第213部 ソフィアは……キリノ?
*)ソフィア……
ソフィアは場末の焼き鳥屋に居たんだよね、それもお婆ちゃんと一緒に暮らしていたかな。両親は居ないしその理由は知らない。
でもマイケルにあからさまに尋ねても驚かせるし疑問を持たれると厄介だよ。
焼き鳥……お父さんが博多出張の時は、時々x2の頻度でお店や屋台に通っていたと聞いた記憶がある。ならばマイケルとレストランに行った時に話題にすればいいのよね。うんそうしよう、即実行よ!
「マイケル、私ね、焼き鳥が恋しくなったな、ね~何処か焼き鳥? いいえ串焼きでもいいから連れて行って頂戴な。」
「焼き鳥?……串焼きか。そうだなアテネの裏町に在ったが今でも綺麗な女将は、」
「ごらぁ、マイケル。鼻の下が伸びてる。」
「話している途中で大声をだすなよ、周りに迷惑だろうが。」
「あ、ごめんなさい。それで女将さん……綺麗なの?」
「いや、ババァだよ。間違えたわ。」
昔は若くて綺麗な女将さんは今は老いてババァだという事らしい。ま、マイケルは人狼の王子さまで生きた化石ほどの年齢だ。普通の人間ならば既に天国に逝っているだろうか。
「へ~そうなんだ。ねぇ、此処を出て飲み直し行きましょうよ、ね?」
「そうだな思い出したら顔を見たくなった。イッチョ行ってみるか!」
「うん、お願い。」
マイケルのバイクの尻に大人しく座る私に、
「驚くだろうな!」
「え、何が? 私は驚いたりしないからね。」
「だって妖怪ババァだぜ? そこら辺のお化け屋敷よりも怖いかも知れないと言うのに、ま~なんだ。」
「へ~そうなんだ、私に行かせたくないとか。私に同情は要らない。」
もちろん、「驚くだろうな!」とは串焼きの女将さんの事を差している。
店の前に着いたら一目散に入ろうとする私を制止するマイケル。
「俺の準備が終わるまで待て!」
「やよ、」
マイケルがヘルメットを脱ぐ間に私はお店に入った。
「ま、待て……!」
「こんばんは、」
「……?」
「よぅ!」
「……こりゃ~魂消た! 随分とご無沙汰じゃないのかい、え~? ミカエル。」
「おいおい00昔の名前で呼ばないでくれないか、この子が混乱するだろうが。」
「え~ミカエル……私の天使さまだよ。」
「嬢ちゃん、あんた……騙されているんだよ。こんな屑男とはさっさと別れて邦に帰りな!」
「いいんだ、もう私の居所として決めたからね。これからもず~っと騙されているわよ。居心地が良いのよね……でも酷いな~屑とは。」
「ではポンコツと呼んでもいいが、オェ~ッ……そこの男がデレてるよ、こりゃ~キモいね~。」
「え……?【エアー・ショット】 」
「ウキョ~・・・!」
「邪魔者は消えたわ、これで安心でしょう?」
「……こりゃ~魂消た! 魔法使いだったとはね。これでミカエルも安心して天使になれるだろうよ。」
「そうね、どちらかと言ったら白馬の王子さまが良かったわ。バイクを好きで馬には乗れないからつまらないのよね。」
「じゃじゃ馬には乗れるらしいから、良かったじゃないのかい?」
「誰がじゃじゃ馬よ、失礼しちゃうわ。串焼きを五十本ね、それも大至急に頼むわ。もうすぐ腹を空かせて帰ってくるからさ。」
「……まかないですまないが、これをお食べ。……ワインでいいかい?」
「はい、お願いします。わ~とても美味しそうだわ!」
「孫の美容食さ、低カロの健康食。別名が……わ!……、」
「お婆ちゃん、また私の悪口を言うつもりかしら?」
そこには若い娘が帚を上段に構えて階段口に立っていた。これがソフィアなのだろうか。少し勝ち気な性格で私の知るソフィアとは大きく異なるようだ。そうなると? 名前も違っているかしら。十五歳位かな、色白で長い髪は……黒髪!! 私と同じで? すらりとした容姿は綺麗だな。少し勝ち気な顔は偶々怒っていたからかも知れない。
「キリノ、日本からのお客さんだよ、挨拶しな。」
「え~どこどこ……?」
「お~キリノ、生きていたか。」
「誰? このおじさんは!」
キリノと呼ばれた女の子はマイケルの事を知らないらしい。そうなると、このお店には十年以上も来てはいないものかと推測された。
「お前の父親だろうが、もう顔も忘れたのかいな、親不孝ものだね~。」
「マイケル、この子は隠し子なのかしら。いいわ、私が引き取って育ててあげるわよ。紹介しなさいよね。」
「おいおいおい亜衣音、ババァに騙されているぞ。」
「……?」
「お前さんの子供と同じだろうが、抱っこしてやりゃ~!」
「キャ~!」
「逃げないでもいいだろう、好き好んで抱きつく事はしないぞ。二階でクソして寝ろ!」
「べ~だ、……この~、」
「グワ、イテ!」
キリノは帚を振り上げてマイケルを叩いてしまった。これには流石の私もトサカに来ると言うもの、キリノの首の後ろ襟を掴んで、
「ごら~捨て猫! よくも私のマイケルをぶっ叩いたわね、港に放り投げて沈めてあげるわよ、覚悟しなさい。」
「キャイン!」
「なんだ、捨て犬か。」
このキリノは見た目以上に身体が細くて軽かった。マイケルのようにマフィアたちを軽々と摘まみ挙げる事がこの私にも出来た。……これは意外に面白いかも!
