表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十二章 ニセ亜衣音事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/417

第167部 ニセ亜衣音の物語……終了


 1972年7月10日 東京



*)悪夢……


 私が亜利沙と霧香か霧のどちらかをお風呂に入れる。お母さんは残った一人と長女たちを入れている。お父さんは気まぐれなのだろうか、たまににしかお風呂に入れてはいない。


 今は赤ん坊を風呂に入れる練習だとか。ならば大地にも亜利沙を洗わせようとしたら、まだ先にしなさいと忠告を受ける。もう大地だって大丈夫だろうにね。


「男は馬鹿だから力加減が分らないのよ、そうね~二週間後からにしましょうか。それ位過ぎたら亜利沙ちゃんだって充分に耐えられるでしょう。」

「え~大地はそんなに力無いわよ? だってへたれだもの。」

「んも~この子は大地くんをへたれとか言うものではありませんよ。」

「なんて言えばいいのよ。」

「そうね……って、私から言える訳ないわよ、うっかり考えたじゃないの。」

「おかしなお母さん。」


 赤ん坊は私とお母さんが交互にお風呂からあげて拭いてやり、産着を着せて男の前に持っていく。私と大地とお父さんの三人で、四人の赤ん坊の面倒をみる必要がある。お母さんがお風呂から上がってきてようやく四対四になるのだから。


 大地が時々お母さんから子供を預かってくるのだが、いったい何処を見ているのやら少し興味が湧いてきて訊ねたりする。勿論オッパイだよね? 大地。


 娘は真っ赤になりお猿さんだと言えなくはないかな。まだ手首の皮膚の剥がれは残っているから見苦しくもある。シワクチャが段々と綺麗な肌になっていくのがとても嬉しい。


 あんなこんなの毎日が続いているが、徹さんが地方遠征へ出かけたら澪お姉さんが「お世話になりま~す。」と言って我が家のお風呂に入りにくる。


 赤ん坊五人のお風呂に一時間も費やすのは早い方かもしれない。真っ赤な顔をして機嫌が良ければ泣かないが、泣くときはきっとお腹が空いているからだろう。


「くそ~、我が眷属の藍と夕霧は何処に行った。」

「なんでも藍の仕事が忙しくなって、帰宅が深夜だもんな。」


 藍ちゃんの仕事が軌道に乗り出したらしい、それでお針子の仕事が詰まっているのだとか。二人で行っているが他にも翠と碧が引っ張られているそうだ。いや、もっとも後輩やら美保や未来みくもらしい。高い家賃を払ってまでテナントでやるような仕事なのかな~。  


「うわ~……もうこんな家は嫌だ~。」


 親父に連絡して迎えに来て貰いたいと考えるようになってきた。いや真面目に連絡してみたら「考えてみるが、だが今はうるさいハエの駆除で忙しい。」と返事があった。どうせまた人攫いの算段をしているのだろ。


 お父さんが娘たちをお風呂に入れない……簡単な答えだったよ、酔っ払い……。


「もうこんな自由の無い家では生活出来ない。」


 今までの人生が自由過ぎたのだと考えると、自ずと自分の性格が割り出された。


 そう、忍耐力なんて……ありはしないのだと。だから家出の計画を練る事にしたがはてさて、いったい何処に逃げればいいのだろうか。嫌でもクソ親父に相談するしかなか! だって私にはお金が無いのよね。


 私だってこの二週間は忙しかったのよね、色々と~ムフッ!


