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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十四章 亜衣音の幸せな……β世界線

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第197部 接触……


*)接触……


 ここ最近のバイクの仕入れがやけに多くなった。店舗には入らないので倉庫を借りたいと言うので、爆……反対したんだ。マイケルは何を考えているのやら。


 本音は、


「これらのバイクな、廃盤に決まった種類なんだ。絶版だぜ? 十~三十年後に売り出したら高値で売れる事間違い無し!」


 マイケルはバイクでも手入れが良くて綺麗な、旧型のバイクも買い上げていた。現状ではあまり高い金額で査定されてはいない、ダサい旧型だそうだ。進駐軍が使用していたとかなんとか、信じるマイケルがバカなだけだろう。私が死ぬ頃には博物館行きに決定かしらね。


 ここまでマイケルが進化? 退化するとは思わなかった。倉庫を借りてもいいのだが、夜警……特に盗難には気をつけなくてはならないよね、マイケル?



「ブロン、ブロン……、」

「お、なんだ? いいエンジン音だが、」

「ブロン、ブロン……キキキーッ、」

「……。」

「マスター!」


 一人の老年紳士がハーレーダビッドソンのサイドカー付きを持ち込んできた。これに食いつかないマイケルではない、垂涎の的? マイケルの夢のようなバイクが目の前に現れたのだから。


「ウヒョ~……これはいったい……、」

「GHQ御用達の一台だよ、程度は良好、どうだい。」

「買う! 勿論買い取らせて頂くよ、言い値でいいよ。」


 もうこうなったら大きいマイケルは小さな子供と同じなんだから、馬鹿マイケル。


「亜衣音、……お~い亜衣音さん、」

「トントン・・・。」

「は~い……いらっしゃいませ。」


「亜衣音、お茶出せ、いやコーヒーそれとも酒がいいか!」

「落ち着きなさいよマイケル。どうしたのよ。」

「こんにちは、お嬢さん。」

「やだ~お嬢さんだなんて、……まぁ!」

「はい、このサイドカー付きを買って頂けないかと思いまして乗って参りました。」

「マイク……? あ……、」


 私はマイケルを見て思わず愛称の名前で呼んでしまった。もう、ピターっとバイクに張り付いているのだから、笑いたくても笑えない、だって目の前には老紳士が眼を細めて私を見ているのだから。


「すみません、今、夫を正気に戻しますから。」

「ご主人……?」

「あ、はい、……妻です……。」

「お~これはこれは、とてもお若い奥さまですな、うらやま、いえ、」

「裏山? いえ、とんでもありません。」


「……ごら、マイケル。お客様のお相手をしませんと、」

「あ、そうだね、でも一応の細部を確認しないとな。もう少し相手を頼む。」

「はいはい、」


 私はマイケルの背中に微笑みかける。踵を返して老紳士に声をかけた。


「コーヒーを用意致しますね。」

「豆でしょうか?」

「そうですよ、でもま~普通です主人用は。でもお客様には極上なんですよ。」

「ほほ~う、これは楽しみです。」

「今コーヒーサイフォンで淹れますので、こちらでお待ち下さいませ。お手持ちはこちらに置かれて下さい。」

「はい、では暫くお世話になります。」



 外は寒い一月、冷えた身体には温かい飲み物がいい。この老紳士の着ている防寒着はそれこそ年代物のようだった。軍が着ていた立派な革製品かな。


「亜衣音~これは本物だぜ~ウヒョ~、」

「まぁ、ご機嫌ですね。」

「気に入って頂きましたか、ありがとうございます。もう殆ど現存してはいない型式になるはずです。」


 ポコポコと音を立てながらコーヒーサイフォンでお湯を作り、上の容器を丸い下段の容器に差し込む。お湯はみるみると上昇してコーヒーを攪拌している。これをさらに攪拌するために私は竹べらを用いてクルクルと回した。


「ほほ~……これはとてもいい香りですな、これでしたらミルクを入れるには勿体ない、ブラックでお願いします。」

「まぁ、ツーですのね。」


 私はアルコールランプをずらしてキャップを掛けて火を消す。用意しておいたコーヒーカップを手早くお湯を注いで零し温めてからコーヒーを注いだ。専門店では大きなカップウォーマーなる物が有るのだが、ここはマイケルと藍たちが飲むだけだから置いてない。


