第151部 CIAの思惑……
翌日になって会議室へ集められた私たち。CIAからの提案があったのだ。
「君たちの保護の為にこの病院から、CIAの病院へ移ってもらう。」
この一言に猛烈に反応したのが海斗だった。恐ろしい剣幕でまくし立てる海斗には流石のCIAも恐ろしく感じたのか、アパートメントへの引っ越しと妥協してくれた。私には今の病院へのリハビリ通院と言うことで決まった。
「何から俺らを保護するんだい、答えろ!」
「それはお前らの親を殺した奴らからだ。」
「ウソこけ! お前らが親父たちを殺したんじゃないのか!」
「いや、違う、」
「バカヤロウー……。」
「ギャバ!」
「亜衣音には言っていない、すっこんでろ!」
「え”……、」
「あ、すまん。」
こいつらは日本語も分るのだろうが、顔には出してもいないよ、タヌキめ! あ、タヌキは海斗も同じだよね。形の上では智治お爺ちゃんが通訳の役になっている。どうも海斗は英語が話せるらしい。CIAの言葉に対して的確に返事と反論を言っているのだから、それも日本語でだよ!
次にCIAが提示した事は私たちと保護者の分断だった。智治お爺ちゃんがこちらに残ると決まった時点で、智治お爺ちゃんはCIAのホテルに宿泊させると言い出した。それが絶対条件だという。私たちのアパート代はCIAが持つと言うし、食事だって出すとも言ってくれた。最後に……、これが一番の重要事項だろうか、
「お前らは英語が話せないから、専属の先生を付ける。」
「ギャバ!」
語気が強いからそういう風に聞こえた。YOUのアクセントが飛び抜けて強く発音されていたからだ。くそ~バカにしやがって覚えていろ~、アクアスプラッシュでCIA本部を潰してやるのだから……。
「また来る。」
そう言って男たちは、私をちらっと見て薄ら笑いして会議室から出て行く。私は机の灰皿を思いっきり投げる……。海斗から腕を捕まれて未遂に終わった。
「く~~~もうなんなよ、あったまきちゃう。」
「亜衣音さん、膝と一緒に頭も冷やそうね。」
「うん、海斗。殴ってもいいかしら。」
「……? 誰をだい?」
「さっきの男たちだよ。」
「だったら窓から灰皿を投げようか!」
「うん、投げたい。」
「亜衣音ちゃん、ここは窓が開かないんだよ、知ってた?」
「うん、そうみたいだね。ガラスを割ればいいのよね。」
「ちょ、ちょっと、そんな事はよしてよね。」
今度は委員長が私を止めにかかった。私はあまりの不機嫌に口を衝いて出た。
「コマンタレブー……、」
「亜衣音さん、それって……何語かしら?」
「うん、韓国語で、バカやろーだよね。」
「そうね、フランス語だけれども、貴女こそ英語のレッスンが必要な人はいないと思うわ。」
「異議な~し!」x8
「え……? だって韓流ドラマで不機嫌な顔して女の人が言っていたわよ?」
「へ~……そうなんだ。さいて~……。」
「んん……?」
「キャハ……、」
「ひかる、どうしたのよ、急に笑ってさ。」
「だって亜衣音さん、可笑しくて、ね!」
「ふん、なにさ。どうせ私はバカです。」
「ううん、違うわよ。私だってついさっきまで亜衣音ちゃんと同じ事考えていたんだもの。ついつい笑ってしまっちゃった、ごめんなさいね。」
ひかるは私を「亜衣音さん、」から「亜衣音ちゃん、」と呼んでいた。
「ひかる、一緒に語学のレッスンだよ、競争だよ。」
「はい、亜衣音ちゃん、私が勝ちます。」
私はひかるを見直してしまう。私みたいにネチネチと根に持つタイプではないようだ。この子、やはり可愛いと思うがこの数日間の無言はなんだったのかな。
