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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十一章 ターニングポイント……分岐点……

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第148部 大地の事情……


 亜衣音……今までのお詫びだからさ、ゆっくりと……過ごしてくれないか。


 海斗……亜衣音を任せたからな……海斗信じているよ。俺が亜衣音にして来た事を考えるまでもない。海斗は俺よりも強くて頼りがいがあるのだから俺よりもあいつには海斗の方が似合うよ。俺は何処かで手を引きたいと思う。



「俺は前座でいいんだよ。今度は死ぬつもりであいつを守ってみせる。」


「大地くん、どうかしたの?」

「あ、いや何でも無いさ。それよりも双子に周囲の警戒を解くように言ってくれないか。もう俺は復活したからね。」

「じゃぁ試してみる……バッコ~ン!」

「うぎゃ~……コロリとすってんてん。」

「ダミだこりゃ、私の一撃で伸びてしまったよ。」

「藍ちゃん。大地くんになんてことしたのよ、可愛そうだよ。」

「翠、碧、警戒は解除していいそうよ。」

「なんの警戒かしらね。危険は無いわよ。」

「うぎゃ~やられた!」

「なに、何処から襲撃されたのよ。」

「上……天からだよ。爆弾が降ってきた。」


 大地が頭をハンカチで押さえているので解かせてみたら、白くて見事な鳥の糞だった。運が付くから良いことだよ、大地くん。


「抜かせ!」

「帰ってシャンプーしましょうね。」

「ケッ……つまらない。」


 病院の帰路に就く途中で大地は藍と夕霧に事情を話していたらしい。病院に戻ってから一大事になってしまった。


 もう……どうして喋ったのよ、バカ大地が!


「この俺を追い込む為にさ!……ベイビー。」



-------------------------



「亜衣音さん、もうレストランへは行けないね。食後に行こうか。」

「うん、ありがとう。でも大地と藍たちが帰ってくるから、また次回でお願いね。明日もリハビリに行くし、その後がいいかな。」

「よし、分った。あいつらを迎えにさ、歩いて行けば驚くぜ。」

「そ、そうよね、みんな……ビックリするかな。お父さんと麻美ママは何処に行っているのよ。育児放棄も甚だしいわね。」


 わ~……私ったらどうして保護者に話題を振っているのかな。会話の流れでは不要だよ……、冷や汗ものだよ。


「もうエントランスだろうから、行くか。」

「……うん? 書き置きしてからね。海斗、シーツはそのまま……、」

「ん?……、今、直しておくか。」

「そのままでいいわ。」


 夕食はテーブルの置いてくれるように書き置きを残して、私たちは皆を出迎えにロビーへ下りていく。階段を上るのはいいが下りるのは大変だった。前が下りだからよろけて転けたら、下まで短時間で行けちゃうわね。


「手すり、掴まれよ。」

「手すりの掃除はいやだよ。手を貸して頂戴。一応転ぶ前提で待機しておいてよ。いいわね、命令だから。」

「アハハ……いいぜ、俺が絨毯・毛布・布団・クッションに化けてやるよ。」

「化けなくてもいいわよ、そのまんまの下敷きでいいわ。よっこらしょ……。」


 たわいの無い会話を続けて階段を下りていく。もう、それだけで太ももがパンパンに張って強ばる感じがする。これでは脚が最後まで続かないよ。本当は恥ずかしくて脳みそがパンパンになっているんだよ、これが所謂、お花畑なの?


「海斗くん、ごめんなさい。歩いては下りられそうもないや、抱っこ!」

「仕方ないな~、エレベーターで降りようか。」

「あ、……わざと黙っていたんだ、わ~ひっど~い。」

「おいおい、それはないだろう。だって歩く練習をしたいからと言い出したのは誰かな。」

「リハビリのお兄さん。」

「違うだろう。この階だけだぞ。……? もしかして俺のことか!」

「うん、いいよ、楽ちんだものね。アハハ……もちろんだよ、」



 それからエントランスに下りて待つこと二十分は過ぎたかな。私の眷属たちがワイワイと入ってくる。でも……大地は、


 先を越された。……私は藍に呼ばれていて海斗は夕霧に呼ばれていたのよ。これって私と海斗を離れ離れにする作戦よね!



