第181部 あり得ない……男の子と女の子の双子なのか?
1972年7月31日 ラフィーナ
*)男の子と女の子の双子なのか?
本医院から別宅への移動はスタッフさんが手伝ってくれた。何でもかんでも買い込んだマイケルが悪いのよね。私はマイケルに手を引かれながら移動した。車なんて出さないのだから……ケチ!
せっかく荷物を収納したのにまたまた病室の移動とは大変だ。私は暇だけれどもねマイケルがよ。隣の部屋に行って直ぐに横になる私に、マイケルの声が聞こえた。
「ウキョ~……これは久しぶりだぜ~。」
(なんだろうね。)
マイケルの声が聞こえる。何が久しぶりなのか……段々と赤面する私だった。
この部屋からの眺めは最高にいい。これが胎教を考えたものだとは教えられるまで気づきもしない、私もドジだからね。窓から風景を見て紅潮しそうな顔を抑えている。
だけども住宅地の開発の纏まりが無い事といったら最低だよ。私が札幌の街を知っているだけに残念だと思う。所詮、個人主義だと言えば聞こえがいいが、何でもかんでも行き当たりばったりだと思うわ。でも札幌のように碁盤の目のような区画で道路は延びている。道路だけは……。
たくさんの荷物を抱えてマイケルがやってきたから訊ねる。
「ねぇマイケル。さっきは何かを見つけたの?」
「いや何でも無い。前の住人が置いていった物がな良かったんだよ。」
「何よ、それ。」
「ローソクと鞭。な、いいだろう?」
「バカにしないでよ、私は使わないから。」
どうも私の下着ではなかったみたい、取り敢えずは良かった。
「は~い、お待たせ~……しました。お夕食の御弁当……です。」
「うわ~とても豪華ですね、嬉しい。」
「はい、たんまりと資金は頂きました。私もご一緒させて頂きます。」
「あんた、俺らと同じ弁当を食いたいばかりに同席するのだろう? 同席だと自分一人が貧相なバーガーだと悲しいよな、それも俺らがだよな。」
「いえ、決してそのような事はございません。私たちにも御弁当の予算が付けられていまして、今宵だけでも豪華にいこうか、な? と思いましてその~みんなで、」
「もういいよ問い詰めるのはやめよう。」
「意地悪マイケル。暫くは一緒に暮らすのだから仲良くしようよ。」
捻くれマイケルのアホが! 明日から食事が貧相になったらどうするのよ。
「そのう……ご主人さまの御弁当は私の自腹でございまして、諸費用は奥様に対する費用のみでございますれば……。」
「ウキャ、マイケル弁当代を払いなさい。」
「す、すまなんだ。明日からは自分で用意します。」
「恐らくですが、奥様が沢山残されます。」
「マイケル。残飯処理をよろしく!」
「இஇஇ……。」
有り難く頂く御弁当が美味しい。う~ん、一人増えただけでも味が変わるとかそうなのかな。少し愉しい!
「あ、忘れておりました。医院長の旦那さまの回診が明日行われます。」
「なんだ、今日ではないのか。直ぐ来ればいいのに。」
「マイケル、私は大丈夫だからね。ご飯食べればお腹の子も満腹するから。」
んな訳はないが、食道を食べ物が通る音や食べている音を聞いて安心するあたりは、マイケルの遺伝かしらね。食べている時に胃袋を蹴られたら、以後ご飯は食べられなくなってしまう。
「マイケル。これ食べて!」
「俺の為に残してくれたか~。」
「こんな塩辛いものは私には毒だもの。」
マイケルは食べずに残す気らしい、お夜食かな。
「お尋ねですが、ここはどういう方が利用されるのでしょうか。」
「はい、医院長の旦那さまの要件が一番多いでしょうか。そうは言われても他の件で利用されるのは貴女さまが最初となりました。」
「んま、非合法なキメラの製造とか!?」
「違いますよ、非合法な事は否定しませんが学会では認められていない手術とかで使われます。きわどい人体実験とかではありませんから、心配ありません。
あ~それにマフィアの人たちのご利用もありませんから。」
