第4部 父と娘 母と娘
1959年9月19日(昭和34年)北海道・札幌市
*)智治
智治は今年で四十四歳になると思われるが、エストニアから帰る途中の平行世界で約十年ほどを過ごしている。実質で五十四歳位だ。だが? 歳を取っていないようだ。1918年から1930年に時間移動しただけだろう。もっとも平行世界で命に関わる大怪我を負ってしまい、人狼へと変えられてしまったから人生もまだまだ先が見えない。ある意味では智治も日本では生きづらい人生を歩むはずである。
1955年9月19日(昭和30年)に桜子と娘の四人を亡くしてしまった。こんな事なら行かせるべきでは無かったと毎日のように後悔した。
今日で四年目になる。
今まで暮らしてきた家族が消えてしまったのだから如何ともし難い。
霧との間の可愛い双子とも同居で、桜子とは大学を卒業してすぐに結婚した。そうして桜子との間でも何故か双子の女の子が生まれた。1931年に結婚したから二十四年の時を過ごしてきた。
「さくらさん。本当はどこかで生きているんだろう? このままではみんなのお墓は造れないよな、沙霧、澪霧、綾香、彩香、何処で生きているんだい?」
「…………。」
「俺が死んだら家族と再会が出来るのかな……。」
……と思うのだ。
仏壇を用意する気は全くない。だからと五人の写真を箪笥の上と、寝室の箪笥の上、それから朝夕の挨拶にと、玄関の下駄箱の上にも飾っている。朝は行ってきますと言うし帰ったらただいまと言う。毎日の日課になっている。そうそう飯台の上もだ。
「あ~四年前は仕事を休んで飲み明かしたな~、よく死ななかったと思うよ。」
今日も独りかと考えると口を突く言葉はいつもの言葉だ。会いたい、どこで生きている、俺も死にたい、死んだら会えるのか、などである。
毎夜はとても辛くて女房と娘らを思い出しては泣くことも多くあった。妻想いの家族想いの人狼にすればそれはもう極刑に近い。
今日、9月19日は土曜日だったから仕事は瀬戸家への訪問のみにした。上司に許可を貰っての訪問だ。瀬戸家は競走馬の肥育や調教が主な仕事で、牧場の牛や馬、羊は少数の飼育になっている。
今では畑を狭くして競走馬の訓練地を長く広げている。それもみんな明さんが騎士を引退して牧場を継いだからに他ならない。
智治の会社は農機具のメーカーで、智治は全道を駆け巡って農機具の販売とメンテナンスを行っている。その仕事の序でにと瀬戸家を訪問したのだ、ずるいか!
「おう智治くん、随分と久しぶりじゃないか。」
「ええ今年は農機具の更新になったのか、彼方此方に飛んだりしてとても忙しかったですね。」
「智治くんは多分そうでもないだろう。」
麻美の父は智治の気持ちを察していた。智治は家族との別れの悲しみを少しででも忘れようと思い、仕事に打ち込んでいるのだと。人狼は痩せるような人種ではないのだが、事、智治に関しては数年前と比較したら痩せたと言えるようで食事が問題なのだろう。
心当たりのある智治には反論が出来ない、無口になった。
「…………。」
「今日は泊まりでいいのだろう? 社には帰らんのだろう?」
麻美の父は言葉を替えて同じ意味を言う。思いやりのある言葉に釣られて直ぐに返事を返す智治。
「はい上司の許可は頂いてきましたから今日はお世話になります。」
智治は成績優秀であるから今は管理職の部長で、上司とは社長になりこの社長は智治には一目を置いているとか。岡目ではないから智治も仕事ではいい結果を出さざるを得ないらしい。管理職が営業に出るのは異例とも思えるも、智治が売り上げた機械に関しては全てを覚えているとか。稼いでくるならばと社長は智治を自由にさせている。
「あらあら智治よく来たね。」
義母のホロであり今では牧場の手伝いで忙しい毎日を送っている。札幌の時よりもとても若く見えるのだった。ま、札幌の家では桜子に遠慮していたから猫になっていたからだが。牧場の仕事以外では亜依音の相手もしなければならない、とても老いてはおれないとか言う。
桜子が帰らぬ人となって暫くはホロお義母さんが同居し、飲み友達となっていた。(智治は死なせないよ、というホロの心の声が聞こえてきた。)
