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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十一章 ターニングポイント……分岐点……

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第147部 暑い日の……熱い私の身体と海斗と……


 1971年8月4日


*)♥……


 一人で療養だなんて面白くない。クソ大地はよりにもよって女を侍らせ、可愛いクラスメイトたちを引き連れてニューヨーク市内の観光に行っているのよね。私は今でも必死になって歩く練習のリハビリだっつうのに、あったま来ちゃうわ。



 私は大地たちが私を放置して遊びに行っているから怒っている。自然と顔もキツい顔を作っていたんだ。



「お嬢様。もうお一人で歩けますね、よろしゅうござました。」

「ありがとう、とても嬉しいわ。」

「その笑顔で言われましても、少しも喜びが伝わってまいりません。心ここに在らずでしょうか?」

「私は魔法遣いなのよ、それで私の分身を飛ばして大地の見張りをしていますのよ。私のダーリンが女の子を連れて鼻の下を伸ばして闊歩しているわね。」

「お、お嬢様。いくら何でもそれはありません。なぜならば旦那様は、ほら、そこで見学されてあります。」


「え”……ホント!!……、」


 私は一瞬、「大地が居る。」と思ってしまった。でもそこには海斗の姿があって私を笑顔で見つめていた。少し胸がキュンとなった。私を哀れむ視線ではないからだ。寧ろ怪我とかは関係ないよ、と言っている感じだよ。わ~どうしよう。



「ほら、手を振ってありますでしょうが、素敵な旦那さまです。」

「あれは……ダダの友ダちよ、一人だけ男の子がをのが連れが居ますでしょう?」

「もう、ご冗談を。あの笑顔は普通ではありませんよ。恋人以上の笑顔ですよ。お嬢様落ち着いて下さい、をだけで十分ですから。」


 はずい、自分でも何を言っているのかが分らなくなっている。


「もう、海斗、石川海斗です。覚えて居ますでしょう?」


「すみません、ご家族の構成には口を挟むな、調べるな、と、お爺さまに言われておりました。」

「あのクソジジイ……いつもいつも私の邪魔をする。」

「でも、いつも熱心に見学されてあって、手を合わせてありますよ?」

「そ、そうなんだ、私、必死だったから全く気がつかないでいたのかな。」

「空気みたいな方ですので、恐らくは全く見えていなかったとか。」

「へ~……空気なんだ、うん面白い。」

「納得されましたか、よろしゅうござました。」


「海斗~~~、ちょうと来て!」


 私は大声で海斗くんを招き寄せる。笑顔で喜んで近寄る海斗くんに、


「海斗、お部屋まで運んでくれないかな。もう足が痛くて歩けないのよ。」

「お、おういいぜ。抱っこしていいのか。」

「はい、お願いよ。」


「……・……・……・」と、開いた口が塞がらない私のトレーナーさんだった。


 もうこうなったら私は、悪女にでも遊女にでもなってやるわ。胸の上のボタンを二つを外して、襟をピラピラさせて暑いという振りをしているからね。


 これにさ、ノーブラときたら誰だって私の胸元に視線が向くよね。でもすれ違い様に看護婦さんから言われたんだな。


「お嬢さん、……ブラが裾でブラブラしていますよ?」

「ギャボ!」

「莫迦!」


 女ってね、男が向ける視線には色が付いているように見えるのよ。皆は知らないよね。今の海斗の視線は、え~と何処に……?


「良かったです、亜衣音さん。もう歩けるようになって。」

「うん、ありがとう、嬉しいです。」

「その先の自動販売機でジュースを買って帰りましょうか。」



 ふ~ん残念だわ、胸ではなかったのよね。私の額に流れる汗の数だったみたい。真っ直ぐに私の顔に視線を送りつけていたわよ、だから自販機なんだ。


「回り道でごめんなさい、お願いします。」


 と、私は海斗の顔は見ずに廊下を見ながら答えた。やはり私も人の子だろうか海斗を見る勇気というか、恥ずかしいと言うのか、見る事が出来なかった。だってねさっきの私って、ちょ~はずい事をしていたよね。海斗は紳士だから黙っているが心はドキドキしているのが伝わってくるのよね。


 胸の谷間にも流れているよのね。あ~とても残念だわ、見て欲しかったな。


「落とすぞ!」

「イャン!」



 とても長く感じられた病室への帰り道だったな。


 部屋に戻れば一番はシャワーだよね、海斗くんを追い出すのには忍びないかな。うわ~悪女の一つ前だよ、これから服を脱いでね海斗に私を運ばせる……なんて事はできっこないよ。