私から見れば過去が過去だけに構えてしまう。身体の傷跡は何カ所も在るのだしね、マイケルに嫌われてしまわないか、それが心配なのよね。今度の切腹でもお腹に大きな傷が残るだろうし、嫌だよねマイケルは。
でも最後のひと言がきになる。マフィアさんの奥様が出産とか命がけだったらひっそりと隠れて産みたいのだと考えるかな。敵対する組織がかち合うなんて、あり得たら面白いのにな。
「マイケル?」
「あ、俺は何とも思ってないぞ。無いからな安心して腹切れや。」
「ヤダよ、産みの苦しみは味わって覚えておきたいもの。それの一部だけでもマイケルに渡したいわね。」
「いや俺はいらない。娘の二人だけでいい。」
「あら、お子さんは男の子と女の子の双子さんですわ。どうして女の子と言えるのか不思議です。」
「それは……家が女だけの家系ですので、妹なんか六人もいるのですよ。」
「ま~六人も……ですか、賑やかでしょうね。」
一瞬だが私もマイケルも青ざめる。男の子が産まれるはずはない。誤診という前に医院長からは説明さえも受けていないのだから。きっとこの看護婦さんは誰かと取り違えているのだと思う。でもマイケルは私が知らない処で驚いている。
「はい、とても。今度私とひかるが産めば九人の赤ん坊が揃います。母がまた双子を身ごもっているようなので、こうなったら身売りしませんと一家破産でしょうか。」
「おいありす、それは本当か!」
「はい、そうですよ。澪お姉さまも双子だったらもう見分けがつかないですかね。赤子の入れ替わりは日常で……、」
「まぁ素敵な家族ですね。だったら貴女も次は双子で確定かしら。」
「マイケル。また双子を産んでもいいかな、喜んでくれなきゃ産まないよ。」
「あ~喜ぶとも、とても嬉しく思うぞ。うんと産んでくれ。」
「うん、嬉しい。四人なんて私には育てられないよ。」
「未来の事は分らん、二人で充分だよ。」
あり得ないの思うが電気が点いた。今晩はローソクで楽しむのかと思っていただけに残念だ。これも誰かのコネが働いたのだろう。
「あら、電気、通りましたね。」
「はい、嬉しいですよ。だって明日か明後日になるだろうと言われていましたからですね。」
「日本では直ぐに点くのでしょうか。ここギリシアは大らかですので口を尖らせて言いませんと誰も動かないのですよ。」
「俺は明後日で良かったのに、あぁそれで俺もここに泊まってもいいのか。」
「はい、追加の代金が三千ドル。ご自由にどうぞ、お食事も付きますわ。」
「う~……、」
「マイケル、計られたわね。どうするの? 私はマイケルに居て欲しいのだけれども、いいかしら。」
「俺も居たいから払うとするか。二千でどうだ。」
「いいえ、三千ドル。私も生活が掛かっております、よしなに!」
「இஇஇ……。」x2
まだまだ追加の代金を要求されそうな予感しかしないよ。私が寝ている間に採血されたり、手足を荒縄で……なんて想像したらとても怖い。だから、
「マイケル。看護婦さんにも五百ドルを払ってくれないかな。チップだよ。」
「お、おう、五百でいいのか。」
「マイケルはお金無いよね、私のバックからでいいよ。」
「あら、とても嬉しいですよ、ご主人さま!」
それと追加の代金三千ドルも払ったら、どうも逆のような気がしてきた。マイケルの食費とリネン料、それに水道光熱費だってたかがしれているというのに、私たちが騙されたと後日に思えてきた。
屋内には合計で七人のスタッフが控えている。24Hだから単純に多いとは言えないよね。それにさ、屋外の警備も六人だそうだ。何でもマイケルが有名人だから心配しているとか、きっとマフィアたちが怖いのかな。
「あの人たちは特殊訓練を受けたレンジャーです。一人はオリンピックの金メダルリストの強者ですわ。」
「え~それは凄いです、安心して眠れます。」(で、なんの金メダルかしら!)
「ほら、あの茂みの大きなお尻がそうですよ。ライフルですよお嬢さま。」
「இஇஇ……。」
マイケルはご主人さまで私はお嬢さまだという。ほんにほんにどうしてかしらね!?
