第34部 私たちの時代なのよ
さてさて、宴会や戦闘の表現は自由だという事にしております。
気が晴れない沙霧さんは、「はて? 私の上司は誰だったかな? あれれれぇ?」
穣夫婦が仲良くじゃれついているのを眺めていたお爺ちゃんには、喧嘩の内容を理解出来たのだろうか、
「ばぁさんや、俺はチョイとタバコを買いに行ってくる。」
「はい、いってらっしゃい。時間は掛りますか?」
「晩飯までには帰る。」
「はい?……。」
「宴会と晩飯は別物だ、茶漬けでいい。」
「はいはい、用意しておきますよ。(残り物にお茶掛けて直ぐに出来上がりますわ)」
と、スタスタと逃げて行った。夫婦でじゃれつく時間が長かった所為か、義父兼元上司を逃がしてしまった沙霧さんは再度夫に不満をぶち撒けるのだ。
今晩も我が家と同じ、お寿司である。(うそですよ)取り立てて用意するのは、飲み物や取り皿類が必然的に多くなる。主婦一号が戦線離脱中であるからその代理は当然にこの家の者となる。だが嬉々として働くのは明子さんになる。
私はというと、まだ体力が無くて立ち仕事は出来ないが、口だけは動くらしいのだ。
「亜衣音ちゃん。お皿はどこ~、」
「は~い、お皿は……。」
「亜衣音ちゃん。おコップはどこ~、」
「は~い、おコップは……。」
「亜衣音ちゃん。お醤油はどこ~、」
「は~い、おソースは……。」
「亜衣音ちゃん。おつむはどこ~、」
「は~い、おつむは……それはどういう意味ですか!」
「だって何にも協力してくれないもん。」
と、まぁこんな感じか。日が落ちて風は無くなり私は蚊取り線香に火を点けて扇風機の後ろに置いた。こうすると蚊取り線香は一つで済む。庭には打ち水もしたし、風鈴は……無い。父の趣味はよろしくはないのだ、万年青の何処が良いのだ。ギボウシの何処が良いのだ白い花に黒い「オハグロトンボ」が羽を休めている。私はトンボにも打ち水を掛けて、さらに追いかけて水を撒いた。
私が遊ぶ姿を見て二人の祖母が笑っている。
「桜子さん、亜衣音を見ていましたら昔の事を思い出しますでしょうか。」
「はい、そうですね。やかましの四人の娘でしたから、思い返しても今はなにも出てはきません。飛び跳ねる姿は眼に焼き付いているはずですが、何処に置いて来たのでしょうね。」
「そうでしょうね、当時は生きるのに精一杯でしたよね。私は穣の一人でしたからまぁ良かったかもしれません。」
燥ぐ私は二人の視線を感じて恥ずかしくなり笑ってごまかしている、すると二人も笑顔で見てくれる。
「あの子が親の二人を手玉に取って、沙霧も私も泣かされました。あの時はどのようにしていたかなんて、忘れて正解です。」
親の二人とは桜子お婆ちゃんと麻美お母さんだろうね。う~私の過去を穿り出さないで欲しいな。
「私は数度しか抱かせて頂いておりませんでした、今更他人行儀なのでしょうがとても嬉しく思っております。それに今は穣も何だか毎日が楽しそうにしています。」
「私はあの世に亜衣音の巫女の運命を持って行こうとしましたが、出来なかったようで今回は逆に命を授けて貰ったんですよ。こうして再び娘や孫の姿を見られて幸せです。」
「ほんまですね~。」x2
私と智治お爺ちゃん。
「お爺ちゃん、お酌に来たよ。お婆ちゃんは何だか白川のお婆ちゃんとしんみりになっているみたい。」
「きっと、お前の所為だろう。先ほどはず~っと眺めていたよ。」
「うん、知ってる。私も見ていたもの。ねね、お爺ちゃんはお婆ちゃんが戻ってきたからお仕事はどうするの? 私の父さんは無職だし働かせないとね。」
「そうだな~俺は独りで生きてきたから疲れたよ、もう自由に旅行をして遊びたい。それに連れも帰ってきたからな、どうしようかな~。」
「でも、まだ昨日の今日だよね。お話し合いは出来たの?」
「いや~俺は驚いて逃げて回ってさ、捕まってお説教だったよ。」
「それでお父さんに電話したんだ、『助けて~』と。」
「あぁ、そうだな。沙霧が東京に出現したと知ったからが大変だったさ。「俺も東京へ行く~」と言って泣いて、とてもではないが、泣くか喚くか逃げるか叩かれるか、だったよ。」
「お爺ちゃんはその全部だったとか、かな。」
「(ムム!)もういいよ、亜衣音ちゃんは麻美さんとお話してきなさい。」
「うん、そうする。明子さんの事を聞きたいしね。」
「良かったな、お姉ちゃんが出来て。」
「うん、二人も出来たよ、嬉しい。一人は母さんなのだけれどもね。」
「どうした、行かないのか。」
「そうだね、また一緒にお風呂に入りたいな。」
