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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十二章 ニセ亜衣音事件

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第160部 両親と……妹たち(その二)


*)妹たちは……


 桜子お婆さまが来た事により目を覚ました双子、疲れて寝たはずだがまたしても泣きだした。三人の会話が理解出来るとは思えないのだが。


「あらあらどうしたのよ。もうオネムの時間ですよ、お~よしよし。」

「穣さんも小百合を抱いて下さいな。」

「あ、お~小百合、パパですよ~、」

「ギャ~~……、」x2


「お母さま助けて下さいこれでは亜衣音の二の舞になってしまいそうですよ。どうしたというのでしょうか。」

「あ~やっぱりだよ。うちでも彩香と綾香が大泣きしていてね、ごめんよ。俺が起こしてしまった。」


 見かけは若い桜子お婆さま。どうしてか自分を俺と呼称するようになっている。実年齢はどうなっているのか私には分らない。


「でしたら澪の子も大泣きしているとか。」

「いやここに来るときに覗いて見たが寝ていたようだった。なんなら起こしに行くかい?」

「馬鹿言わないで下さいお婆さまなのですからね。」


「すまなんだ早く休んでおくれ。穣さんも明日はお願いします。」

「はい、お義母さん。」


「ぎゃ~ぎゃ~……ぴたっ。」x2

「おやおや俺が嫌われていたんだね。お休み水脈、小百合。」

「スースー……、」x2

  

「なぁ沙霧、喪主はこの俺でもいのかな。」

「そうですねそれがいいでしょうか。それにクラスメイトたちが来るでしょうし、大変かとも考えます。」



*)急なひかるの葬儀……


 翌日になった。昨日は学校に連絡はしておいたがクラス担任の先生と校長先生が話し合って、この日は午後から休講としたそうだ。なので大勢のクラスメイトたちも参列することとなる。



 それで目立つのが私の右脚なのよね。藍の入れ知恵で従来の長ズボンを履く事に決まった。何でも葬儀屋さんのお姉さんから借りてきたという。そのお姉さんはスカート姿であってほんの少し上下の色が違っているから「ごめんなさい。」とね、心で謝ったらしいのよね、私じゃないよ藍ちゃんがよ。


「亜衣音ちゃん……いいかしら。」

「はい?」

「以前のように松葉杖を使うのよ、分ってますか?」

「わかんな~い、」

「う~この子はも~~~クラスメイトたちが騒ぐからですよ。これはご両親にも了解して頂きました。」

「お嬢様もそうされた方がよろしいかと私も考えますが?」

「あ、そうなんだね。頑張ります。」

「教授ありがとうございます。この子馬鹿だから困りますよね。」

「いえいえとても聡明でいらっしゃいましたよ。」

「そうですか……? (どうして過去形なの?)」


 お寺の住職さんが見えて葬儀も順調に進む。棺も送り出されて葬儀も無事に終わった。この間、妹たちは大泣きもせずに大人しくしていたのよ。


 クラスメイトたちで特に仲が良かったという女の子はいないから、話しかけられるという惨事は無くて良かった。口元に大きな絆創膏が仕事をしてくれたのかもしれないがね。どちらかと言うとね大地の方が大変なのよね。


