第131部 夕霧の誤解……こいつ、魔女かな。
「大地……ア~……イタいよ、助けて……、」
「ア~……大地……イタい……!」
私は知らないのだけれどもね、藍ちゃんが言うにはおおよそが上のようにね寝言を言いながら痛みに耐えているというのよ。私には分らないのでいいのかとも思うけれども、確かに夜中に呻いている夢は見ているのだけは判る。
(この子、なんなの。大地くんが今でも恋しいなんて。それに海斗がこの子を好きだなんて、それ、許せない。)
「大地……ア~……イタいよ、助けて……、」
(うるさい、何度も言わなくてもいいわよ、聞こえているわ。)
「ア~……大地……イタい……!」
(そんなに昔の男に会いたいんだ!)
この私の呻きの洗礼を今、新たに受ける女がそう夕霧さんなのである。だって、嫌がる藍を押しのけて私と一緒に寝るのだと言ったからには、私はもう知らない。痛がっているのよ、大地に会いたいのじゃないわよ。
「誤解しないで頂戴な!」
「おはよう……夕霧さん。それとも今晩は? がいいなか。」
「フン、なによ。自分ばっか寝ていてさ! ひねくれ女!」
「ん? 何がかな。もしかして私が夕霧さんを襲ったとか?」
「そうね、そうなのよね。だから眠れなかった。……ブス!」
「フンギャ……!」(寝起きの悪い夕霧さんかな。)
台所に立つ藍にはこの会話が微笑ましく聞こえるらしい。あんな会話の何が微笑ましいのだろうか。人の価値観はそれぞれだとは思うよ。でもね、私とね価値観を共有出来る人なんていないよね……大地。
藍の心の中はね分らない。
(亜衣音ちゃんの敵はいずれ……討ってやるわ!)
勿論、大地に言えば返ってくる答えはただ一つ。「当たり前だろうが、」だよ。も~この点に関しては価値観が同じね。
「バカね~、それが当たり前なのよ。人と区別するのがそもそもの間違い。区別するから問題が生じて諍いにまで発展するのよ。」
「ではどうするのよ、ねぇ教えてよ藍先生。」
「お互いがお互いを、バカだと認識していればそれで済むことなの。それが出来ないのが人間だもの、やっぱ人は……他人へ自分を押しつけるだけのバカなのよ
ね。」
そんな藍の人生観なんて私には理解出来ないよ。だったら無視だね。
「ねぇ藍、今朝のメニューはなに?」
「ぶ~……有りません。余所で食べて来なさい。」
「もうバカ言わないでよ。いいよ、今日は絶食だよね。誰から御弁当を奪おうかな。」
「あら~夕霧さん、早く食卓に着いて下さい。お味噌シュルが冷えますよ。」
「へ~……どえらい田舎なんだね。」
「あら? また方言が出たのね。理解出来るのだから、いいじゃん(お前も田舎モンだよね?)。」
「ま…ぁ…ね、別段困らないからいいわ(このスカタン!)。」
う~この女、藍にお礼も言わずに食べ出したよ。お父さんは……これではお父さんに言っても撥ねられるだけだよ、ま~た新聞広げているし。やっぱ女同士ってより険悪だよね。
「ご馳走さま!」
「お粗末でした。」
「そうね、五十点かしら。」
「はい、次回はもっと精進いたします。」