 病室に備え付けられたお風呂には脱衣所は無い。いきなりの浴室だよ。奥には小さな浴槽があってカランとシャワーだよね。日本の文化の洗面器、ここには備品扱いはないの。


「海斗……後ろを向いていてね。シャワーを浴びたいのよ。」

「……うん、向いているよ、」

「振り向いたらダメだから、いいわね。」

「もちろんさ、外の景色を見ている。」

「うん、」



「パジャマ脱いで、ブラ落として……***も脱いで……、」


 その一言ひとことに海斗が反応して肩が少し揺れている……もう、あり得ない私の妄想……。


「もういいか、」

「あ、ダメ。まだ何も用意していないわよ。」


 私の顔は瞬間湯沸かし器だよ、もう熱いのなんの、おでこに手を当てられない程かな。それに心臓……もう死ん臓……大きく鼓動を打っている。やばいよ。このまま海斗の胸に顔を埋めたら、私はこの先どうなる事だろうか。もし海斗から言いよられた素直に従うのかもしれない。


「海斗の意地悪。私がまだここに居る事は分っているはずよね。」

「まぁな、亜衣音さんがもたもたとしているようなので、声を掛けたまでだ。」

「うん、そうなんだ。……海斗くん……、海斗。」


「おう早くシャワーを浴びてこい。それから階下のレストランへ行こうか。」

「あ、行きたい。連れていってくれるの?」

「もちろんさ、まだ汗の補給には足りていないだろう。」

「うん、ありがとう、嬉しい。」



 私は急いでパジャマをベッドの上に脱ぎ捨てる。衣擦れの音は立ててはいないのだが、海斗は私の動作に注意を払っているよね。だって肩が何時もよりもね、上にほんの少しなんだけれどもね、上がっているんだ。私には分るのよ。少し肩を上げるのが海斗の癖なんだよ、緊張している証拠なんだ。


 私と海斗の二人っきりの病室。他の奴らはまだ帰っては来ない。帰るまではまだ二時間はあるかもしれない。少し、少しだけ海斗となら……いいかな。そう思って振り向いて海斗に視線を送った。


 目と鼻の先に海斗は立っていて私は後ろ姿を見つめながら服を脱ぐんだよ、海斗くん判っているよね。


「こら! 海斗。窓ガラスに映った私を見ないで!」

「酷いよ亜衣音さん。明るいからガラスに映ることはないよ。」

「あ……そうなんだ、ゴメン。だったら振り向いてもいいよ。」

「いや、や、そ、それは、さすがにできん。」

「うふふふ……海斗のバカ。からかわれて可愛い。」

「う~……早く入ってこい。」

「は~い、何処にも行かないで待っていてね、お願いよ。」

「あぁ……。お前、こんなに大胆だったか?」

「そうね、どうしてかな、……もういいよ。」

「……。」


 「もういいよ、」と言っても海斗は振り向いてくれなかった。


 私は海斗に視線を釘付けにしてゆっくりと浴室へ向かった。ドアを開けて直ぐに閉めようかと思ったが、やはり裸体を見せるだけの勇気は出なかった。最後まで海斗に視線を向けながら浴室に入ったんだ。もう~スリルとサスペンスという程度の高ぶった感情が、冷たいシャワーの水を要求している。


「ひゃっ、冷たい。」

「亜衣音さん、」

「うん、大丈夫。水とお湯を間違えただけだよ。」

「そうな……・……・……。」


 後はシャワーの水の音で海斗の声は聞こえていない。水を手のひらから腕に掛けて、それから右の膝に当ててから左の足に当てていく。下から順にお尻、腰、お腹、胸、そして顔に当てていく。最後は頭に当てて暫く……頭を冷やす。