「大地くん、大丈夫?」

「おい大地。泣くなよ。」

「大地さん、あんなに仲が良かったのにとても残念でした。」


 などなど見送る家族が居たたまれなくなる程にだったよね。その度に泣くような顔を作る辺り流石と思ったよ。


「大地、ご苦労様。」

「うん、亜衣音~~~、」

「あんた、本当に泣いていたのね。」

「当たり前だ、俺が好きなのは……ひかるだよ。」

「ギャビ……、怒るよ!」

「はい亜衣音が好きです。」

「よくできました、なにも泣くことではないのよ男でしょうが。」

「いや、もう大丈夫。もう泣き止む。」

「早く車に乗ってよ、火葬場にも行きますわよ。」

「俺は行きたくないからここで待つ。」

「そうなんだ、どうしよかしら。」


 お母さんが私と大地に話しかけてきた。


「亜衣音はこの子らと大地くんを見ていて頂戴。」

「はいお母さん。でも泣くかもしれませんよ?」

「そうね~それも困るわ。だったら大地くん亜衣音と一緒に行きなさい。」

「俺、」

「これが最後のお別れですよ。」

「教授、行くように言ってくれないかな。ねぇ……ってば。」

「ほれほれ大地さん。ひかるちゃんを見送って来なさい。ちょっと棺を覗いてみてはどうですか?」

「どうしてですか?」


「いいからいいから、さ、早く。」

「あ、あぁ、では。・・・ひかる?」

「ほら、以前のひかるちゃんがそこに居ますよ?」

「あぁ本当だ、ひかるだ。」


 私は教授を少し離れた処に引き出して訊ねた。


「教授、何かしたんですか?」

「お嬢様。なんの、ほんの少しお前らの血を垂らしておいただけじゃ。お前の血は効果が消えておったんじゃろて。」


 アメリカで切り刻まれて遺体には血は残っていない、と言うよりも防腐剤を逆に添加されている。だったら大地が好きな巫女の匂いは無いよね。


「お父さんもワルですね。」

「おうおうとてもいい褒め言葉じゃよ、嬉しいのう~。」

「大地をお願い、」

「お前はどうする。」

「あの女を迎えるのよ、先手必勝よ!」

「轟沈……するなよ、バカだから。」

「べ~だ!」



 我が妹たちはそれぞれの両親にしがみついている。泣く事はなかった。お母さんの元に一人の女性が近づいている。私も迎え撃ちに行くかな。


「お、ちっち蝉が泣いていませんね~。」

「あ、あぁぁああああぁぁ……麻美さん、よくご無事で。」

「はい只今戻りましたよ。今回はとても残念だったわね向こうで待っていたのに。」

「はい申し訳ありません。今、お母さんを呼んできますね。」

「いいよ桜子には後で挨拶に行くから。」


「……亜衣音、大変だったね。」

「はい、……麻美……お義母さま。」

「口を怪我したんかいな。お話はできるかい?」

「いいえ、口を開くと痛いです。」

「そうかだったら夜にでも。……報告することが出来たんだよ。」

「あ、それ、聞きたいです。」

「そうかい楽しみにしておきなさい。」

「はい麻美お義母さん。」


 そう言って私は大地の横にいる教授の元へ行った。先に大地を追い払う。


「大地、麻美お義母さんが帰って来ました。挨拶に行きなさい。」

「? あ、そうだね。お礼を言ってくる。」

「はい、よろしく。」


 私は改めて教授に向き直って、


「教授どうしてあの女が帰って来たのですか。それに報告することとは何ですか!」

「いやそれは分らん。俺も同席するから聞いてみようかのう。」

「あの女、何処に行っていたのよ。」

「ウクライナのクリム半島じゃが、」

「ふ~ん、そこんとこ詳しく教えなさい。」

「親に向かって……いや、いいだろう教えたるわい。」


「あ、待って、藍が私たちのことを見ていますから。」

「俺は上手に整形したと思うがの~、親子だから難しいかの~。」

「感心しないの、私には同じに見えています。」

「それは前と後を知っているからだろう。ま、母も違うから性格も違うじゃろ。なに時期に藍も慣れるじゃろ。」

「そうじゃろか!」

「?……。」


「暫くは二人だけでのお話を止めませんか?」




*)強敵……麻美お義母さま


 私と大地が火葬場までついて行く。藍がついて来なくてホッとした気分になったんだが、家で麻美さんとお母さんがお話しているだろうと考えたら、とてもではないが落ち着かないものだ。とりあえずは親の教授を信用しておくしかない。


「あのクソジジイ上手く立ち回れているのか心配になってきた。後一時間もあるから気がせいて堪らないな。」


 待合所でコーヒーやお茶を飲むことは出来るが、飲みたくもないから付近を散歩することにした。公営ということだろうか、庭に手入れは行き届いている。植木の花が咲かない九月は楽しくもない、ただ暑いだけだ。蝉すらもうるさく聞こえてくるから敵わない。


 独り言で口の傷が痛むから否が応でもクソジジイの顔を思い出してしまう。覚えておれや今度蹴飛ばしてやるから。


「亜衣音、松葉杖。」

「あ、忘れていたわどうしよう。」


 色々と考え込んでいたからか松葉杖を使う事を途中から失念していた。ここで大地から注意を受けていなければ、脚がある事で他の人から疑義が生じていたに違いない。


「義足で歩けていたと藍から聞いていたから、大丈夫だとは思うが少しは注目を集めたかもな。」

「そうだね、義足があるからと言っておくよ。」


 優しい大地とお話していたからかな、だいぶんと落ち着いてきたな。後は帰ってからの一大勝負が待っているわね。麻美お義母さんは元人狼の巫女、伊達に人狼を卒業した訳ではないだろう。麻美さんの事について大地に訊いてみる。


