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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十四章 亜衣音の幸せな……β世界線

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第199部 智子の懐柔と……私の秘密


 1974年6月9日 東京


 私は昨日二十一歳になった。多感な時代は終わりを告げる。もう私にも次の子宝を授かる頃になったのか、身体がマイケルを欲した。


 私はマイケルズ”bikeの店員として、山口智子を召喚した。嫌がる後輩を騙してまで店員にしてしまう。


「智子ちゃんお願いがあるんだ。マイケルズ”bikeに来ない? 楽しいし遊ぶ事もできるからさ。大学の学費だって出してもいいからさ、ね?」


 物は言い様……嘘だとは言えないところがミソである。我が家にご馳走を用意して山口智子を召喚した。なに、電話を掛ければいいのよね。久しぶりに私からの召喚だからと心を浮かせて来たようだ、可愛い。勿論、亀万の出前が主になる。


 亀万も今では他に料理のレパートリーを増やしたようで、と言うか、息子が家業を継がずに洋食屋を始めたからだ。娘も居るが今ではこの娘に婿を取らせて寿司屋を継がせたいらしい、ミエミエである。大学には行かせたが外には出さずに寿司屋の手伝いをさせている。意外と筋がいいようで飾り気のある魚料理を考案して出すので人気が高くなっていた。


 で、この特別料理を用意して待つわよ、と言えば自ずと知れようか。要予約の超人気商品なのだから。料理方法のネタはどうもフランス料理らしいのだが、知識の無い私では断言も出来ない。


 山口智子、根は素直でとても気立てのいい子だ。ウブなのがいいのか、騙されやすいのがいいのか、判断が分かれるところだ。嫌と言えない性格は直すべきだとは思うけれども今は直さなくていいのよね、今だけは。


 届いた料理、お皿に盛られた料理は細切れのお魚がメイン。言い換えればお刺身を取った残りかすのようなものだった。これが人気商品なのだから、笑えるのよね。案外、私を馬鹿にした創作料理だと考えられなかった。これが人気のメニューだと考えていた。


 この娘は私を嫌っていたらしい。いいえ、私に化けていた偽亜衣音をトコトン嫌っていたらしいのよね。それが私に飛び火していい迷惑だわ。どうもその片棒を大地が担いでいたとは、永遠に分らない事なのだが。


 そんな事の犠牲が私と山口智子なのだ。マイケルや藍ちゃんは序での食事だから何にも関係ない。だって食べるだけだからさ天丼だっていい訳だしね。


 山口智子によれば味は最高らしい、本人がそうやって気に入れば残りかす料理だっていいのだから。私は料理に満足しないが山口智子が満足すれば目的達成で満足なのよ。懐柔かいじゅう成功よ!


 おかしな表現だが、一応高校も卒業してはいるが二十歳だと思う。一年の後輩だからだ。何が言いたいかと言うと、お酒を飲ませたいのよね、酔って本人の意思をねじ曲げて了承させたいのよ。山口智子が平行世界に行っていたら? と、考えるのよね、だって私の眷属だもの。何が起きても不思議ではないのよ。


 マイケルはこの計画を聞いているから今の私の行動を見て笑っている。どうも俺には関係ないさ、と言う雰囲気だろう。今に見ていろ、爆弾発言をマイケルに落としてやるんだから。もう……仕込みは済んだと思う。次は一人でいいのよね。


