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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第四章 退屈な高校生は反転、超楽しい……

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第41部  お母さん。内緒で仕事始めたの……?


 1968年10月20日 東京・世田谷


*)お母さん、内緒で仕事始めたの……?


 私は退院した翌日から登校した。級友たちはとても心配していてくれていて私の机に花瓶が添えてある程に……。だが私は目にする事は無かったのだ。かの田中くんが朝一に気が付き、処分してくれていたというのは十日後に聞いた話だ。


 私の退院を知る人とは誰だろうか、あれから十日は過ぎたからもう判らないのかな。



 部活開始前の二十日に、この馬事公苑の注意等を受ける為に私と父が終日にわたって勉強会を押し付けられていた。もう一人、ホロお婆さまも参加してくれたが教官からは無視されていた。後日談では、今度はこの教官はホロお婆さまから完全無視の扱いを受ける羽目になっていた。


 ホロお婆さまはボケてはいないんだよ。


 日曜日は休館日だからの講義だろうか、職員さんは最低限の出勤でありエネルゲンの食堂もお休みだ。お昼抜きで講義を受けたがさすがに悲鳴は上げられなかったよ。だって私達に付き合う職員さんも昼抜きなのだからね、うんうん。


 講義後はさすがというのか骨休めにクロの乗馬を許可してくれた。


「おじさん、ありがとう。」


 フィールド内の障害物を飛び越えて遊んだんだよ、もちろん風は起こさなかったから。私はお腹ペコペコでも、ホロお婆さまはきちんとクロには食事を与えてくれていた。


 だって職員さんが少ないので日頃のお返しにと手伝うらしいのだ。馬の世話と牛の解体作業はピカイチだものね。だから馬には好かれて牛には後ろ足で蹴られる事が多々あったというから凄まじいか! ホロお婆さまは肉への解体はピカイチであるからきっと牛の怨念が取り憑いていたりしてね。



 ホロお婆さまは今日は泊まりだという、急な夜勤や宿泊もあるらしくて寮も完備なんだって。


 ホロお婆さまは一ヶ月を目処にしてクロの調教を見てその後は北海道に帰る予定だったそうだ、とある人物に会うまでは……。



 1968年10月21日 東京・世田谷


 翌日に私は嫌がる藍ちゃんを引きずって馬事公苑にやって来た。明神さんはワクワクしながらの見学で、目の色が変っているのが田中くんでもうやる気は満々だそうで、そんな目つきで私を見ないでくれないかな。

 それから双子は……間近で見る大きなクロが怖いからと尻込みして首を縦に振らない。だがしか~し私には奥の手がある。



 私達はあてがわれた一室に入った。ここが部室になるのだが荷物は常に置いておけないのが難点かもしれない。私は得意になって、いや晴れやかな気分になってかな、私が持っている乗馬服をバッグから取り出して説明を始めるのだが、私の後ろにはホロお婆さまが居て他は段ボールの箱が在る。



「ほら、これに着替えるのよ。馬場シャツ……。」

「ブヒー!」x4


 と、私の冗句に笑い転げた双子だが男子の田中くんにはダジャレが通用しなかった。なぜか、小さい時には着せられていたというからどんだけの田舎か。藍ちゃんが今でも嫌がるし、明神さんは……ファッションに興味があるので着たいと言ってくれたのは嬉しいよね。残りの二人の女には今から攻略したい。



 私はファッション性のある綺麗な乗馬ウェアと下着を見せびらかした。


「私達これを着て馬に乗るのよね、もう男子にはモテモテは間違いなし。どぉ?……気に入ったかしら。」


 私がホロお婆さまにお願いして、ホロお婆さまは馬事公苑の事務員さんに綺麗な乗馬ウェアと下着を取り寄せてもらっていた。私が気にもしなかった服の代金は全部ホロお婆ちゃんが支払ってくれていた。きっととても高額だったはず。ありがとうございますホロお婆ちゃん。


「だからさ、ホロお婆さまはボケてはいないんだよ。」

「うんうん、」x5

「それでどうよ……着たいよね、この綺麗な燕尾服とトップハット。それにこの白いキュロットに黒いブーツでしょう? と、この白い手袋だよ。もう~これだけで白馬の王子様が迎えに来るのよね。」


 テーブルの上に人の形となるようにこれらの服を綺麗に並べてみたところ、


「私……着たいかも。」x5

(うふ~ん、チョロいね!)


