第150部 ルームシェア アパート……
私は膝を無理したせいで再度手術を受けた。それからひと月があっという間に過ぎていた。お父さんたちは今でも行方不明のままだ。
1971年9月6日
私はリハビリを続けている。だけど、家族たちの捜索は藍たちに頼んではいるが、遠い異国の地では何も出来ないというのが現実かな。日本の警察と違ってアメリカは親切という事はない。進展があれば連絡してくれる程度だそうだ。もっと可愛い子羊を労りなさいっつ~の。
「亜衣音ちゃんさ、大きい男にね「ラムヂーちゃん」と、呼ばれたい訳?」
「だって日本ではまだ放送されていません。ラムヂーちゃんって何ですか。」
「ほら現在進行形でテレビ放送があってるわよ。まだ見ていないの?」
*参考までに、ウィキのラムヂーちゃんを検索して下さい。無理な事が書かれてあります。
「ごめんなさい。八月は終わってもう九月六日になってしまったの?」
「そうよ、もたもたしていたら時代に置いていかれるわよ。」
「そんな~……。それで時代とはなによ。」
「ルームシェア アパートよ。病院からここに移住しているでしょう?」
「そうね、帰して頂けないのよね、米国へ移住よね。」
「うんうん、みんなでアパート生活は楽しいね!」
「部屋割りが気に入らない。私と大地はいいよね。でも、追加のワンペアは絶対に嫌だからね。」
「はいはい、お部屋がたくさん在るから顔を見ないでもいいでしょう? 夕霧は部屋から出て来ないし。二人のナイトさまはあんたの護衛でしょうが、少しは感謝しなさい。」
「海斗がいる。それだけで……耐えられない。」
「ふ~ん、Hしたいんだね。」
「そうよ、バカ藍、嫌いよ。」
「へへ~ん、私は一番大きいお部屋だよ、いいでしょう。」
「蛇足付きがとても素敵ね、いつもご飯の差し入れをありがとうございます。」
蛇足とは他の女の子たちの事だ。都合、二部屋を借りて生活している。帰りたいのに帰して貰えないのよ。ひかるは私の最後の言葉で心を痛めたのか、大地とは別の部屋を選んだ。あれ以来ひかるは私を避けて通る。大地は努めてひかるをケアするように優しくしているのが、私は気に入らないのよね。
こんな私を影で笑っているのが委員長だろうか。自室で笑い転げているに違いないのよ、イヤな女だわ。
「モルモットだからね。貴重な巫女のサンプルなんでしょう?」
「うん、ご飯は出るけど、CIAの病院よりもマシかな。」
「さ、二人で八月の熱い夜を思い出しましょうね?」
「うぐぅ~……、私と海斗、私と大地。どちらがお好みなのかしら?」
「もちろん、両方よ。ねぇねぇ、私、海斗くんに迫ってもいいかしら。」
「ご自由にどうぞ。死なない程度で済めばいいわね。」
「し、死んだらどうなるのよ。」
「即、分解に検査でしょう? だってこちらが勝手に死んでくれたら、ここも
解剖が楽に出来るでしょうが。」
「あ、そうだね。検死っていうやつだよね。」
「最後はバラバラにされて国へ送られるのよ。」
一月前に遡る。
1971年8月6日
*)父たちの蒸発
「見付からない、見付からないよ。何処で訊いても知らないという返事だけだったわ。」
「うん、私もリハビリのトレーナーさんに訊いても同じだった。もうこの病院には居ないのね。」
「全病院の部屋を開けてみるとか、出来ないよね。」
「だよね。で、双子の刺客はどうかな。」
「この一大事の時にふざけないくれますか? 亜衣音さん、」
「はい委員長。」
「それもよして頂戴。」
「今日よね、その麻美さんの旦那さんが来てくれる日って。」
「そうね、夕方になるのかな。お迎えにも行けないよ。」
「第一にお金も無いのよね。でもどうして緊張しているのかな?」
「元お父さんだよ。」
「そうなんだ、いいわね、お父さんがお二人もいらして。」
「夕霧さん、そんな事言わないで。もしかしたら私だってね。」
「うん、ごめんなさい。」
「し、知らないでしょうが、私にはその両親はいません。私は絶対に、そ、羨ましいとか思いませんことよ!」
「夕霧さん、ごめんなさい。もう言いません。」
「へ~あんた、居ないんだ。」x2
「双子……、あんたにはお爺ちゃ……うん、ごめんなさい。そのお爺ちゃんが行方不明だよね。」
授業免除かつ学費免除。どうしてかCIAが学校に申請していた。いわば、CIAは私たちを日本へ帰さないよ、という意味だろう。お陰で英語の先生を付けてきたのだから。女の先生とは言うけれども、めがねの下にはCIAの顔が隠されているのよ、これは一種の見張りだよ。
CIAにあーだこーだと言っても誰も帰す気はないようなんだ。参っちゃうよ。
