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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十三章 番外編  人狼と少女 亜衣音……β世界線

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第170部 逃避行の始まり……


 1971年10月10日 ギリシア


*)逃避行の始まり


 あれからひと月程経ったか、私の身体を取り戻す鍛錬はとても素敵だった。あちこちの洒落たレストランへ赴き、気が向くままに色んなメニューから頼んで食べまくった。そうしてようやく出来なかった運動もこなせるようになる。


 自称、ありす・城南。白川亜衣音の詐称だ。マイケルから付けて貰った名前。可愛い名前、マイケルの嫁だという。マイケルはパスポートを持っているが私のパスポートは亜衣音のままだから使えるのかな、偽造できないかな。


 今後の旅の事を話し合う。馬鹿な私を考えての事か、本当に簡単なものだった。


「出入国審査を受ける必要がありますよね?」

「いいさ、バイクならば遠回りして山越えが出来る。な、簡単だろう?」

「はい実にシンプルで簡単ですね。」

「鉄砲の弾が飛んでくるが、ありすの魔法で逃げ切れるだろう。」

「う~怖いです。私の背中が弾よけですか?」

「俺だってイヤだよ盾にはなりたくない。」

「私だって盾はいやです。マイケルの弾はいいですよ?」

「撃てるタマはない。茶化すな。」

「ブ~だ、バカ、好きなのに……。」

「子供は好かん。まだ十六だろうが。」


「十八だと言いました、本当だからね。」


 これって、行き当たりばったりの無計画というやつだよね! ワクワクとても楽しみだな。


「そうか……。これから旅行の準備をしたいとは思うが、ラフィーナの方が道具は揃う。今日でこことはお別れだから何処か行きたいか。」

「ラブホ!」

「バコ~ン、」



 だよね。でもでも夜に酔ったマイケルのベッドに潜り込んでイタズラしちゃったよ、この私。…………マイケルは大きかったよ

                               ……鼻の穴。

 今日もホテルに宿泊している。この部屋もこの綺麗な夜景も最後となるのね。


「うきゃ~……大きい鼾、これでは眠れない。」


 なのでマイケルの自慢の鼻の穴を塞いだんだ。それからは静かになった。


「う、う~マイケル。私を部屋から追い出すなんて、鬼、悪魔、マイケル。」




*)ラフィーナの港


 私の初めてのヨーロッパ旅行だよ、新婚旅行だよ。と、燥いでいるとマイケルは嬉しそうに微笑んでくれた。日本語で言っているからいいのだろうね。これがろくに話せない英語だったらマイケルに口封じを受けるに違いない。



 遙か遠くの海から眺めていたら、私も白いウエディングドレスを着たくなってきたよね。



 この港はギリシア本土の港街だ。ギリシアの離れ小島との交通の要所となって栄えて来た。遠くまで見える街には白い建物がいっぱいだ。建物の間には沢山の緑の木が植栽されてありより異国情緒を、漂わせている。

                   ↑ ↑ ↑ ↑

 マイケルにお酒を与えたら異人さんが、ただ酔わせている、だよね。


「なんだか花嫁になったそんな気分だよね。山からエーゲ海を見てみたいよねぇマイケル。」

「今日は激安ホテルに宿泊。無理を言わんでくれないか。」

「だってマイケルはお金持ちなのでしょう?」

「使い果たした。お前に良いところを見せすぎたようだ。返してくれると嬉しいのだがな。」

「エアー・ショット……してもいいのかしら?」

「うっ……驚かすな、寿命が縮む。」

「それで、何処に泊まるって?」

「激激安のホテルに決めた。明日は良いところを探す、という事で納得して欲しい。」

「うん、マイケルと一緒ならば何処ででもいいよ、どうせ車は無いから。激の字が一つ増えましたが?」

「そうか、それにするか車を貰ってくる。」

「あ、ごめんなさい。もう言いません。」


 どうもマイケルに掛かれば車なんて直ぐに手に入るのだとか。特に古い日本の車はハンドルロックも無いし、エンジンだって直結すればいいのだとか。私にも教えてやろうと言うのよね、この…おたんこなすが。


