第31部 母娘か姉妹か!
同時刻の札幌では、智治お爺ちゃんは慌てて逃げ出して大変な目に遭っていた。
「私のお仏壇はありませんね~。」
「ぎゃ~、お化け”~~~だじげで~!! ざぐら”ごがでだ~!」
「ごらぁ、待たんかい!」
「早くSOSを~、」
1968年9月10日 東京
*)母娘の時間
私と母は少なくなった方の寿司桶を台所に待ちだして二人で会話をする。
「お母さん、ビール飲みますか?」
「そうね、でも随分と持ち歩いたビールですものもう温いわ。それよりもお茶をお願い。」
あ~どうして私はビールを冷蔵庫に仕舞わなかったのだろうか、私のバカ馬鹿ばか。でもね、異世界から戻ってきておいて普通にビールを飲みたいとか、あり得ないんですが、はいお母さん答えて。
「そんな事に答えられません。お茶でいいのです。」
「私はチクロ入りの甘いジュースにしようかな。」
「亜衣音さん、チクロは飲んではダメです。発癌物質の人工甘味料ですから直ぐに処分なさい!」
「え~っ、これは糖分が三十分の一ですので身体にいいのですよ。」
「体重減の美容とガンと、どちらを選びますか。」
「お母さんを選びます。」
「ならばお茶ですね。」
この当時は結構なニュースになっていて1969年に使用禁止になった。飲んでいましたね~緑色のジュースだったような記憶が~……。でも最近になって発がん性は全くないのだとか、それで幾つかの国ではもう使用されているんだって。お茶と同じ色していたかな~?
「これは八女茶なんだ、どぉ、美味しい?」
「いいえ、全然美味しくはありません。」
「そっか~、お父さんの博多転勤の時の分だから捨てたがいいかな。」
「これはどうかな、嬉野茶だよ、」
「ブー、飲めません。」
「そっか~、お爺ちゃんの長崎転勤の時の分だから捨てたがいいかな。」
「亜衣音さんは私に喧嘩を売りたいのかしら。」
「だってお父さんはいつも黙って飲んでいますよ?」
「それは、私の教育の賜ですわね、……可哀想な穣さん。」
「お母さんも同じ事していたんだ!」
「うっ……まぁね。あの頃はね~……何でも美味しくてね~。」
「全国一を取った……頴娃茶!」(えいちゃと読みます、知覧茶の近所です)
「そんな名前……知覧ちゃ!……ウプっ、」
「はいはい、ごちそうさま、」
「もう食べないのかい?」
「もうお茶ばかりでお腹いっぱいだよ、父さんとこから干からびたお寿司を頂いてくる。」
「それは、……やめた方がいいよ。だって白熱した議題で、そのう~、ね?」
「え~何言っているのか判らないよ。」
「沢山唾が飛んで掛っている、と言う事よ。どう? 理解出来たかな。」
「では、議題って、なに!」
「それは私に付いてだね。それ以外だったらさ、きっと穣さんは私と亜衣音を呼びに来るはずよ。だから~、私の市民権の事だと思うし、寂しいけれども失踪宣言はなされていたと思う。」
「ゴホン……お母さま、そのような事はこの私がさせませんでしたわ、ございません。今でも外国へ転勤扱いにされてあると私は、……お爺ちゃんを信じます。」(私がさせませんでしたわ、これ嘘です、ごめんなさい。)
「ん~もう、亜衣音ちゃん。」
「ん~もう、お姉ちゃん……。」
「お母さまを殺して、たまりますか!」
(この表現は可笑しでしょうか?)
「もう、亜衣音は過激なのだから。もう少し可愛らしい女の子の言い換えは出来ないのかしら。」
「あ!!!!~~、もし今でもお爺ちゃんの部下として席が残っていたのなら、お母さまはキャリアウーマンになってまた働けます。」
「嫌です、私はもう家族と離れたくはありません。というか、亜衣音と一緒に私も大きくなりたいです。」
「へ~、まだ小さいんだ……。」
「胸ではありません。第一に桜子お母さまが悪いので。私を、あんな過酷な運命に引きずり込んだのですから恨みます。」
「お母さんありがとう。私の運命の事を言われてありますよね。」
「違うよ、四姉妹の事だよ。」
「なんだ残念。私の幼児の時は人らしからぬと泣いていたくせに、」
「ごら~亜衣音。読んだのですね、私の日記!」
「お母さんは私が読んでいた処を見ていたはずよね、ベッドの上で何度も何度も読み返していたからね今更知りません、読ませませんとは言わせません。」
「いいわ、あれは死んだ母の思い出です。亜衣音に喰わせました。」
「わ~酷い、なによその言い草は!」
「いいじゃん、私の娘を何と呼ぼうと親の勝手です。」
「だったら勝手に先に死なないで、……死なないでよ。とても寂しかったんだからね。反省してよ、私を大事にしてよ、私に甘えさせてよ、私の傍に居てよお願いだから私の声が届く処に居てよ、ねぇお母さん。」
「ごめんなさい、ごめんなさい、もう何処にも行きません。亜衣音の横に居ますから、母さんを許して下さい。」
「いいえ、反省が足りません。まだ許せませんよ。」
「わたしゃ、どうしたらいいのよ。」
「お姉ちゃん……だったらいいな!」
「ば~か! 寝言で言ってなさい。でも、いいわよ、お姉ちゃんも良いかな! それだと母親は不在のままでいいのですかね。」