やっぱりこの女、嫌いよ。私には朝食無いから零点だよね、藍ちゃん。
「お父さん……、」
「あ~? 沙霧はまだお化粧なのだろう?」
「そうよ、お母さんが食卓に着くまで待つのよね。聞いてよ・・・、」
何気なく父に話を持って行こうとしたら、藍が先手を打ってきて私とお父さんの会話を邪魔してくれるのよ。
「愛妻料理ではありません。私の料理で残念でした!」
「そうなんだ、藍ちゃん、いつもありがとうな。(安めぐみだったらいいな!)」
「はい、お父様!(まだ四十年も先に売れだす女優さんですよ!)」
「藍、いつからお父様なのよ。」
「パパ活……。悪い?」
「う……悪くありません。それで私には?……御弁当……、」
「昼まで待ちなさい。今、御弁当を拵えています、それも貴女抜きでの七個もね。」
七個? 両親と私、藍にカムちゃんにホロお婆さま。藍を入れても六個だよ。一つ多いよ。私には無いと言うならば、二つ多いよ。
「亜衣音ちゃんさ、朝に炊くご飯の量ってどれくらいかな。」
「う~……分りません。」
「でね、今朝はご飯が足りないわけ。だから~亜衣音ちゃん、ババ引いてね! 多分、お昼になれば御弁当が現れるかもしれないぞ!?」
「なにそれ、んな訳ないっしょ。」
毎朝のご飯は、五合でも七合でも在れば在るだけ食べられてしまう。うっかり配膳を間違えたら……、それは絶望だよね。家族が多いと戦争なると言うのが、身に沁みて分るわ。
「あら亜衣音さん、私が食べたのかしら?」
あ~……七人目がここに居た~……。そうなんだ、この女に私のご飯を食べられてしまったんだ。でも藍はご飯はまだだよね。
台所から藍の鼻歌が聞こえている。
「亜衣音さん、あれは立って食べているのよ。今まで気づいていなかったのね。もう随分前からでしょうね、……ドジ!」
毎朝沢山の御弁当を作る藍ちゃん。多少おかずが減っても問題ないよね。梅干しさえ入っていたらそれでいいもん。見る人が違うと視点も変わる。これが人と人の違いだよね。漫然と朝を迎えていた私に夕霧さんの視点がまぶしかったよ、大地。
(アホか!)と、天の声が聞こえた。ドジと言われて喜ぶ方が変かな。
「夕霧さ~ん、終わったわよ~。」
「は~い、」
と、お母さんの声が聞こえるかあらお化粧が済んだんだね。私は藍とお化粧をするのが日課だから、お客様を先に声をかけるのよね。すると、どうだろう。
「亜衣音のお化粧を使って構わないからね。」
「ありがとうございます。」
藍がお母さんと入れ替わる台所。これからお父さんにご飯をよそって夫婦で朝食なんだよ、も~私も夫婦で食べるのが楽しみだっうの!……出来ないぞバカ大地。
「こんなの、安物よね、」
「ギャフン、私のお化粧が……、」
「マシだとは思うから使わせて貰ったわよ。」
お化粧室のお母さんは食卓に着いているから夕霧の声は聞こえない。夕霧のアホ! もう~言いたい放題だよ、この女は。(胸を盛っていたのか!)
私に背を向けてパジャマを脱いで着替えているのよ、このバカ間抜け、鏡にしっかりと胸ぺっちゃんが映っているわ。殆ど詰め物だね?