「分ってくれて嬉しい。宿の代金よりも飯に金を使いたい、その方が豪華だと思っている。」

「ふ~ん、ハンバーガーしか食べられない人ならば、なおさらだよね。」

「どの口が言うのかな、え、えぇ?」

「はい、この口です。お腹が言わせるようであります!」


「この先にブドウの木を這わせたホテルがある、そこに決めている。前に俺が泊まって気に入ったホテルだから間違いない。」

「イチ押しだよね。うん、とても楽しみ。」

「それは良かった。酒を仕入れていく。ありすは、……白いパンツか!」

「うきゃ~どうして私の心が読めるのよ。」

「勝負下着が欲しいとみた。」

「はい、よろしくね?」

「だが俺は小娘は好かん。十年後にしてくれ。自分で買え!」

「お婆ちゃんが好みなんだね、待っていてよねババァになるまで!」

「俺も長生きしているから楽勝さ。」


 夜用のお酒と私の着替え、それにマイケルのバイクに似合うアメリカンスタイル衣装も買い揃えたのよ。革ジャンだよ革ジャン。カッコイイのよね。


「マイケル、惚れ直した。」

「それは良かった。明日はありすの衣装を探すから楽しみにしておけ。」

「はい、期待しております。ゴスペル衣装を!」


 マイケルは私の胸を上から下に撫で下ろす。これは贅沢言うなという嫌みだよ。


----------------------------



 翌朝マイケルは少し紅い顔をしていた。それもそのはずよ。……だって!


「ありす。お前にプレゼントだ。」


 そう言ってマイケルはやや大きくて無色透明な石のペンダントをくれた。


「これはガイア石という珍しい宝石だ。これを首にかけていろ指輪の代わりだからな。」

「わ~とても綺麗だよ、どうしたのこの石は。」

「気にするな。元嫁の遺品だが俺が買ってやったから今の嫁に渡したい、ただそれだけだ、悪いか。」

「いいえ、ありがとうマイケル。とても嬉しいです……お下がりが。」

「お前の胸に下がる二つよりも、一番大きいかもしれないな!」


「இஇஇ……。」


 いいもん。どうせブタさんのヒレカツの厚さしかありませんわよ。フンだ。胸が萎んでいる間は首から下げていても肩は凝らないだろう、それ程に大きいのよね。売ったら幾らになるかな、ねぇマイケル。


「うわっ……、」


 私は思わず頭を両手で覆った。今にもマイケルの空手チョップが落ちてきそうな予感がしたからだ。


「売ったら殺す。」

「ふぁい、無くしませんから。でもどうして私の心が読めるのよ。」

「顔に書いてある。欲張るな。」

「え~なんでよ、お金……持ってないし、お金欲しいよね。」

「そういう事だ。目が¥のマークになっているぞ。」

「むぎゅ~……。」


 私の事は研究済みなのね。いつからなのよ、ねぇマイケル。


 マイケルはガイアクォーツの蘊蓄うんちくを解説してくれる。ありがた~く拝聴しようではありませんか。


 最も世界で美しい水晶と言われている、チタニウムinクォーツはアメリカのアーカンソー州で産出される。神秘的なパワーと非常に大きな力が宿るのだと言われている。


 ガイアクォーツは海、空、山の地球の中心のエネルギーを表す、母なるガイアの象徴とも言われ、ネクラをネアカに変えてくれるのだという、らしい。1978年の年明けに中州産業大学の森田教授が発端だという、ネクラ。私を表したような意味だよ。こんな暗い私をこのガイアクォーツを所持しているだけで治る

という。金額にして六千円である……信じられない。え? どっちのが方だって?


 安すぎる女の子だね私は。でもマイケルの意図した処はそんな事ではなかった

のよ。


「あのな、この石はな、ありすがダメージを受けた身体を回復する癒やしの石 なんだ。早く身体を治せよ。それに巫女の力だか魔法も吸収してくれるさ。」

「う……ありがとうございます、マイケルさま。」


 涙がポロポロと落ちてくる。この涙が真珠になればいいのにと思った。


 この石にはマイケルの前の奥様の力が宿っていて、私の身体を癒やしてくれた。この奥様名前がラフィーネだと結構過ぎてから聞かされた。この国の産まれだったのだと。それに素直で私にうり二つだったとか、もうあり得ませんわよ。


 まだ先の事だから今はただ喜んでいるだけだよ。


 私を妻に迎える為の一つ目のパーツ。



----------------------------


 それから私たちは遅い朝食を摂って、マイケルは仕事に行く。私はお留守番だったから退屈だよと近所を散歩していて見つけたの。街路樹に寄生している宿り木、これを木登りして数本を折って頂いてくる。


「今夜のお楽しみ。」


 この西洋にはこんな宿り木が多く自生している。日本では少ないのでどうしてなのか、気になっていたんだ。そしたらね、セイヨウヤドリギというのは独特で一度鳥に実を食べて貰うのだって。そうして外皮を鳥のお腹で消化させてねネバネバ成分と種子を糞として排泄させるのだとか。その後が日本と違うんだよ。


