第133部 亜衣音改造計画……って、なによ!
1971年6月12日
*)追試の始まり
「……まさか、ね!」
「そう、そのまさかだよ、お嬢様。」
「また赤点のラッシュ……。」
「ママの授業さえ赤点なんて、も~最低だな。」
「この答案を読み返してもね、温かい母親の甘い採点です。それでも二十九点とかあり得ないんですけど、」
「藍、追試を替わって!」
「この、デコピンが~……ピンピン。」
「……痛い、痛いよ、」
藍からの愛のデコピンを頂いた私なのだ。これで頭が良くなるのならばコブを作ってでも打たれたくなるよ、あ~気持ちイイ!!
「バコ~ン……!」
「ギャビ!」
「この……変態が~……、」
「もう言いません。」
それで私の成績に不安を感じてね、お友達がたくさんだよ、私のテストの指導をしてくれるという。うん、有り難いことだよね。
未来……得意科目は,現国と古文。
藍……得意科目は、社会関係全般。隠れて簿記の有資格者なのだ。
夕霧……同じく、数学。頭でっかちだからだね。
美保……役立たず。だが赤点は無いらしい。
海斗……得意科目は理系全般。
翠・碧……体育系が得意だから、役立たず。体育は水泳の一つで単位を頂く。
亜衣音……英語は点数獲得だよ、どぉ? 偉いでしょう。
沙霧……家庭科、同じ内容の試験問題だと教えて貰う。
今日の夕方から早速開始された個人指導は、初日は同居の藍からだった。翌日は土曜日なのでみんなして家に遊びに来たんだ。専属の一人を除いてね、皆はお座敷でカードで遊んでいるのだな、時々大きい声が自室にも聞こえて身が入らない。
これってカエルの生茹でだよ。
カエルって、茹で上がるまで気がつかない……? うそだよね。
日曜日も終日の勉強とは情けなく思うが、持つモノは友達だよ。この日も全員が自宅に集まってくれたんだ。で、お父さんはおやつの買い出しだよ。お母さん、お昼のご飯と夕食のご飯が大変だったと。だって家族が倍以上に増えたんだからね。
一番の問題が数学だよ。微分積分タンジェント……? インテグラル?? もう数学は放棄したよ。
「でもね、同じ試験問題が出るかもよ? どうするの?」
「う~この試験問題だけでも覚える努力いたします。」
で、七日の追試はね、数学は同じ問題が半分が出たんだよ。だからさ、四十点で合格出来た。他の教科も同じような傾向だったからね、半分は出来たな。晴れて中間考査はクリアだよ。同じく翠と碧も受けていたよね。あの二人もバカだったとは知らなかったな。
「うんうん、そうだよね。二人が……、」
「だって知らないよね。今までが誰も追試なんて受けていないからさ、知りようがなかったというのか。」
「でも、解答できたから、いいモン!」x2
特別室でひっそりと行われた追試。全校で十人は居たのかな。他の生徒は普通に授業だったよ。で、誰が居ない……追試だろう、今朝見たぜ。という会話がね朝から聞かれたよね。
藍ちゃんだけが授業の前後で私に付き添ってくれたので、その分はとても迷惑を掛けたよね、藍ちゃん、ありがとうございます。
「いいのよいいのよ、この科目も頑張ってね。」
「うん、三十分で解答して保健室に行きたいよ。」
「私が居ないから、ダ~メ。大人しく試験を頑張りなさい。」
「は~い、おトイレ……お願いします。」
「うんうん、良い子にしていたらね。」
試験結果の発表は翌日だよ、大地。覚えているかな?
でね、翌日は保健室でお母さんから答案用紙を貰ったんだよ。
「亜衣音、お母さんは恥ずかしいです。追試なんて……もうこれが最後にして頂戴よ、おめでとう合格よ!」
「うん、お母さんありがとう、期末は寝込まないように頑張ります。」
「そうよね、私たちのお腹が大きく膨らむと、どうして亜衣音が寝込むのかね~理由が知りたいわ。」
「うん、巫女の力が胎児に吸われてしまうからだよ。他には考えられない。」
「ごめんなさい。もっと楽になる方法があればね~。」
「いいわよ卒業出来ればいいのよ。後は大学……無理かな。」
「お爺ちゃんが裏口を開いてくれるわよ、期待しておこうね!」
「うわ~……親公認だなんて、安心するな~。」
「こうでもしないと亜衣音が何処に飛んで行くのか不安ですよ。」
「一生……家に居ますから養って下さい。この脚で仕事は無いよね。」
「任せて、お爺ちゃんからは数億を頂くからね。」
「寝て暮らせるね。」
「亜衣音、本を書いて生活の糧を得てよね。お母さんは先に逝きますよ。」
「売れないよ、きっと駄作だよ。駄女の本なんて何処が出してくれるかな。」
「ここに本棚を置いておきました。じゃじゃ~ん、ほら、お誕生日のプレゼントだからね。寝ていても本を読んで勉強しなさい。」
「あ・・・そうだね、今日は誕生日だったんだ。道理で美味しい御弁当だった訳
だね。」
「良かったね、亜衣音。」
「うん、」
放課後……全員で喫茶店に集まる。私だけが食べ放題のメニューだったよ。各人が百円も出せば私のお腹は満杯だよね、今日はお安くついたよね?