 ここでホロお婆さまが私達に声を掛けてきた。


「亜衣音さん、ここは一つ見本にあの女性に着て貰ったらどうだい。それと亜衣音さんも着てみたがいいね。」

「そうですね、着付けも職員の方に教えて貰おうかな。」

「う……ん、そうしておくれよ……。」

「ホロお婆さまは、泣いてあるのですか?」


「あ、いや、これは逞しい亜衣音さんを見たからね、もう嬉しくてね。では足を運んで頼んで来るよ。」


 私は田中くんを追い出してこの綺麗な燕尾服を着込んでいく。私が変身していく姿を注意深く観察するのは明神さんで、後の三人はややウットリとしながら私を見ていた。三十分程してホロお婆さまは戻ってきたので私たちはホロお婆さまの後ろに続くモデルの女性に目をやった。


「な~んだお母さん、内緒で仕事始めたの……?」

「亜衣音さん、こちらはね……。」

「え!……****?……、お母さまよね、違うの?」


 他の五人も私と私の母にソックリな女性を見比べて大きく目を見張る。私は自己流ではあるのだが既に乗馬ウェアに着替えていたからか二人ともソックリだと言われた。


 トップハットを被っているから目の下からの比較になるのだが、やや痩せた背格好も同じで自分が見ても鏡を見ているような錯覚に落ちた。


 目の前の女性が相好を崩して私に近づいてきた。トップハットの陰になる目元が見えたらそこには大粒の涙が見えていて直ぐに流れ出す。


「亜衣音さんなの?」

「はい、しら……かわ、亜衣音ですが、もしかして澪霧のお姉さんですか……え……そんな、ねぇ、ホロお婆さま。……そうなのですか母ではないのですか。」

「亜衣音さん、澪霧さんだよ。お母さんの姉妹さね、ここで見つけたさ……。」


 ホロお婆さまはそう言ってうずくまり大泣きになった。それでも澪霧さんは私の顔に手を添えて離すことはなくて、留めない涙を惜しげもなく流してきた。


 私は必死になって涙を止めようとした。それは瞬きも増えて涙が流れては澪霧さんの顔は見られないからだ。


「澪霧さん、トップハットを取ってもよろしいでしょうか。私のトップハットも取って下さい。」

「えぇ亜衣音ちゃん、喜んで、」

「一緒にとろうか、」

「そうね、一緒にね。」


 私達はゆっくりとトップハットを頭から、後ろにずらすようにして取った。


「わ~双子みたいだわ。」


 声は聞こえたが誰が言ったのか理解出来なかった。


「亜衣音ちゃん、貴女たちは姉妹なのでしょうか?」


「ううん違うよ。お母さんの姉妹で……あれ? れ?……。」

「私は亜衣音ちゃんのお母さんの妹よ。あの時の赤ん坊がもうこんなに大きくなって、もう、もう……、」

「澪霧さん、会いたかった~……。」


 二人して抱き合って泣き出してしまう。ここでホロお婆さまが気丈に振る舞って私の友達を連れて外に出てくれて、物音で判ったような、まだ其処には誰かが居るような妙な気分になった。