 コーヒーサイフォンの下段が空気を吸い込んでしまって、ポコポコというのが収まる。おもむろにコーヒーを注いで丁寧に老紳士の前に置いた。


「どうぞ召し上がれ。」

「素晴らしいお手前ですな、有り難く頂きます。」

「いえ、まだまだですよ。」

「あ、こいつは家事とか出来ないんですよね、でも美味しいでしょう?」

「ぎゃ~マイケル、何を暴露してんでっか!」

「はは、とても仲がよろしいですね、羨ましいですわ。」

「お恥ずかしい、後で蜂の巣に致しませんと私の気が晴れません。」

「ご主人ですから大事に使いませんと、ね?」

「は~、そうですわね大事にしていますよ。別名、邪険ともいうらしいのですが私の場合はそうらしいです。」

「ご家族の方がそう言われるのでしょうか?」

「いえ友達ですよ。うるさいのが沢山居着いていますので毎日が楽しいんですよ。」


 このマイケルズ”bikeの横が藍の工房なのだから、時々藍たちがコーヒーを飲みに降りてくる。それも肩をクルクルと回しながら「あ~疲れた~コーヒー、」と言いながらだ。


「ほほう~それは楽しそうですな、一度お会いしたいものです。私も若返りしたいと時々考えますからな。」

「そうですね、お年寄りの方は若い人と交われば若返りするとかなんとか、」

「……。」

「あ、すみません、とても失礼な事を申しました。」

「いえ事実なのですから。それに話を振ったのは私ですし、お気になさらずに。」

「すみません、」


 そんなこんな事を言いながら二杯目のコーヒーを用意している。出し殻のコーヒー豆はそのままにしてお湯を作ってコーヒーサイフォンにセットした。流石にこれを見た老紳士は気が引けたようだった。それに達磨ストーリーに掛けっぱなしの薬缶のお湯では、とてもではないが美味しいコーヒーには使えない。


「あ、あのお嬢さん。それでまたコーヒーを淹れて飲まれるのですか?」

「はい、味はつまらないのですが、飲みやすいので主人用です。」

「இஇஇ……。」 

「マイケル、コーヒーが出来たよ。」

「おう、今行く!」


 マイケルは虫歯を見せながら笑って席に着いた。でも虫歯は無かったはず、何が歯についているのかな。


「お待たせしました、とてもいい状態のバイクです。買い取り価格の希望はありますでしょうか。」

「いいえ、査定されるのはマスターですのでそれで構いません。」

「いや~いい買い物です。金額は二百九十八万、これ位でいかがでしょうか。」

「……、……。」

「いや、流石にこれ以上は無理ですのでご容赦下さい。」


 マイケルも今では日本語が上達して、流ちょうに口から言葉が出ている。私も安心しているが以前は私が考えて訳していたりした。


「少し高いですな、これでは売るのが気に引けます。コーヒーも美味しいし、ここはまだ低価格でいいのですがね。」

「いえいえこれは歴代に残る逸品ですわ、金額は二百九十八万、これでいいのですよ、これで。」


 私は初めて聞くマイケルが提示した金額に、コーヒーカップをカタカタと音をたてながらマイケルに出したのだ。何時もは十万とか三十万だったが、いきなり十倍になったので驚いた。うわ~どうしようお金が無いよ~、だって昨日の休みに銀座に行ったから。行かなくても初めから足りてないお金しか金庫には入っていないが。


「亜衣音、持って来てくれないか。」

「え~マイケル足りません。こんな大金は用意していませんわよ。」

「あ!……そうだったか、では直ぐに銀行へ、」

「そうですわね、お隣へ行って来ます。」

「隣? あ、いいよ、銀行には後で俺が行ってくる。」

「すみません、少しお待ち下さい。マイケルにはこの用紙をね。」

「あぁ受け取りは書いて貰っておくから早く、」


 私はいそいそとして藍ちゃんの工房へ出かけた。藍の金庫の中身を当てにして出かけた。いつも仕入れ資金を現金で置いている藍ちゃん社長だ。少しの間借りるのも大家としてはありなのだ。