「亜衣音ちゃんパフェはお腹壊すよ、このミートスパゲッティにしなよ。」
「三百五十円……これだけで十分なような気がする。アイスも食べたいよ。」
「仕方ないな~、会計の努力で何とか致します。」
今日のお誕生日会の会費が百円、これを藍が集めている。自分の腹にもこの会費で賄おうとは、良い度胸だよね、藍ちゃん。
「えへへ・・・、」
「褒めていません。」
それから試験前の一週間は、亜衣音強化週間と銘打った試験対策が講じられた。お陰で追試も無く卒業出来そうだよ、皆、ありがとうね。
「お母さん、源氏物語とはなんですか。」
「日本で最初の恋愛小説ですよ。」
「お母さん、竹取物語とはなんなの?」
「日本初のラノベ小説ですよ、凄いわね。」
「徒然草はなに?」
「日本初の随筆です。奥の細道は紀行文ですね、それから……、」
「うん、みんな読んで見るよ。」
「……見るだけではダメです。読みなさい。」
「究極の斜め読みは良いよね。」
「ダ~メ。せめて森さんとか太宰さんとか、武者小路さん、買ってきますか?」
「もう……図書館の本でいいわよ。既にラベルも付いているよね。」
「あら~なんの事かしら。それは藍ちゃんですよ。」
これはこれでいいんだ。難しい本を読んで眠るのが得意になれそう……。
○────────○
七月になった。一方アメリカでは、
「教授、もうカエルの脚は自由に動けます。それにどでかいカエルも順調です。」
「そうか、IBM5100、通称「お弁当箱」が役に立ったか。」
「ランチボックスですよ、教授。でも、この大学のコンピューターがこんなに
小さく出来るなんて、凄い発明ですよ、教授。」
「ホ~ッホッホ、なんぼでも褒めていいぞ。これでこの実験兼修理も終わりじゃの~。ちと淋しかの。」
「はい、教授。それに……ミスターお爺ちゃん。資金の捻出を助かりました。」
「なんのなんの。これでやっとワシの肩の荷が下ろせるわい。」
この得たいの知れないアメリカの教授。お爺ちゃんが博多の時に大学で講演を聞いた記憶で探して回ったと後日聞いた。その仮説理論を実証させたと言うからお爺ちゃんは大したものだわ。ハドソン川の寒中水泳の関係者、軍から出て自腹で研究を始めたらしいのよね。これは渡米後に追々と聞かされるから割譲。
私は保健室登校が主になり、大きかった身体も細くなり出したわ。もう初夏が過ぎて大暑が目の前に迫る。今年はね、七月二十三日だよ、もう夏休みだよ。
急遽、私のアメリカ行きが決まった。義足の準備が出来たのだという。
「わ~楽しみだな。私が自由に歩けるのよね、お爺ちゃん。」
「おうおうおう……随分と不自由をかけてすまなんだ。どれ、友達も数人は連れて行こうかのう~。」
「え”ぇ……ホント!……嬉しい、ありがとう、お爺ちゃん。」
「誰がええかのう、」
「藍ちゃんは確定だよ、一番お世話にもなっているし、絶対に連れて行きたい。」
「明日の終業式が終わって相談すればいいよ。ほれ、あの男は絶対に連れていけボディーガードじゃよ。」
「えぇと、海斗くんだよね、いいの?」
「もちろんじゃわい。もう二人ほどは大丈夫じゃろて、」
人数なんて関係ないのよね、お爺ちゃん。だってフェアリーフライト……? 違ったフェリーフライト、回送の飛行機利用だよね?
「さ~どうじゃろか。沙霧は無理だろうから穣は連れて行くし、ヒグマもあれは強いからまた同行させるよ。」
それは……私の奇跡、奇跡が起こるのよね、大地。
「あぁそうだとも。亜衣音の奇跡だろうぜ……。」




