!」


 大きいヒグマが走ってきて仔熊に追いつき並んでこちらへ来る。仔熊が戯れるから母熊だ。


「がううぅぅ~」


 山で別のヒグマが吼えるから父親だろうか、これは遠くで見ているだけのようだ。


「クォーン!」

「クォーン!」


 親のクマは何も言わずに仔熊だけが啼いているから母親に甘えているような仕草だ。


「Қа Д Гц Ж  Кц Ш Па Й Яә 」


 遠くで何かの声が聞こえる。そしてまた……


「Қа Д Гц Ж  Кц Ш Па Й Яә 」


 すると、親の熊は小熊を呼んで河原を通って山の木々の中に戻っていった。


「うぎゃ~あ~心配した。もし美味しそうな肉の匂いを流していたら、これはも~亜衣音ちゃんが真っ先にお弁当だったわね。」


「え~やだ。お父さん。麻美お母さんを黙らせて。」

「いや俺にも無理だ。怖い……。」

「ふん嘘つき!」

「おい亜衣音。父さんに失礼だぞ。」

「いいの、いいに決まっています、今日だけは……ですが……。」



 今度は聞き取れる声が聞こえてきて時期に大きなクマの姿が視認できた。私にはその言葉には何だか懐かしい響きがしていた。


「Қа Д Гц Ж  Кц Ш Па Й Яә 」「Қа Д Гц Ж Па Й Яә 」

「プりビェット!」(Привет!やぁ!)

「ズドらースト ブィーチェ」(Здравствуйте こんにちは、)


「亜衣音、何を言っているの、あ、あ~、あれは、く、クマですよね?」


「スパシーバ」(Спасибо ありがとう)

「オーチン プりヤートナ」(Очень приятно はじめまして)


「えぇ~森のクマさん?……ですか? クマさん一家を山に帰してくれたのですよね。」


「え~はい。……とても懐かしいわね、でも初めましてだろうね。」


「クマが・・・・喋ったぁ~~??」


 それは大きな大きなヒグマだった。ゆっくりと河原を歩いて近づいてくるから大地は左手で私を覆って守る態勢でとても嬉しいよ。



「ん~大丈夫よ少し頭が飛んでいるだけよね、」

「あ~亜衣音ちゃん……、」


「そのう~クマさん。私はとても思い出せませんわ、どちら様でしょうかしらね、」

「そうですね、人間の姿になりますから、その、そこのシートを私に頂けませんか。変身しましたらその殿方は喜び、奥方さまには怒られますわ。」


「ふふふ……可笑しなクマさん。お話が出来るだけでこんなに親密さが増すなんて。私にも意外でしたわ……もしかしてカムイコロさんですよね。一度位は麻美さんから聞いたような気がいたします。」


「おやおや、そうするとあんたはアイヤだったかな。」

「亜衣音と言います。そうですか、すると母達が大変お世話になったかと今更ながら申し上げます。その節はありがとうございました。」


「うぎゃ~、お、お、女……クマ、が、女になった。」

「お父さん、カムイコロさんに失礼ですよ。今はこんなに大きいのでしょうが、お父さんも何処かでお会いしていますよ。」


「カムイコロさん。こちらは私の父の白川穣です。そしてこちらが大地。もしかしましたらカムイコロさんと同じではないでしょうか。」

「いや違うよわたしゃ巫女だね。どうしてか洞窟で目覚めてしまったよ亜衣音、……あんただね? 私を現世に戻してくれたのは、さ。」


「亜衣音ちゃん、いつぞや話した怪力女の人かえ。」

「はいそのようです間違いありません。……それからこの世に戻したのは私に間違いはないかな。」


「亜衣音、良い匂いだよ残り物をくれないかな、もう人間の食べ物に飢えていた処さ。」

「大地、お弁当を運んであげて。」

「お前が運べよ。あいつは、臭い。」

「バコ~ン!」

「なんで叩く!」

「淑女のカムイコロさんに失礼ですよ。」

「う、俺でいいのか……まだ全裸だぜ。」


「大地ゴメンね。私は腰が抜けて歩けない……。」

「バコ~ン!」


 本日、三度目を大地に頂きました。大地はシートとサンドイッチを恥ずかしそうにして手渡していた。他には出来そうな人が居ないもんね、良かったね大地。


 カムイコロさんは大地を男とでも意識したのか、または人狼だと認識したのか判らないが、しおらしくなった。


「そ、そうよね。今から水浴びして長年の垢を落として来ます。」


 父さんが私の顔を覗いて、


「亜衣音、そうなのか。」

「お父さん起こしてよ。もう立てないよ。」

「アハハハ……。あれだけ気丈にロシア語まで話しておいてそれはないだろう。こりゃ~参ったアハハハ……。」


「இஇஇஇ・・・・・・。(同類だわ!)」



 カムイコロさんは惜しげも無く綺麗な裸体を披露してくれた。本人はイトウを食べ過ぎたから太ったと言うだけあって少し豊満というくらいかな、また大自然で育っただけあって羞恥心は無いのだろうか。


 本人曰く、


「俺はもう運動もしたくなくてね暇で食べるしかなかったよ。それに私の旦那にはもう嫌われたようだガハハ……。」


 だとすると森にいた大きい熊さんはカムイコロさんの旦那なの?


 私は取りあえず麻美お母さんに帰る事を進言した。今なら……もれなく、ね?


「亜衣音、まだ腰が抜けているのか。」

「まだ立てない、……抱っこ!」

「ケッ……仕方がないお姫さまだよな。」


 皆は微笑む私を見て悟り、そしてにんまりと笑ってくれたのだ。父さんはしかめっ面を作っているが気にしない。


 ありがとう大地、重たくないよね。


 白鳥家の牧場に戻れば即、山羊さんが絞められた。今日はジンギスカン料理。ほんとあのジンギス・カンさんは有名だな。だって私のご先祖さまよね、血筋は怖いよね肉食系女子だもの……。


 私がこの沙流郡日高町に来た理由を説明して夜は更けて行く。


「ここには大きな熊さんの像が在るから見に来たのよ。」

「莫迦言え、俺は生きているんだぞ。」


 カムイコロさんが現世に戻っていました。そしてお腹には……脂肪がタンマリとありまして双子でなくて残念です。


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