第143部 亜衣音改造計画……手術開始……
「私をロボットみたいに改造しないでよね。壊れちゃうから!」
1971年7月24日
*)……今そこにある未来
私は痛いのは嫌だと思うけれども、また自分の足で歩けるのだと思うと、もう自由に歩いている自分の想像しかなかった。それに大地は歪な頭をまともにする整形手術なのだから、中身も真面になってくれたらと願うのみ。
「お嬢様、お昼から始めますが、途中で麻酔が切れるかと思います。また痛みで耐えられない時は、声を出すか右手を動かして合図をして下さい。」
「それ……大きいです。」
「はい、大地君もですから我慢しましょうね。」
「それ、何処に刺すのですか。」
「はい、背骨です。少し痛いですが我慢して・・・、」
「ヤ、やだよ、先に麻酔をして頂戴。背骨に刺すなんて、あり得ないわ!」
「はい、ではそうさせて頂きます。木槌、金槌、梵鐘と用意いたしました。どれを希望されますか?」
「そこの人たちはなんなのよ。」
「はい、男たちを希望ですね、では。……パチッ!」
この男が指を鳴らしたら屈強な男たちが私をベッドから起こして、嫌だと騒ぐ私を押さえ込む。背中を丸められて……いや、背中が冷たい。
「はい、アルコール消毒です。……では、ゴメン!」
「ギャ~……痛い痛い、この~バカやろ~痛い・・・、」
「はい、終了ですよ。よく喚く体力がありました、偉いです。」
「なに言ってやがる。退院したらお礼参りしてやる。」
「はい、それは楽しみです。お待ちしております。」
「うぐぅ~……、」
誰も見舞いの人が居ない病室で、散々喚き散らした。だって痛いモン。すると病室のドアの外で笑うような声が聞こえた。それもね段々と大きく人数も増えてきているのよ。
「うぎゃ~……聞かれた……!」
「お友達ですね、みなさん、外で待機されてあります。あと十分しましたらいよいよ手術室へ行きますよ。」
「はい、お願いします。」
「次は全身麻酔ではありますが、骨の接続に筋繊維の接合、一番大切な神経の接合へと作業を進めていきます。そうですね~全部で三十時間のコースとなっております、はい。」
「さ、さ~、三十時間も~!?」
「はい、お嬢様はお休みでしょうが、私たちはほんの休憩のみで三十時間です。どうです? 少しは尊敬する気になりましたか?」
「……はい、怒鳴ったりしてすみません。」
「よろしい、皆さんをお部屋に入れます。」
それから私は十分間の間に皆から激励の洗礼を受けた。私のパジャマはもみくちゃにされて、胸がポロリだよ、大地。
「ほらほら、入って!」
「誰よ、」
「ひかるちゃんがお見舞いに来てくれたよ。車椅子だけれどもね、無理して起きて来たんだよ。」
「亜衣音ちゃん、……」
「うん、随分と良くなったみたいだよ、良かったね。」
「はい!」
「お~亜衣音。」
「うん、お父さん。行ってきます。」
「俺も付いているぞ。」
「熊さんのぬいぐるみになって下さい。」
「できね~よ、バ~カ!」
それから麻美ママだったな。
「亜衣音、俺も来たぜ。」
「え……大地、まだいいの?」
「俺はお前の後からだとよ、どうしてだろうね。」
「へ~大地。正気になってね!」
「俺は真面だ、ぶったたく!」
「ヤダ、大地。明日までと、長くなるらしいから起きて待っていてね。」
「おういいぜ、寝ないで待っている。」
「ホントかな~……。」
「もちろんさ、な、みんな!」
「オー!」x9
海斗くんが来ていなかったけれども、気にはならなかった。
それから直ぐに、三点がボインな黒い看護婦さんたちが入ってきた。
「紙帽子。」
「オシッコ。」
「脱がせ、」
「髪留め、」
「お化粧。」
「パ*ツを剥いで、」
「ギャバ!」
「膝周り、消毒。」
「着せて、」
「ほ~ら、もう済んだわよ!」
「亜衣音ちゃん、良いモノを見せて頂きました。」
「ぎゃば、ギャバ! ジャン、」
「次は、ギャバン? かしら。」
「委員長……好きです。」
「正解だったようね、嫌いだよ、ベ~!」
「行くよ~、一,二,三、ハイ!」
このかけ声と共にシーツごと宙に浮いて、ベッドから移動ベッドに移された。日本では細い腕が重たい身体を持ち上げるのだが、ここアメリカでは極太の黒い腕が軽々と持ち上げていた。それこそ、アッ! という間の瞬間移動だよ。
「う~ん、気持ちいい。」
「お前、怪我して、随分と入院していたからな。もう慣れっこだろう。」