明さんは空港で足止めされたらしく、病院に着いたのは真夜中だった。寝ずの番は海斗が買って出た。私の病室を二人で訪れてきたらしいけれども私は寝ていたと言う。これまでの事を海斗は話してくれていた、海斗ありがとうだよ。
翌朝、今度はこの二人の男が目を覚まさない。叩いて起こそうかしらね? その二人が「時差ボケだ~、」と言うから可笑しくなってしまう。何でも明さんは薬を飲んで寝たらしい。今でも目がトロ~ンとしているから難しい事が相談出来ない。
会談の部屋は付き添いの大人たちの宿泊に宛がわれていた部屋だ。やや広い病室が宛がわれていて、五つのベッドが置いてあった。各自、銘銘に好きな処に腰掛けている。
そんなこんなで次の日の夜になって、智治お爺ちゃんが病院に着いた。明さんと同じように空港で詰問責めに遭ったという。智治お爺ちゃんを出迎える明さん。朝まで二人で相談はしてはいたらしい。サイドテーブルの上を見るまでは、そうだと信じていたが、
「お爺ちゃん。どうしてウヰスキーの瓶がここに在るのよ!」
「あ……どうしてかな~明さん。」
「さぁ、麻美が飲んでいたんだろう?」
「昨日までそこには何も在りませんでした。」
「じゃぁ……、」
「いいわよ、それ位は。……で、CIAのあいつらはなんて言っていたの?」
「それなんだが、太平洋に沈んだとしか言わない。本当ならば飛行機をサルベージして調べるはずだが、何でも深い深海だからそれは出来ないと言うしね。」
「そうなんだよ、ウソついているようだね。」
「無人機を落として事実をねつ造したんだわ。」
「ま、真意が不明だがそうだろうね。それで亜衣音ちゃん、あいつらはお前の回復を待ち望んでいるようだ。」
「え”?……私が、キーマンなの?」
「そうらしい。」
と、言って考え込む明さん。一方、私には都合が悪い事実が、
「お前が……聞いたぞ、海斗くんが泣きながら謝って話してくれた。
お前、大地と別れるそうじゃないか。」
海斗、何を話してくれたのよ~も~~。
「私の中では死んだ大地だよ。みんなして、ず~っと私を騙していて、何が楽しいのよ。」
「それは俺だって知らなかった。全部白川の爺さんが悪い。」
「もう訊けないし、どうしてだったのか想像すらも出来ない。」
「だな……。いやいや亜衣音ちゃん。大地くんと別れていいのかい?」
「うん、大地が望んだのよ。お父さんの事が解決してからお話します。」
「俺は爺だから何も言えない。お前だって悩んだから聞くのはようそう。」
「そうしてくれると嬉しい。」
「あぁ……。」
行方不明者は、お父さん、麻美さん、それに用心棒にもなれていない、クマのカムイコロさんだ。
「亜衣音、お爺ちゃんは入れていないが?」
「あれが黒幕なのだから、……絶対に黒幕だよ。」
語気を強めてそう主張した。でも藍のお父さんが黒幕とか? 私は行ってはいけない行動をとってしまった。藍に視線を送っていた。藍は居たたまれなくなったようで目頭を押さえて部屋を飛び出した。
「亜衣音さん、何をしたのよ、」
「私、藍を睨んだのよ。」
「海斗、直ぐに追いなさい。」
「ユウ、任せろ!」
藍の後を海斗が追っていく。海斗は足が速いから直ぐに捕まえるだろう。直ぐに夕霧さんからの叱責が飛んできた。それについて何も反論が出来ない私だ。
「バカ亜衣音!」
「はい、申し訳ありません。藍にも謝って許しを請います。」
「そ、それならばいいわよ。第三者は口を出すべきではないのだからね。」
「ごめんなさい。」
昼を過ぎても二人は帰ってこなかった、何かしらのアクシデントがあったのだろうか。少し気になりだしてきたよ。
「委員長、リハビリ通院に行ってくるわ。」
「まだ術後だから安静にしておくのよ。まだ早いです。」
「いいのよ、早く脚は治したいのよ。」
「今また痛めたらさ、通院も長くなるわよ。病室まで送るわ。」
「はい、お願い。」
「嫌いよ亜衣音さん。」
「私も委員長は嫌いです。一人で帰ります。」
今は自分の病室に居るのよね、私も委員長も心ここに在らずだよ。
「あ、ここはあんたの部屋だったわ。損したな。」
「べ~だ、アホ委員長。」
病院に入院していたら他の科の受診は通院と言うらしい。赤ん坊が黄疸で親から離されたら、それは入院と言うらしい。
「亜衣音さん、病室に戻って下さい。」
「え? この部屋ではなかったのですか?」
「はい、お隣ですよ。皆さんと同じ部屋になりました。」
「監視されるのでしょうか?」
「もちろんです。私たちも忙しいのですよ、お友達に介抱されて下さい。
そうすれば泣くことも出来ませんよね?」
「うぐぅ~……、」
この看護婦は恐ろしく感がいいようだ。こいつもCIAか!




