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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十三章 リフレイン……可逆の籠絆(ろうはん)

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第210部 ウェディングドレスと……襲撃


 1971年9月20日 ギリシア


「ごめんねマイケル。ナマズの皮を剥いて下さいな。」

「お……いいのか、嬉しいね~。」

「バ~カ……。」


 ナマズの皮……服を脱がされて幾分かは楽になった。ケロンパのパンツ一枚になってこの柄が悪かったと思いたい。愛嬌のあるカエルの絵が入っているからそう思った。美琴? だったかな……。


 気がつけば翌朝になっていた。夢見も悪い、食用ガエルが私を追いかけてくる夢だった。マイケルの食い物も悪かったに違いない。だって何かを買い込んで私の横でワインを飲みながら食べていたそうだ。その中にはカエルの脚を焼いた串も混じっていた……らしい。


 私は気分が優れないので大いに文句を言いながらマイケルに甘えた。


 文句その1。船でワインを飲ませた事。

 文句その2。カエルの串焼きを食った事。

 文句その3。ケロンパのパンツを選んだ事。

 文句その4。私に好きだ、とまだ言っていない事。

 文句その5。まだ俺と結婚してくれ、とまだ言っていない事。

 文句その6。私をお風呂に連れてって!


 こんな文句を並べても、屁とも思わない性格は知っていたからもう遠慮無しにブチかましてやったわ。それでもヘラヘラと笑うマイケルだ。


「朝食、運んで来て。ミルクもね。」

「食欲が出たか、良かったぜ。」

「食べさせて!」

「口移しでいいか。」

「いいわ、良く噛んでからね。」

「あ、しまった。またしても飲み込んでしまったよ。」


 楽しそうにしてパンを囓るマイケルを見ていても楽しかった。もっと気分が落ちつけば街のカフェテラスに連れて行ってもらうんだよ、お願いね!


 大体がだ、船酔いは胃袋の反乱なのだからワインで迎え撃て、とは最悪の悪手だとは思わなかったのだろうか。マイケルのワインを勧める行動に何も疑わずに飲んだ私も悪いのだよ、この私。


 頭が冴えてきたら、今度は昨日からの脂汗が急に気になり出す。だから文句のその6を要求した。ケロンパのパンツを脱がせて運ぶあたり……やはり板についているよねって言ったら失礼かな、手慣れていると言い替えさせて頂きます。


 私から見てマイケルは目上の人だから、「板に付く。」は大変な失礼に当る言葉になるのだからね。目の上の人には使ってはいけない言葉だ。


 「お昼になったよね。」と言って、サッパリした身体を見せつけて外出をねだる。シャワーを済ませてバスタオル一枚で包んだボデーで迫るが、見向きもしないマイケルが憎らしい。マイケルの頭の中は何を考えているのやら。


 そうだ、私には少し大きかった結婚指輪のピッタリサイズをお強請りしよう! 私の頭は一輪の薔薇の花が咲き出した。


「マイケル。これ……買って!」

「それだとアテネに行く必要があるのだが、少し問題があってな。今思案中なのだよ。」


 この時には既にとある計画が練られていたらしいのよね。


「ティファニーとは言わないからさ、お願いよ。」

「よしきた! 行くか。」

「お手製の爆弾はもう出来ているの?」

「இஇஇ……。」 

「ふ~ん、まだなんだね。だったら私が魔法で撃退してあげるわね。」

「お!……出来るのか、それはいいや。」


「お手伝いは要らないの?」

「頼みたいよ。」

「だって、『それはいいや。』と言うのだもの。」

「いやいや是非ともお願いしたい。日本語の悪い処だぜ。」

「ほんと、そうだね。いい男! どうでもいい男!」

「இஇஇ……。」 


 私はマイケルを少しも尊敬してはいないらしい、友人扱いなのだろう。この年頃の者はは全てが友人目線で接するのが日本人。社会人としての経験が無いからそうなるのだ。学校の先生だって友人みたいな感覚で接していくのだからね。恋愛? の対象とする男性の先生もあるからね。女生徒と男性教諭のどちらもだね。


 私はマイケルを友人みたいにからかっていた。


 それからお化粧は出来なくてなんだが、外出してラフィーナのブティックに連れて行ってもらい、とても気にいった綺麗な服を買って頂いた。エンゲージリングは明日という事で納得させられた。だってアテネまでの足が無いからと言われては仕方がないよ。