「藍ちゃん。」

「あら亜衣音ちゃん、お手伝いをありがとう。」

「いいえ、お家賃を頂きに参りました。」

「で、何の用かしら、晦日払いだよね。」

「うんバイクの買い取りで足が出たのよね、百万でいいから貸してくれないかな、お礼は美味しいコーヒーで。」

「お安い御用よ、いつもコーヒー代金は払わないからね。利息は十%でいいかしらね、もっと出してもいいのよ?」

「う、0%にならないかしら。今度、私も投資するからさ、ね、お願い?」

「はいはい、またマイケルさんをお借りしますからいいわよ、投資だけで!」

「アハハ……、」x2


 藍の事だから全部が全部、本気に違いない。百万もの大金を持っているあたり次の予定も考えていそうだわ。百万ゲット、急いで降りていく。


「バカ亜衣音、後で泣かせてあげるからね。」


 後が怖い私であった。



 店舗前に立った私は、仲良く笑う男の二人に「グロ~ク(glauque)!」

                     (気持ち悪い……。)


 ワインではなくて、ブランデーがテーブルに載っていた。わ、私は置いていないからね! 仕方なく外の階段から二階の我が家に上る。台所で肴を探す。


 で、見つけたサラミを適当に切ってお皿に盛った。ツマはパセリとレタスを少々置いて飾りにした。お箸は不要だろう、


「爪楊枝でいいや。」


 直ぐに出来た。食べる食べないは本人らの勝手、私がおつまみを出したという事実が大事なんだよね。とても良く出来たお嫁さんを演じなければならないから。


「ディスマス、リサ、少し待っていてね。」


 まだまだお昼寝は終わりそうもないから安心した。上向いて寝ていたらまだ起きない君。横を向いていたらそろそろお腹が空いたという合図だそうだ。


 寝返りが出来るようになって、今はハイハイも出来るから注意が必要なんだよね。自分で何かを見つけたら人差し指で押して確認していて、そのある物が先に転がると這いずって追いかけるのよね。それで一メートルとか直ぐに移動しちゃうの、可愛いったらありゃしないわ。


「……。」x2


 私は階段を下りてマイケルに声をかける。


「もう……お昼から飲んでいいのかしらね、はい、おつまみです。」

「お、サンキュー。なんやかんや言っても分っているじゃんかよ。フギャ!」


 私がマイケルを叩く素振りをしたら、マイケルは手で頭を覆って悲鳴を上げる。


「ハハハ……お嬢さん、許して下され、私が所望したんですよ。」

「そ、そうでしたか。では店を閉めますますね。丁度お昼だから。」


 そう、時々だがマイケルズ”bikeを勝手に閉める時がある。マイケルが外出していて、上の二人が泣いたりお昼の時間だったりしたら閉めるのだ。二人を構いながらも開店は出来るが、お客さんが来たら二人を放置なんて私には出来ない。だから昼にお客が来る事は少なくなっている。事実、私がそういうふうに案内もしているからだ。


「マイケル、後はお願いよ。」

「いいぜ、これを持って上がってくれないか。」

「決定したのね、じゃぁ二百九十八万円です数えてみて。」

「あ、お嬢さん。信じていますのでこのまま受け取りますよ。なに、少なかったら結婚のお祝いに差し上げます。多かったらこのまま頂きますがね、……

 ハッハッハ~!」

「あ、そうですか、十枚は抜いていますから悪しからず。」

「あ……十枚ですか、いいですよ。」


 私は段々と気持ちが悪くなってきて、冗談を言って退散した。やはり先ほどに感じたglauque=気持ち悪いは本当のようだ。


 小一時間してからマイケルが二階に上がってきた。そうして口を開くには、


「あのジジイはただ者ではないな、亜衣音にも分ったんだろう?」

「うんとても気持ちが悪いわ。最初は煽てられたから今は惨めに感じているよね。」

「次回からは断るからな。」

「うんお願いよ。でもバイクには問題が無いのよね。」

「そうだね今のところはと言うか。」

「そう、ならばいいかもね。」


 マイケルがこのバイクを分解清掃してみて分った事が出て来た。発信器らしき器具が出たというのだ。バイクを買って四ヶ月後だから途中で何も起きてはいないのだからとは考える。だけれども私にはより気持ちが悪くなって、マイケルに早く売却するようにお願いした。五百万で販売が出来た。頂いた領収書の住所はでたらめであって、ただのブティックのお店が在っただけだ。


 これで終わるならばいいや。


 この章は仕事で出かけた時に町で見た看板を元にして書きました。過去の経験とか

を織り交ぜております。競馬の脱税ニュースだって澪お姉さんに負わせたりしながら

ですね。

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