「あ~……私、学校休みます。今日は終日海斗の看病だからね。」
「あ~・・・八個目の御弁当を忘れていたわ。亜衣音ちゃん、どうしよう。」
「藍の御弁当を置いていけば!……うんと塩と砂糖を掛けてね!」
「そ……そうだね、唐辛子……赤くなるほど振っておいたわよ。」
「やっぱ私、学校へ行きます、海斗を連れてね。」
「それがいいよ。でも車には乗れないね、五人が定員だよね。委員長は歩きでどうぞ!……や~い足無し!」
「亜衣音さんだって、足がな……キャツ!」
「おいユウ・・・言い過ぎだ、謝れ!」
「海斗、もう起きて大丈夫なの?」
「夕霧、今朝からは暴言ばかりだぞ。そんなユウは、いっちょんスカン!」
海斗が暴走している夕霧さんにゲンコツを落としてくれた。それからはお説教をしているのだが、私を睨んでいるばかりで、海斗のことなんて聞いてもいないよね。
私って、そんなに嫌われているんだね。
「委員長……何か言いたいのよね、イイじゃん、聞いてあげるわよ、ゲンコツがいいならば、今からでもいいわよ。」
「上等だ、表に出ろ!」
「おいユウ……!」
「海斗、亜衣音を表に出しな!」
「バカか、このデコピンが~……、ピンピンピンピン……、」
「きゃ~、いや、痛い、痛い、痛い、止めて……!」
髪を梳いてお化粧をしたのに、も~見るも無惨な頭になっている。いい気味だよね、大地。あ……天の声が聞こえない、大地も思っているんだね。
*)お昼の……騒動……
午後になってからの授業、ようやく朝の御弁当の騒動の気持ちが落ち着いてきたかな、今では先生の説明をノートに記している夕霧、もとい委員長。朝の騒動を昼にまで持ち込むという藍。藍が一番の強者だよね、可愛い顔してやる事が一番えげつない。こんな話を未来に振ったら喜んで飛びつきそう。
「海斗くんが夕霧……委員長を呼ぶのを初めて聞いたかな、ユウって呼んでいるんだ。」
「亜衣音ちゃん……、」
「う、うん、つい声に出しちゃったね。」
そんな会話を授業中にしていると耳の横を、ピュン! と白墨が飛んで行きそうだな。
「亜衣音ちゃん、髪に白いモノが付いているよ?」
「あ……? これね、名誉の不戦勝よ、」
「ふぇせんしょう?……、」
「そう、先生に負けた証しよ。チョークの跡と言えばいいかしら。」
「あ~……あの時、間違いなく白墨が飛んでいたんだね。」
「未来~……、」
「うんうん亜衣音ちゃん、お昼の事を朝の件から詳しく話してよ。」
「朝は、ほれ、朝だよ、」
「うんうん、いっちょん分らんばい。」
「昼の事から説明するよ。」
「そうね、知らない人いますよね、画面の前だけれども。」
意味不明な不戦勝という言葉に未来は突っ込みを入れてくれなかった。恐らくは……舌を噛んだためだと思われる。「タダのキーミスでしょうが!」と未来の心の声が聞こえた気がした。
私はお昼時間になって机を合わせる。何時もの御弁当の習慣だね。それで今日は御弁当が無い事を未来や美保に説明した。藍はさっさと避難しているが、私が委員長とあだ名みたいに呼ぶ夕霧さんは、痛々しい姿の海斗くんと御弁当をたべるのだ。それはそうよね、だって一日中看病すると言ってたから。
「未来、卵焼き……ご飯。」
「はいはい、一口だけだよ。美保ホは絶対に二口やってはダメだよ。」
一口でご飯と卵焼きは両立しないはず。で、卵焼きを食べたら具がご飯だったとかあり得ない。薄く焼いてあり、焼き上がり後にご飯を置いて巻き上げる。お寿司のメニューにも出たりするが、具がご飯だけとは無かったな。
「え~どういしてよ、私、従者だから御弁当を半分、こうやって蓋に移して、」
「へ~美保ホ、そうやって亜衣音ちゃんを餌付けするんだ!」
「美保ホ、そうなの?」
「ち、違います。お友達が御弁当が無いときはね、こうやって仲良くね?」
「分け与えるのですね……。」
「うん、そうなんだよ。……まさか、これが……餌付け! なの?」
「知らなかったんだ、」
「う~全然よ。藍が悪いのよね、……あ~い!」
藍が離れたグループいるから、美保ホが睨んでいたら突然に大声で叫ぶ委員長の声が教室に響いたのよ。
「うきゃ~、なに、この御弁当は……!」
「ギャハ、ぎゃは、ギャバ!……やばいよ、こいつはキレるぞ!」
私は目刺しをモゴモゴと食べていて、尻尾を口から出して立ち上がった。もう驚き桃の木山椒の木? だよね。驚き桃の木山椒の木……江戸時代からの言葉遊びに端を発する。「地口」文化……江戸時代のダジャレだよね。お口に在るはずの尻尾が羽を生やして飛んで行く、これがトビウオなのね!?
