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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十三章 番外編  人狼と少女 亜衣音……β世界線

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第180部 アングラーとアングラの違いは?


 1972年7月17日 ラフィーナ


*)迷いの妖精


「ガラガラ……、」


 看護婦さんは音を立てながらドアを開けて入ってきた。


「あら、私も混じっていいかしら!」

「こいつの寝言ですよ、先ほど眠らせたところですが。」

「あら~確かに奥様の声が聞こえていた思いましたが? もう昼なのよね、だったら貴方が食べて下さい。」

「いや、寝ているこいつの口に押し込みますよ、きっと食べるでしょう。」

「随分と器用なのですね、喉に詰まらないように……舌だけで……ね?」


「あぁ、それはいい考えです。早速やってみます!」

「ではまた後で、オホホホ・・・。」



 何処までが本当なのかは分らない。マイケルが冗談を言うようにして話してくれたんだ。


「マイケル、塩鯖を食べたの?」

「ありすが寝ていたから昼飯は俺が頂いた。」

「お昼が済んだら家から持ってきて貰いたいのあるんだ、あ、でもね、双子だというからベビー服をもう一着買ってきて。」

「他には何かあるか、買って来る。」

「うん、ビスケットを沢山買ってきて。妖精さんたちに上げるんだ。」

「ありすも食べるとは言わないよな。」

「言わないよ……。それから私の黒のバックも持ってきて。中を覗いたら殺すからね、いいかしら。」

「おっかね~から、覗いたりしないよ。詮索も無しだな。」

「うん、それからは、そこに書いておいたからよろしく。」


 マイケルは一通り目を走らせた。直ぐに難しい顔を作るのよね。ビスケットを食べるとは言わないで食べるんだなこれが。


「これ、何処に仕舞ってあるのかも書いてくれないか。」

「私の旦那様は家事音痴なのだから、仕方ないか。役立たず。」

「無理をいわんでくれないか、俺の荷物なんか極少数しか持っていないからな仕方ないだろう。それに女の持ち物を漁って鑑賞する趣味は無い。」

「ウフフフ……、もしかして看護婦さんから言われたとか?」

「あの、さっきの看護婦が言うんだよ、奥様の替えのパンツも持って来るようにとさ、それも笑いながら言うんだぜ、趣味が悪い女だよ。」


 マイケルの声を聞きながら私は簡単な室内の見取り図と家具や収納の位置を書き記すのだった。耳や口と手が別々に動かせるのは女だけなのよね。マイケルは目を丸くして私の手元を見ている。男からしたら不可能に近いらしい。



「ガラガラ……、」

「ウキョ!」x2

「あら、どうされました?」

「いいえ、何でもありません。もう夕飯ですか?」

「まだですよ検診です、体温と脈を測りますから。」


 手際よく血圧まで測定された。


「オッパイを吸われたのですか? 少し体温が高いようですが。」

「知りません、そいつに訊いて下さい。」


「答えるとでも?」

「思っていません。次は仰向けになってお腹を出して下さい。形を確認いたしますから。」

「今日は静かにしていますよ、きっと親思いの良い子なのでしょう。」


「メイガッベウイズユー。」

「え? なんでしょうか。   ウギャ……、」

「はい、神のご加護ですよ。ほら、順調のようです、安心して下さい。」

「う~子供を嗾けないで下さいよ、本当に痛いのですからね。」

「ウフフフ……、」

「ウギャ、」x2


「旦那さんは関係無いですよ、一緒になって奇声を上げないで下さい。それにまだ産まれませんから。」


 私は再度胃袋を蹴られた痛みで奇声をあげたのだが、マイケルは何で奇声を上げたのか、それは私とマイケルだけしか知りません。


 ちょぉっと掴んだだけですってば。


「赤ちゃんが大きくならないようにね、病院内で散歩なさい。庭に出るときはナースステーションに声を掛けるのですよ、いいですか。」

「はい、致します。」

「旦那さん、一緒に行きますわよ。」

「お、おう、ではありす。」

「うん、お願いね。」



 それからマイケルは夕方になって無事に持って来てくれた。色々なベビー用品を残らず持ってくるあたり、こいつはバカとしか思えない。



「さっきの看護婦さんにベビー用品の店を紹介されたんで行ってきた。」


 マイケルは自分がカモにされた自覚がない、本当に脳天気な性格なのだろう。私は随分とマイケルの事を考えてみた。一朝一夕に理解出来るとは考えてはいないのだが、見て判りやすいのは事実みたいで子供じみた処も時折見せてくれる。