「う~冷たい。お湯を半分出さないと身体が動かないよ。」


 これは緊張しているからだろうか、それとも冷たい水の所為なのかな、鳥肌だって立っている。


「私、海斗のこと好きなのかな。大地ことは間違いなく好きだと思う。でも海斗にも何だか特別な感情が湧き出しているの? どうしてだろう。」


 シャンプーして身体を洗って暫くシャワーの水を浴びている。


「これってやばいかも! 早く出よう。あ、バスタオルはベッドに置いたままだ。」


 私の注意はバスタオルの一点のみ、濡れた身体のまま浴室のドアを勢いよく開けて右足を出してしまった。


「え”……海斗、見ていたの……。」

「あ、ゴメン。」

「うんいいよ、暫く外を見ていてね。」

「お前が勢いよく出てくるからだろう、少しは考えて行動してくれ。」

「うん、ごめんなさい。私が悪いわ、謝ります。」

「いいよ……。」


 浴室は外開きでドアの左が出入り口だから、それでもって私は右足から部屋に出たらもう私の身体の半分以上は海斗に見られているはずよね、う~恥ずかしい。


 急いでバスタオルで身体を拭き上げる。着替え……うわ~出すのを忘れているよ。


 浴室を出て直ぐに左に折れれば衣装等の収納になっている。私は白い身体を後ろに居る海斗に向ける姿で立っている。今海斗が振りむいたら私の裸体を見られる事に気がつかないのかな、海斗。


「あ~下着、どこだっけ、パジャマは着て行けないかな。だったら何を着て、」

「亜衣音さん、病院だしパジャマでいいはずだよ。恥ずかしいのであれば、何時もの服が可愛いから好きだよ。」

「そ、そうよね。だったら何時もの服よね。」


 うわ~言葉が上ずっているし、思考回路は何処を向いているのよ私の頭は。


 ここは慌てない、そうよ慌てないで平常心よ平常心。……そうよこれでいいのよ。下着はこれでいいとして、ポロシャツと藍が買ってくれたスカートを履けばいいのよ。


 うん、出来た。


「海斗くん、いいよ。」

「プッ、なんだい、まだ準備は出来ていないよ。」

「え、だって服は着たよ?」

「……頭、頭の髪はそのままなのか?」

「あ、いや、見ないで、まだだったわ。海斗くんの意地悪。そうよね、意地悪ついでに乾かしてくれると嬉しいな。」

「いいぜ、ドライヤーは何処に?」

「はい、今納戸から出します。可愛く仕上げてよね。」

「俺に出来るかな~出来ないだろうな~。」

「もう意地悪言わないで、音なしの大人しくしていますから。」


「お前、黙ることは出来ないだろ。違うか。」

「うぐぅ~……、」

「あ、黙った……よ。」

「もうからかわないでよ、ねぇ、私……、」

「あぁ綺麗だった。好きだよ亜衣音さん。」

「うん、とっても嬉しい。……見えたんだね。」

「あぁ……とても白くて……柔らかそうに、ね。」



 それからは二人とも無言で、私は海斗からされるがままに髪を乾かして貰う。もう……幸せ。何時もはと言うか、藍が家に来てからは藍に全てを任せているよ。でもね、こんなトキメキは感じなかった。女の子どうしだからだよね。大地から髪の手入れを手伝って貰った事がないな、無かったよね。だってあいつはがさつなのよね。悪く言えば田舎人。よく言えば気が利かない醜男だよ。


 あ、どちらも悪口かな、えへへへ……。



 海斗、大地とはひと味もふた味も違って感じる男の子だ。女の子ってこんな男の優しさに弱いのかな、知らなかったな。大地には足りていないものかな。


 思いにふけっていたから私の視線は宙を彷徨っていた。見ているのは自分の顔のはずだが見えていなかった。


「出来たかな、これでいいよね。縦ロール。」

「うわ~ウソ……。」


 そう言って慌てて鏡の自分の顔を見た。髪がやや短いのには反感しか覚えない。いつもの顔と髪の毛。うん安心したよ。


「短い髪の毛で縦ロールは出来ないよ。」

「そうよね、出来ないよね。」


「だったらこれはどうだ!」

「え……いや~髪の毛が逆立っている!」


 私の細い髪の毛、襟元からドライヤーの風を上向きに送るのだから、鏡に映る私の顔の後ろで小さなたき火のような、煙のような炎のように揺らめく私の髪の毛が逆立ちしている。


