第44部 12月15日……強風の悪天候
*)12月15日……強風の悪天候……でも晴天
二学期の中間考査で順位を五十位まで上げた私。次は期末考査だ。
「おはよう!」x2
「オハー!」
「おはよう田中くん。寒いね。」
「そうだな、お前はまだ楽だろう。」
田中くんは多分だが私が車通学で楽していると言いたかったと考えて、
「えぇそうよね。私は寒い道産子産だからこれ位は何ともないよ。」
「そっちかよ。」
「そうよ、それがどうしたのかな。」
「今日からは部活も休みだろう。これでも行くのかな。」
「勿論よ、寒くても平気だし……だってクロが待っているし私も会いたいのよね。」
「田中くんもお出でよ。それにさ~私は放課後になっても帰れないのよね。」
「そうだよな親父が居るよな。それなら俺も付き合ってもいいぞ、良かったら乗馬も頼みたい。」
「へ~クロの虜になったのかな~?」
「えへへ、あのクロの高さは最高だよ。競争馬が小さく思えたからね。」
田中くんが急に笑顔になったから、私もついつい嬉しくなって口元をほころばせたようで突っ込みが入る。
「なんだよ、今日は良いことがあったのか。」
皆は自宅勉強に臨むらしく帰り支度を済ませていそいそとして帰っていく。だがしか~し、皆は出口で振り向いて私を見て笑っている。私は壁を背もたれにして教室の中を見ているから、帰る女子の顔も一人残らずに確認できる。ある者は軽く手を振りやがった。あの双子がそうだ、残りの二人はそんな光景を見て笑ってもいる。
「あ、いえね、帰る人が私を見て笑うのよね。足を広げすぎたかな。」
「ブッ!……ばか、笑わせるなよ。こっちが恥ずかしくなる。」
「田中くんは私の足はもう十分に眺めてくれたでしょう? それでもまだ見たいのかしら。良いわよ、今日はスカートで乗ってあげる。」
「るせぇ!……でも、まだ走る体力は無いだろう。」
「そうね、でも乗馬だけして両手でピラピラとしてもいいよ!」
「バコ~ン!」
「ゲッ!」
「バ~カ!」
私は図に乗りすぎたようで藍ちゃんからぶたれてしまった。先ほど前の出入り口から帰っておいて裏口から来なくてもいいのにね。
「もうこの子は何とはしたないことか少しは自重しなさい。いくら過去があるからと言っても未来ででも見せなくていいのよ、……分るかしら?」
「だって田中くんが見たいと言うから、ね?」
「バコ~ン!」
「うぐぅ~!」
「うぐぅ~じゃありません。これだから亜衣音は面倒が掛るのよね。いいわ、私も付き合うから。」
「え! 藍ちゃんもスカートで乗馬するの?」
「ば~か乗りませんよ。監視してます。」
「な~んだ喜んで損した。未来も来るのかな。」
「あんたのスカートは校内一短いので有名なの、知っていますよね。」
「し~らな~い。」
この頃になってようやく明神さんを『未来』と呼べるようになった。未来とは苫小牧の白鳥家の次女の名前だから呼びにくかったのだ。田中くんは話の流れが自分へと向かって来ないように念を込めて私に送ってくる、これが所謂「秋波」なのね嬉しいな~。
「そうね、私は亜衣音ちゃんと替わって成績がよろしゅうございますから付き合いますわ。」
「だったら双子も呼び止めたら良かったね。」
と、私が言ったら未来は、
「あの二人は学費を稼ぐ意図で帰るようよ、いつもは部活でしょう。それからお店のお手伝いだから勉強が不足しているのかも。」
「ふ~ん……そうなんだ。だったら一人ずつでも交互に勉強と手伝いをすればいいのにな。」
「あ~それ、いい。とても名案よね。明日来たら教えてあげようね。」
「そんなのは知っているでしょう。まさか二人で一人とか言わないよね。」
「さぁ、それはどうでしょうか。案外抜け作かものよ。」
「わ~藍ちゃんヒド~い、……アハハハ……。」
「亜衣音も相当だわよ、そこ、笑う処ではないよね。」
「うんうん。」x2
「ふふ~ん!」と、私はよからぬ考えで嗤っていた。
馬事公苑に着いたはいいが今現在の気温は7度位か、風は北東から十二m/s程らしくてこれでは木枯らしだな。