 外では大きな声が聞こえて来た。そして大きな音と共にドアが開かれて、先に母が、少しして父が、『ワシが先だ~』と祖父が続いて祖母が雪崩れ込んできた。


「沙霧~、」

「澪霧~、」

「澪霧さん、」

「おぉ、澪~……、」

「澪霧さん、お帰り、」


「え、え、私はどうしようか……そうね、クロに報告に行こうか、もしかしたらお礼を言うべきかな、うん、クロ! きっと待っているよね。」


 私は外に出て友人を目で探していたら、直ぐにロビーの椅子に腰掛けてる姿を見つけた。多分私達の事を話題にしてるだろうと思い、少しはにかんで声を掛けるのだった。


「お待たせ……ここに居たんだ、」

「亜衣音ちゃんは出てきてもいいのかしら?」


「あそこは親たちだけでいいのよ。子供は明後日でいいわよ、そうよね。」


「ん~私には判らない、クロの処に行きたいのよね一緒するわ。」

「うんありがとう。今日はごめんなさい、私の家族で部活が流れてしまったわね。」

「亜衣音ちゃん、そんなことは些事なのよ。皆で集まって駄弁ればもう立派な部活だよ。私、亜衣音ちゃんの乗馬を見たいな。」

「うん、私もね、」x4


 私は藍ちゃんたちに慰められていて、次はクロに乗馬を頼むね。


「クロ! 澪霧のお姉さまをありがとう……乗せてくれるかな。」

「ブヒヒ~ン! ブヒ。」


 私は風を操りクロに乗馬するのだがこれを見逃す連中はいなかった。説明が~出来ないかも。


 ホロお婆ちゃんから自宅に電話連絡は恐らくだが、澪お姉さんが着替えている間にされたと思う。そうなるとだ、直ぐにお父さんの両親へ連絡が行き、祖父は更に千歳空港にもジェット機の使用連絡が飛んだはず。次にお父さんは札幌の両親へ連絡するも留守だったと。ならば麻美お母さんは智治お爺ちゃんの行き先を知っているのかと電話をしてみると、麻美お母さんは、


「はいはい、今日は支笏の温泉だべさ。明日には帰るべ。」

「そうですか、実は澪霧さんが帰って来たのです。」

「ほんまかえ~~!!」

「はい、ほんま……本当ですよ、麻美さん。」

「す、直ぐ行く、待ってて下さい。」

「急がれなくてもいいですよ。もう何処にも行かせませんから。」

「そ。そうよね。うん、そうね。だったら老婆心で老馬を一頭連れて行くから四日の日程を頂戴。楽しみにしているわ。」


 麻美お母さんが電話を切るや否や今度は白川のお爺ちゃんから電話連絡が入り、


「あ~儂じゃ、直ぐに東京へ来い! ジェット機の使用連絡はしておいたから直ぐに向かってくれ! 以上。」

「あ、白川さん……ピーピーピーなんだ一方通行じゃんかよ。」


「白鳥です、済みませんが手短の誰かを呼んで下さい。」

「あ~はいはい、いつもお世話に……はい? 至急呼んでまいります。それと宿泊は……わぉキャンセルだと、はい承知致しました。」


「と、智治さん、桜は咲いていますか、いや居ますか、澪が澪霧さんが今東京に、はい、足はあるかと思いますが、直ぐに赤の車でこちらに……もうジェットが待機だそうで、それとも落ちそうなヘリで? いやいや死ぬ前に澪霧さんに一目会ってから天国へ、はいはい急いで下さい。」


「ふぁ~……疲れた~……何着て行こうかね、澪……無事で良かっただわさ~。」


 一時間後には全員が揃い、二十分後には全員が目を廻し、更に二時間後には落ちそうなヘリコプターに乗って立川飛行場から陸上自衛隊の用賀駐屯地へと到着した。本当だろうかと疑いたくなるようなレコードが記録された。麻美お母さんと明さんは千歳空港で別れたという。なぜ? 赤のスポーツカーを牧場に駐車させなくてはならないからだ。また、麻美お母さんは馬を一頭連れて改めて出ていくのだからね。



 そして……燕尾服の私を見つけたというから驚きよね~。


 澪お姉さんが帰ってきたという両親らへの連絡は、私の当たらずとも遠からずという妄想に過ぎなかった。ある部分は事実ではないのだ。


 私は明子姉さんが不在な事と、両親達が一同に現れた違和感を見逃していた。きっと気になっていた澪お姉さんと会えた喜びで気が付かなかったのだ。……今現在の明子姉さんは独りで何処に居るの?


 昨日から大雨になっています。今年の梅雨は大した被害もなく明けてくれた。ここは梅雨の平均的な降雨には達していなくて、必ず年平均の梅雨の降雨は変動が無いくらいに降るのだとか。今年は8月になって大ぶりになって降ってきた。今日は何度か非難警報の携帯の音が鳴っていたな。


 皆さま、どうか被害がありませんように……。

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