そんな事を思い巡らせていたら不覚をとってしまった。馬鹿なマイケルの二の舞いとなって箒が目の前に見えてしまった。
「キャン!」
今度は私がキリノから箒で殴られて可愛い声で鳴いた。
「ババァはすっこんでいろ!」
「頭、冷やしておいで【エアー・インパクト】」
「キャィ~~~~~~ン!」
マイケルと同様に今度はキリノがとても可愛い声を残しながら、港まで飛んで行った。軽いからきっと海にドボンだね、いい気味だわ。
「海水浴場で野生のイルカに囓られたら可愛そうだろうが、今から迎えに行ってくるから少し……?」
【エアー・インパクト】
「あれ~~~~・・・。」
「……行ってら~~~~。」
私は再度マイケルを港まで散歩に行かせた。対してお店のお婆ちゃんは何も言わないのだ、孫娘の安否さえ気にしないのだろうか。
「キリノちゃんと言うんだ可愛いわ。母親が日本人なのかな、でも少し馬鹿かしらね。」
「そげなこと言うならばこの皿は引くからね。水しか出さないよ。」
「ご、ごめんなさい。……う~ん、このパリパリとした食感は最高に美味しいよ!」
「そうかえ……それは良かった。お肉の三倍もある蛋白質の食べ物だよ、お代わりもしていいからね。」
「はい、ありがとうございます。それで……これは何ですか?」
「キリノに言わないと約束するならば教えるが、……どうするね。」
「いえ、何も聞きません、尋ねません。」
「それでいいさ。口に合わなかったかい?」
「これ……グロいです、えげつない佃煮ですか?」
「なに、可愛い奴さ。秋に捕まえて冷凍していたからね。リーンと鳴く……。」
「そうだね、母親はね。」
「ではマイケルが父親という事は、流石に、」
「無いよ、何処かで知り合った男だろう?」
う~~ん、この人は逆の事を言っているのかな。息子さんが偶々見つけて手込めにした日本人旅行者に孕ませたとか? あるいは女将さんが日本人で娘が嫁いで行ったが娘を連れて戻って来たとか! 他には娘だけを置いて駆け落ち……?