女が三人集まれば女女女=姦しだ、教室での会話はどこへやら。私はホロお婆さまを呼びに行った。
「お婆ちゃんは直ぐにくるからさ、着替えれば?」
「藍ちゃん、着替える?」
「そうね、せっかく服を持っても来たから着替えようか。」
「寒いしね、そうしよう。」
「俺も着替えてくる。」
「うん、私は先に馬場で待っているね。」
「亜衣音ちゃんは着替えないの?」
「乗らないからこのままでいい。」
私は先に行ってクロに乗るんだ、そして馬場で田中くんを待つのよ。
「ホロお婆ちゃん早くして。」
「おやおやその格好で乗るのかえ、え~おなごがね~。」
「いいのよ、今日は北風が強いからおあつらえ向きなんだ。」
「ホェ、ほら出来たよ。」
「クロ行くよ。」
「ブヒヒヒ~ン!」
と、私。それから十分後、田中くんは二人の女子を呼びに来てドアをノックしてるから田中くんと判断出来る。私はノー合図でいきなりだからね。
「先に行くぞ、」
「は~い、」x2
広い部屋では無いのだからドアの外の声は十分に聞こえるし、予想通りに女の二人は着替えは遅い、寒くても遅いのは何故だろうか。寒いと急いで着替えるのが人情よね。
私は中央にある木々の茂みに隠れて田中くんを待っていて、田中くんは馬場に出てきて私を探す姿を確認してから私は茂みから出て田中くんの前に出た。
「田中くん~。寒いよ~、キャ~……、」
「あ……、へ、……あ、……え~~~。」
田中くんは見事に私の恥ずかしい現場を見事に脳裏に焼き付ける事ができたのだった。私のスカートは短いし北風により見事にめくれたのだ、これはもう大成功よね。
「あんれま~亜衣音もなかなかやるもんだわさ……。何ともま~尻の軽くなってからに。」
馬場の入口からは血相を変えた二人が走ってくるのが見えた。すぐさま、
「バコ~ン!」
「ゲッ!」
「バ~カ!」
「うぐ~……、」
「田中くんは今晩眠れませんよ、良いのですか。」
「勉強するから寝なくてもいいでしょう。」
「バコ~ン!」
「うぐぅ~!」
「うぐ~じゃありません。これだから亜衣音は面倒が掛るのよね。」
私は直ぐにクロから降ろされて田中くんが乗馬して、それに二人は老馬に乗馬して三人で仲良く歩き出したので私はホロお婆さまに目を遣った。
「もうあの三人は目を離しても大丈夫だべさ。」
「お婆ちゃん、ありがとう。」
「いいさ、ウブじゃのう……。」
「私の王子さまだよ、今ではね……。」
「でも、良かったのかい?」
「え、なにが……?」
勿論、第三の目を完全に忘れていた。澪霧さんもしっかりと眼に焼き付けていたという事をだよ、他にも写真にも写されていたし……。
「これは一大事だわ……。今晩は戦争よ! 問い詰めてやらねば……。」
「なぁ、ニキータさん。可愛いわな。」
「大きく引き延ばしておやり。急度あの小僧は喜ぶよね。」
「それであの生徒の正体はなんだい?」
「白馬の王子さまだろうて……。」
「そうかぁ? あれはどう見たって違うだろう。」
「明日、このショット写真を渡すか!」
この日を境にお互いがお互いを意識しだす。田中くんは綺麗なショット写真で勉強に手が付かない。私は何度も何度も思い出しては顔を赤らめるのだが、ここで追い打ちを掛けるように忘れた頃に澪お姉さんが、
「どうかしら、田中くんとは上手くいってるのかな。」
「澪お姉さん、もう言わないで勉強が出来なくなるんだから。成績が落ちたら田中くんとはもう一緒になれないのよ。」
「へ~そうなん、だったら頑張れ!」
澪お姉さんは毎日のように私をからかって遊ぶのだから本当に参ってしまう。二学期の終業式当日、渡された成績表から目に入る数字が……、
「ちょっと亜衣音、見せろ。」
「や、」
「で、田中くんはどうなのよ。」
「……落ちたな、今は十位になった。」
「う~私は中間が五十位で期末は八十位だよ、泣けるね。」
「そうか、俺は一桁でお前は二桁も落ちたか、これではお別れだな。」
「や! 次から頑張るもん。田中くんを追い抜いてやるからね。」
期末考査の成績は、、、私と田中くんは仲良く順位を三行ほど
下げた。
どうです、三行下がっていますでしょう?