「大地だって、おんなじだモン。」(同じ、)
「まだ。頑張るか!」
「うん、まだ1757文字だものね。手術室に着くまでは五千文字を超えてみせる。序でに……、」
「なんだ亜衣音。」
「うん、チューして!」
「キャー!」x6
「いいぜ、足の裏!?……膝の裏だな。」
「うん、ありがとう、大地。」
「おう、また明日な!」
「大地も頑張って、」
「任せろ。」
「今日の大地は何だか清々しい気分だったかな。もしかして……。」
「亜衣音ちゃん、私、何もしていないわよ、誤解しないでね。」
「ひかる~……。」
「うん、お姉さま……。」
「私、生年月日が早かったかな、六月だよ。」
「あたい、十二月……。」
「亜衣音、多分、大地と同じかもしれないぞ。」
「ふ~ん、サバが泳いでいるんだね。」
「違う違う、本人も分らないのだと、言いたいんだ。」
「大地、バカだからそこは黙っているよね。第一に高校に入って学年トップと言うからきっと、二年遅れよ。」
「……。(こいつ、鋭いな。)」
「それよりもさ、お父さん。」
「あぁ……なんだ?」
「朝ご飯、少なくてお腹が空いた。」
「そうか、それは良かったな。退院したら亀万に行こうな。」
「うん、ダイエットせずに待っている。」
「だったら飴ちゃん食べる?」
「うん、我慢するよ。明日にまでとっとって。」
「いいわよ、オブラートだけでもいいならね。」
「いや、あめ玉もよ、ね?」
移動ベッドに移された事を思い出した。ここまで来たら後はゴーカートと同じで池に飛び込むだけだよ。ゴーカートは車感覚では絶対に池には落ちない。それほどに異世界の乗り物なのだ。……怖い……。
「レッツ・ゴー……。」
「おいおい誰よ、亜衣音ちゃんの足の裏に落書きしたのは!」
「いませ~~ん。」
「ハートマークだからさ、きっと大地くんだよ。」
「あれはキスマークだったよな。」
「そうだよ、膝にキスしていたね。」
でも、誰も名乗り出ないのよね、本当に誰だろうね。
「ここで麻酔して行くからね。」
「はい、まだお喋りしたいです。」
「だったら夢の中でお願いね。」
「はい、努力します。」
直ぐに手術室なのだが、移動している間は何だか恥ずかしい思いがしたよ。お部屋に入れば直ぐに、膝にたんまりの消毒液を掛けられた。それも流れ落ちる程に大量だったよ。
「麻酔に、あれを1%混入させているな。」
「はい、ビ****薬ですよね。」
「それでいい、きっと男の夢を退屈するほど見ているさ。」
このドクターの指示は誤りだったのよ。目が覚めて夢を聞かれたらね、大地が後ろ足で私に砂を掛けていたんだよ、バカ犬の大地。
本当は手術中の酸素に混入していなければね、効果はないよね。五分程度の麻酔の吸入では意味が無いよ。
「わ~ごめんなさい。でもドクターにはたくさんの夢を見ましたと、言って欲しいな、……ダメかな。」
「うん、いいわよ。まだ足の痛みがありませんが、」
「だってまだ足は着いていませんわ。」
「え”……ウソよね。」
「起こして、足を見てみたい。」
「はい、どうぞ。足は無いですよね。」
「この包帯はなんですか?」
「マネキンの足に包帯ですわ、マ~ネ!……。」
「うぐぅ~……、嘘つき。」
「これ位は……からかわないと面白くありませんわよ。イカのキン**よ。」
「ねぇ、大地は!」
「はい、無事に終了しております。キン**抜かれましたがね。」
「うぎゃ~……、」
私は3000文字でダウンした。直ぐに足が痛むだろうと、また麻酔を吸わせるのですって。
「あ、あ、あ、面会謝絶ですからね、ヨロピク!」
それからお尻がゴワゴワして、眠りが悪かったよ。何よ、これは!
睡眠中に右の足裏にもハートマークが書かれてあった。誰だろうね。その落書きが分るまで、私は都度に笑われていたから、それで初めて気がついたんだよ。
次に目覚めた時は、透明人間が私のベッドに突っ伏していたよ、大地だ。それにしても痛いよ~。寝返り出来ない、お尻も痛い、これは冬の入院と違って夏の入院はキツい。背中も足も痒くなって地獄のようだよ。
「俺が掻いてやるよ。」
「うん、胸と腹は自分で出来るからね……プッ!」
「笑うな、まだ包帯も取れない。俺だって頭が痒くなって泣きたいくらいだ。」
以後は痛み止めの薬で我慢のがの字だよ。クラスメイトたちが可愛い衣装を着て見舞ってくれるのはいいが、これではファッションショーだよ。
父よ……あんたもか!