「そっか、俺らは終われば白川さんのお爺ちゃんとこに泊まらせてもらうさ。麻美さんは沙霧さんと過ごしたいだろうね。」
「ふ~ん、だっらたら父さんは独りだね。ね、お爺ちゃんが連れて行ってよ、祖父ちゃんちにさ。だってお祖父ちゃんは帰って来ないもの、きっと男と飲みたいと考えているよね。」
「沙霧も気が強いからな~矛先が収まらんのだろう。白川のお爺ちゃんが可哀想な気がしてきたよ。」
「お父さんとしては、何も言わないのですか?」
「もう言えないよ。立派に成人しているし、俺も老いたかな~。」
「ふ~んそうなんだ、お母さんの事、尊重しているんだね。」
「まぁな、これからは子供達の時代だよ。亜衣音ちゃんも頑張ってな。」
「ありがとうございます。」
私と父と、
「亜衣音、遅くまで起きていていいのか?」
「うん、それがね急に身体が動くようになったんだ。どうしてだろうね。」
「そう言えば沙霧さんが帰って来た時がそうだったよね、……もしかして、」
「桜子お婆さま!」x2
「きっと私から漏れ出る巫女の何かが収まったのかな、明日からは元気になるといいな。理不尽だよね意味不明な病気ってさ。」
「あぁ、そうだな。……。」
「どうしたの? 親子でさ。ここにいたら蚊に刺されるでしょうが。」
「ん~まだ大丈夫。明子お姉ちゃんは……。」
「なぁに?」
「また勉強を教えて。」
「いいわよ、でも先に亜衣音ちゃんの教育が先だな、さっきはどういう事だったのかな。私にだけ働かせてさ。」
「う~お姉ちゃんが動けなくなったら、看病してあげるからさ、許して!」
「ふふ~ん、半年後には目に物見せてあげる。」
「もう産まれているの!」
「まだよ、でも二人とも、となったら、亜衣音ちゃん。大丈夫かな~出来るかな~でっきないだろうな~、」
「えぇ何々、なにが私に出来ないのよ、なんだって出来るわよ。ねぇ~父さん。」
「亜衣音、それはだな、ふ・・、」
「お父さん、その先は言ったらダメです。亜衣音ちゃんには気構えが必要というか性根を直さないといけません。」
「そっか、明子お姉さんは私の父さんを『お父さん』と呼べるんだね、そっか、そっか、そうだよね。」
「照れくさいのだけれども、亜衣音ちゃん。ゴメンね?」
「いいよ、『穣お父さん』と呼んでね。」
「ん~ヤダ。『お父さん』と呼びたい。亜衣音ちゃんは『父さん』だよね。」
「いいや、亜衣音は性根を直して、明子さんには根性を直してもらおうか。」
「ジジくさ~い!」x2
「爺臭い?……この俺が?……あり得ない。だったら隠居させてもらおうかな。まだ人生は終わってはいないぞ。」
「私、大学へ行きたい。」
「私、産んで育てるから、主婦になりたい。」
「俺に出来る仕事が~有るかな~。(女三人の養育費は稼げるかな?)」
家族四人といずれ産まれるであろう女児の四人。この八人? の食い扶持を稼ぐことができるのか! いやはや出来ないだろうとは、父さんの目下の心配ごとだ。お母さんが産む娘は二人とでも考えていたりするのかな。も~お父さんのH!
この後、祖父が何食わぬ顔で帰ってきていて表にはタクシーも停めている。
「バァさん、帰るぞ。」
「はいはい、智治さん行きましょうか。」
「そうですね、桜子もいいか。」
「亜衣音も連れて行く。」
「私は行かないよ、代わりに父さんをお願い。お爺ちゃんのお酒の相手だよ。連れて行って。」
「おい、亜衣音さん厄介払いかい。」
「お爺ちゃんが一緒に飲みたいんです。平たく言えば、そうかな~。」
「バカ言え!」
「ではでは、沙霧の代理で行きましょうか、元上司さま!」
「ヒェ~!! 沙霧さんがいいです!……桜さんは怖い!」
「沙霧~ちょっと憂さ晴らしをしてくる。明日も来るからね~。」
「お母さんお願いね、退職金も要求をお願い、」
「給金+退職金だな。……おう、任せろ、これは戦争よ!」
「母ちゃん、ガンバ!」
外に出た五人には問題があった。
「定員がオーバーです、一人減らして下さい。」
「だったらトランクを開けろ、」
「開けても人は乗せません。」
「バァさん、俺の膝でいいか。」
「えぇ、いいですよ。」
「それも出来ません、二台目を呼んで下さい。」
「運転手、お前が降りて待っていろ!」
「え”、そんな~……。」
「運転手さん、老夫婦を先に乗せて下さい。」
「もう嫌です。若夫婦さんにお願いします。」
「なんだ、爺さんは嫌いか!」
「当たり前です、もう転勤したい……。」
二台目が到着した……そして近所迷惑は消える。元権力者は五月蠅いのだ。今は煩い、とも言われている。濡れ落ち葉か!
「これからは、私たちの時代よね。」x2
「だよね~!」