「キモいぞ、亜衣音。」

「やだ~盗み見してたのね。」

「お前またよからぬ事を考えているのだな、今度は何だよ。」

「うん~そうね~……家出!」

「亜利沙と共にのたれ死ねつもりか、やめておけ。」

「え~大地も行くんだよ。それで~大地と亜利沙の三人で~……。」

「いや無理だろう。俺は大学へ行きたいしもし此処で家出してみろ、一生大学へは行けなくなる。それに金はどうする。」

「大地が稼ぐじゃん、いいでしょう?」

「俺がバイトしても日給三千円とか、親子三人でやっていけないよ。今はいいとしても亜利沙が大きくなりだしたら服だって買わないと。それにお前の服も必要だろう?」

「そうね~私は自分の事は我慢します。大地の働く服は買っていいわよ。」

「却下!」

「う~・・・大地……家出しよう?」

「うるさい! もう寝ろ!」


 それからというもの、つい最近まで出て来なかった、あれの幽霊が夢に出てきてなされる。どうしてだろうかと考えても始まらない。


「あいつ、もしかして生きているんじゃないかしら。親父にあの世に行けたか訊いてみるか。」


 そういう訳で連絡を入れてみたが繋がらない。本当にハエ叩きで忙しいのだと思うが、そのハエとはなんだろうか。あの亜衣音を追って天国まで行ったとなると、逆に清々とする。


 誰にも相談とか言えなくなってしまい、私は殻に閉じこもる。もう直ぐに九月の爽やかな季節に変わるというのに。だが暑い……。亜利沙のあせも+私のあせもで痒くて敵わない。ま、冷房が無いからね仕方ない。この頃は真夏でも三十二度とかが最高なのだよね。今の人、可愛そう……。四十二度だったりするからね。




 1972年8月20日 東京



*)近所で赤ん坊が誘拐された


 最近のテレビニュースで盛んに出てくる赤ん坊誘拐事件。既に五人ものが誘拐されたらしい。亜利沙と同じ月齢を選んだ犯行だとか言われているが、これは事後の解説によるものだった。全部が女の子ばかりだからこの白川家でも警戒を強めていた処に亜利沙が行方不明になった。



 夕方の涼しい時間に他の四人と一緒になって縁側でお昼寝だった。手を眼を離した隙を狙われたようだ。この時間は夕食の準備だしお父さんは仕事で帰っていないし、家の用心棒のカムイコロさんは偶々ホロお婆さまを迎えに行っていたという。ホロお婆さまが落馬して腰を打ったとかでだ。ホロお婆さまが落馬するはずはないのだが降りようとした時に急に馬が暴れたという。


 私は目を真っ赤にして家族に大地にヒグマに文句を言った。誰もが迷惑した筈だが自分の娘が攫われたのではないので言い返さないあたり、すまない、と思っているのだろう。これが母だったり澪お姉さんだったりすれば私だってよそ見するしかないし、色々言われてもすみませんとしか返事が出来ないと思うよ。


 付近の捜索には警察もだが、我が眷属たちを総動員させるのだった。


「お願い~亜利沙を見つけてきて~、藍、未来、お願いよ~。」


 実に情けない声でお願いをした。両親だって必死になって警察に掛け合ってくれていた。大地をボコボコに殴って自分の気を静めようと努力しても、大地は逃げてしまうし、あ~とても自分が情けない。


 眠れない日が続く。家族だって夜遅くまで起きていたが、これでは身が持たないので交代制が引かれる。夜間の警備は勿論だが見付かった、という希望の連絡が今か今かと待ちわびるからだ。


 藍ちゃんは優しくて消化のいい食べ物を文句も言わずに作ってくれている。本当はありがとうございます、と言うべき処だが私は、


「こんな物は食べられない!」……「ガシャ~ン。」


 と、お膳ごと跳ね飛ばした事もあった。この時は優しい藍もさすがに怒っていたが、翌日にはいつもの優しい藍ちゃんに戻っていた。


 私だって私こそ辛いのよ、亜利沙が生きて戻って来てくれたら……。だが家の歴史からすると誘拐事件なんて幾つあった事か。狙撃事件もあったというではないか。何時もが命を無くしてもおかしくはない事件がてんこ盛り、これでは私の気は収まらないわよ。


