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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十三章 番外編  人狼と少女 亜衣音……β世界線

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第193部 朝の風景……


 1972年9月18日


*)二人の出生届けと……マイケルの戸籍は?


 お父さんからは明日にディスマスとリサの出生届けと、マイケルの国籍の取得を出しに行くと言われて、妙に緊張して眠れなかったのだ。朝早く目が覚めたら、


「藍ちゃん、今日は大学行かないの?」

「行かないよ、だって日曜日だもの、毎日が日曜日っていいだろうな~。」


 べ~……それって私への当てつけよね!


「ギャビ、うんもう~お父さんの意地悪。今日は二人の届けを役所に提出すると言っていたのに~。」


「あ、お父さんなら出かけてありますよ。」

「ホワイ~?」


 藍ちゃんが私のお父さんに対して「お父さん。」と呼ぶ。別に違和感は無いからいいのだけれども、もしかして藍は家族になったのかな。お母さんにもだったか。


 違うよね、気になるけれども訊きにくいな。妙に意識し出すと先には進めない意気地無しなんだ。この性格は非常に悪いよ損するばかりだよ。


 私は藍に昨日の内容を簡単に報告した。だって気になる様子が丸見えだったからだ。「教えてあげる~、」と言ったら顔が急に可愛くなって眼がキラキラと光だすのだから。眼は顔ほどに物を言う……私の持論だが、物言う口は動かなければ何も判らないのだから。その点、顔は色んな表情が出せて見るのも楽しいもの

だ。


 眼が光るはずはないのだが、やや薄目に開かれた眼から見える目は、明暗により知的好奇心がありそうに思える。どちらにしても顔の表情がその人の心を写すと言う感じかな。


 で、この藍ちゃんは付き合いも長いから、今、何を欲しているのかが丸わかりして面白い。



「そうなんだ、昨日の家族会議で名前とか決めたんだね。」

「うん、そうだよ。ディスマスが『ディスマス・夕陽・白川』で、リサはね、『白川 理沙。』と決めたんだ。」

「へ~理沙ちゃんか、日本名なんだね。」

「うん、リサとは真珠、エーゲ海が真珠のように綺麗だったからさ、リサと名前を決めたのよね。そうしたらどうよ、『リサ・真珠・白川』となってね、変な名前になるのよ。」

「うん、良い名前だわよ。へ~理沙って真珠という意味なんだね。」


「オハョ~!」


 髪の毛をボサボサにした女が一人、二階から下りてきた。委員長だ。いつもこうなのかと訊ねてみた。


「夕霧さん、寝癖は直さないのね。」

「う~ん?……あら、亜衣音ちゃん。」

「三日前から居ました。で、夜遅くまで勉強とか見直したわ。」

「お世辞はいらないよ、それよりもコーヒー頂戴。」

「はいはい、いつもの苦いコーヒーね、直ぐに用意いたします。」

「藍、ありがとう。」


 私には朝食を出してくれた藍ちゃん。でも夕霧さんにはコーヒーだけだった。


「夕霧さん、朝ご飯は食べないの?」

「いらな~い、コーヒーだけでいいのよ。」

「亜衣音ちゃん、この人はまだ目が覚めていないと思うよ。まだまだ欠伸の回数が少ないのね、何時もは三回だもの。」

「ふぁ~ぁ~……、あ~眠たい。」


「இஇஇ……。」



 私としてはイイ女がハシタナイと思った。理沙もお腹が膨れたのか眠ってしまう。


「へ~理沙ちゃんも朝ご飯か。」

「もう済んだわ、直ぐにディスマスが起きてくる頃かしら。藍ちゃん、とても濃いコーヒーをお願い。」

「亜衣音ちゃんが?」

「違います、マイケルよ。誰かさんと同じく寝ぼけていらっしゃるからね、目を覚まして貰わないと。」

「あら、新婚さんがもう夫を早死にさせたいと思う、その心は?」

「委員長がそれを言っても面白くないわよ。」

「夕霧さん、濃いコーヒーを飲んでいる自覚があったんだね、可笑しい。」

「フン、なにさ、藍……お砂糖。」

「はいはい、今日は入れるんだ!」

「そうね、誰かさんを苛めたいので頭の回転を上げたいだけよ。」


「あんな男、もう死んでもいいわ。なんなら委員長にあげるわ!」

「貰った!」

「やだ~二人とも、馬鹿なことは言わないのよ。」

「委員長はマイケルの前では毛繕いするのよね、もしかしなくても好きなんでしょう~。……ほらマイケルが来たわ。」

「え、何処……ウソ~バカ亜衣音。」

「アハハ……、」x3


 女の子の三人が集まれば会話が途切れる事はない。それはも~永遠に続きそうな勢いだよ。マイケルが起きてくるまで取り留めの無い会話が続いていた。


 テレビではミュンヘンオリンピックのニュースで盛り上がっている。あんなきな臭い報道はその影に隠されていた。日本は外国のニュースは少ないし深読みのニュースは無いようなものだ。これは未来永劫続くのだと思う。


 次はお天気のニュース。藍ちゃんと同じ名前のお天気キャスターさんが、その日の気温に合わせた服でブラウン管に立つ。今日は暑いらしくてノースリーブの綺麗な藍色? 昨日は雨で寒かったから普通に長袖だったよね、紺色の!