「亜依音はまだ散歩中でしょうか。」
「直ぐに帰るよ。お爺ちゃんが来た! と感じるらしいがね。」
「ほほう……それは凄いですね。」
そうこうする間に遠くからクロが大きな嘶きを上げる声が聞こえてきた。
「ほらもう聞こえるだろう? もう林の中だね。」
「お義母さん、亜依音を迎えに行ってきます。」
と言って踵を返した智治には麻美の姿が見えたからか、智治は直ぐに麻美の所へ行くのだった。一通りに挨拶を済ませたら亜依音が帰ってきた。
「こんにちは~お爺ちゃん。」
「やぁ亜依音ちゃん、元気そうだね。」
「うん、クロも元気だよ。」
麻美はホロに向かって、
「お母さん、今日は騎手の方が多いのでお昼のお手伝いをお願いしますね。」
「あいよ、いつもの事だ分かっているよ。」
「ママ~亜依音もお手伝いするよ、お買いものがあるかな。」
「今日は大丈夫だからさ、お爺様のお相手をお願いね。」
「うん。」
「よ~し亜依音。柵越えを見せてくれないかい、久しぶりに見たいな。」
「うん! たくさん跳んであげる。」
麻美は遠目に親子みたいにじゃれ付く二人を見て台所へ行った。
「智治も可哀想だと思うけれども、なんとかしてあげられないかね~。」
「お母様! 我が子をそう不憫に思うものではないと思いますが?」
「だけどね~、麻美……。」
「ほらお母さん、煮つけ用の野菜を切って下さいな。」
「お魚は私が調理いたします。」
「はいはい、ごはんと一緒に煮つけも作りますよ麻美。」
麻美は母のホロから名前で呼ばれるのが嬉しい。麻美にしても実母のホロはいきなり目の前に現れたから実感がなかったが、瀬戸家の養母がやはり母という感じがする。
麻美に母は二人が存在していて、ホロは実母だし瀬戸家の母は養母になる。
麻美には本当の名前があって「ユキ」と両親から名付けられていたが、ロシアの地で親子が離れ離れになりユキの記憶も無くて三浦教授によって助けられて日本へ来た。麻美とは日本で名付けられた名前だが、今ではホロもこの麻美という名前にスッカリと慣れてしまっている。
牛が多かった昔の牧場の朝は早く、麻美の養母は起きて牛や馬の世話をしてそれから家族の朝食を毎日作ったものだ。今は麻美が同じ事をしていて、それに加えて今では若い騎士さんの賄いも用意している。
「ふぅ~やはり大変だ、朝の子共から昼の賄いからと母は本当に偉大だったと思うよ。」
「そうだよ親には感謝しなさい。」
「はい、お母様。」
「いやいや私には感謝とかするもんじゃないよ? 判ってる?」
「う~ん……でも一応感謝しておくね、お母様!」
「はいはい、ありがとうね。」
麻美は沙霧の事を思い出した。やっと幸せな家庭が出来たと思っていたのに、直ぐに離れ離れで最後はもう…………。
私は母になれたけれども母になれなかった沙霧、今頃どうしているかな~。
「ほら麻美、お魚の煮汁が吹きこぼれていますよ。」
「あらあら大変だ、こういう時はお水を入れてと。」
「少しでいいんだよ、多いと味が薄くなるさ。」
「ごめんくださ~い。瀬戸さ~ん、麻美さ~ん。」
「は~い。」
………………………………………………………………………………………………
*)穣
「あら~穣さん……よくお出で下さいました。今は母と昼食の用意をしていますの、先に亜依音の所へ行ってくださいな。お爺様もいらしていますから。」
「亜依音は私の事を好きではないようなんですよ、だから私は勝手にお茶を飲んでいますのでおかまいなく。」
「嫌ですよ穣さん、亜依音はお父様を嫌ってはいません。どう接したらいいのかが判らないだけですよ。女の私が言いますので間違いありません。」
「ええ……それならば嬉しいですが……暫くはお義父様にお父様をお願いしておきます。」
「はは、お義父様を…………父の代役にねぇ~?」
麻美は親子の縁が不思議に思えた。麻美は実父とは生き別れして再会も果さずに実父はエストニアで死んでいるが、幼い時の記憶がほんの少しあるだけだった。父の写真は高校生の時の写真を安部教授に頂いていて、写真の父が若すぎて実感すら出てこない。阿部教授のお兄さまが麻美と霧のお父さんなのだ。もしかしたらロシア軍に父の手配書が残ってはいないだろうか?