 私はマイケルとホテルの前で別れる。これから足を買うと言ってすたこらさっさとマイケルが走って行くのだった。何を買うのかは知っていたが、


「いい物を買ってくる。」

「え~なんだろう……楽しみ~。」


 結構な時間を掛けて夕方にマイケルは買い物を終えてホテルに帰ってきたよ。カッコイイ? 大型のバイクを買ってね。新品だからとは言うが、ちゃんとお金払ったよね? CB750。ガスタンクにウィングのマークがついているやつ。


「わぁ~凄いバイクだね。ホントに買ったの?」

「ナンバープレートが付いているだろうが、疑うな。」

「いいだろう、凄いだろう……。」

「うん、私も乗れるのよね?」

「もちろんさ暫くは俺の後ろだがな。」

「なんだ、後ろか!……暫くはって、なんなのよどう言う意味よ。」

「前は息子を乗せる予定だ。勿論俺の後ろは娘の為に空けておく。」

「ギャビ!……私の席がない。」

「指を咥えて眺めておけ。」

「இஇஇ……。」 


 マイケルは今朝の私から受けた冗談の反撃をしているようだ。


 そう言えば私、息子と娘の双子を産む宣言をしていた。これが本当になる確率なんてありはしないのにね、もうマイケルは信じていたよ、どうしよう……。


「乗るか!」

「うん!」


 ミニスカートだったから横座りをしようとしたらさ、


「それではダメだ跨がれよ、然もないと振り落とされてしまうぞ。」

「いや、綺麗なあんよがバイクよりも目立ってしまうよ。」

「黙れ、この~!……ズボっ!」


 強制的にヘルメットを頭に押しつけられて……何も見えない。


「あ、悪い。前後を間違えたか、アハハ……、ならばこうやって回す。」

「う~髪の毛で見えないんですが、どうするのよ。」


 この後ブルンブルンといわせて私も少しだが乗せて貰った。


 とても綺麗な夕陽とエーゲ海が見える丘に連れていかれてね、


「ありす、俺と結婚して欲しい。愛している。」

「はい、私で良ければ妻にして下さい、愛しています。」

「ありす……本当の名前はなんと言うんだい、教える事は出来ないのかな。」

「名前はありますが、今は別人が使っています。これに決着がつけば本当の名前……お教えいたしますが今度はとても長くなるかもしれません。」

「俺は待つ事には慣れている。いつまででも待っているよ。」

「はい、とても嬉しいです。ディスマスとリサ……ですね。」

「そうか、夕陽と言うのはそのものズバリの夕陽のことか。」

「はい、リサは……エーゲ海の真珠だと聞きました、だからそう名付けました。」

「そうか、俺の子供たちか……もう待てない。」

「あら……変ですね、待つのは慣れているのでは?」

「ラブホに行きたい、行く、直ぐに行く!」

「はい、喜んで~!」


 どうも会話の内容も大きく違ってきていた。前世では私がラブホに行きたいと何度も何度も言っていたはずだが。


 今宵にはと期待していた宝石のネックレスは……頂けなかったのだ。どうしてか前回と少し違ってきた。そう言えばフェリーでの船酔いも無かったよね、どうしたんだろうか。


 ……冬忍 金銀花の所為よね。



 夜、


 初打席……初安打……満塁のホームランが二発も……私は壊れる寸前だった。前世では私がマイケルを攻めて嫌と言う程に攻めまくって、くたばったマイケル。でもこんなワイルドなマイケルは知らなかったな……。


「明日はエーゲ海の見える教会で結婚式を挙げよう。」

「わ~嬉しい、お願いね。」


 一応は前世の行動をトレースしているようだが、明日は何かが変わっているかもしれないのだ。そんな事は今の幸せな私には想像すら出来ない。


 ラブホでの夜が朝に変わった。初夜が何時だったかが分らない、ふしだらな女だと理解出来た。




*)ウェディングドレスと……襲撃


 ラブホを出てホテルには行かずに宝石店へと向かった私たち。ここで素早く結婚指輪を購入した。次は結婚式をあげる事が出来る教会へと向かう。今では単なる観光地化している教会だ、少し離れたとは言わずに横にはウェディングドレスを用意した事務所もある。このウェディングプランナーに式の予約をしていたマイケル。