 いつもいつも毎日毎日、怖い顔をしている私に大地すら寄りつこうとはしない。も~最悪だった。これは親父の仕業かと思って連絡してみたが、違うぞ、と言う。


「本当はどっちよ。馬鹿親父の誘拐よね、今度は何を企んでいるのよ。」

「誘拐する必要はなか。それにほれ小娘には巫女の力は無いのだから用はなか。」

「ウソ!」

「嘘ではないぞ、今は何も研究しておらんぞ。」

「お願いします、亜利沙を返して……。」

「俺は何もしていない、でけん!!」


 最後は博多弁で怒ってしまう親父だった。本当に知らないようだ。研究はしていないが悪い事はしているのだとこの時は思いもしなかった。


 妹の霧香と霧。澪お姉さんの心々(ここ)と望。四人とも外出禁止になっていてお買い物は大地と藍ちゃんに固定された。ホロお婆さまは仕事に行くのだが、本当は勘を頼りにして捜索に行っているようだ。だってクロに何やら訊いているらしいが、?だよ。


 亜利沙に巫女の力は無いのだからクロだっていい迷惑だろう。これがもし、あの女の娘であって巫女の力持ちだったら分ったりするのだろう。


 カムイコロさんは夜警の担当にされている、さらなる誘拐を警戒すべき。




 1972年9月2日 東京


 事件は進展せずに更に二人の赤ん坊が攫われた。連日のニュースは報道する内容が不要な外出は控えて娘さんから眼を離さないで、という文句の垂れ流しに変わっていた。都内近郊の赤ん坊の姿が消えてしまった。もう外出させないようだ。


 遠くは大阪ででも一人の赤ちゃんが行方不明になっているニュースは、ここ東京では報道されていなかった。


 次の日、今度は神奈川県で誘拐事件が起きた。未遂で終わる事件がどうしてか十件も続いた。これに飛びつくマスコミ、人の不幸が我が飯の種とばかりに母親への取材が続いていた。


「哀れだな~何で不幸な母親に群がるのか、分らんでもないが分らん。」

「お父さんだって、もし記者だったらどうするのよ。」

「そりゃ~そうだよ。上の命令だったら行くしかないだろう。」

「亜衣音さん、落ち着いたのかしら?」


 そのひと言に荒れ狂う……。澪お姉さんの迂闊なひと言で私は元に戻って誰彼構わずに突っかかる。落ち着いていられる筈はないのだから。さっきは私と同じ不幸な母親がニュースに出ていたからだよ。その他人が不幸になって喜んでいたのだと思う。



 1972年9月10日 東京


 機転が訪れる。一人、また一人と殺された赤ん坊の死体が見付かりだした。これでは無事に誘拐された娘たちが戻るという希望がなくなるに等しい。


 赤ん坊は痩せ衰えて方々が叩き潰されている。勿論、顔が中心なのだがこれでは誰の子かと判別は付かない。だが、産着は乱れていなくて着せたままだと判断されたのだ。そう、見付かる子は家に戻される。血液検査も行われただろうが、全員が家族の元に戻されていく。