「亜衣音ちゃん、只今。もう杖無しで大丈夫なのね、良かったわ。」

「うん、ありがとう、で、……大地は?」

「外で待つらしいわ、海斗くんとお話をしたいんだって。」

「そ、そうなんだ。……海斗……!」


 私は海斗に向かって軽く声を掛けた。が、そこには委員長がいる、海斗と話し込んでいる。何だか険悪な感じ……もう喧嘩腰だよ、直ぐに仲裁に、


「亜衣音ちゃん、待って、お願いよ。」

「うん、いいけれどもあの二人喧嘩しているの?」

「そうよ、男の奪い合いだよ、当事者の亜衣音さま!」

「うきゃ、なんで私なのよ。」

「心当たりはありますよね、違いますか?」

「いえ、あります。でも……」

「はいはい、亜衣音ちゃんには関係ないことです。暫くは見守って……その大地くんと海斗くんもそうなのだけれどもね、夕霧さんの事も見守って

 欲しいと、大地くんからの伝言があったわ。」


「なによそれ、止めないでいいの?……、」

「ダメ、今止めに入っても良いことはないわ。これからはね、外であんたを巡って決闘が行われる。もう修羅場はとうに過ぎているの。女王様は結果だけを信じて待ってて欲しいのよ。」

「亜衣音ちゃん、」x3

「教祖さま!」x2


 他の眷属たちも遠巻きに集まってきた。


「はい、皆がそう言うのならば黙って見守るわよ。決闘って……ウソだよね。」


 事はそう単純ではないのだから。私には巫女という自覚はあるのだが、人狼のTOPに立つという自覚、いいえ、そのような事など考えた事も無い。


「亜衣音……ちゃんとしなさい。これは私たち眷属の意思なのです。私たちの教祖さまじゃないとならないのです。」


「藍、何を言うのよ。眷属だとは私も口にしたわよ、覚えてもいるわ。でもね、本気で貴女たちを眷属だと考えた事はないわ。」

「それ、そこが自覚が足りていないのです。私たちは何度となく命を、 あ、うちのバカ親父なのでしょうが、ごめんなさい。」

「ううん、いいのよ。藍とは関係ないわ。気にしたらダメ。」


「うん、ありがとう、務める。そうね、なんと言おうと考えていたかしら。 命を狙われるのよ。あんたの妹たちもそうだよ。今度産まれてくる妹たち だって同じ運命だとしたら、どうなのよ。あんたが自覚して、強くなって 私たち十人の眷属を上手に使って、それからよ、私と……私の夫と娘も……守りなさいよね、いい!……分りましたか!」


「はい、十分に理解致しました。」



 藍の夫?……娘?……なによ、未来のことを言いたいのかしら。


 いつも以上に藍の熱意が伝わってきた。もう私を呼び捨てだし、あんたと言うしね。怖いくらいだったかな。そうよね、藍だって死にたくないし、それに恋だってしたいわよね。そっか、私はずるいんだね、私一人が大地と恋しているのよ。それと海斗とはいい思い出に残して別れるの。



「こら、亜衣音!」

「ひゃ~……なによ藍ちゃん。」

「もっとシャキンとしんしゃいな。さっきから何を……考えていたのかしら? 場合によっては全員で弾劾裁判を起こすから、」

「はい、理解しました。」


 藍から言われても、私には今……の状況に理解出来ない。ううん、私だけでは無いみたいだよ、未来だって美保ホだって珠子も後輩も双子もね、キョトンとしているわ。委員長は剣呑けんのみだね。未だに海斗くんに食って掛かっているからね。(剣呑=荒々しく邪険にしかりつけること。)