麻美は今では息子のような父の写真を眺めてはため息しか出て来ない、ま~それでも実父は実父なのだから。
「何よこの写真、やっぱし父と娘の関係は難しいのかな………。」
とは麻美と実父の事を言っているのだが、それでも自分の境遇と亜衣音と穣との関係をも重ねて言っている。口では穣に対して大丈夫と言いながらも。
「複雑だわよね~……。」
居間のラジオからは黒い花びらが~夕日に………と聞こえてきた。
「この歌は立花 晃? だったかしら。」
この後も六・八コンビがヒット曲を連発していく。(永六輔、中村八大)
瀬戸牧場の昼食時間は遅い。騎手の皆さんが先に昼食となり瀬戸の夫妻とホロは競走馬の面倒をみに行く。それで騎士さんらの賄いは麻美が一手に引き受けている。一同に会せないのは競走馬をトラックから出したままだからだ。今日は馬が五頭もいて多いほうだし麻美は騎手の五人を纏めて面倒を見ている。
「麻美さんご馳走になりました、また明日もお願いします。」
「はいはい、明日もお待ちしていますわ。」
「ふ~やっと終わって今度は七人か~……少し大変かな~。」
ため息を吐いて騎手の食事の後片付けを終らせ、今度は家族の分の用意を始めるのだ。明、麻美、ホロ、亜衣音、両親、穣さんの七人になる。
いやいや三人の子供を忘れていた~と、慌てて家に駆け込む。
「明子~……幸樹~明来~……。」
「はーい。」x3
十人からの全員が揃えば母屋のひと部屋は満員かな。
「今日はお姫様の機嫌がいいだろうな?」
予定通りに賑やかなお昼になった。亜依音は二人のお父様? の間を行ったり来りで少しも落ち着かないのだ。
「だいたいお父様が亜依音にご飯を食べさせるのが悪いのよ。」
だそうで、二人の男が娘の口を開けさせて投げ入れるとか、これはとても良くないごはんの食べさせ方だ。甘える亜依音に文句も言えない麻美だった。(今日だけだからね明日からは見てらっしゃい!)