「あんた、馬鹿な詮索はおよし。叩き出すよ!」
「私の娘にしてもいいよ、私に頂戴!」
顔に皺を寄せて黙々と何やらを焼いているだけで何も返事は返ってこなかった。寡黙な性格だとは思うが、これだと客商売には向いていないかも。これは日本の常識を当てはめた考えなのだが、ここギリシアでは要らぬおしゃべりは不要かな。
「焼けたよ……。」
「……ご馳走様! もう先ほどのお皿の分で充分です。」
「おや、これはとても美味しいイナゴなのにね。マイケルに食わせるかね~。」
何の事はないコオロギの串焼きだ。一度お父さんから騙されて食した事があったと思い出した。あれはバッタだったか、このお婆ちゃんは食の最先端を走っているのかと考えてみたりしてね。
「オニグモはどうだい?」
(いやいやいくら美味しいとは言え、人間の食べ物ではないよね。)
ここ最近、いずれは牛肉も不足して食べられなくなるとニュースに出ていたが、世界の人口が百億人にはならないだろうと考えてみた。アメリカの穀物栽培は急転直下で栽培が難しくなるからだ。同時にヨーロッパ地方は小雨傾向が続き不作の年が多くなると思う。
そうなるとアメリカは輸出ではなくて買い込む方の国になるだろうと思われる。雨が降らない年がこれからは続くはずだから。高い山々にも雪が降らないのならば河川に補給する水が無くなるからだ。
火災で焼けた土地に小麦やトウモロコシを植えても育たないだろう。地球温暖化はそういった含みのある、大きな災害をもたらす。アメリカは本気で温暖化の対策をしなければこの先の国の繁栄は無くなる。
アメリカ大陸は数万年に亘って地下水を溜めてきた。その地下水を小麦の栽培にとふんだんに汲み上げて今では塩害が出て来ている。高い山脈には雪が積もらないので川の水が補給されずに干上がってきている。
同時にここヨーロッパでも言えることだ。雨が降らないからね。
雨が降らないとアフリカのように中央アジアのように蝗害が発生する。バッタという生き物は雨が降らない場所を好んでいる。特にビニールハウスは最適だという事らしい。また、海の砂浜に背丈の短い草が生えていたら、ここも最適な環境だ。
義姉に話したらビニールハウスの事例を話してくれた。
中国から大量のスモッグが飛来する、今日は遠くの山が見える見えないで判断しているスモッグだ。これが付着した草を食べて育つバッタは食べたくはない、ビニールハウスはま~? いやいや死ぬまでバッタやコオロギは食いたくはない。
「私もマイケルお迎えに港まで散歩してきます……。」
「あら、そうかえ?」
私は吐き気を抑えてどうにかこうにかお店を出る事はできたが、コオロギの佃煮、
「オェ~……っ!」
今晩の夢には間違い無くバッタやコオロギが出て来て、そして私が食べられてしまうのだ。ひかるから殺される方がまだマシだと思えるわ~……。
*)イタリアン……マフィア?
血の気の多い私の旦那さまは、既に喧嘩を始めていらしたわ! マイケルの後ろにはソフィア、違ったキリノだったか、が匿われている。何処かの船乗りの機嫌を損ねたものかと考えた。
こんなチンピラに遅れをとるマイケルでは無いから安心して出て行ったら?
「ありす、引っ込んでいろ。あ~っとキリノを頼む。」
「やよ、私に寄越したら肉の盾にしてやるからね。」
「ババァのバ~カ! 死ね!」
「ギャバ!」
キリノに酷い悪態を吐かれたので思わず可愛い悲鳴を上げた。あの捨て猫か犬か知らないがマイケルの事は好きらしい。そのマイケルの女は嫌いだとさ。
「ババァ、そこの船に乗って日本に帰れば!」
「おいキリノ……お前が代わりに乗せられてしまうぞ。ありすはあれでもとても強いからな。」
「煩い連中だな嬢ちゃんはよ、其処の男の仲間みたいだが、どうするよ逃げた方がいいと進言してやるわ。」
「この私に夫と娘を置いて逃げろと?」
「ならば俺らに付いてこい、イタリアで女郎屋に売ってやるよ。ま~若いみたいだし高値で売れそうだ。」
「売られて嬉しいとも思えないわ。あんたたちこそ逃げた方がいいのかと思うよ。私のダーリンはとても強いからね。」
足許を見たら手頃なスコップが転がっていたので、それを拾ってマイケルに手渡ししようとしたらね、
「ブルブルぶるぶる…………。」
するとどうだろうかマイケルは勢いよく首を横に振った。ここは頭を縦に振るものだろうに。
「お、俺は強くないからな、見逃すからこれ以上は俺らを苛めないでくれないか。」
「え~?? いったい誰が誰を見逃すって言うんだい? えぇおっさんよ。」
「お、おっさん!?……。いや間違ってはいないが、嫌な呼び方しやがって、其処の俺のとても可愛いカミサンが黙っていないぜ? いいのかよ。」
「イヤン!!」
「おいありす、照れていないでこいつらを海に逃がしてやってはくれないだろうか……。それとも、もう遅い?」
「そうね、悪いのは其処の捨て猫だと思うけどね、捨て犬は捨てては帰れそうもないから、あんたらを捨てて帰る事に決めたわ。【エアー・ドライヴ】。」
「うわ~。、。・。、。……・」x?