「哺乳瓶は使いません、マイケルには使わせません。」

「う~そんな~、俺も使いたい。」

「哺乳瓶は使ってもいいかしらね。」

「生……。」

「牛乳入れて飲みなさい!」


 他は、おしゃぶりとかガラガラとか、なんでもお店の人が勧めるままに買って来ているのよね、この親馬鹿が! この買い物はあの看護婦ババァによるマイケルの誘導が効いている。二人になって廊下を歩いて何を吹き込まれたのか、想像するのも? 気が引ける。


「マイケル、もう何度目の子供ですか、少しは学習してきたはずでしょうが!」

「はい……。」


 私はマイケルを苛めるようにもの申すだよ、私の鬱憤の為に……ごめんなさい。


 マイケルは小さくなって返事をしたが、私は未だにマイケルの事は知らない。確かに過去には子供が産まれているはずよね。ホント、ミステリアスな男なのだから。


 可愛い赤ちゃんの服を眺めては悦に入る私だ。マイケルは私を見て喜んでいるのが見てとれる、その暖かい視線が好き!


 それからマイケルは私の夕食を半分食べて帰っていった。これから明日の朝まで独りの時間が襲ってくる。少し怖いような気もするが、妖精さんが遊びに来てくれたら嬉しいな。


「さ、ビスケットを窓辺に置いてお迎えしましょうかね。……、」


 バスケットが無い、どうしようか。それから何か代用品はないかと探してみるが何も無い。


「仕方なか~私のハンカチで包んでおくかな。」


 今日は昨日と違っていっぱいマイケルの声が聞けたから眠れるよね。


「あ~~・・・・・・鏡を室内に移して貰うのを忘れた……!」


 浴室の鏡を今のベッドの位置から見える処に据えて貰いたかった。う~とても残念だわ。夜の妖精さんとベッドで横になりながらお話が出来たらいいのにと、思っていたのにな。


 この固いベッドも意外ときつい。何分大きな腹が下がるのがきつい。なので数枚のタオルを集めて厚くして横っ腹の下に置いてみた。これならば……でも起きているときにしか役にたたないのが残念。それは眠れば自然とズレてしまうからだ。


「ひかるは妊娠していると言っていたが、あの時からしたらもう産まれたかな無事に大地の赤ちゃんを産んでくれたかな、気になるな。」


 妖精さんが出てくる前に寝入ったが、残念ながら夢には出てはくれなかった。鏡を通して日本にいるお母さんの姿を見たかったな。でもそれが出来るのかはまだ分らない。


 そんなひかるの事を考えて寝落ちしていた。夢に出て来たのが大地で、その大地には一人の赤ん坊が抱かれていた。大地の横には女の人が……私のようでもあって私ではないような。以前にもこんな夢を見たような気がするあたり、私の脳も随分と子供みたいだ。


 例えばだよ、幼稚園児にある可愛い漫画の絵を見せたとする。この子らは初めて見るのは間違いない。そうして楽しいお昼を済ませて先ほどの漫画の絵を見せると、


「この絵、いつから知っているのかな。」

「うん、僕、この絵は知っていたよ、だいぶん前に見た事あるもん。」


 と、答える。小一時間前に見せたというのに随分前から知っていたと答える。これらの事は大人でも言えるようだ。私だってこの漫画以前に見たような? となるのだからね。たくさん見ている夢ならば覚えていなくても深層心理では記憶していたとか? あり得ませんよね。