亜依音が話す事は一つでクロとどこそこに行ったとか、川に落ちたとか、クロとお昼寝したとか。亜依音の言葉からクロという単語を除いたら面白いだろうか。そうなると少しばかりの単語と接続詞が残るだけだ。
「亜依音ちゃん、今度はお父様にクロの柵越えを見せてあげなさいよ。」
「うんいやだ、お昼からはお馬さんと駆けっこをするの。競争よ!」
あらあら亜依音はまた競走馬に混じって競争するのだわ。「競争よ! 戦争よ!」とまで言わないだけでもいいか。
「亜依音、全力で走ってはダメですよ分かっていますね?」
「うんお兄ちゃんが落馬するから亜依音は力いっぱいには走らないよ。」
亜依音とクロは全戦全勝だったから亜依音は得意顔になる。
「えっへん、クロは速いでしょう。」
「うんクロちゃんは速いよ、とても勝てないや。」
それもそのはず、競争馬は調教しながら走らせる、だから全力では走らない。同時にクロも同じく全力は出さない。全力疾走では勝敗はどうなるだろうか。麻美が言うように騎手は亜依音の風魔法で全員が落馬するが正解だ。
麻美と亜依音が一緒にトラックを走る姿は微笑ましく見える。亜依音はもうとても喜んでいるのが見てとれるからだ。
穣は柵越しに亜依音がクロと走る姿を見て微笑んでいる。
亜依音は麻美から上手に調教されていてまだ力の暴走は無い。亜依音が無意識に己の力・風魔法を放ったら? きっと牧場が壊れるかも知れないのだ。このような事を穣は知らないし、この牧場での生活は亜衣音が中学校を卒業するまでという条件がついている。中学を卒業すれば亜衣音は東京へ行き父と生活を共にする。
九月中旬だがこの日はよく晴れていたので暑いくらいだった。
亜依音の笑顔が可愛い、穣は在りし日の沙霧の顔を思い浮かべた。
*)母娘の全力
母の麻美は穣と智治が来ているのでいつもの亜依音の姿を見せようとしている。それが母娘での競争だ。
母(40歳)VS亜依音(6歳)が競走馬とクロの二頭で競争する。普通にはありえない光景だった。目的は亜依音が全力をだしたらどういう変化が出るのか、もう一つは穣と智治に亜依音のあるがままの姿を見せるためだ。
「亜依音、楽しいね!」
「うんお母さんと走れて楽しい。」
「う~ん……五周回ったら競争しようか、走れるかな~?」
「大丈夫だよ何周でも走れるよ。」
「そっか! じゃ競争しようね。」
「うん競争する。」
この様子を見て麻美の夫の明は亜依音が騎手になるのではないか? と危惧している。穣には全く判らないが智治は、まま? 考えなくも無い。
「お父~さん、そこに立っていて~。」
「おう、ここでいいか。」
「穣さん、そこでお願いします。」
「さ、亜依音。今度で五週目よ。お父さんの前から一周だけの競争よ!」
「うん。お母さんに負けないよ。でも全力で走ってもいいの?」
「そうよ今日だけだからね亜依音! 全力でかかって来なさい。」
「あなた~スタートの合図をお願いね~。それと念のために時間を計測させておいてね~。」
麻美の声は野太いから少し離れていても周りの者には良く聞こえるらしい。
「おう任せろ! 亜衣音~負けるなよ~。」
「なにを言うのよ。いったい誰を応援するのかしら?」
「もち亜依音だね。麻美~最近太っただろう?」
「もう、いやな事を言わないでよ。精神攻撃は効かないわよ! あなたは今日からお酒抜きね!」
「わぉ……怖いわ~麻美~頑張ってね~。」
「そうよ最初からそう言えばいいのよ!」
「も~お母さんはひど~い。」
「おう亜依音~お父さんとお爺さんが応援するよ~。」
「うん、お母さんには負けないよ!」
「ようし二人とも並んだからスタートの合図をする。この棒で地面を叩くからな、いいかい。」
明は約十メートル先に立って棒を上段に構えて三秒後に力任せに振り下ろした。二頭は遅れることなく走り出す。
「おう~……これは凄いな。麻美は怖い顔をしてるし亜依音は笑ってたな。」
「お二人ともしっかりと見て下さい、これが最初で最後でしょうから。」
「ええ? そうなんですか?」
「多分ですが。でも……軽めの並走は今後とも欠かさずにします。」
穣にはこの明の言葉の意味が判らない。
