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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十三章 番外編  人狼と少女 亜衣音……β世界線

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第183部 う~~~……産まれた!


 1972年8月9日 ラフィーナ


*)マイケル……



 マイケルが沢山の花火を用意していたのは知っている。だって妊娠して鼻が利くようになったからね。黒色火薬の独特の臭いは服に染み込めば直ぐにでも分ってしまう。


「今頃は、鼻高天狗になって燥いでいるかな。」

「ありすは、鼻ぺっちゃんしゃもじを産んだ頃か!」

「怪我しないと、いいな!」

「二人も増えたら三対一で俺が常に負けるのが、民主主義か!」


 日本の悪い民主主義は一部の人間が声高に叫んで、それが通ってしまう恐ろしさだ。逆を言えば声を上げなければ誰も居ないのと同じで、そんな人間の意を汲むバカもいない。


 それで理不尽なこと、自分が嫌いな事に噛みつく「噛みつき亀」が多いのも嫌になる。肉声を上げる事が無いからだろう、電話やネットで声を上げるのだから。直に、面と向かって訴えないあたりが日本らしいところか。


「マイロード殿のお頼みだ、マフィアたちも纏めて潰す……!」


 私の直感だが、ここの医院長の夫はマフィアの患部、いや幹部か。私とマイケルが襲撃したマフィアとは違う敵対するマフィアだろうと推測した。どうもだが私たちに恨みを買うマフィアが、医院長の夫=理事長に私を売れと相談があったと思われる。だって耳も良くなったしね、色々と聴こえるのよね。


 それで理事長の考えはだよ、キツイね~こいつ!


「マイケル、ここの理事長は私を売るつもりよ、あの餌食にしたマフィアにね。」

「だがどうしてだい、産ませるのだから何か利点があるんだろう?」

「私は命を奪われてエーゲ海に沈む、それがマフィアの狙いで報復だよね。でもねここの理事長は私の子を奪って売るつもりなのよね、お金になるからかな。」

「う~そりゃ~ひで~な~。それでどうしたいんだ、叶えてやるよ。」


「もっと漢字のあるお話はできないのかしら。平仮名だけでは読みにくいのよ。」

「俺は一行が、丸々平仮名・・・を読んだことがあるぜ。」

「で、直ぐに読めたのかしら?」

「時間がかかった。文字は図形認証で頭に入るが、あぁも平仮名ばかりではな、とてもではないが読みにくい。さっきだってひと文字は漢字を入れたぞ。でもありすの願いは違う処だよな。」

「うん、そうだよ。」


「私の可愛いベイビーちゃんを我が子にしたいらしい。きっと大病院で調べたんでしょうね、デーエヌエーでよ。それがずば抜けて良かったんでしょうね。」

「それで双子の事は秘密にしていたのか、あ~……もしかして男が産まれるというのも、本当かもしれないぞ。」

「う~ウソよ、あり得ません。だって巫女の家系は巫女を産むだけで、人狼のオンチョは人間を改造して製造するからよ。」

「俺……改造人間……?」

「そうよ、最初の奥様から何かをされたでしょう?」

「いいや、全然、違うと思うがな。人狼だとバレたか!」

「かもしれない。」


 こんな事を短時間で、テレパシーで会話したんだよ、信じてね?


「俺の子には手出しをさせないから覚悟しておけよ、二つの組織をぶっ潰す!」



 理事長の通勤経路は確認済み。大病院からこの家の道路はここが大きい道では最短だから間違いは無い。


「アルファロメオが可愛そうとは思うが、ここで大破して頂こうか。」


 で、理事長は、マイケルは、


「うわ~遅れた、遅れたよ~これでは妻が怒るだろうな~、この愛車の名前はアルファロメオのアイ~シャだよ。」

「お、来た来た北から来たか。それになんだ……後方のあの土煙は……。」

「後ろが騒がしいですね、情報通りだとしたらもう来ているのですかね、気が早い事です。」

「優男がサングラス掛けもつまらない男にしか見えていないぞ。」

「隠れ家は人員配置終わってますから、ま、大丈夫でしょう。早くお産を済ませて身柄を渡したいものですよ、今度の子供は一度に優秀な双子ですよ~……ツバが出て止まりません。早く食べたいものですよ。」


「ケッ、俺の子を食い物にしやがって……殺す! 取り敢えずは後方のマフィアたちを黙らせるか。……いやいや、いっその事、マフィアたちの同士討ちに持ち込む。う~……我ながら良い考えだよ、家はぶっ飛ばすのはマイロードだから心配はいらね~な~。」


「う~今度の子はイレギュラー……実験材料には最適です。」

「ありすが言うように目的は子供か~、く~殺す! 理事長……通過~。マフィア通過~。よしよし、少しちょっかいを掛けて同士討ちに持っていく。それっ、」


「ボカ~ン!」

「うぎゃ~なんだどうした。」       「うぎゃ~、何だ、どうした。」

「読みやすい方で読んで……。」


「隊長、襲撃であります。あの理事長が爆弾を置いていたようです。」と、俺は言った。

「くそが~……。」

「報復しましょう、今ならばあの女も同じ家に居ります。」

「だが追跡失敗で家は判らない。」

「俺が案内しますから、さ、早く。」

「おう頼む、船頭せや。」

「俺の船頭は三途の川やで、覚悟し~や!」


 どうして先導が船頭になるのか、どう展開していくのか、乞う、ご期待!