「ひかる、リハビリ室まで肩貸しなさいよね。」
「いいですわよ、でも転ばないようにしてね。」
「う~ひかるは止めておく。突き飛ばされそうで怖いわ! 後輩の二人、付き合いなさい。」
「はい、教祖さま!」x2
こんな会話を聞いて目を丸くして驚く大人の男たち。付いて行けないよ~という表情だった。
「なぁ明くん。これが女子高生の現実かいな。」
「智治さん、そうでしょうかね。お互いに教育を間違えましたか!」
「ブルル……、俺たちだけではないぞ、女たちだってそうだろう。」
早く治れ、私の膝。
所謂、追い出し退院にされたのだろう。通院には大地か海斗、及び明さんと智治お爺ちゃんが必ず付き添いをしてくれるのだ。で、女たちはというと、
「ねぇ、貴女たち。今日は何処に行くのかしら?」
「もち、ショッピングよね~……。」x4
「いいえ、街の散歩ですわ。」x3
フン、バカにしやがって。私は放置かよ。
「だって、亜衣音さんのデートを壊したくはありませんものね。」
「ギャボ!」
亜衣音 碧 翠 藍 美保 未来 智子 眞澄 珠子 夕霧 海斗。この十一人と智治お爺ちゃんは無事に引っ越しを終えた。でもシアアパートは最悪の立地だった。
「ねぇねぇ、バーガー店が在るわよ……。」
そうなんよ、この店が在ったばかりに女の子たちは大きな秋の実りを身体に纏うことに繋がったのだった。
「わ、私は、その、大地に振り向いて欲しいから、ポテトなんか食べないわよ。バーガーだって一番小さいのしか注文しないんだからね。」
バーガーにはいったいどれ程の挽肉が入っているのやら。一枚が百グラムはありそうだもの、あれが私の身体に付くのかと思うと食欲も出ないわよ。そうよ、胸肉になってくれたら……そうは都合良くいかないかな。
「バカCIAめ、ま~たハンバーガーの出前だわ! 大概で寿司持ってこい!」
「亜衣音さん、それが狙いのCIAなんだろう?」
「そうね、とてもリーズナブルですものね。」
海斗と委員長は意見が合うようだった。一人で怒っているのは私だけ。他の面々はというと、コーラまで飲んでいやがるよ。
「亜衣音さん、コーヒーを淹れましたわ。」
「ありがとう、委員、夕霧さん。」
「大地くん、戻って来ませんね。」
「フン……もう帰ってくるな!」
「淋しいですわね~……イヤ、ひかる、
「ギャバ、
「どこで
「ギャボ!
「何を
「ビャバボ!
「しているのでしょうかね。……H!」
「イヤ~ン!」
「お前ら、本当に息があっていて、仲がいいのだね。」
「どこが……、」x2
「ほら、そういう処だよ。」
「フン!」x2
「な?」
「あ! 海斗のバカ!」x2
「ラムジーちゃんを見て英語の勉強よ!」
「で、アニメを見て何を勉強するのでしょうか?……亜衣音さん、」
「もち、英語ですよ。」
「それで意味が分るのだと?」
「いいえ、何も判りません……海斗~~、」
「はいはい、直訳を教えてやるよ。」
未だに翻訳は出来ない……。
それからというもの、CIAの露骨な見張りが付くようになった。とにかくグループには二人が、個人行動には一人が張り付いているのだと海斗から聞いている。なんでも、色んなパターンで外出してみて確認を取ったのだとか。うん、海斗は優秀だね!
こんな事ならCIAとお父さんたちの蒸発とは無関係なのかしらね。父兄の次に私たちが襲われるとでも予想しての見張りだろうか。
亜衣音 碧 翠 藍 美保 未来 智子 眞澄 珠子 夕霧 海斗。この十一人と、パパ、麻美ママ、カムイコロ、ジジィの十五人なんだよ。