 果実に含まれるネバネバ成分が、大きな樹木に付着しないと発芽できないんだ。こうやってようやく鳥さんが運んでくれてもね、日本は雨が多いからせっかくの種も雨で落とされるのよね。初冬に飛来する鳥さんたちも少ないから、日本では多くは見られないのよね。ヨーロッパは雨が少なくて鳥さんたちが多いんだよ、きっとそうよ。


「この宿り木は色々と利用できるのよ、今晩にも使って落としてみせるわ。」



 夕方にはマイケルは仕事を終えてホテルに帰ってきたよ、カッコイイ? 大型のバイクを買ってね。新品だから……と違うよね、お金払ったんだよねCB750。ガスタンクにウィングのマークがついているやつ。


「わぁ~凄いバイクだね。」

「いいだろう、凄いだろう……。」

「うん、私も乗れるのよね?」

「もちろんさ俺の後ろだがな。」

「なんだ、後ろか!」

「ありすに似合うバイクの服を買いに行く。だが明日に変更したい。」

「え~なんでだよ、期待させておいてさ。」


「明日はアテネに行くから、より都会で買い揃えたい。」


「キャッ! 嬉しい、嬉しいよマイケル。」

「あぁそうだろう。もう一日待っていてもいいだろう。」

「はい、いいわよ。」

「それよりか飯だ、腹減った。」


 今晩はホテルのレストランでデーナーだった。小さな小綺麗な食堂と言うのがふさわしいようなレストラン。色んなアンティークの飾りが在って実に楽しい。


 窓辺のテーブルを勝手に予約しておいたわ。それから少しばかりのお金を渡してね、ボーイさんにこの窓に宿り木を取り付けて頂いたのよ。


「お嬢様、この辺りがふさわしいかと思います。」

「はい、ではそこで。でも、そんなに笑わないで下さい。」

「すみません、失礼いたしました。今宵の恋が実らんことを祈っております。」

「きっとマイケルは気がつかないかな。」

「でしたらこのテーブルにも飾りましょう。」

「はい、お願いします。」


 窓辺の宿り木の下では恋人たちがキスをすると恋が成就するとか。花言葉は、私にキスをして、なのよ。それに私が行きたいルーマニアはね、ヤドリギは祝福の木とも言われていて、ヤドリギは魔よけの効果が大いにあるのだとか。


 ならば私、ドラキュラさんに会う時は持参して身を守るわ。


 乙女心に恋の夢。これで今夜も完璧よ。


 だがこのマイケルは残念な男なのよ。全く気づかずにお酒を飲むわお代わりをボーイさんに要求するわで、私は泣きそうになった。


「お嬢様。大丈夫でございます。次はサーモンピンクのお刺身でございます。」

「そう、ピンクが花開くのね!」

「お嬢様。今度こそ、鱚の天ぷらで……、」

「はい、喜んで食べます。」


 いちいち声を掛けては薄ら笑いをして行くのよ。もう最後になってこのボーイさんからね、からかわれていたんだと悟りましたわよ。おまけに飲んだお酒の多いこと多いこと。まんまとしてやられましたわ。


「もうマイケル。お酒ばかり飲まないでよ。」

「だって次々に持ってくるんだから、飲まないと悪いだろう?」

「そうだけれども、私も飲みます!」

「ありすには強すぎる。やめておけ。」


 と言う始末。巫女は酒豪だからね、飲んでやるわよ。……。


 もうキスすら出来ずにお開きの時間となってしまう。このボーイ、帰国の時にぶったたいてやるからね覚悟しなさい。


「お嬢様。今宵はありがとうございました。」

「はい、こちらこそ楽しい夢を見られました。ありがとう。」


 って言って私はチップを渡していた。マイケルのポケットから掴み出したお金は幾らかは知~らない。大げさにお辞儀をしているから大金だったりしてね。


 良い感じでお部屋に戻る。


 私はシャワーを済ませて勝負下着を身に着ける。マイケルは……もう寝ていた。そう言えばお酒を飲みながら「今日は疲れたよ。」と、何度も言っていたし、今晩はマイケルを襲うのは出来ないかな。