 田中角栄さんが発表した「日本列島改造論」がもてはやされている。初めて聞くニュースだった。でも私には関係がないかも。今は「いざなぎ景気」が過ぎた年。そう言われても私は日本に居なかったし……。この頃は中学を卒業して就職する人口も多かったと思う。いや、段々と少なくなっていたかもしれない。


 1972年とは、ま、そういった年である。家庭でテレビを観ながらの食事が普通だった。まだまだ家庭という概念は存在していた。家に電話が取り付けられたのがこの頃だったかも知れない。申し込みはしたが一年とか長く期間が掛かっていた。それまでは町全体が有線だったんだよね、町が……。


 1973年は、第1次オイルショックが始まる。1バレルを、3.01ドルから5.12ドルへと大きく値上げされた。70%もの値上げだが今の100ドルに比較したら?



 ディスマスが起きたようだ。


「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「わ~ディスマス、どうしたのよ、お母さんですよ~。」

「すまない、泣かせた。」

「マイケル、落としたとか言わないでよね。」

「いや、ディスマスが自分でベッドから下りていて、俺が少し蹴飛ばして……、」

「バコ~ン!」「グワ……イテ!」

「ディスマス……可愛そうに、」


 そんな事には関心を向けない藍ちゃんがマイケルにコーヒーを出してくれる。夕霧さんは急に寝癖を手ぐしで直し始めて、少し可笑しいと笑いたくなった。やはり本当だったんだね!


「マイケル、コーヒー飲みながらでいいわよ、理沙を抱っこしていて。」

「腹空かせているのかな。」

「当たり前でしょう、パパに蹴られるはずは無いよね~ディスマス!」

「あ~い、う、きゃ、きゃ・・。」


 だったらマイケルは何を蹴飛ばしたというのかな。風魔法の障壁だったりして。


 みんなが起きて来ないのは酒飲みが続いた所為だとは思う。だからか、子供たちだけが部屋から台所に集まりだした。藍と夕霧は忙しそうにトイレに連れて行くのだった。


 親が子供を放置して朝寝だなんて、非常識過ぎるわね。新しく出来た保育室にはトイレが三っつも造られていて、もっぱらそちらを子供たちには利用させているのだとか。母屋のトイレは全部洋式に改造されていた。何でも私専用ばかりが使われていたんだって。女の子ばかりだとやはり大変だ。


「今日は保母さんは遅いのね。」

「お休みです!」x2


「私たちが臨時の保母役なんだからね、あんたも手伝いなさい。」

「ウキャ~……。」


 夕霧さんから怒られた。


「マイケル。昨夜はまた飲み直しをしていたの?」

「それがな~桜子さんから呼ばれてよ~、寝たのが五時前だったかも。」

「そうか、お疲れ様。」

「お、おいおいどうした、怒らないのか!」

「怒りませんよ、逆に大変な目に遭わせてごめんなさい、だってお婆ちゃんだものね。断れないのよね。」

「そうなんだよ……、」

「バコ~ン!」「……イテ!」「バコ~ン!」「グワ……イテ!」


 私は腹が立ったので叩いてやったわよ、二度もね。口と態度は違うんだよ。これがツートラックと言うらしい。




*)藍とマイケル


 藍ちゃんは若い女性の実業家に向けて邁進中! なんでも、着せ替え人形を製造販売を行うのだ。女の子向けになるのかな、ロボットとかはまだ人材不足で開発に手を出せないのだとか。


 街での評判はうなぎ登りになっているが、なにせ家内工業で縫い上げる服が遅いので余計にプレミアムが付きだした。それで気が急く藍ちゃんがマイケルに目を付けるのだった。


 それいけ……藍ちゃん、マイケルを落として頂戴。私にはお給与を下さい!