「イヤ~、私の亜利沙が亜利沙が殺される~、」


 半狂乱になる私に誰もが近寄れない。迂闊に近寄って巫女の力を発動させては何が起こるのか、予想が付くのだから。大地すら近寄るのが家族によって禁止されたのだから。


 北海道からも度々連絡が入っていた。



 1972年9月12日 東京


 行方不明の七人のうち五人までが見付かった。残りは二人になる、勿論亜利沙がその残りに入る。早朝……、


「沙霧、電話が鳴っていますよ。」

「ホロさん俺が出るよ。」


 ホロお婆さまの耳は良く聞こえるのにボケた振りはいつもの通りだ。こんな事があっても誰もが耳の遠いホロお婆さまだと信じている。私は芝居だと知っている。


「……え、本当ですか、直ぐ向かいます。」

「沙霧、亜利沙ちゃんが見付かったらしい。身元確認に行ってくるが、亜衣音はどうしようか。」

「取り乱すでしょうね、」


 殺されたとは言っていないが、もう死んでいる扱いでの会話だった。身元確認と言う時点で殺害が確定しているのだから。


「俺が行きます。もし亜衣音が暴れたら俺が止めます。」

「あぁ大地君、よろしく頼むよ。」


 発見された場所は世田谷区立双子公園という。名前からして何かの暗号だとしたらどう解釈すればいいのやら。


 最後の二人が見付かった。同じくもう一人の赤ん坊の親も世田谷区警察署に来ている。



「血液型も検査しておりますが、A型でした。」

「はいうちの娘に間違いありません。産着は同じものです。」


 殺されて見付かった遺体はそれぞれの家庭の物で間違い無い。最初は血液も照会されていたし、他の痣や黒子ほくろも確認されていたという。だが残りの二人ともなれば血液型の検査だけで終わらせていたという警察。誰もがこれで終わったと安堵しものだろう。犯人は見付かっていないが置き手紙が在って、「これ以上は殺人を致しません、」と書いてあったという。何だか怪しい。


 家族の予想に反して私は泣くだけで終わらせた。亜利沙の可哀想な顔を見る事が出来なかった。本当に惨いのひと言だった。


「お父さん、亜利沙を連れて先に帰ります。」

「そうか俺は後の事を済ませて戻るから、大地くん亜衣音を頼んだよ。」

「はい、お義父さん。」


 そうして私は大地と殺された亜利沙を抱いてタクシーに乗って……家出をした。家には帰らなかったのだ。



 この日、白川家でもお通夜が行われる予定だった。


 昼にお父さんが戻ってきて私たちの失踪が判明した。時間稼ぎにはいいものだったようだ。


 家では帰らない私たち三人の捜索が始まっているが、殺されたという亜利沙のニュースは実名で流れているのだから、葬儀の手はずも進めなくてはならない。


 戻ると信じて待つしかないのだから。近所からの訪問も受けなくてはならない、だって実名公表なのだから。だけども知らない女の人も居たのも事実だった、澪お姉さんの繋がりで馬事公苑の女の事務員さんが。いや、聞いていても白川亜利沙という名前が、国体出場の白川亜衣音の娘だと繋がっていないだけだろう。



 右往左往しながら私たち三人を探して夜になる。こんな事は麻美お義母さんは知らないのだから、なんともいやはや。




 急遽、北海道の山奥から麻美お義母さんが出て来て、娘夫婦らと合流しようとしていた処にマイケルが遭遇したのだ。


 巫女を引退したというのだが、人狼を見分ける力は少しも衰えていないらしくてマイケルを呼び止めていた。私が合流して直ぐに亜衣音本人だと悟ったというのだが、その後も私と麻美お義母さんは部屋で会話を続けていた。


 私がギリシア辺りで行方不明になった、亜衣音本人だと分るや否や泣きだしてしまう。別れた後は私の実家に行って私という事を説明していたが、信用して貰えず悶々としたようだ。


 それで智治お爺ちゃんが宿泊していたホテルに来たが、入れ違いで私たちは出て馬事公苑を訪問していた。そこで運良くか悪くか、自宅へ通報されて御用となったのは、亜衣音の不思議な国のありす……β世界線(仮)の20章になる。



 1972年9月13日 東京



 葬儀は中断されて、いや取り消しにされてしまった。近所から頂いたお悔やみは返された人がポカンとなるのだった。その後は白川家も知らんぷりするだけだが噂は変な方向への広がりをみせる。だって突然に男女の双子が現れるのだから。


 埼玉県の秩父の山奥で一人の赤ん坊の白骨死体が見付かって、私の偽亜衣音事件は終わりを告げる。後にこの白骨死体の問い合わせが来たのだから。お爺ちゃんが働いてくれたから事実誤認という事で落着した。詳細な調査のかいがあってか遺体は無事でもないのだが大阪に戻ってくれた。


 とある老警部の感が閃いた時でもあるのだ。


 次章より本来の物語へと続きます。初稿での平行世界の取り扱いに閉口しまして

別な物語と致しました、すみません。


 次からは何も事件は起きない予定です、退屈な毎日が続くとなると書く方はとて

もでは書きにくいものでして、てへへ……。子供たちが毎日出てくるのも書けません

から、どうしましょう。取り敢えずは頑張ってみます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