*)う~~~……産まれた!


 私は私で陣痛に腰を痛めている。トイレも行きたい、行きたくないと、落ち着かないでいた。


「さ~出産の呼吸ですよ、あのおなじみの……、」

「あれをすればいいのですね、う~お漏らしした~恥ずかしい、」

「恥ずかしい事はありません、お産では全員が経験するのですから、もう破水しますね、破水したら二時間ですよ、二時間、もう二時間、あと三時間。」

「一時間延びていませんか?」

「あ、バレました?」


「うぎゃ~、」

「はい、十五時二十分、」

「うぎゃ~……うぎゃ~……」

「はい、十五時二十五分、」

「うぎゃ~……うぎゃ~……」

「はい、十五時二十六分、もうすぐですよ、力んで……、」

「うぎゃ~……うぎゃ~、」

「赤ちゃんが子宮口を通過しましたよ、もう頭が……見えています、頑張って!」

「はぁはぁはぁ、はい、うぎゃ~……うぎゃ~、」

「もっと上品にいきましょうね?」

「うんりゃ~……この~出ろ~……、」

「そうですね……無理だしたか、あ、あ、理事長……出ました。」

「おう、後は俺に任せろ、」

「イヤ~……産婆さんがいい、男は出て行け~!!! 殺したる~~!」

「ウキャ~~……、」


 理事長が退散した。退散するだけの理由があるからだろう。


「おう、ババァをご指名か、頑張って取り上げようか。」

「いや、取らないでよ、私の赤ちゃん。」

「おやおや、親から取上げて持ち去ったりしないよ、」

「母がそうやって攫われました、だから何処にも行かないで下さい。」

「……そうかい分ったよ、産湯も横で済ませようか、ほら頭が出たよ、」

「はぁはぁはぁ、はい、うぎゃ~……うぎゃ~、」

「ポロリ!」

「はい、もう一度よ、双子だからもう一人……、」「おめでとう男の子ですよ、」

「え”゜……そんな、男の子って……、」「おんぎゃ~おんぎゃ。」

「ほら、力んで力んで、」

「うんりゃ~……この~出ろ~……、」

「ポロリ……。」

「パチパチ……パチ・パチ……おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「おめでとう……女の子ですよ、う~ん元気ですよ~。」


 娘は産まれて直ぐに尻叩き刑にあった。親が悪いとは思えないが、


「イヤ~ン、ぶたないで!」

「இஇஇ……。」



「ふ~やれやれ、よく頑張った……? おい、どうした産まれたぞ?」

「お母さん、力尽きて気絶したようです。大きいお子さんでしたからですかね。」

「なんぼじゃ、」

「はい、長男さんが三千二百グラムで長女さんが二千八百グラムありました。」

「ほう……これは大きすぎるか。ま、産まれて……これはなんじゃい……この娘は宙に浮いているぞ~……、」

「うわ呪われた子供ですよ、」

「おい、どうした産まれたか!……おう……これは素晴らしい!!」


 私の娘が宙に浮く。そうして私の横に着いて寝てしまう。それも二人ともであったらしい。


 それと、私から追い出された理事長は喜び勇んで飛び出して来るが、直ぐに退避せざるを得ない状況に陥る。


「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「あら、産まれてくれたんだ、お母さん嬉しいよ、ありがとうね。」

「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」


「ドッカ~ン!、バババ~ン!ドーン、ドーン!」


「ヒェ~~逃げるわよ~、襲撃よ~……、」


 双子が宙に浮かんだ時に周りの物も浮かんでは飛んでいっていた。それから直ぐに家の屋根すらも飛んで行く、いや、破壊されて行く。破壊された瓦礫は双子によって随時外に飛ばされる。


 赤ちゃんが産まれたというのに、それでも容赦なくマフィアたちは銃撃あり爆弾ありで攻撃を仕掛けてくるが、私は子供を守りたい一心で叫ぶ、


「エアー・ドライヴ!」


 巫女最大の防護魔法のエアー・ドライヴだ。これで私たち三人は守られる。銃弾だって通りはしない。屋外では戦闘になっており、理事長側は少人数だから撃破されていく。そこに……マイケルが登場して襲撃側のマフィアたちを撃破していくのだった。勿論、四人の子分がいた事を見逃していない。