「あ、マイケルさま。お待ちしておりました。花嫁は直ぐにお化粧ルームにお願いします。マイケルさまはどうぞこちらに。」


 挨拶無しのいきなりの式の準備が始まったのだ。


「おいおい、どうした。」

「はい、この後には有力議員さまの式が控えておりまして、少し時間が逼迫しておりまして、直ぐにでもみえるような勢いで連絡がありまして、式のご予算は少しレベルを上げさせて頂きまして、……。」


 ましてばかりのオンパレードだったそうだ。抜け落ちそうな青空がそのものズバリ落ちたような碧いエーゲ海、私はうっとりとしてこの事務所棟からマイケルと腕を組んで、教会へと長いバージンロードを歩き幸せをかみしめていた。


「マイケル、ありがとう。とても気にいっています。」

「それは良かった、少し急ぐらしいから抱っこして行くよ。」

「うん、……お姫さま抱っこ。」

「分っているよ、お姫さま……。」

「嬉しい……。」


 細い路地は二人並んで歩いてたが、途中からは階段になっていた。此処を抱っこしてマイケルが上っていくというのだ。通路沿いの白い塀と白い石畳、それに加えて白い教会が眩しく見えていた。横に視線を送れば碧い海、上を見れば碧い空と白い雲。何もかもが素晴らしく見えている。


「マイケル……素敵!」

「お、そうか、エヘ……。」

「んも~鼻の穴を広げないでくれないかな~。」

「いやいや元から大きいんだぜ、今度照明を点けて……、」

「バコ~ン!」


 もうすっかり気分が萎えてしまうのだった。もう~バカなマイケル。


「もう歩けよ。」

「嫌、最後まで運んで……。」

「疲れたよ。大体がだな……ありすが遠回りさせるのが悪いんだ。」

「マイケルの根性なし。これ位で音を上げるとはなによ、キャ、嫌!」

「ほ~れ~目が回る目が回る……。」

「キャ~……。」


 意地悪なマイケルは私を抱いたままでクルクルと身体を回し始めた。当然に私は目が回り、これはなんなのよ~。


「アハハ……どうだい、歩く気になったかい?」

「目が回って歩けません。ほら時間よ。」

「もう着いた。今度こそ降りて頂こうか。」

「はい、ありがとう。」



 ウェディンプランナーは忙しいらしくて早く進むよう催促してきた。


「奥さま、お戯れはほどほどにお願いします。」

「すまない、直ぐに行きます。」


 私にピンクのベールを頭に被らせて、憮然として先頭を歩くあの女の人は感じが悪い。教会の神父モドキも待機していたらしくて、直ぐに二人だけの結婚式が始まる。式半ばにして教会のホールからだろうか、人の声が大きく聞こえてきた。


「何だか回りが騒がしいようだね。」

「そうだね、もう少しで式は終わりなのだがな。」

「ゴホン、では口づけを……。」

「はい、」x2


 口づけをしようとした時に二人を分かつ銃弾が飛んできた。


「ピュン、ピュン、」

「キャ、マイケル。なんなのよ。」

「俺も知らないよ、逃げるぜ。」

「待って……エアー・ドライヴ!」


 私は両手を挙げて巫女最大の風魔法、強い風が渦巻くバリアを作り出した。


「マイケル。キスの続きよ。」

「お……おう、これでいいのか!」

「はい……。」

「ブチュ~……!」

「安心できたかな、俺は気が気ではないのだが。」

「大丈夫よ、このバリアは銃弾位では破られませんわ。」


 強い風が渦巻くバリアのエアー・ドライヴで保護されるのは初めてのマイケル。前は酔ったマイケルをひっくり返すの使用したが、目を白黒させているから理解も出来ていない。それはそうよね、まだ私は巫女の魔法を披露していませんから。


 銃弾が飛び交う中で二人の誓いとかあり得ない。私にしてみればハエが飛んでいるようなもの、でも五月蠅いな~……。


「エアー・インパクト!」


 私は左腕を前に向けて叫んだ。襲撃犯に突風の攻撃をお見舞いしてやったわ。これにも驚いているマイケル。



「俺はもう知らないよ、逃げるぜ。……勘定がまだだがな。」

「はいマイケル。私が後払いと言ったからまだ料金は払っていないよね。」

「勿論、このまま逃げるぞ、服は頂く。」

「マイケル~最高……。」


 私とマイケルの逃避行が始まる。これはほんの始まりに過ぎない。私たちが教会を出れば銃弾は飛んでこなかった。と言う事は狙われたのが地方の有力議員だと思われる。いや息子か娘かが狙われた可能性もあるが今は気にしないで逃げの一手。