「亜衣音ちゃん、あんたもよ、覚悟しぃや!」

「え”……なんで?」

「も~~~どうしようもないおバカさんだよ。知~らない。」


「藍、怒ってる?」

「あったりまえです。バカ亜衣音。」


 平身低頭に謝る海斗に脳天チョップを何度も何度も落としている委員長。もう二人の会話? は終わったようだ。皆は……もう外に出たようで見付からないよ。委員長が私に向き直る。


 うわ~どうしましょう。今度は私と海斗くんの関係を怒りに来るのよね。私が悪いのだから、海斗くんには関係ないよと、謝るしかないよね。藍に視線を送るも、……無視だよ。目を合わせてもくれない。


「亜衣音さん、貴女、海斗を誘惑したそうじゃない。これ、どう責任をとるお積もりなのかしら? 大地くんはどうするのよ。」

「委員、夕霧さん、ごめんなさい。つい淋しい気持ちで海斗くんを誘ってしまいました。ごめんなさい。」

「許せないわよ。海斗と別れると言ってもだめよ。どうして私の海斗に手を出したのよ。も~貴女を憎んでも憎み切れないわよ。海斗はね、貴女を弁護しているわ。事実は俺が誘ったの、一点張りなのよ。事実はどうなのかを聞きたいわね。」


「私から誘いました、本当です。海斗くんも男の子ですから裸の女の子には弱いのです。許してあげて下さい。」

「許すもなにもないわ。だって今までが私の一方通行だった訳で、その、私、貴女に負けの宣告をしに来たのです。大地くんとは別れて海斗と結婚して頂戴、出来るわよね。そうでもしてくれないと私、とても

 悔しいわよ。」


「夕霧さん、大地とは別れません。それに大地にも後で話します、悪い女だったと正直に言います。海斗くんとは今後はお付き合いは望みません。一夏の過ちだと引き下がります。」

「引き下がる?……それは随分と自己都合のいい言い訳ですね。それで済むというのですか?」

「だって、それで、それしかありません。」


 藍が語りかけてきたんだ。


「もうここからは外に出ましょうか。未来たちも外に出ているわ。」


 病院の往来の多い処では話せる内容ではない。いくらエントランスから少し外れた場所だとはいえ、大きな声を出すのは聞かれるし、まずいわね。藍はそう言って私たちを誘い出している。


「私は気にならないから大丈夫よ。」

「あんたはそれでいいでしょうが、私が嫌なんですよ。日本語を理解する人は通らないとは思うのだけれどもね、語気は全世界共通よ!」

「そうね、藍ちゃん。気が回らなかった、ごめんなさい。」


 そう言われて私は美保ホ、未来、双子たちを探すも誰も居なかった。私の日本語はチャイナほどの強い威厳もありませんわ。



 私はまだ二人の決闘の事を知らないでいた。暫くして私は海斗くんを追いかけて既に外に出ていた。


 外では大地が待っていて裏庭の茂みで乱闘になっている。海斗は大地よりも強い。だから手加減はしている。だけれども、大地は死の直前に頼んだ事が理解は出来ても心が納得していない。大地は負ける事は分っているが、海斗をぶん殴ってやらないと気が済まないのだと。



 私が到着したら、乱闘はものの数分で決着は付いていたという。



 事件は大地が考えた事だった。大地がひかるちゃんを追いかけていた負い目があるので、それで私にも海斗と仲良くなって貰いたいのだと、随分前、そうよあのサッポロ雪祭りの事件当日に言ったらしいのよ。この時は大地、もう死を予感していたし、ひかるだってもう死んでいたからだという。


「海斗、お願いがある。俺はじきに死ぬ。だから俺の代わりにあいつを好き になって守ってくれないか。お前もあいつのこと好きなんだろう?」

「あぁ、分った。亜衣音さんを守っていく。安心しておけ。俺はお前よりも強いからな。」

「あぁよろしく頼んだ。」


 でもお爺ちゃんが尽力して助けてくれていた。これが事実を複雑にしたのだが、それを履行し続ける男の二人がバカだったらしい。海斗くんは大地が死んだものとして私を想い続けてくれていた。これらの事を泣きじゃくりながら話してくれた夕霧さんだった。……私、もう何も言えないよ、大地。