 まるで踊って居るように見える。揺蕩う……私の心がゆらゆらと揺らめくような気分だよ。


 いや違うよ、揺らぐ私の心が逆立つ髪の向こう側に見える笑顔に吸い寄せられているのかな。白い歯が少し見える口元に吸い寄せられる……。


(笑うな!)と声に出しそうになった。


「どうだい、面白いだろう……。」

「うん、思わず笑ってしまいそうだよ。海斗、」

「なんだ、亜衣音さん。」

「もう……いいよね、」

「そうか面白いのに残念だよ。また今度な。」


「ううん、違うの、違うのよ。…………もういいよね、」

「?……どうしたんだい。」

「ドライヤーは冷えたでしょうから戻してくる。」

「……熱い風は使ってないが……、」

「そ、そうなんだ、」


 私は立ち上がって軽く笑顔でお礼を言う。口元を動かす、声には出さない……「ありがとう、」なのよ。


 それから目で笑ってドライヤーのコードを本体に巻き付けて納戸にしまう。


 振り向かずにそのまま立ち止まる。



「海斗、空には雲が浮いているよね、白い小さなちぎれ雲が、」

「あぁ?……一つ大きな雲があるかな。それを少し離れて追いかけている小さい雲が流れているよ。」


「そ、そうなんだ、良かった……、」


 私と海斗の短い会話の間に私は勇気を出して、服を脱いで下着姿になっていた。ゆっくりと振り向く私に海斗は気づいていない。私は海斗を床の足から頭へと視線を送り、肩で視線を止めた。うん、少し肩が上がり気味だね、良かった。それから後頭部に視線を向けて止める。……もう我慢が出来ない。


「海斗、ゆっくりと振り向いて、見えているのでしょう?」

「あぁ実は……そうなんだ。振り向くよ、」


 そうなんだね、確かにうっすらと私の下着姿がガラスに映っているよ。


「うん、いいよ、……抱いてくれるかな、私の身体を。」

「……綺麗だ、とても……、」

「ありがとう、海斗の手は冷たい。」

「そういっぱい緊張しているからさ、人は緊張すると手は冷たくなるんだよ。温めて欲しい、いいかな。」

「うん、……肩に両手を置いて抱き寄せて頂戴、海斗。」

「……、」

「……。」


 私は目を閉じて身動きしないで身体を硬直させて、海斗が動くような感じを思い描いて待つ。


「亜衣音……、」

「海斗……。」


 海斗の手のひらが汗ばむ。私はより緊張を高めて唇に意識を向けた。……熱い、とても柔らかい熱い感触が口から脳へと伝わってきた。海斗は右手を私の背中に回し、左手は腰に……それからは……、


「亜衣音、」

「うん……。」


 私は薄く目を開いて海斗の顔を見た。とても優しい顔と瞳だった。それから私は両手を挙げて海斗の首にまとわりつける。


「……もっと欲しい、お願い、」

「いいよ……。」


 暫く無言の一時ひとときが続き、あ!……海斗、いいわよ海斗。海斗の小さな口が私を押し開く。ゆっくりと広げて海斗を迎え入れる私。もうめまいがしそうなくらいに身体の力が抜けていくのよ、海斗。


 海斗は大地よりも力が強いらしい。ならばと私は全身の力を抜いて海斗に私の身体を委ねる……。直ぐにフワリとして私の身体は雲の上に投げられる、そんな感じがした。……そうなんだ私は、今はベッドの上なんだね、だって海斗の重さを感じているから。


「俺もシャワーを浴びてくる。」

「いや、ダメ。このまま私を抱いて……欲しいのよ。」

「いいのか……、」

「いいのよ……私、海斗のことが好き。だから私は海斗が欲しいのよ。」

「俺だって亜衣音が欲しい。このまま終わらせる、」

「うん、いいよ、海斗、海斗ブラ外して……。」


 背中に回る右手がブラのホックを外した。海斗はゆっくりと上半身を起こして外してくれる。海斗の視線はまっすぐに私を見つめたままで、海斗の冷たい両手は私の胸の上に重ねてくるの。