「他のスタッフさんは何を。」
「調理に二人ですね、これは毎日ですが。残るは看護師が二交代で待機します。私は蛇足で待機と回診の担当ということで、休み無しで勤務いたします。あ~私だけは隣の部屋に寝泊まりしますから、準備はOKですよ!」
「あ!……マイケル、何か見つけたって言っていたわね。」
「あれは……戻しておいた。ここに使用人が居たとは思いもせなんだ。」
「はい?……何か私の事が議題にあがっていませんか?」
「いいえ、全然。」x2
準備はOKですよって、もしかしたらマイケルを誘うのかしら。そうなったらこの人は生きていないよね。
「それから食事は……、」
滔々、看護婦さんはこれからの事を説明しだした。
「そうなんですか。」
「はい、入院につきましてはこの説明で終わりですが、ご質問はございますか?」
「いえ、あとはおいおいで構いません。」
「では夜の回診までお休みなさいませ。」
調理は基本、昼と夜の分を作るとか。朝食は病院から配達される。ならば全部を配達にしたらいいのにと思うのは誤りかな。
マイケルがどこからともなくウヰスキーの瓶を出して来た。これから飲むというので私も~と言ったら叱られた。本当に飲むはずないのにな。で、私は弁当の空を突いている。お箸でトントンと何度も何度もね。
「マイケル。先ほどの説明ですが、違和感があるよね。」
「多分がだ経費を抜いて貯めたいだけだろう。朝食だけでも費用は高いし、後は超勤の人件費をこれまた浮かせたいのだろう。」
「あ~なるほど、理解したわ。随分とセコイのですね。」
「あの人が私の取り分が~と言うあたり、請負かも知れないぞ。」
「な~んだ、そうなんだね。うんと経費を使わせなくてはいけなくなったな。」
「お前も悪女だよな。俺以上にはなるなよ。」
「私、ボスの姐さんですって……。」
「!……。」
マイケルが無口になる時は都合が悪いときと決まっているのよ。やはりあの人たちは子分にしていたのね。これから暫くは別行動で仕事するのかな。
女は夫の仕事に性格を作り替えて合わせる事が出来るらしい。だが妻に夫が合わせるのは難しいようだ。
「私だってマイケルと同じように泥棒ででもしてみせるわよ。」
先の車上荒らしだって、マフィアたちへの襲撃だって別に悪いとも感じないのだから、将来は家族で悪事に……いや、子供だけは真面に育てたいと思うのかな。
「マイケル。この子らが三歳になるまでに定職を見つけるわよ!」
「はい?……なにを突然に。」
「いいからいいから。マイケルは職探しをなさいよ。」
「う~うん、定職……ねぇ~。」
もうすぐお腹の子と対面するのだが、女、いや母親としては名前、そう名前を考える時が凄く幸せなんだよ。
「マイケル。話は飛ぶけども、子供の名前、何がいいかな。」
「俺はありすが付けてくれたらそれでいいよ。贅沢は言わない。」
「贅沢ってなによ、」
「意味は……お金持ちになること位だが、気にするな。」
だいたいが名付けなんて母親が多くて、次がババ、ジジになって父親が付けるなんて少ないかもしれない。マイケルは名付けを私に譲るという。
「う~ん、双子だから、長女には『ありす。』で、次女には『ラフィーネ。』
で、いいかしら。」
「いやダメだ、ありすはいいが、ラフィーネはだめだ。」
「え~どうしてよ。綺麗な名前だと思うな!」
「そりゃ~俺も好きな名前だよ。だがな、別のを考えてくれないか。」
「うん、分った。あ~また悩むとするかな。」
「俺もありすが二人になったら困るよ。」
もし男の子が産まれたらどうしよう……。大きくなりすぎたモノにマイケルの視線が集中している。出産が近づくにつれて大きくなってきた乳房……。
転院? になるのかな、移動した翌日に医院長の旦那さまの診察を受ける。
「ゴホン、少し食べ過ぎのようですな、お腹の脂肪が膨らめばそれだけ子宮を圧迫して、至急……産まれるかもしれませんぞ。」
「そうですか、ここはとても美味しいので頑張って食べています。」
「で、腹は切らんのかいな。」
「ヤダ!」
あれから数日が過ぎた。マイケルの声がするからか、妖精さんたちが出て来てくれないのよ。
「いびき、うるさいわね!」
いよいよ私の出産なんだからね、力んで力作作ります! 違うわよ、力んで
可愛い双子を産むんだからね。ヒィヒィ……フー? 今から練習よ!
これからニセ亜衣音の出産と平行して書いてまいりますが、前後の内容では
随時修正いたします。先に亜衣音ことありすの出産と……? ……が!
波乱が起きる予定。この病院がぶ****かも!