亜依音と麻美はコーナーまでは殆ど同じだった。最初のコーナーは大きな曲線になっているから内側を走るのが有利だが、二つ目は幾分か急な曲りになっている。第二コーナーはやや外側が有利かも知れない。
第一のコーナーを曲がって直線になると麻美は内に入った。亜依音は半馬身ほど遅れて外側を走るが直線の区間でほぼ並走になった。
「おう~亜依音も麻美も上手いもんだ、とても速いよ。」
「智治さん、二人のタイムも立派ですよ。元似非騎手とチビ騎手、これは亜依音が優秀だという事ですね。」
「亜依音とクロの相性がいいのですね。」
第二コーナーで亜依音はやや外側から内側へ踏み込んだ。押されるようにして麻美が外側へと膨らむ。その前で亜依音は半馬身ほど遅れたのは無理にコーナーを攻め込みたいからだろう。もう亜衣音には競馬の懸け引きが出来るという事に他ならない。
二人はコーナーを曲がりきったところで並び、ここから勝負を賭ける。
こちらに向かってくる姿を正面の直線上で見ると、やはり亜依音には無理があるのが判った。とても身長が低いのだしオマケに体重も軽すぎる。これでは馬が跳ねるのを受け流す事が出来ずにいるからか、亜依音も少しだが上下に跳ねている。一方麻美は身長が亜依音よりも有利だから身体が上下に振れることはなかった綺麗な頭がゴールを睨んでいた。
ここは体重の差がものをいうのだろうか。
二人は並んで気合を入れるも麻美は顔が引きつる。亜依音は? 微笑んでいるように見えた。残り四十メートルか。
「う~ん亜依音の身体が浮いていますね、これではクロが走りにくいでしょう。麻美はしっかりと馬に密着しているからやはり上手いです。」
残り十メートルでクロの速度が急に上がったと同時に麻美が外へ逸れる。さながら高速道路で軽自動車が大型トレーラーに一気に抜かれるような風圧が生じた? のか、麻美の速度が落ちて亜依音が勝ってしまった。
「お~すごいぞ亜依音! よくぞお母さんに勝ったな!」
「タイムレコードもすごいですね、これが六歳の実力とはとても思えません。」
「亜依音! 凄いわ……お母さんは負けたわ。」
「うんありがとう。……力いっぱいに走れて……本当に嬉しい。」
ゴールして二分以上過ぎたというのに二人とも未だに肩で息をしているから、いかに力んで走っていたかが分かるものだ。
駆ける馬の振動を騎士は両足を少し屈めて衝撃を吸収する。馬は大きく跳ねないまでも三十センチは上下するかな、これでは亜衣音の脚の長さが足りない。亜衣音の鐙はもう上の方に付けられてもいて、これは真面ではない。
「ねぇ明さん、亜依音の走りは風魔法よね追い風が吹くようだわ。」
「ああそうだな急に速くなったよ、普通ではありえないね。しかし亜依音は解っていないのだろう?」
「ええそうだと思います。やはり全力での競争は出来ません。明さん、今後も競走馬と亜依音とは全力で競争させないで下さいね。」
「ああ分かってる。麻美は怖かったのかい?」
「ええとても、だから逃げちゃった……もう完敗だわ!」
麻美の夫の明は亜依音に声をかけた。
「よう亜依音ちゃん。亜依音ちゃんは全力で走るとね? 周りに強い風が起きるの。強い風が吹いたらね? 騎手のお兄さんが落っこちるの。だから、お母さん以外とは全力で走ったらだめだよ?」
「うん分かった。風はクロが吹かせるんだよ。」
「そうかもしれないね。だけれどもね? ママ以外とは走らないでね。」
「うん、そうする。」
明は麻美の横に歩み寄り、
「これではっきりしたよ亜依音は無自覚だから、騎手には走る時は離れて走るように言っておくよ。」
「そうね落馬だけでは済まないもの。」
麻美は落馬を恐れて亜依音から離れたのだ、これが事実だ。これがトラックで十頭とか並走したら亜依音の横で走る馬は転んでしまうだろう。騎手が落馬したら後ろの馬に蹴られてお陀仏にもなりかねない。
「亜依音は幾つになったら風魔法が理解が出来るかな。」
と悩みが尽きない白鳥夫妻、いや亜衣音の両親だ。亜衣音は白鳥家の養女となっているが、中学を卒業して東京の穣と同居となった時にまた白川亜衣音に戻ることとなる。