 取り留めの無い話をしながら亀万の出前を食べてしまった。お酒も少しは飲んだから計画を実行に移す。


「アハハハ……。」

「笑わないでよマイケル。智子ちゃんに大事なお話があるのよ。」

「す、すまない、ワハハ……。」

「先輩いいですよ、私なんかいつも誰かに笑われていますから平気ですよ。」

「智ちゃんさ、自分を卑下するのはやめましょうよ。それだとさ本当に卑下した性格になるのよね。人生はそれではマズいのよ。」

「それはありません。これから大学で心理学を学んで勉強して、それから人の行動理念を分析します。」

「随分とおかしな回答だよね、大学は心理学の専攻なの?」

「いいえ、教職課程に教育心理学という科目があるので、そこで詳しく心理学の勉強が出来るのかと楽しみにしています。」

「それ、間違いだと思う。子供を研究する科目だよ。ね~藍ちゃん。」

「そ、そうね、子供の幼児心理学よ。それを勉強させて先生に子供を大人しくさせる技量を身につけさせるだけよ。」


「そうなんですか、勉強になりました。」


 こんなだから智ちゃんはウブで騙されやすいのよ。その智子ちゃんを騙そうとしているのだから、私は鬼の類いに入るかな。


 大学も三期生となると選択科目が少なくなる。必修も少なくはなるが落とせば来年の必修として受けねばならない。そんな暇が多くなる大学三年生の智子ちゃん。


「智子ちゃん、大学の学費は高いよね~、ご両親が払っているのかしら。」

「そうです、心苦しいのですが年間が二十万です。」

「私学はそうねとても高いわね。どうかしらその学費を私が出すからさ、このマイケルズ”bikeで働かないかしら。バイトでいいのよねマイケルも賛成しているわ。」


 大学出の初任給は確か五万ほどの時代だ。給与の四ヶ月分だとしたら今では八十万から百万になるし他にも色々と出費はかかる。確かに高い。


「え~亜衣音ちゃん、私の学費も出して欲しいよね。」

「あんたは社長、必要無いでしょうが。」

「テヘ!」

「えぇ、とてもいい条件です。ですが……、」

「そうよね、遊びたいし、お買い物にも銀ぶらしたいよね。それが出来るとしたらどうなんでしょう、智子ちゃん。」

「学費以外にお給与も貰えるのでしょうか? ならばいいのですが、でも何時もはお仕事には出られません。」

「いいわよ、マイケルが遊んでいる時間を減らすからね。」

「おいおい亜衣音。それはないよ、ないよね?」

「いいえ、今後は従業員も入りますのでしっかりと働いて頂きます。社長命令ですから文句言わない言わせない。」


「へ~い、文句文句文句文句文句文句文句文句・・・・・・・・・・」


「マイケルはほっといていいの。それよりも智子ちゃん、どうかしら。遊べる場所も人もいるわ。それに私のアパートに越してくればお家賃はタダなのよ。ね、いいでしょう?……女の子同士でパジャマパーティー……なんか!」

「私も入居していてタダなのよね、亜衣音ちゃんは女神さまね。」


 やけに私を弁護や補助してくれる藍ちゃん。何か企んでいるのよね、きっと。


 智子が私から騙されかけているとマイケルは考えているのか、哀れみの眼で……私の方を見るのだから、私が極悪非道とでも思っているのね。ま、間違いはないけれどもね。これも自分が気持ち良く子育てに励みたいからなのよね、マイケルの子供を丈夫に育てたいだけなんだから。夫でしょうが協力しなさいよね。


「親の世話にならずに自活が出来るのよ、どうかしら。とてもいい条件だと思うわ。」

「そうね、親から離れて暮らせるのがいいわ、いいわよ、乗った!」

「ありがと~……そう言ってくれると信じていたわ~。」


「文句文句・・・・・・・言いたくはないが、バイト雇って亜衣音はどうする。」

「あ、私ね、私はまた産まれるのよ、三人目がね。それでバイトが欲しいのよ、マイケル、この子を採用しなさい。」

「おいおい亜衣音、俺に黙っていたのかよ。」

「だってマイケルは確信があったと思うけど、どうなのよ、種付け……。」

「下品だぞ、そうか、次は……どっちだ?」

「双子かもしれないね、また大変になっちゃうね。」


 マイケルはとても驚いているようだ。嬉しいはずよね、マイケル。


「இஇஇ……。」


「あの~私って子守もするのでしょうか~。」

「子供の教育に就くのでしょうが、産まずに子供のお守りができるのよ、最高だと思うわよね藍ちゃんも。」

「そ、そうよ、今の鬼父兄おにははは、それは酷いのよね、若い女教師に向かって子供も産まずに分るのか~っていうのよね、酷いよね~。」

「う~そんな~酷い母親が口を出すなんて、私、学校の先生にはなりません。」

「あちゃ~藍ちゃん、どうしよう。」

「亜衣音ちゃんが最後まで面倒みなさいよ、それで全部が解決でしょうが。」

「うん、そうするよ、智子ちゃん。マイケルズ”bikeに来て!」


「マイケル、お酒の追加……。」

「は~い、今お持ちします。」

「ソフィアに言っていません。二人の面倒をお願いよ。」

「もう寝ましたわ、私もかてて下さいよ。いいでしょう?」

「ソフィアさんと言われるのですか、とても美しいです。大輪コンニャクのお花のような、」

「そんな~……、」


 智子はソフィアの存在は知っているし、陰で見ているはずだから年下にもお世辞を言うんだこの子は!……こんにゃくの花ってどんなの?