「海斗……ねぇ初めてなの?」

「そうだよ、初めてだよ。初めてがお前で良かった嬉しいよ。」

「うん、私も嬉しい。」


 海斗は私の胸から両手を外す。しっかりと私の胸に視線を落として私がボタンを外すのを待っているのよ、胸が心臓が高鳴るのが判る、それもはっきりとだよ。


「海斗、私の上にきて、」

「うん、」


 海斗は私に覆い被さりながら身体を右にずらして行く。私の身体がピクリと反応しているのが海斗、そうなんだよ私は喜んでいるの。


「キスして……うんと長く……、」

「いいとも……。」


 私の顔に海斗の顔がある。海斗の息が聞こえる、聞こえるよ。それから私は右手で海斗の左手首を掴んで、最初は海斗、躊躇したよね、だってお腹のへそ上で止めたよね。



「あ!……そんないきなり……海斗、くすぐったいよ。」

「もう待てないよ。」


 私の心が折れそうな……予感が続いていくのよ、海斗、私の海斗。



「海斗、私幸せだよ。」

「俺だってさ。」

「私、悪い女なのよね、これでいいのかな。」

「それは俺が判断する事じゃないよ。」

「も~……海斗の意地悪。」

「大地は……許してくれているよ。未だに帰って来ないからね。」

「え”……あ、もうこんな時間。大地は私を止めにこないんだね。」

「そうだと思う。」

「だったらもう少し、」

「もう時間だよ、夕食も届くだろう……。」

「う~海斗の意地悪。立ち入り禁止の札を掛けて、鍵も掛けてきて。」

「それって無理。どちらも無いのは知ってるよね。」


「うん、最後にキスしてからにするよ。」

「海斗、いいよ、何度でもいいわよ。」

「頭に被せるぞ、いいのか!」

「うん、海斗が望むならばいいわよ、」

「く~……意地悪言うのか!」

「これくらいはいいわよね? 海斗へのお誕生日プレゼントにしちゃおうかな。」

「……?……どうしてそれを?」



-------------------------


 市内の散策……主にウインドウショッピングに時間を費やす大地と私の眷属たちは、大いに疲れているに違いないのだが、


「ねぇねぇ大地くん。そのプレゼントは亜衣音ちゃんに渡すのよね。」

「いや、ひかるにやるんだ。亜衣音には勿体ない。」

「へ~……それでは家庭円満にならないと思うけれどな~。」

「藍、うるさい、黙れ!」

「うんうん、亜衣音ちゃんに渡すのだったら黙るよ。ひかるちゃんに渡すのだったら私、亜衣音ちゃんに暴露してあげる!」

「うっ……もちろんだよ、亜衣音に渡したい。」

「ふ~ん、いいな、それ……私に頂戴! 黙っておくから大丈夫だよ?」

「口から生まれたお前には、全然安全ではないから渡せない、やらないよ。」

「うわ~酷いよ、大地くん。」


 聴き耳の猫耳が二つ名という夕霧が二人の会話に入る。この二つ名はもちろん未来が付けたものだ。これからが、有名になるから覚えておいてよ。



「ふ~ん、私も貰えたらいいな!」

「大地くん、まだ病院には戻らないのですか?」


「大地、無視しないでよね。藍ちゃんさ、いいのよ。ご主人様が帰らないのだからね。それにあの女……もう歩けるはずよ。」


「まぁ夕霧さん、随分と亜衣音ちゃんに悪態を吐くのですね。」

「当たり前でしょう、だってあれは海斗の心を奪っているのですもの、悔しいわよ。直ぐにでも噛みつきたいほどよ。」

「夕霧さん、大地くんに聞こえるわよ。」

「いいわよ、ほら大地の顔……少し蒼いわよ。」

「夕日で赤くなっておりますが、違いますか。」


 美保が入ってきたよ、どうなるのかな。


「美保ちゃん、まだまだ欽次郎さんを忘れる事が出来ないようでは、旅行なんて行けませんわよ。」

「なによ未来、判ったよな口ぶりで。私は欣ちゃん一筋です。」

「ほ~……筋子……。」

「未来、何を想像しているのよ、なにが筋子よ、も~バカにして。」


「美保、大地くんが迫ってきたらどうするの?」

「もち、受け入れるわよ。だって強い男は好きだもの。当たり前でしょう。」

「女の常識かしら、美保の非常識なのかしら。」


「おいお前ら、俺をからかうのかよ。あの店でジュース飲んで帰る。」

「え”~・・・まだ帰らないのですか?」

「まだだ、夕食が下げられる頃に帰るからな。」


「ご飯買って帰ろうか、ねぇ皆ぁ!」

「夕霧さん、どういう意味かしら。」

「大地くんに聞いてみて。なんて答えるかしら。」


「も~俺をからかわんでくれないか。俺だって心が折れそうなんだからさ。」

「はいはい、判りました。以後口はつぐんでおきます。」



 亜衣音……今までのお詫びだからさ、ゆっくりと……過ごしてくれないか。 海斗……俺は亜衣音を任せたからな……海斗信じているよ。これは亜衣音に渡せないよな。



 大地が握りしめる銀色に光る指輪、ゆくあてが無い……。


「亜衣音……今までのお詫びだからさ、ゆっくりと……過ごしてくれないか。海斗……亜衣音を任せたからな……海斗、お前を信じているよ。」





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