「わ! 驚き炭の木ユウの怒気? だわ。」
「あ~い~~!!! このご飯の中の木炭は何よ、なんなのよ。」
「あ~それね、いつも羽釜に木炭を入れて炊くんだよ、すると、とてもね美味しく出来るのよ。」
「そんな事聞いていません、どうして私の御弁当に入っているのですか!」
委員長の大きな声に驚いている級友だが、でもそこが理由ではない。どうして藍が夕霧さんの御弁当を作ったか? だろう。
「ごめ~ん、ご飯が足りていなかったからよ、だから美味しく囓れるようにとね、甘いタレをかけておいたからね。」
「これを食べろというのね、無理よ、堅くて歯が欠けそうになったわ。」
「へ~・・・囓った……。」
「う、私じゃないわ、海斗が囓ったのよ。もう、歯が真っ黒よ!」
「アハハ……、」x?
「笑いたければ笑え、この女郎ども……!」
と、クラス中で笑い声が起きた。なんのことはない、怒鳴る夕霧の口が大きく開く度に……お歯黒が見えているからだ。……キレた夕霧さんだよ。
「委員長! 生まれは高貴なんですね。」
「なんです、それ!」
「お歯黒は貴族のお化粧だからよ、そうでしょう?」
「か、鏡、カバンに忍ばせていたわよ……在った!」
「どぉ?」
「……いえ、これは朝のご飯のお焦げの黒いモノが残っていたのです。」
大口を開けて怒鳴っていたのが恥ずかしいとでも思ったのか、以後は慎ましやかに身じろいでいる。へへ~ん照れていやがるよ、イッチョマエにね!
「藍ちゃん。お客様にお焦げのご飯を出したのです……かぁ~……?」
「出しません、それ以前にお焦げなんて作りませんよ、亜衣音ちゃんも知っているわよね。」
「うん、そうね、藍はとてもお料理上手よね、」
「おいユウ、そう声を張り上げるなよ。」
「だぁ~つて、海斗。藍からいいようにあしらわれて悔しいよ。」
「世話になったんだ、俺の弁当と交換……しようか、」
「そうね、お願い、」
「へへ~んだ、バ~カ、今朝から亜衣音ちゃんをバカにした報いよ!」
「何がだ、」
藍の攻撃が始まった、いや、続いているのだ。分厚く盛った海斗くんのご飯には同じく木炭が仕込まれていた。この二人には「炭の木?」だった。
「委員長……何か言いたいのよね、イイじゃん、聞いてあげるわよ、ゲンコツがいいならば、今からでもいいわよ。」
「上等だ、表に出ろ!」
「おいユウ……!」
「海斗、藍を表に出しな!」
と、私の言葉がそっくり同じに使われている。誰が仲裁に入るのか。私は一人では動けないから違うよね。
「へ~藍ちゃん。あれが朝の事件なのね?」
「そうよ未来。私と夕霧さんの会話だったんだ。」
「うん分ったわ!」
「え”! 未来、仲裁してくれるの? 連続デコピンで、」
「うん、任せて。あんな喧嘩は直ぐに収まるからね。」
「未来~頼もしいわ~、」
未来が自分の御弁当を持って行く。そして夕霧さんの御弁当を取り上げて、未来の御弁当を夕霧さんの前に置いた。
「これ食べて機嫌を直して頂戴。いいかしら?(でないと、馬術部には入れませんよ。)」
「はい、いいです、正面な御弁当になるならば(馬、好きです)、」
「あ。、・、。未来……。」
「亜衣音ちゃん、目を白黒させてなによ。」
未来は夕霧さんの御弁当を持って来てね、
「これ、亜衣音ちゃんが食べる問題なのよ。昨日……海斗くんには悪い事をして謝ったかしら?」