 途中で目を覚まして目に涙を溜めていたのが気になる。 


 お腹の私の子がそんな夢を見させてくれたのだろう。どこか通じる時があっても不思議ではないよ、大地。


「大地、元気に戸惑っているのよね、大地。」

「大地はバカだから自分の娘だと実感出来ないだろうね、ホント、バカだから。」


 こんな夢想をしていたら何だか心がほっかりとしてきた。



 私が今まで見てきた夢の世界には私自身は登場しない、そんな覚えがある。もし自分の姿が見られた時は、それは自分が死んで魂が抜けて、自分の魂から自分を見下ろす時だと考えているの。他人が自分自身の姿を夢に見るなんて信じられないよ。


 もう大地には悪いのだが時々にしか大地の事は思い出さなくなっている。それにひかるの事だって恨んだりはしてはいないのだと考えている。あ、感情は別物だから奥底の感情は自分でも理解出来ないのよね。


「マイケルと会えたから、もういいんだ。」


 ひかるの方が大地を幸せにしてくれるはずよね、だって私と大地が沢山Hしたのに子供は出来なかった。もし大地の子をひかるが産んでいたら、それはそれで喜んであげなくちゃね。


「う~……少し気分がムシャクシャしてきたわね、腹いせに魔法を撃ってみる

 からね。」


 私はベッドから起きて窓辺に行く。窓を開けて大きく叫ぶの!


「大地の……バカ~……エアー・ショット!」


 この先には自分の家が在るなんて思いもしなかった。気も収まりすっきりとしてよく眠れたな。やっぱ、女は感情の生き物だと理解した。


 でも、遙か彼方では……?


「ガシャ~ン!!」     「ウギャ!」


 早朝のマイケルは開口一番、


「おいありす、俺を殺したいのか!」

「え゜”……何の事かしら!」

「お前、魔法をぶっ放しただろうが、俺の部屋の窓が粉々に吹っ飛んだぜ。」

「知らな~い、大方マフィアの報復ではないのかしら?」

「いや、あれは確かにお前の恐怖を感じたから間違いない。どうした、襲われたのか、夢見が悪かったのか。」


「……あ! ううん、何でもありませんわ、オホホホ……・、。?」

「怪しい……、」


「魔法なんて今はもうお腹の子らに譲ってしまっていますから、巫女の魔法はもう遣えません。」

「それは……そうらしいな。俺は詳しくは知らないからな。」


 でも私が巫女の魔法を使えたのは不思議でもあったのよ。私、イレギュラーなのかしら。バイクの燃料は廃屋? どちらもいい意味ではなさそうだね。


「マイケル、庭に出て散歩しよう?」

「そうだな、朝飯前にいいだろう。」


 この国は湿度が低いからひんやりとしている夜明け。まだ沈みきれていない月が西の空に浮かんでいた。多分だが私のお産は次の満月のはず。半月後だったら私はマイケルの子を産めない、死産かもしれない。そう思ったら私はマイケルの腕に……抱っこちゃんスタイルでしがみついていた。