「こんな予定では……無かったのに~~~。」


 と、大きな声でエーゲ海に向かって大声で叫んでみる。マイケルはマイケルで逃げる状況を喜んでいる様子。はは~ん、この男はこうなることを狙っていたのかずるい奴だよね。


 議員の子息の結婚式は新聞に出ていたらしいのよね、それでもって何かを企んだというのかしら、困った夫だわ。


「アハハ……これは面白い、あの議員は悪だから殺されるかもな~。」


 あは~これは喜んで面白がっているよ、参ったな~。荷物は既にバイクに括り付けていたよな~、それも私の服以外の全部をね。


「ブルンブルン……ブンブン、ブ~~~~ン・・・ブ~~-ン、」

「キャッホ~・・・。」x2




 翌日の新聞を購入して読んでいるマイケル。私はつまらないので序でに新聞の写真を見てみた。見出しもだがそこには、


 襲撃された教会と議員。バイクで逃げる花嫁……翌日の新聞紙の一面を大きく飾ってくれたのだ。もう最高だね!


「こんなことして目立ったらどうするのよ。」

「あぁ?……なんだ、あのワルは死んでいなかったか、残念だね~。今日は仕事に行くから待っていてくれないか。」

「え~ホヤホヤ新婦を置いて何処行くの!」

「この議員の事務所に用心棒として雇って貰うさ。序でに金庫の中身をいただい~ゴホンゴホン……何でも無い。」

「あ、そう。私は街をぶらついて買い物してていいかな。」

「いいぜ、好きな服でも選んでおけ。俺が買ってやるからな。」

「会計は済ませるのよね、札無しでお願いよ。」

「勿論さ、大きな金が入るから問題なし!」


 私の夫が泥棒が仕事だとハッキリと分かった瞬間だった。


「もう……前世と同じじゃんかよ。」



*)アテネのマフィア……


 私はホテルに帰ってきたマイケルに昨日の襲撃犯について尋ねる。


「あれはアテネのマフィアたちだ。」

「黒服ではないんだね。」

「それはそうだろう、黒服がマフィアのトレードマークだとしたら直ぐに気づかれてしまうからさ。だから普通のおじさんなんだよ。」

「へ~私のテレビの見過ぎなんだね、スーツも着ないのかな。」

「ボスと幹部くらいだろうが、普段は親父臭い普段着さ。」

「そうなんだね……どうして詳しいのよ。」

「だってバイクを買った足でマフィアの事務所を襲撃したからね、序でに議員の使いだと言ってさ、その時に挨拶をしておいた。な?」

「わ~最低、それであんたの目的はなによ。あ、言わなくてもいいわ。金庫だったよね。」

「これよ。」


 マイケルは私の目の前にスポーツバックを置いて開いて見せてくれた。


「ぅわ~~~~凄いね~、これが戦利品なんだ。少し頂戴。」

「好きなだけ使ってもいいが、足がつくから少しだけだぞ。」

「どれがいいのよ、もしかして……?」

「このヨレヨレだけだ。新札が多いからきっと番号は控えているだろうさ。これはドロボウの常識さ。」

「バッカみたい。マイケルこそ映画の見過ぎよね。」


「マイケルのようなお札を頂くわよ……これ位でいいかな。」

「なにに使うんだよ。」

「な~いしょ、勿論服だよ。」

「何が内緒だ、バラしてんじゃんか。」

「うふ~ん……。」


 私は小悪魔的な笑顔をマイケルに見せるのだった。夜遅くに起きてからスッポンポンのマイケルの身体の寸法を測る。大きく聳えるものまでも計っておく。きっと膨らみ具合も参考になるかもしれないからね。だってさ、私がマイケルの背中にね私の膨らみを押しつけるから、マイケルの前も膨らむ……?