「大地、麻美さんの事を教えてよ。」

「え?……どうしてだよ、お前が良く知っているはずだろう? 可笑しな事を言うなよ。どうかしたのか?」

「あ、……違うのよ、麻美さんが何処に何しに行っていたかだよ。」


 うわ~失敗したな、本当は麻美さんの性格とか人狼の巫女だった事とかを聞きたいのよね。大地が鈍感で良かったよ。


「それは俺も知らないんだ。あいつが妙に隠したがるから全員が知らないと思うぞ。」

「あいつって……?」

「クソジジイの晃の事だよ、性格が悪くて俺も苦労させられているよ。」

「へ~そうなんだ。そうよね私だって訳が分らずに、脚を切られたりしているのだから。」


 家に帰るとお座敷には料理が並んでいた。こんなお料理を見るのも食べるのも初めての私、どこまで正気で耐えられるのか問題だよ、お父さん。


 それもこれもクソジジイが自分ばかりご馳走を食べて、私には食べさせないという悪い性格なのが悪い。もう蹴飛ばしてやるんだからね。



「お前、今日の宴席では台所に座っていろよ、その方が楽でいいだろう。」

「うん、そうします。代わりに大地が頑張ってきてね。」


 この案は藪蛇だった。私が麻美さんと話す場所を作ったような結果になる。お茶を持ち込むあたりからしてこれは手強いと感じる。……お湯のみにはお酒が入っていた

のだ。


「亜衣音ちゃん、少しいいかしら。」

「はいお義母様。私もクリミア半島の事を聞きたいです。」


 うわ~私、また墓穴掘っているわよ、どうしよう~。


「クリム半島と言うらしいわ。あれね人狼の祖先の、あ、巫女のお墓が在るのよ。 そこにお参りしたらね少しは巫女としての本来の力が戻るというのが、教授が調べ た事なの。でも、私がお参りしても何も変化は起きなかったからどうだか分らない 結果に終わりました。」

「私の為にご苦労さまでした、ありがとうございます。では今後はいずれまた訪問するのでしょうか。」

「家族会議で決めてもらうしかないね。私では役不足かしら。」


 この女にどうして人狼の巫女の力が無くなったかを訊きたい、無性に聞きたいのだが無理だよね。だって一緒に暮らしていたと聞いているから。


「どうしたの? 亜衣音ちゃん。なにか気になることがあるなら言いなさい。」


「はい私も巫女を辞める事が出来るでしょうか。巫女の運命で傷だらけになるのが怖いのです。無理だったんでしょう? その、」

「そうね、巫女の十人がかりで亜衣音を元に戻そうとして全員が死んでしまったのよね。中には後で妖怪も出現したが無理だと思う。」

「妖怪って桜子お婆さまですよね、言えてる、可笑しいです。」

「だろう……?」


「平行世界って実在するのでしょうか?」

「そんなものは無いわよ、矛盾するからあり得ません。」

「え? そうですよね私、何を言いたいのだろう。」


「そうよ、で、亜衣音は今後はどうしたいのかしら。」

「高校は卒業したい。出来れば大学にも行って人狼の事を調べてみたいとは思いますが、私の頭で行けないですよね。」

「コネがあるわよ大丈夫よ。それで何処行きたいの?」

「家が大変だろうから近くでいいです。その、持ち上がりとかで。」

「そうね頑張って勉強するのよ。もう他人よりもたくさん遅れているのだからもう、無理かもしれないよ?」

「それはヤダ! 最後まで勉強してみます。だから二度と外国へは行きません。それに何度も無理だと言わないで下さい本当に無理なのかと思ってしまいますから。」


「あら、いやだ。そうよねごめんなさい。」

「ふふふ、可笑しいです麻美お義母さまは。」


 この女はチョロいと考えてしまった。こんな与太話で済むのなら気に病むことはなかったんだわ。


「それで亜衣音ちゃんさ、」

「はい?」

「それで誰なのかしら?」

「え”……、」


 しばしの沈黙が続いた。私を穴が空くように見つめるこの女の意図が掴めないどうしよう。


「いいわよ無理しないで。それよりも家族は大事にして泣かせたらダメだからね。お腹の中の赤ちゃんは産むのよね。」

「……どうしてそれを知っているのですか。はい産みたいです。大地の子ですよ。それのことでしたか?」

「違うわ。そうね、子供抱えて大学とか出来るのかしら。」


「二人分の学費が必要でしょうか、バス料金は無料ですよね。」

「アハハ……可笑しな子。なんならまた引き取って私が育ててやりますよ。」

「はい、ありがとうございます。」


 こんなやり取りで私は失敗した。いったい何処で墓穴を掘ったのだろう。



 奥の部屋では、


「沙霧、亜衣音は黒だよ巫女ではないね。あれ程の犠牲を払ってでも巫女の力を無くせなかった。巫女が子を産むのに手放すとはどういう意味だい。」

「そうなんですか預けると言いましたか。これで決まりですね。」

「なんの不自由もないこの世界で子を手放すとは、巫女の運命からは何を意味するのか考えなくても分るだろう。」

「あの子の異様さには泣きましたが、今でもあの子を愛おしく思っています。この世から巫女を消すという目的ででも亜衣音を手放しましたが、あのまま会えることが無かったらあの世で大雨を降らせていますよ。」


 その夜、麻美さんと両親が密会を行って私が偽物だと結論が出たという。


 でも頭では理解しようとしても感情がそれを許さない。手元には娘と同じ顔をした子がいる以上、むげにも出来ないし悩みや葛藤が生じてしまう。


 それからというものの、私の顔を見ると不機嫌になる妹たちに辟易としていく。難儀だからぶっ叩いてやる! と、心で思っただけで大泣きするのだから少々私としても泣きたい気分よ。だから勉強よ、勉強して妹たちを遠ざけるの。


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