「マイケルさん、少しお話があるんだ、いいかな。」


 藍ちゃんはコーヒーのお代わりをそ~っと出しながらマイケルに話しかける。


「いいが、いつもの話ならお断りする。俺には少女趣味は無いからな。」

「いいえ、私の仕事はそうですが、マイケルさんには工場のお手伝い要員になって欲しいのです。」

「荷物持ちか、ま~力は余っているがな。」

「はい、軽トラックに家の商品を載せて各地のお店に届けて頂きたいのですが、出来ますよね?」

「……うんにゃ、出来ないな。無理だ。」

「え~どうしてですか。とても簡単なのですが可笑しいですね。」

「日本は運転の免許が要るらしいじゃないか。俺は持っていない。」

「あ、……帰化でしたか、失念してました。」


「藍ちゃん。マイケルは向こうでも無免許だったんよ。車の運転は無理かな。」

「だったら運転手を付けますわ。」

「マイケル、仕事決めなさい。うんとお給料を貰ってね。」

「え~……お給料はまだそんなに払えないんです。ですからここは暫くは~、」


 要員とはどうも車での配送とは違うようだ。ならば仕事はなんなのよ藍ちゃん。


「マイケル、新聞の読み方を教えるわ。漢字は読めないのよね。」

「恥ずかしとは考えないが、殆ど読めないかな。」


「う~……、」


 藍ちゃんが声に出さないで泣きだした。今の製品の販売量だとまだまだ人件費には遠く及ばないらしい。だからと、家族にお願いしようという腹黒。


「私、必死になって服作っていますが、家庭の仕事が多くて子守もあるし、いつも夜なべとかは出来ないな~。」


「う~……、」


 今度は私が泣きたくなった。藍の足枷になっているのだと言われたら何も言い返せないよ、どうしよう……マイケル。


「わ、私が家事を頑張るわよ、任せていいわよ。」

「亜衣音ちゃんは出来ないよね、家事全般。だったら子守にしか使えない。」


 と、とても辛辣な的を射た指摘を藍が口にするんだ。私は自己保存に努めるべき発言を繰り出した。


「そんな~マイケル、藍ちゃんのお手伝いしなさい。後でトラバーユが出来るから、仕事も探しながらのお手伝いでいいわよ。」

「いや、俺の矜持が許さない。バイクの販売店で働きたいよ。」


「あ~ダメだね、あんな店は家族で占めるから他人が入り込む余地はないよ。」


 今度は委員長がダメだしをマイケルばかりではなくて私にも言い聞かせてきた。


 マイケルの希望に切って捨てる辛口の意見、グサリとマイケルと私の胸に刺さるのだった。個人事業としてのバイク販売店が多いのも事実。アメリカのハーレーを売るのだって、バイク好きの男が一人店におれば済む話だ。そこに大の男がさ、「仕事くださ~い!」と言ったら、「帰れ!」と、にべもなく断られる。


「当たり前だよ~マイケル。」

「そうなのか、ギリシアでは時々働いていたんだが、親父はろくに仕事しないで家に引きこもっていたぞ。」

「その人、二代目ですか?」

「そういえば親の仕事を継いだとか言ってたか。」

「それは、その仕事が嫌いで仕方なく親の跡を継いだのよ。よくある話よ。」

「そうなんだ、あの親父は物好きだったのか。」


「?……。」x2


 ……奇貨居くべし、藍ちゃんはこれを狙っていた。決して用心棒だった訳ではなかったのだ。でもマイケルは、役に立つのかな~? この頃の中国は自分の背を伸ばすのに必死だったから、まだ産業スパイの心配はない。たかが人形にはだよ。


「マイケル、仕事が見付かるまで手伝ったらどうよ、暇よりもいいわよ?」

「それもそうだな、家に居ても仕事は見付からない。先に表に出て調査あるのみ。藍嬢、少しの間だけだが手伝おう。」

「わ~マイケル、ありがとう。」

「藍!」

「う、マイケルさん、ありがとうございます。」

「良かったわね藍ちゃん。」

「うん、亜衣音ちゃんのお陰かな。明日から頑張るぞ~!」


 目出度くマイケルの仕事が見付かる。しかし藍は何に使おうと考えているのやら謎は深まったままである。


 マイケルの仕事は、自分で探してきた。小さなボルトとかナット、それに金属屑を集めて、バイクのミニチュアを作り出してしまう。完全に藍ちゃんの影響を受けたんだよね、マイケル。家に槌音が響くので追い出したが……。


 ホント、好きは物の上手なれ? 違った、「好きこそ物の上手なれ」だよ。下手の馬鹿好き、藍ちゃんは最初そう思っていたんだって。……同類じゃんか、ね!


 キューピー人形……? そう言ったら藍に三回も叩かれた。そうして言われた言葉が、


「変態!」……と、


 キューピー人形は裸だったんだ。そう言えば田舎では女の子に大きな縫いぐるみを与えて背中におぶらせていたとか。ホントかな~。もしかして藍ちゃんが?……あり得るわ~。



「おう、マイケル。」

「おはようございます。」


 カムイコロさんが起きてくる。もうお日様は天に昇ってどれ位経ったのか。


「藍~・・・。」


 と、保育室の方から夕霧さんが藍の名前を呼んだ。早く来て貰いたいのだろう。「はいは~い、」と大きく返事して、私の肩を叩いて台所から出て行った。


 ディスマスは落ち着いたのか私の胸で寝ているが、理沙はマイケルにオシッコを掛けて喜んでいた。


「ベッ、ぺェ!」


「ただいま~。」


 どうしてか朝帰りのソフィアが帰ってきた。


「あんた、今日もパパ活だったの?」

「違うよ、今日は交番だった!」

「え”・・・。」x3

「?・・・。」


 マイケルだけが理解不能。


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