多数の見てくれの悪い男共が、カモメの幼鳥が屯している処まで飛んでいって、多くの飛来物に驚いた茶色いカモメたちが一斉に飛び立った。カモメらは久方ぶりのエサにありつけただろうに、可愛そうな事をしたとマイケルに怒られた。
「へん、これでどうよ!」
「いや金メダルだろう。だがありす。カモメの幼鳥には俺がエサをやった処だ。以後は謹んでくれないか。」
「うそ! 羽の色が違うからカモメじゃないわよ。ウミネコかもしれないよ?」
「あいつらはウミネコとは一緒にならないんだよ、知らなかったか?」
「そうだね、マイケル……後ろの捨て猫はどうするの?」
「持って帰って風呂だな。綺麗にしたるさかいな。」
「え~ヤダ、これは私のよ。」
「……?」x2
可笑しいと睨んだ私は、有無を言わさずにキリノの服を腰の部分を握り締めて上に勢いよく引き上げてみた。
「きゃ~何すんのよ、ババァが……。」
するとどうだろうか、沢山の百ドル札を水に濡らして身体に貼り付けていたではないか。こんな肌着があったのかと眼を丸くして見つめた。
「おやおやキリノちゃんは泥棒さんだとは知らなかったわ。マイケル、どうしたらいいかな、今からでもマフィアたちに返した方がいいかな。」
「金か、それともキリノの事か、主語はどっちだ。」
「両方よ、用心棒の代金として頂きますわ。」
「だったら俺に訊くな、最初からそう言えばいいだろう、な~キリノ?」
「ブ~……ブクション!」
「それが答えね、ありがとう。」
「違います、私のクシャミです、何も言っていません。どうしたらそのような解釈に繋がるのですか、へ、ヘ~クション!」
奇妙なクシャミをして私に笑われるキリノは、チラリと脱がされたセーターを見ていたようだった。一瞬だが私が持つキリノのセーターに視線が落ちたように感じた。
「あ~この中ね……ぅわ~まだ沢山残っていたわね、ありがと~~う。」
「ぅえ~~~ん、それは私の~、私のだから~返して~・・・。」
キリノは涙を流して泣いてきた。流石のマイケルも私のキリノに対する酷い仕打ちに声も出ないようだった。
んで、私がキリノを泣かせて帰したものだから、お婆ちゃんにハンバーガーを口に押し込まれてしまった。
「お腹が空いただろう、これお食べ、」
「わ~良い匂いのバーガーだね!」
「もう帰って来るだろうとね、お肉は揚げたてを用意していたからね。」
「うん、これ……とても美味しいよ、お婆ちゃん。」
「そうかい、それは良かった。」
「おいありす、その肉から出ているのは脚だろうな?」
「え、何が脚なのよ……たかが近所の川から捕まえて来たんだね、関節が丸い……丸い?」
「バタン!」
「ホ! これはもう起きないな。」
「バカな女!」
「食い気が多いのが悪いのさ、ふん、バカだね!」
翌朝になり気絶から目覚めた私は、皺伸ばしの為にガラスに貼り付けてあった百ドル札を見つけては、
「あ~……これ、良くお父さんが百円札の皺を伸ばしていたな~。んでね、たま~に私が貰って……?」
独り言を言ってふと気がついた。そんな記憶は無いはずなのに、一体何処からそんな想い出が頭を過ぎったのだろうか。
「あれ?……可笑しいな、可笑しいよね。この記憶は誰のだろう。あれ……?」
それで急に涙が零れてきたんだ。そこにキリノが部屋に入って来たから大きな声で制止させられたんだな。それでハッとして我に帰ったような?
「お姉ちゃん、それは私のお金よ、触らないでくれるかな。」
「これ、私に貸しなさいよ、それで投資して儲かったら三倍返しにしますから。」
「え……ホント? それで何をどうするのでしょうか?」
「ふふ~ん、内緒だよ?」
信じる者は掬われる……。これは私の格言だ。鬼、悪魔の囁きに乗った者が悪いに決まっている。手元の資金が三倍になっても元金しか返さないという私の性格を知らないキリノ。
私はそのお金を持って昨晩の抗争相手のマフィアたちの元に出向いた。マイケルはと言うとね、大きな丸いタモを買い込んで船に乗って沖に出て行ったんだな。何でも、船に備えてあるタモは小さいとかなんとか言いながらね。
私は停泊中のマフィアたちの船までマイケルに送らせる。運が悪ければ……? 贈られる……だよ。
「昨晩はすみませんでした。これはお返しいたしますので早く金庫に仕舞って下さいませ。」
「ほほ~う殊勝な事を言うではないか、おい直ぐに仕舞っておけ。」
「へい……ボス!」
遠くで船の汽笛が数回聞こえてきた。マイケルからの待機の合図かな。
「数えておけよ、不足があるようだったらこのねーちゃんは売ってやるからよ。」
「・・・・・・在りますよボス!」
金を数えて金庫に仕舞うその瞬間を狙って、
【エアー・ドライヴ!】
私は両手を挙げて巫女の最大の風魔法、強い風が渦巻くバリアを金庫に目がけて放った。するとどうだろうか、金庫の中の札束が宙に舞いあがりそれから、
【エアー・インパクト!】
私は左腕を前に向けて叫んだ。突風の攻撃呪文を札束に向けて放つ。その先は勿論海の上なんだよね、あ、ボートが浮いているかも!