「随分と涼しい家になったわね。……まぁ~綺麗な夕陽だこと。夕陽……? この子は名前を、夕陽……「ディスマス。」に決めました。あの雄大な夕陽のように育って欲しい。それから貴女は「リサ。」よ、エーゲ海の真珠のようなぎょくのように綺麗になるからね。」



「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」


「そうね、今はしわくちゃの王子さまとお姫さま。可愛いわ~。」


「ドッカ~ン!、バババ~ン!ドーン、ドーン!」

「ヒュ~ン、ドッカ~ン!」


「お~い、アリス、無事か~。」

「マイケル、無事よ、産まれたわよ、元気だから早くお仕事を終わらせてよ。」

「おう、まかせておけ……野郎共、最終攻撃、各個撃破……。」

「オー、」x4


 直ぐに戦闘も終わりマフィアたちは逃げてゆく。こうなったら警察が来る前に逃げなくちゃね。


「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「はいはい、大丈夫だから……うん、お母さんと弟を守ってくれてありがとう、リサ。」

「うんぎゃ~、」

「あら違うの、じゃぁお姉ちゃんとお母さんを守ってくれてありがとう、ディスマス。」

「あ~ん、きゃっきゃ……。」

「そうなんだね、二人とも巫女の力を受け継いでいるんだ、良かった。」


「おうありす。」

「はい、名前決めました。長男が夕陽のディスマスで、長女がリサ、真珠です。どうでしょうか。」

「うん、無事に男が産まれてよかった。俺の悲願だったんだ。」

「え?……マイケルは知っていたんですか?」

「俺は人狼で産まれた……人狼を産む力があるんだ。これは俺だけの家系らしい。ま、初代の直系だそうだ。」

「そうですか、知りませんでした。だから今までの奥様や子供たちが死産だったりしたのですね。」

「悲しいが事実だ。妻だって難産で死なせたりした。前のラフィーネは後追い自殺で身を投げたんだ、あのミコノス島でな。」

「あの海?」

「そうだ、あの海だな。だから俺は墓をあそこに造っていた。」

「うん、今までは可愛そうだと思うけれども、私たちも捕まりたくはありません。早く逃げましょうか。」

「おう、任せておけ。」

「どうだ、車は来たか。」

「はいボス。何時でも行けます。」


「アリス、荷物はバッグだけでいいのか、服や他は置いていくが身元のばれる物は持って行く。」

「はい、バックとそれからこの写真の二枚だけは持って行きます。」

「おう、どれどれ……おうよく似ている。俺の妹たちになるのか、嬉しいぞ。」

「はいマイケルの妹たちです。今頃は八人にまで増えていますか。」


「ボス~~来ました、ポリです。」

「おう今行く。ありす、三人とも抱き上げるがいいか。」

「はい、マイケルに抱き上げられたいです。」


「はい、喜んで~~!」


 こうやって無事でもない出産を終えた。


「こりゃ~俺も連れて行け~、」

「あ、産婆さんも連れていく。」

「看護で暫く世話になるか。」

「うん、お金……取り返して頂いているわよ、きっとね?」


「おい、婆さん。」

「産を付けろと言うとるじゃろが、」

「産婆さん、暫くはよろしくな。」

「おう本当に可愛い子供じゃて!」


 優男の理事長や医院長、看護婦さんたちはかろうじて逃げていて、頭はアフロだったという。家の周りは豪快に飛んでいて、これらがうちの子供がやった? とか言っても誰も信じないだろう。みんな、マフィアたちの所為になっている。


「マイケル、トラックの荷台だなんて……さいて~。」

「陣痛がまだ残っているから、分らん分らん。」

「下血が酷いよ~、マイケルは見ないでよね。」

「俺が綺麗に洗ってやる。お湯も沸いていてもう直ぐにでも三人を綺麗に洗ってやるさ。」

「うん、お願い。」


 取り敢えず着の身着のままの三人は、夕陽に照らされて……ハクション!


「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「おう、よちよち……。ごら! もっと静かに走れ!」

「へい、ボス。」


 荷台は寒い。

 家に着いた。

 護衛は四人が張り付くという。


「おう……産まれたか、待っておったぞ、ソフィア、タライ……。」

「は~い、ママ。」


 焼き鳥屋のママと娘・ソフィアの手伝いがあった。


「すまないな、ババァ。」

「休業費だけは頂くよ、いいかい?」

「もういいよ、帰れ。」

「やなこっちゃ、早く布団の用意じゃ、この鈍間が!」


「ウフフフ……みんな、ありがとうございます。」


「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」

「うんぎゃ~うんぎゃ~おんぎゃ~おんぎゃ~……。」


 私、頑張ったんだからね。でも……男の子が産まれたとですよ、どうして?

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