「ほら、飲みましょうよ、智子さん。」 

「え、えぇ少しでお願い。」

「智子さんさ、私の異国で生活する大変さが分るかな。私に親は居ないのよ、それで亜衣音ちゃんが私を養ってくれるわけよ、分るぅ~う?」


 ソフィアは台所で飲んでいてもう出来上がっているよ。今ではマイケルが台所で一人で飲んで……いない。きっと二人の顔を見に行ったのかな、親バカ!


「は、はい、分ります。」

「それでね~お給与は藍ちゃんから頂いていますがね、自活が出来てぇ~……、」


 完全にお説教調になっている。ソフィアにしてみれば異国で寂しく暮らすのは本当に大変だと思った。で、マイケルはどうなのかしら、あれはぺんぺん草と同じだから自然と成長するわね。


 ぺんぺん草とはナズナの事である。幼少の時に音を出して遊んでいたあの野草だ。


 今、マイケルが台所に立っている。で、ゴソゴソ・トントンと音を立てている。何か企んでいるのかな、何だろう。


「それでね、智子さん。あ……?」

「ソフィア、これを食べろ。美味しいぞ。」

「え~何か……な、……இஇஇ……。ペッペッ!!」



 マイケルは道ばたからイモカタバミ、という赤くて可愛い花の咲く帰化植物を採取してきてソフィアに食べさせたのだ。


「これで悪酔いが醒めるだろう。」


「え~マイケル、これ酸っぱくて美味しいわよ。私にも頂戴!」

「これで妊娠確定だな、亜衣音……ありがとう。」

「え?……マイケル~いやだ~この~!!」


「はいはい、」x2「ご馳走さん。」x3


 藍と智子は私たちの惚気にご馳走さんと言い、ソフィアは完食してご馳走さんと言った。


「俺の二日酔いの薬に使っていたよ、どうだい美味いだろう。」

「えぇ、ですがもう要りません。」


 一気に酔いが醒めたようだ。気が抜けたと言うべきかもしれないな。


 それから私は妙に燥いでいて智子に、


「トランプしましょうよ、シアハウスでは毎晩よ。」

「え!……?……はい、」


 いくら寝ているとはいえ、二人を放置してトランプ三昧とはあんまりだったかな。日付が変わり智子ちゃんはとうとう引っ越しまで了承してしまった。こんなささやかな事が出来ない智子にとっては夢のような一時だった。どうも大学でも独りが多いのだと推測された。根が素直な性格は損するんだよ智子ちゃんさ。


 毎晩のトランプとは嘘だが今度から実践すればいい。誰も何も言わないよね。たまに来る夕霧さんはどうだろうか、何も言わないかな。



 I Won`t Last A Day Without You (愛は夢の中に) を聞きながら智子は夢の中に落ちていった。


 智子は親の反対を押し切って出て来た。後日になって智子の両親が挨拶にきて、私にそう言いながら笑っていた。訪ねた理由はアパートの家賃を払いに来たというから月に一万と言ったら、眼を白黒させて払ってくれたのだ。それも十二万円も。だから今はもう許している。念のため私は無口にさせたマイケルを横に置いておいた。とても優しい両親だった。


 二人が帰られた後でマイケルから両親を騙すような事はするな、と忠告を頂くも私は意に介さない。家賃と言っても食費なのだから文句は言わせない。でも私は半分を智子に渡しておいた。喜ぶ智子ちゃんが可愛かった。


 それから智子は私にべったりとなり、引き離す藍が大変だった。「私の亜衣音にちょっかいを出すな~。」と、言うのだが智子は意に介さない。私としたら大助かりなんだけどね。私の妹たちも智子の事はは好きだという。


 直ぐに二匹目のドゼウも釣れた、岡田眞澄だ。智子が居るならとトランクの一つで嫁いできた。だから洋服タンスをあげたのよ、中古だけどね。



 その内に私の妊娠が両親に伝わる。喜ばれる以前にマイケル同様の、


「言いたくはないが、文句文句・・・・・・。どうして黙っていたのよ。……おめでとう……。」


 当初は私と智子がマイケルズ”bikeに立っていたが、その後私がエプロン姿で立つようになった。そうして私はお店から姿を消す。……大きいのだ、心配しなくても双子だった。男の子だったらお腹が立つというが本当かしらね。


 私の次の出産予定日は1975年4月の上旬らしい。藍も智子も楽しみにしている。


「どうして双子なのよ、晃!」

「それが面白そうだから。」

「フン、バ~カ!」

「そんな態度をとっていいのか!」

「べ~だ!」

「お前の閨……あんなこと、こんなことを事細かく書いてもいいのだぞ。」

「あ、いや、やめて~……。」

「だったら双子を受け入れろ!」

「仕方なか~……。」


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