突風に煽られた札束が全部マイケルの手に収まったのだ。当然の如くマフィアたちは拳銃を抜いてくるので私は追加の巫女の魔法を、
【エアー・スプラッシュ、レベル3!】
私は両手を前に向けて渦巻く空気の刃を多数お見舞いしてやった。レベル3では怪我はしないが鞭で叩かれたような痛みがあるはず。
「グワ、イテ!」x?
「ごめんね、キリノから聞いたんだ。もっと沢山のお札が在ったってね。」
「このあま~……、」
【エアー・スプラッシュ、レベル3!】
「グワ、イテ!」x?
私が返したバラバラのお札は方々に散って回収は出来なかったが、百ドル札の束を十三個は頂いてしまった。
イタリアンマフィアにカツアゲする私に、キリノは尊敬の眼差しを送ってくれたが、直ぐに軽蔑の眼差しに変わって泣きだしてしまった。
「お姉ちゃん酷いよ、三倍にしてくれるって言ったよね。」
「言ったわ、でも三倍返しにしますからとしか言わなかったよね?」
「それって、」
「そうよ、何も三倍にして全部を渡すとかいう意味じゃないのよね。」
「グワ、イテ!」x?
それから私はキリノから箒で何回叩かれた事だろうか。ボコボコにされてようやく百ドル札の束三個をキリノに渡してやった。
こんな夢のような事は現実ではなわね、夢よ、きっと夢なんだわ。お父さんの夢を見ただけよね……日本にいるお父さん、会いたいな。
百円札の皺を伸ばす……なんて急に思い出したな。
そんな事があって私たちは日常的にイタリアンマフィアとアテネンマフィアに追われる事となった。彼奴らは国が違うから共闘はしないし、鉢合わせになればお互いでドンパチもやってくれたのだ。
「マイケル、クリミア半島の巫女のお墓に行きたい。」
「そうだね、ご先祖様に報告へ行こうか。」
「キリノは連れて行ってもいいかな、あの子可愛いから好きだし、第一にマイケルの娘なんでしょう?」
前世のアテネで荒稼ぎしたような記憶もあるが、もうどうでもよくなってしまったかな。
「違うぞキリノには両親がだな……?」
「殺されたの?」
「アハハ……忘れたわ。」
この日の夕食の時に私はキリノに同行を頼んだが鰾膠もなく断られた。
「ありす、大のマフィアたちをカツアゲとか、もうするの止めなさい。」
「お婆ちゃん、この大きいお魚はなんというのかな。」
「これはスズキ科の魚で鮸というんだよ。」
「へ~そうなんだ、」
「ほう、知っているとはこれ驚き!」
「知らな~い。……ねぇキリノちゃん。私たちはソビエト連邦のクリミア半島に行くんだけれどもね、一緒に来る気はあるかな。」
「行かな~い。どうしてお姉ちゃんと行く必要があるのよ。」
キリノは大きい魚に食らいついて奮闘していた。囓っている部位は頭! ここが一番味が染みていて美味しいのだとか。ホンマかいな。小さい脳みそをほじくる姿は板に付いている。
「そう断るなんて、今食べている魚が悪いのだわ。」
「アハハ……不思議な事言うありすだな。にべもないとはこの事か!」
「にべは在るけど、にべはないのね、笑えな~い。」
翌朝、マイケルは近くのお店から小さなガソリンの携行缶を買ってきた。これでクリミア半島に旅立つ準備は出来たとか。滞在していたホテルに寄って荷物は処分した。私はバイクの尻に乗ってのドライブ、とても長~~~~~いドライブだとね勝手に思い込んでいたんだ。だってねマイケルは旅行の行程なんて説明してくれないし、私は……そう尋ねなかった。