「二役よ、お願い。」
「出来たらでいいかな。」
「やった! 母と姉をゲット出来たわ……。」
「亜衣音は何処の高校かしら!」
「関東農業大学付属高等学校よ、ここはもの凄~く成績が優秀なのよ。」
「どうして入れたのかしら、もしかして、お義父さん?」
「ん~判んない。二人とか三人で相談されたか、かな。」
「三人って……誰!」
「麻美お母さん。何かの縁で随分と学校に献金したとか話して頂きました。」
「裏口じゃないよね。」
「違うよ、私が校舎を壊してもいいようにだって!」
「違うんだ。」
「もしかして……私を疑っているの? 酷いよ~私は主席で入学したんだからね。」
「う~う~……そ~そ~……なんだ。」
「そ~う~なんだよ。……?(もしかしてウソと二回言いたかったのかしら)」
「んまぁ、亜衣音にはそんな巫女の力が残っているの?」
「うん、風魔法が遣える。私が感情的に怒っていたら、何がどうなるのかが判らないから絶対に怒るなと、麻美お母さんから毎日聞かされたの。」
「そうかい……だったら私達の死は無駄だったのかい……。」
「多分違うよ。私だけは消せなかったのか、またぶり返したのか、だよ。だけど世界の巫女の力は消えたのは事実みたいよ。」
「そう、それは良かったわ。」
そこに慌ただしく父が闖入してきた。
「おい、沙霧。出たんだ桜子お母さまの幽霊が! 今、智治お義父さんから幽霊が出たから助けてくれと、SOSの電話が掛ってきたよ。」
「そう、それならば私が大いに文句を言いまして退治いたします、戦争だわ!」
「おいおい、沙霧さん……。」
「それで穣さんはお父さんに、私の事はなんと報告しましたか……。」
「こちらでも、沙霧の幽霊が出た、と、」
「穣さん、そこに座りなさい。」
「ヒェ~!」
「お母さん……。」
「亜衣音にもお願い、私の足を触ってみてよ、ちゃんとついているから。」
「お父さん。これってまさか、」
「あぁそうだな、」
「なによ、私の足がなんなのよ。」
「色白で細長い、」
「そうだね、細いよね。」
「漬物大根だな、」x2
「んまぁ、あんた達、私をからかうのね!」
「んにゃぁ~、ちゃんと生きて帰って来たと言ったよ。そしたらどうだい、驚いて俺の嫁さんもかなぁ~と言って電話が切れた。」
「お父さんって、もうお仕事は引退するすかないわね、これは娘からの忠告よ。」
「沙霧、どうしてだい。」
「それは、こうよ、わ~穣さん、
大好き!」
母は両手両足を広げて、思いっきり父に飛びついて抱きついてしまった。
「アハハハ……、」
私は両親の惚気を眺めて大声で笑えた。それもたくさん……とても長くよ。
「もうお母さんはお父さんから離れられないんだ。」
「これでは仕事にも行けはしないよ、だからさ。そう思うだろ? 亜衣音。」
「そうね、え~と父さんは……1916年12月12日生で~、……?」
「お母さん。今は1968年だよ。」
「智治お義父さんは五十二歳だな、まだ隠居には早いか。」
「智治お爺ちゃんは若返っているから悠々自適で二人で過ごすのもありかな。でもお父さんは働いてよ。」
「俺はクビなんだよな~、それで親爺に相談していたんだ。」
「じゃぁ、私の鬼籍に付いてではないんだ。」
「当たり前だよ、沙霧はまだアメリカ勤務になったままだよ。」
「穣さん、私のお給料は有るのね!」
「そうさ、ここに立派な家としてな。」
「んも~、穣のバカ、アホ、種なし!」
「あっぁ~、それでな、亜衣音に姉妹を作れとジジババが煩くてよ、な?」
「いいわよ、亜衣音には暫くお婆ちゃんの元に行って貰おうかしら。」
「お父さん、……私は喜んで~!」
「亜衣音、父さんをからかうのはよしてよ、私の穣さんだものね。」
「よ~し、全員で身体が元の大きさになるまで、親父の家に行くか!」
「さんせ~い!」x2
それから父には女の二人が迫る。
母と私は誕生日が同じになっていて今更変更が出来ないらしいのだ。母は1931年6月8日(昭和6年) 産まれの三十七歳になる。だが……とても若い。失踪してから歳を取っていないとすると、今は二十四歳という計算になる。1955年9月が失踪した時だ。念のために私は十六歳だ。
「どう見たって五歳ほどしか離れてはいなようだぞ。」と言う父に異論が出た。二人して問い詰める。母の二十四歳と私の十六歳には八歳の開きがあり、なのに父は五歳と言った。女にとってはサバは禁句だ。ただし自分が言うには問題は無いらしい。
「お父さん。私は十九歳でしょうか。」
「穣さん、私も十九歳でしょうか、嬉しい!」
二人の三歳の扱いが別々に解釈されていた。
「もう、どっちでもいい~、十六歳と十九歳だ~!」
酔っている父には算数が出来なかったからもう問い詰める気力も削がれてしまう。母と私はめでたく姉妹になってしまったから遠く離れていた姉が帰宅したという扱いだ。
「親子では、子供が作れないじゃないのかしら?」
「え”?……。」
「もう……打ち止めよ!」
近所では双子のように見えるらしい、この珍事がこの母娘いや姉妹の見分けが付くまで続いたという。