 大地は回復した。だけれども治療で受けた私たちと眷属の血は長く効果は続いていないらしい。この前は強く抱きしめてくれた大地だったが、昨晩は拒否されていた。それは、大地が力を無くした事を私に悟られない為にだったという。これから先も私たちから輸血を受けられれば良いのだけれども、そうはできないのだと、思い知ったという。可愛そうな大地。


 私は長々と夕霧さんと話していて大方の事情が理解できた。私の心の弱さと惨めさがよく理解も出来た。ごめんなさい、大地。ごめんなさい、海斗。でも委員長は別よ、理由は委員長が女だからだよ。ぜったに謝らない!


「藍……、」

「あ、、、美保ホ。もう終わった?」

「うん、もうとっくに。それで大地くんの気持ちも落ち着いたと思って呼びに来たのよ。」

「直ぐ行くわ。みんなで馬鹿な四人を諭してやるのよ。」


 四人、私と大地、海斗くん、と……委員長かな。その前に私の大地を苛めた海斗に、もの申すよ、ね。


 私は立ち竦む海斗に向かって歩き出した。私の顔を見て怯む海斗ではなかった。私の目を見据えて私を待っていた。私も海斗に劣らずに海斗の目を見つめながら目の前で立ち止まる。


 私は静かに海斗の胸に顔を埋めて囁いた。海斗は私を抱きしめるでもなくて大人しく佇んでいる。


「海斗!……ごめんなさいよ。」

「?……。」

「バッコ~ン!!」

「うぎゃ~……、なにすんだい。」

「うん、大地のお返しよ。でも大地を迎えてくれた事には感謝いたします。

 ありがとうございます。」

「お……おぅ、早く大地を介抱してやれ。」

「……うん、海斗のバカ!」


 私は委員長にお礼を言いたくて委員長の前まで行ったが、やはりこの女は嫌いよ。皮肉を言いたくなった。


「委員長、貴女も、もしかしたら四人目みたいよ。」

「え、なんでよ。亜衣音さんだけでいいわよ。私、海斗には嫌われたからもういいんだ。海斗は貴女に譲りました。」


 以前、私と大地は人狼の力が無くなる薬を弾に込められて、狙撃を受けて長く入院していた。その結果が未だに続いているのだと、大地から聞かされたのだ。でも私はこうやって元気になれたのだと言っても、巫女と人狼の血の違いだろうと言われてしまった。事実そうなのだろう。


 私は委員長に一言がけ言って大地に駆け寄る。小走りで大地に飛びつきたかったのだ。小さく見えた大地に何かしらの違和感が生じたのだが……。



 私を見つけて泣きじゃくる大地には、もう人狼のみなぎる力は感じられなかった。これは巫女としての本能がそう判断させる。悪いとは思うが心では冷たく突き放しているかのような答えだった。だから大地よりも強い海斗に心を奪われあまつさえ身体も委ねてしまったのか。長い間大地の死を受け入れて

