第159部 両親と……妹たち
私たちが帰国前にひかるちゃんが死んだという連絡を、両親や他の家族も受けているから、それこそ全員が帰国するまでは気が気ではなかったはずよ。私が帰国したらしたで子供たちの全員が大泣きを始めるし、私は母から疑われて誘導に引っかかり偽物と直ぐに判別されてしまった。
「おい亜衣音、どうしたんだい。」
「うん何でも無いわよ。さ、寝ましょう。」
大地をしっかりとホールドしているから大地は苦しそうだった。優しい大地はされるまま……。
「お前、しゃべれたのか。」
「ギャビ!……ここだけだよ。」
私は両親の事が気になりだしていた。母親だけは騙せないよね。
*)両親は……
ぐぜりにぐずっていた妹の二人がようやく疲れて寝てくれた。安堵したお母さんが珍しく飲酒せずに寝たお父さんに声をかける。こんなに泣いた二人は初めてなのよ、と笑っているも顔は疲れた様子だ。
「ねぇあなた。」
「うん、なんだ。」
「ほらあの子の右脚の膝、手術の傷跡もありませんでしたよ。」
「そう言えばそうだったな。綺麗に治ったものだと思っただけだったか。」
「亜衣音の事ですがあの子じゃありません別人です。どうしましょうかもうソックリなので皆さんはすっかり騙されていますよ。」
「ウソ……! 俺には分らない。違和感はあるのだが、あんな生死を分けた戦いの後だし親父にも文句は言いたいが、亜衣音は偽物なのか。信じられん。」
「えぇ私も驚いています。恐らくですがひかるちゃんが化けたものかと。」
「入れ替わってどうするつもりなのか敵の意味が分らない。どうして亜衣音や俺らの家族を狙うのかもね。」
「お爺ちゃんには理解出来ているのかもしれませんが、一度しばいて下さい。何かポロリと情報を漏らすとか。」
「あのクソジジイは腐っても元警視総監。そう簡単にはボロは出さない諦めてくれないか。」
「ひかるは大地と同じ孤児だからな、亜衣音は帰国したら大地と一緒になってこの家に住みなさい、と言ったそうだ。その意味がまだ聞けていなかった。」
「そうなんですね、亜衣音が大地をひかるに譲ったんでしょうが、本当に亜衣音は大地くんを好きなのですね。」
「俺たちの所為でもあるからな。このまま受け入れてみよう。」
「穣さんがそう言うのであれば。もうあの子を受け入れて様子見をしませんと今度は娘らが殺されるとか、それでは子らが不憫で仕方ありません。この家は全力で守りますから私も頑張ります。」
「俺だってこの家に手出しされるのは嫌だよ。しかし、子供たちを人質にされた気分になってどうしたらよいのやら。」
「北海道の田舎に逃がしましょうよ、最低でも杉田さんの家族だけでも。」
「黒川徹さんには全国の出張に家族を付けて送り出そうか。」
「そうですね、それだけでも出来れば良いのでしょうが。」
「藍ちゃんはこのまま亜衣音と過ごさせるのはどうかと思うが……丁度いい、足も治ってきた事だし別室を与えたらどうだろうか。」
「はいそれは父親権限で是非にお願いします。あの子……私が守ってみます。傍に置きたいですね。」
「子守……いいかもな。」
「良くはありません。藍ちゃんを縛るようで申し訳がありません。」
「そ、そうか、そうだよな。」
「それと大地くんですよ。ひかるちゃんにぞっこんだったのが今では亜衣音に鞍替えでぞっこんですよ。亜衣音とひかるちゃんが同じならば分ります。もう、しっかりと洗脳されているのでしょうね。」
「では家族を北海道の田舎に帰して、澪には申し訳ないが地方へ飛んで貰うとしてもあの双子を連れては無理だろうな。」
「そうですねホロお婆さまに付いていって頂いて、クロや雷電を競馬界にデビューさせましょうね。一緒に日本を旅してもらいましょうか。」
「カムイコロさんは我が家で沙霧の警護を頼むかな。味方は多い方がいいのだが他に頼める人はいないな~。」
「そうですね、海斗くんと夕霧さんですが空いた家に押し込みますか。あの子らも何らかの問題を抱えた孤児なのですからね。」
「だったら藍ちゃんも押し込むとするか。どうせ亜衣音と大地くんは同室で別れる事はないだろう。」
「そうですねそれがいいですね。明日にでも家族会議を……、」
そういった家族会議を私が留守の時に行われた。でも、双子たち六人が大泣きを始めて中断を余儀なくされる。これの繰り返しなのだった。子供らは離れ離れになるのを嫌がっているんだろう。
「沙霧、沙霧は居るかい。」
「あちゃ~……お婆ちゃん。あれもどうにかしませんとなりませんかね。」
「おやここかいな、すまないね~、で、どうしたん……? くっついてさ。」
「いえ亜衣音の脚がくっついているから喜んでいましたが、何か。」
「あぁ今回の一件でお詫びに来た。どうもすまなんだ、この通り。」
「嫌ですよお母さん。無事に戻ってきたではありませんか、ねぇ穣さん。」
「はいお義母さん。そうですよひかるちゃんが死んだのは問題でしょうが襲われていたというのが何とも可愛そうですが。」
事故死になっているが、過去の事と照らし合わせても事故とは判断できない。襲われたという認識になっている。遠い異国の地、家族はなにもできない泣き寝入りするしかないのだから。
「葬儀も家族で行うからさ、夏だから急がないとね。」
「はい俺が明日から頑張りますよ。今晩は謹んで宴会は出来ないか。」
「それは葬儀を終わらせてから改めて亜衣音のお祝いも兼ねて行うかね。」
「はいお義母さん。」
「いいですわよお母さん。」
教授が暫く滞在するのだという。これはこれで問題だが。
いよいよ私、ニセ亜衣音の物語へと、偶然にただの気まぐれでそうなりました。新章へといよいよ突入いたしました。
「私、亜衣音です。みなさん……本物ですからね信じて下さいよ。」ペコリ。