「マイケル、私、少し怖くなってきた……。」

「あぁ大丈夫だ、俺が付いている。」

「うん……お願いよ、」


 この日私はマイケルの手を離さなかった。どこからともなく湧いてくる不安に大いに考えさせられた。


「おい、トイレにも付いて来る気かよ!」

「うん、私も行く。」

「இ……。」


 兎に角マイケルと離れたくないのだと心が叫んでいる。



「ほら、も~……、俺は帰るからな。二度と魔法は撃つなよ。」

「うん、明日は早く来て下さい。」


 マイケルは帰ってしまい夜になった。ここで妖精さんが出て来たのよ。


「うふふ、あはは、ねぇ、面白かった? 面白かったよね。」

「貴女、新しい妖精さんね。私に何をしてくれたのかな。」

「うん、色々と悩んだから面白くありませんし、……面白くありません。」

「ふ~ん、」


「あの不安な感情はあんたが見せてくれたのね。」


「そうだよ、それでまた自分が大きくなれたからいいやんか!」

「新たな妖精さんが来ていたなんて、きみは意地悪なんだから。」


「あ、それからね、自分の家が壊れたのはね、別の妖精の所為だよ、風の妖精がきみの家に魔法を届けてしまったんだね。」

「あ~それでね、弁償してもらいたいわね。」

「いや~出来ないな~、出来ないよ……バイバ~イ。」



 私はここ最近おかしい、色んな事で迷っていたな。



「うぎゃ~……うぎゃ~……もう静かに……して~~!!」

「おいありす、どうした。」

「お腹の子が喧嘩している~・・・!」

「うぎゃ~……うぎゃ~……、」

「呼んでくる、」


 慌てて飛び出すマイケルはドアを半分開けて肩をぶつけながら廊下に出ている。「ドアを少し開けて頭を出すからよ、」と笑って見てる……なんて余裕はない。お腹の子が暴れる理由は思い当たらないのだよ。


 慌てるマイケルと冷静な医院長、ニコリと笑う婦長と三者三様なのがいい。遅れて担当の看護婦さんが入ってきて、これまたニコリと笑うのよね、何をもくろむんでいるのよ二人して。


 医院長からしたら私は他人、少し痛かろうが苦しいだろうが所詮は他人。気にする風でも無い、落ち着いたものだ。


「おい、早く……、」

「黙らっしゃい!」

「ヒェ~!」


 慌てるマイケルを一喝……伊達に歳は重ねていないようだ。(この妖怪……幾つだろうか。)



「はい、診察終わりました。明日に切りましょうか。」

「ヤダ! 産む。」


「マイケル、家に帰りたい、日本の家に……ねぇ帰ろう?」

「そうだね、ありす。」


「ゴホン! 既に手遅れでございます。妊婦に長旅は無理というもの、いつ産まれてしまうか、それが問題です。」

「そんな~……、」

「婦長、旦那さんを連れて日本大使館へ行って下さい。」

「はい、お姉……いえ、医院長。それで診断書は?」

「ここに書いておきました、大使館に判断して頂きましょうか。」


 随分と手回しがいいようだが、切羽詰まった夫婦にはそれが理解できないのよ。それでまんまと医院長らの術に嵌まった。ナイスカップリング?


「強制送還とか?」

「案ずるよりも産むが易し、産んでから帰りましょうかね?」

「はい、元気な子を連れて帰ります。」


「医院長……すまんが大使館に判断とかやめてくれないだろうか。曰く付きだと言えばいいのかな、兎に角金なら用意しているから先に、無事に先に産ませてはくれないだろうか。」

「……よろしいでしょう。婦長、入院記録は全て末梢して頂戴。で、病室は退去させて以後は私の家に連れて行きなさい。」

「はい、医院長。」


 こんな会話が飛ぶあたり、事前に打ち合わせをしないと出来ないよね、そうよ私はカモにされたのだよね? それに代価をドル払いにせろ”とは、なんなのよ。



「で、旦那さま、入院のお代は三万ドル、ドルでお支払いをお願いします。」


「足下見てんじゃね~よ、べらぼうに高いだろうが・・・。」

「お静かに、お腹の子に聞こえますよ。」

「う、しかしだな、こうも高いとは予想もしていなかったし、」


 私は日本語でマイケルに提案した。


「マイケル、お願いよ、ここは大人しく前金で値切りましょう!」

「うひょ~・・・とてもいい女房だよ。そうしてみるか。」

「バッグを持って来て、あの旅行カバンよ。」

「あ、あれな、……ほらよ。」

「ありがとう。これで二人をひっぱたいて!」

「うっ……これだけも、凄いな。」


 私はバックの中の二万ドルを見せて、内半分をマイケルに手渡した。


「うん、私の出産費用に使う予定でいたのよ。これでお願い。」


 それも私がニコリと笑うのもだからマイケルは勢いが付いたように、


 再度ギリシア語で、


「なぁ医院長さんよ、この医院が壊れてもいいのなら三万ドルを出そう。だが、今後も仕事をしたいならば、この金で手を打ってくれないかな。」


 凄むマイケルに悲痛な顔の医院長と、オロオロするばかりの婦長さんに、私は愉快に眺めている。バッグにはまだ半分も残っているのだからよ。


「いえ、まだ不足です。悪人の手助けをしたと知られたら営業どころではありませんし、闇に落ちても仕事はありません。」

「ほら、追加の五千ドル、これで充分だろうが、」

「いえ、十分ではありません。」

「まだ足りていないのか、だったら残りの三千ドル。これで充分だろう。」

「お姉さま、殺されるよりもましですよ。この人たちはアテネのマフィアたちを潰した英雄さんですから。」


(う~……私たちの素性は知られていたのね。)