 マイケルは悪魔だった、宿り木の所為で私には寄りつかないのだと悟された。




 翌朝になり、べそ掻いたマイケルがいた。


「おい、大金を落とした、探してくれ。」

「え~幾らなのよ。」

「日本円にして十万くらいか。昨日稼いだ金の全部だ。」

「夜のレストランでボーイに渡したわ、」

「うぎゃ~……俺の金を……。」

「ギリシアのお金は知らないのよ。」


 この一言で泣き騒いでいたマイケルもようやく泣き止んでくれた。


「分った。今日のありすの服が買えない。残念だよ、いや~全く残念だな。」

「分った、取り返しに行ってくる。」

「いやいや、やめてくれ。俺が悪かった、服は買えるからさ。」

「うん、約束だよ?」



 帰りにはボーイの姿が無かったのよ。


「あの者、急に休みを取りましたが、なにか。」

「いえ、なんでもありません。お礼参りをしたかっただけですよ。」

「そうでしたか、伝えておきます。」

「家を教えなさい。」

「そうですね、この坂を下って……。」


 もちろん、突風が吹いたのは間違いないよ。



----------------------------


 それからマイケルのバイクの後ろに乗ってアテネに着いた。


 エーゲ海を望む高級ホテル地区イアの断崖に建つ綺麗なチャペルが見えてきた。


「今日はこのホテルに泊まる。」

「わ~い、凄いよマイケル。」

「そうだろう、このホテルの下だがな。激安……。」

「うぎゃ~……。」


 マイケル、指さしは正確にお願いしたいわね。綺麗なホテルの正面を向いてから横を指さないでよ。


 チェックインを済ませる。このボーイさんは私を見てくれない、極めて紳士的でいいかも! もしかしてブスだからなの?


 黒っぽい岩山に建てられたホテルやチャペルは、どうして白一色なのかを知りたい。


「ウエディングドレスと一緒さ。」

「へ~そうなんだ。」

「俺は仕事に行ってくる。好きにして遊んでおけ。」

「うん、気をつけて、いってらっしゃい。」

「早いと思う。部屋で待っていろ。」

「うん、」


 数時間で帰ってきたマイケルは、またしても紅潮した顔で……ね、


「ありす、贈り物だ。」

「え~何かな。……これは髪飾りなのかな。」

「そうだ、ティアラという王冠だな。今つけてやる。」

「うん、綺麗にお願いね。」

「鏡は、そうだね鏡の前で着けようか。」

「……まぁ、素敵! マイケルありがとうございます。」

「次は服だな。それで終わりになる。」

「うん、とても楽しみ。」


 そう言ってマイケルは昨日の白いチャペルに連れていってくれた。


「え、あ、ここって昨日の……よね。」


 驚いて目を白黒させている私を無視するマイケルは、女の人に声を掛けているのよね。


「昨日頼んだマイケルだ。この花嫁に衣装を、」

「はい、お待ちしておりました、マイケルさま。」

「化粧も頼みたい。」

「はい、かしこまりました。」


「ありす、綺麗になってこい。直ぐに結婚式になる。気絶するなよ。」

「勿論よ、待っていなさい。」


 うわ~随分と高飛車な言い方だわよ、どうしたのかなこの私。


 暫くして、


「マイケルさま、奥様が腰を抜かしてあります。どうしましょうか。」

「そうだったか、カツを入れねばなるまい。」

「では、熱い……?」

「それしかないだろう。」

「口紅はまだ塗っておりません。済みましたらお呼びくださいませ。」


 マイケルとの初キス。もう私は全身の力が抜けて床に座り込む。


「ポワ~ン……。」

「おいおい、これでは逆効果だったか。どうするよ。」


「ありす、とても綺麗だよ。」

「もう一度、お願い。」

「では立ってくれないかな。」

「はい、喜んで!」

「なんだ、立てるではないか。」

「え~初めから私は歩けましたよ、何か変でしょうか?」

「あのファイナンシャルプランナーにしてやられたか。」


「ウェディングプランナーですわ、間違えないで下さい。」

「お、出て来たな妖怪め。予算を上げるよ。」

「はい、ありがとうございます。お綺麗な奥様ですよ!」


 口紅の一塗りがべらぼうに高いとか、そんなことあり得ないよ。


「ねぇマイケル。もしかしたら収支の相談もあのお姉さまは資格を持っているのよね。」

「だろうな俺を嵌めやがって、とっちめてやる。」

「どうしたの? マイケルが騙されたとか?」

「あぁ、ま、そうなんだろ。何処でミスしたか分らん。」


 そんな事も屋外の真昼のお日様に当っていたら忘れてしまう。ここは本当に白と海の碧のコントラストが似合っている。もう最高だよ、吹く風も冷たくて頬が気持ちいい。胸は……すっすっすと、風通りがとても良くなっているわよ、当然でしょう?