いたのが、心を見失う原因を心に植付けていたのだ。


「大地、ごめんなさい。淋しい思いをさせてしまって、お爺ちゃんも悪いと思うけれども許してあげて。大地、ず~っと一緒に居るから安心して

 いいんだよ。」

「亜衣音……俺はどうしたら良かったんだい。」

「うん、大地。私を想ってくれてありがとう。もう自分で決めていいのよ。海斗に伸されて気が済んだかしら?」

「いいや、無理だった。あいつは強いから一方的にやられたよ。」

「うん、大地。……顔に触ってもいい?」

「……。」


 私は優しく顔に触れて涙を流した。こんなに叩かれて顔を腫らして痛かっただろうに。私を取合いするなんて愚かだよ、大地。


「大地……、」


 大地の頭に手を回して大地を私の胸に抱き寄せて、


「大地、愛してる。ず~っと私を好きでいて良いんだよ。」

「うん、そうする。」

「そ……良かった。海斗とは……ごめんなさい、抱かれました。謝ります。」

「いいんだよ、俺が海斗に頼んだ事だから。あいつ、随分とお前を見つめていただろう?」

「えぇ、そのようね。でも大地がいくら頼んだ事だとは言っても、私から望んで海斗を迎え入れました。これは私の過ちです、ごめんなさい。」

「いいよ、俺だって俺だってよ、……。」

「いいわよ、それも私が悪いのよ、私に責任があるからね、大地は気にしないでいいのよ。」

「そ、それはダメだ。」

「うん、病室に帰ろう?」



「亜衣音ちゃん、そうよね。つい先日まで大地くんが生きていたなんて、知らなかったんだよね。」


 私はみんなから温かい弁護の言葉を頂いている。私は無言のままで大地を抱きしめて皆の顔を何気なしに見渡していた。


「藍さん、その事はもう知っております。」

「亜衣音さん、足も無くして愛する夫も亡くして頑張っていたんですのも。それは……それで私も認めてあげますわ。でも女としては許せないわ。」

「夕霧さん、穏やかに……ね?」


 夕霧も私と同じ考え方をしている、私には絶対に過ちを認めないらしい。「受けてやろうじゃん!!」もう女vs女の対決なのよ。でもね、今は大地が大切なのよ、委員長はまた今度ね!


 私は胸から大地を離して、


「ねぇ大地、これからどうしたらいいのかな。」


 これらの事を両親にお爺ちゃんにどうやって説明したらいいのか、思い悩むだけしか出来なかった。ふと、お父さんたちの居所が気に掛かる。


「ねぇ、お父さんたちは何処にいるの?」

「さぁ知らない。」


 みんなも、


「うん、私も知らないよ。」


 と、口々にするだけだった。


「大地、病室へ帰ろう……?」

「あぁ、頼む。肩貸せるか!」

「うん、いいよ、だってもう歩けるのよ、大地。」

「す、すげ~……いいよな。」

「え……うん、凄いでしょうが、頑張ったのよ。」


 大地が私の怪我の経過を妬んでいる。これは言い換えると「俺はもうダメだよ、」と言っているに等しいのだと私は理解した。もしかしたら大地は、このまま死んで行くのかとも感じた自分が怖い。


 海斗は私の大地を想う事を考えてさ、大地の顔をボコボコにしていたんだよ。他の処には手も足もだしていなかったんだよ。だって痣の在る顔を見ればね、私には痛々しく見えるだろうっていう海斗の戦法らしいわ。見事に騙された私だよ。歩けるはずだったんだね!?


「大丈夫よ、私が付いているからね。」


 慰めの言葉すら大地の心には届かない。もう私と大地は終わったのね。でも私は諦めることなく大地に寄り添っていくわよ、大地。


 時々聞こえていた天の声は聞こえなくなっていた。きっと大地の声が遠い日本の私の心に届いていたんだね。ありがとう、大地。


「いいよ、気にするな。」と、最後に聞こえたのはどうしてだろう。


 各自、銘銘に自室へ戻っていった。私は情事を起こした自分の部屋には戻れない。だから大地の部屋に行って大地を抱きしめてあげた。それから帰国まで大地の傍からは離れないでいる。それからは大地は幾分か持ち直してきた。お節介な双子の罠に嵌まりながら、私と大地は最後の逢瀬を過ごした。



 お父さんたちが居なくなっていた。どうしてなの? お母さんに連絡はしたのよ、でもね、迎えに来てとは言えなかった。明さんが飛んでくるまではね、皆はビクビクとしていたわ。智治お爺ちゃんも明さんと一日遅れで来てくれることに決まった。現地警察も動いてくれたけれども見付からない。


 翌日のテレビニュースに、


「日本の軍用機が太平洋で消息を絶って三日目になりました。公開……、」


 と、三日目になって事件が公表されたのだった。名前が載っている名簿は確かにあるのだとか。でも、帰るからとは一言も言われた事は無かったんだよ、どうしよう……お父さんが死んだのかしら。麻美ママもカムイコロさんも死んだと言うの……?


 CIAの捜査も入ってきた。ごつい男の集団だった。


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