「ま、そういう事だな。で、どうなんだ?」

「マイケル、首締めて出て行こうか。帰りの旅費に充てたが得ですよね。」

「ま~そうかもしれね~な~。どのみち帰るのだから旅費は大事だよな~。」


「ヒェ~……一万と三千ドルで充分でございました。」

「迷惑かけるよ、これ以上にならないよう注意はしとくぜ!」

「は、はい、お静かにお過ごし下さい。」


 迷いの妖精さんは医院長にまで夢を見させていたのだろうか。それから直ぐ離れのような病室に移動させられた。少しこの医院から離れた処で院長の自宅が五十メートルと離れた処に在るらしい。古い家を改造したらしく、見た目はオンボロな家。中身は……最新式の設備だそうだ。五年前のという言葉も付随

しているが悪くない。病室は二つで処置室が一部屋とナースステーションが在るみたい。兎に角アングラー向けの仕事だよ。


「おい間違っているぞ、アンダーグラウンドというんだな。マフィアと同じだよ。」

「へ~そうなんだ、いいマフィアさんも居るんだね。で、アングラーって何かな。」


「お前がつい最近、俺を売りたいと思っていたから、そのアングラーという言葉が出て来たんだろう。マグロ釣りだな。」

「あ~そうだったわね。私、マイケルを売らなくて良かった~。アングラーとは言わないのかな。」


 私たちの会話が恐ろしいのか、


「妹、いえ婦長、出て行きますよ。担当はいつもの人でいいわ。」


 ブルブルと震えて三人は帰って行く。まだ私たちが移動しただけだから人員の配置も、台所も含めたナースステーションのスタッフもいなくて、食事は出前だと言われてしまった。


「そうなんだね、お金は人件費に潰えるのか。」

「なんだか悪い事をしたかな、出て行くときに金を置いていくか。」

「そうだね、残っておれば? だけれども。」

「言えてる……。」

「マイケルのベッドも赤ちゃんのベッドも在るね、」

「今日からは護衛に就くよ。」

「うん、お願いします。私の堕天使さま。」

「マイケル、室内の明かりを点けて。」

「おう、待ってろ、……電気来ていない。」


 それから電光石火……沢山の作業が夜遅くには終わっていた。


「掃除が終わりましたので、隣室へお出で下さい。」

「え、ここではないのでしょうか?」

「はい、掃除が出来ておりませんので、取り敢えずの処置でございました。」


 私は納戸の荷物をマイケルに押しつけて一人で部屋から先に出る。奥の方には五人ばかりの人たちが忙しそうに働いていた。


「やっぱ、大変なんだね、アングラは、」


 このひと言でアングラーとアングラを間違えたのだと思いついたのだった。マイケルもドジだよ、こんな事にも気がつかないなんて、ね。


「ウキョ~……これは久しぶりだぜ~。」


 マイケルの声が聞こえる。何が久しぶりなのか……段々と赤面する私だった。


 この部屋からの眺めは最高にいい。これが胎教を考えたものだとは教えられるまで気づきもしない、私もドジだからね。


 初めてのローソクの灯りがマイケルを狂わせる。


「お~・・・そこそこ! もっと垂らしてくれ!」

「これって日本のお灸にも似ているのかな?」


 私が産むマイケルの子……少し心配だよ?


それから四五日しごにち過ぎたか自分の迷いは無くなっていた。自分でも気づいていないから分らないよね。



 折れた鮎竿の事を考えていたから間違えたのだ~……。


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