 そんなお日様の元で結婚式を挙げた。う~ん、最高……! それから三番目のアイテムを貰ったんだ、左手の薬指に光るエンゲージメントリングよ!


 舞い上がるような結婚式に涙さえ流してしまいそうになった。神父の前で長いキスをして恥ずかしいよマイケル。その後は本当に舞い上がってしまい何も覚えていないのよ。記念撮影の写真、沢山頂いた。日本の家に送りたいほどに素敵な私の花嫁衣装だったのよね。


「自分で花嫁衣装を褒めてどうする。」

「あ、ホンとね。自分でも参列する人が居ないので仕方ないよ。」

「俺が褒めただろうが、不服かな。」

「いえ、最高でした、ありがとうございます。」


「衣装と神父のレンタル代で五十万円。追加で二十万は流石に高過ぎだろうが。」

「マイケル、それを言ったらお終いよ。」

「ケッ、ば~ろう~が!」

「今日はこのホテルに泊まりだよ、嬉しいよね。」

「俺は今夜も仕事にいく。独りで寝ていろ。」

「いやだよ、初夜だよ。一緒に居てよ、お願いします。」


「……、」

「そうよね、小娘は嫌いだったよね。」

「もう少し、もう少し待ってくれないか。今夜は居るから。」

「うん、でもどうしてなのか話して下さい。」

「ありすの身体がまだ治りきっていないからだよ。今Hしたら壊れてしまうだろうと思う。」

「そ、そうよね。身体には大きく傷も残っているのよね。憎いなこの傷。」

「それはもう治っているはず。俺を信じてくれ。」

「?……はい、信じます。」


 バスルームででも意識して身体の痣や傷に視線を送らなかった、見たく無かったんだよ。


 タキシードからバイク乗りの姿に着替えたマイケルは本当にカッコイイ。惚れ惚れしてしまう。あ、逆だったわ。


「ねぇ、この衣装はもしかして、高いの?」

「ま、ックイィーンの仕様だからな。気に入ったか!」

「うん、とても素敵!」

「そうだろうそうだろう……イッヒッヒ。」

「ねぇマイケル、もしかしてこの服を着て式場の予約をしたとか、していませんか?」


「それがどうした、」

「ふ~ん、お金持ちに見えたんだよ。それも異国の長者にさ。で、式場の金額は並だったとか。」

「並でいいだろう後で上に変えたがな。金額は言ったよな。」

「へ~変えさせられた……の間違いよね?」

「そうだとも言う。この服が悪かったのか!」

「だと思うよ。あの人ファイナンシャルプランナーだから、人の財布を見透かす能力持ちよ、強敵だったのよね。」

「だったら半分取り返してくる。」

「あ、だめよ。女には、いいえ私には金を使うものだから、値切っていなくて嬉しいわ。」

「お前が基準かいな。あ、そうだった。晩飯はお寿司を頼んでおいた。きっと、」

「地中海名物の、マグロ尽くしよね。」

「だろうな、生だから旨いだろう。」

「そうね日本は冷凍ばかりだし、私、お寿司にはうるさいわよ。」

「ジジイに鍛えられたと言いたいのか。」

「そうね……マイケルって、何処までが冗談なのかしら。」


 夜のお仕事が多いマイケルは寝不足だとは思えないのよ。でもね、


「疲れた、寝る。」

「んまぁ~……お寿司はどうするのよ。」

「冷凍しておけ、どうせ同じだろう……。」


「今夜の私は……特上なのにな!」


 私はマイケルに覆い被さって口を塞いだ。


「この口が悪いのよ。さぁ早く私を食べなさい。」

「まだ日が高い、出直せ!」


「はい、この衣装……着替えて来ます。」

「いや待て、待ってくれ。俺がキスしながら脱がすから……。」

「うん、お願い……マイケル。」


 でも本当にキスまでだった。でも、嬉しいのよ。ひかるによって付けられた傷がすっかり治っていたわ。いったいどうして?


「胸だって元くらいには大きくなっただろうが、これもガイアクォーツのお陰だと思うぞ。」

「マイケル、私の顔はどうなの?」

「もう少し、もう少しで治る。それまでの我慢だ、出来るよな。」

「う~、はい我慢いたします。」


「ねぇマイケル。私、綺麗かな。」

「もちろんさ、色白で黒くて綺麗だよ。」

「うん、嬉しい、抱いて!」

「キスまでだからな。」

「……、」


 以後、省略・・・!


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