 ピッチピチのサイズでツナギを作って貰う為にも必要かな。上着とズボンの二点セットも捨てがたいが、う~ん悩む~。


 そんな事を考えていた所為か、眠った先からマイケルの特大が夢に出て来て……参ったよね。


 今日のマイケルは朝から出かけていく。いったい何処に行くのだろうね。でも私の行き先は……マイケルの黒の革スーツの注文に行くんだよ。でも何処に行けばいいなんて分んないよ。バイク店を見つけて尋ねてみたら直ぐに分かった。


「な~んだ、此処でいいんだ。」


 それからマイケルの全身の寸法書きを渡したら……笑われた。


「はいはお嬢さん、これで立派な革スーツは出来上がりますよ。冬の防寒にも対応出来るアンダーの余裕は残しておきます。」

「スッパマンみたいにお願いします。」

「マントは無い方がいいね。」

「あ、バッドマン!」

「இஇஇ……。」 


 私の冗談が通じたようで……笑ってくれないのだった。


「納期は十日、前金で……ゴホン、一千という処だ。」

「うっ……これで全部ですから、これで収めて下さい。」

「ま、嬢ちゃんの頼みだ、何とかしよう。多分……あの男かい?」

「はい……! 素敵な私の夫ですわ。」

「இஇஇ……。」

「え……!」

「追加で五千ドル、あの男はナンバーの代金だけでバイクも持って逃げた。だから追加で更に一千ドルの迷惑料だな。」

「私、逃げてもいいでしょうか。」

「構わんさ、でもな……この紙切れがどういう意味を持つのか分るよな……あぁ?」

「は……い、直ぐに持って来ます。」


 訳の分らない私は言いなりにお金を渡した。かなりぼられたとは思うがこれもマイケルが悪いのよね、私はイイ人! だって何とか教会へ献金するよりもいいのだからね。


 新札の百ドル札で耳を揃えて渡したが良かったかな。十日経ったので革ジャンを引き取りに行く。それはもう立派に出来上がっていたのだった。


「ほれ……。」

「はい、ありがとうございます。とても素晴らしいですわ。」


 販台の上に広げられた黒の革ジャンは立派に作られていた。ワンピースの服でジッパーで胸が大きく開くように作られていた。ベルト付きがいい!


 と言う事は、マイケルの胸毛がカッコイイかも!?



「寸法は紙に書いた数字とは違うが、人の身体構造に合わせて製作した。もうこれはピッタリだぜ。」

「えぇ、とても素敵です。」

「嬢ちゃんはどこぞの秘蔵っ子とは恐れ入る。札束の素性はバラしてはおらぬが、精々気をつけな!」

「はい、そうですね、気をつけます。」

「で、嬢ちゃんにも革ジャンを作っておいた。少し大きいが俺からのプレゼントだ、有り難く受け取れ。特に胸には柔らかい保冷剤を二個仕込んであるよ。」

「大きい胸……、」  

「あの男は喜ぶだろうな。」

「目立つでしょうね……こんな緋色は。」

「どっちもどっちだ、世直しをしてくれよ。この街の人間は娯楽に飢えているから期待しているぞ。」

「はい!」


 胸のパットに大きな保冷剤とはとても素晴らしい発案だよ、柔らかいからいい! 私はつい嬉しくなって大きな声で返事していた。う~ん前世通りにマフィアたちの撲滅ね。


「もしかして、バットマンと勘違いされたの?」


「あ、革は牛乳を含ませた布で手入れをしろよ。それとな、白の靴墨も便利だからこれも使え。黒の靴墨は色が移るから禁止な。」

「はい、一生可愛がります。」


 二着の革製品は意外にも重たいので、とても丈夫に作られたのもだろう。マイケルは喜んでくれるかな、怒られる覚悟を以てプレゼンしなくちゃね。


 マイケルはこの革ジャンとスポーツバックの二つを広げてず~っと眺めている。時々私の顔も。


 私は居た堪れずにお風呂場に逃げて赤の革ジャンに着替え、マイケルの前に立つ。


 果たして鬼が出るか仏が出るか、蛇? はたまた悪魔が出たらどうしよう。


 マイケルは吐息と共に私を許してくれた。理由がなんなのかは最後まで教えてはくれなかったが。


 取り敢えずお纏めは終わりましたが、色々と考えたにも関わらず出来ませんでした。

安近短な番外編としてしまいましたね。


 不幸な亜衣音を幸せにしたくて物語りを進めてきましたが、それも漉餡が無くなり

ました。少しは楽しんで頂けましたでしょうか。


 以後、新章へと続きます。

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