本当に藍が言ったように私の前に御弁当が現れたよ、預言者”藍だよね。
「おい未来ちゃん、それは済んだことだよ。」
「いいえ海斗さん、違います。この女は海斗さんに謝ったかしら?」
「いいえ、……言いました、」
「それ、本当かな、海斗さんがウソを言ってませんか?」
私は間違いなく「う~~ごめんなさい、大丈夫かしら。」と言っているが、海斗くんは落馬の驚きで覚えていないのかしら。でも、強い口調で迫る女にはね、男はもう赤子と同じになるのよ。バカだから黙り込んでしまうのよ、それが罪を認める事と同じだとは知らずにね。(神様が好きな一言、沈黙をもって返事……)
未来はそれだけを言って私の前に、そして炭を私の口に押し込んだ。今度は、
「藍、御弁当は、もち交換するわよね?」
「誰がするものか~、」
「ほほぉ~良い度胸してますね~、食べんと分らん・判らん。」
何処かで聞いたフレーズのような気もするが藍は、自分の御弁当すら取り上げて持って行かれると踏んだのか、
「あ~い……、」
私の時と同じ事をしようとしている未来。予想がつく藍は御弁当を持って逃げていく。
「やだよ~。」
「逃げられたか、美保ホの御弁当を頂きます。」
「あ。未来、私の力作弁当が……いや、だめ!」
「海斗さんは、これ食べて機嫌を直してくださいな、いいでしょう? 亜衣音ちゃんの為だよ。」
「おおよ、勿論。」
「はいはい、放課後はあんみつおごるからさ、ね?」
「う~パンケーキもお願いするわ。あと二時間我慢する。」
「うんうん、可愛い美保ホ、好きよ。」
「ありがとう、」
「未来、委員長に甘いわ、洗濯板が大きくなる訳がないでしょう!」
「ごら~・・・なんだと、バカ亜衣音! 表、出ろ!」
「作りおっぱい。」
うわ~……これだと仕切り直しだよね。でも何だか変な気持ちになった。さっぽろ雪祭りでは大きかったよ、それでテレビにも胸ポロリをしたよね。それがどうして今朝になって萎んでいたのか、学校の七不思議だよ、大地。
何処かに真実の鏡が在るのだとか。その鏡を我が家の母が所有していたら、もうおとぎの世界だよね。夕霧さんの胸は本当に無かったんだと。胸ポロリされて怒り心頭とまではなかったという事はだね、やはり精巧な作りモノだったかな?
胸を見られて怒るのと、作りモノだとバレて怒るのと、どっちが酷く怒るだろうね。自分だったら本モノを見られたら恥ずかしいと思う。だとしたら残る答えはただ一つだよ、大地。
そう言えばさ、夕霧さんの衣装を手伝った時は、私、後ろでボタンを留めなかったから、直に夕霧さんの胸は見ていないよね。
頭の回転が速い夕霧だ岡目八目とは違う。私の意図を瞬時に判断したと考えるしかないのだから。そんなに胸が萎むとは、なんだろうね……男とか?
「あり得ないわ、私のおつむが狂ったのね。」
私の深層心理を読んで納得したような委員長だった。「こいつ、魔女かな。」
チャイムと同時に教室に戻ってきた藍ちゃん。もの凄くご機嫌がいい顔だった。これも魔女に違いないわよね。未来だって希有な才能があるから、これも魔女。あれも魔女、黄色いレモンを私に搾って下さい。そうか私の従者だからか!
「亜衣音さん……もういいわ。未来、私にもあん餅とパフェを奢りなさい。」
「はい……お姫様!」
以後、夕霧さんは未来から「あん餅姫!」と影で呼ばれているよ、大地。
放課後に全員が集まる喫茶店。お迎えがくる小一時間の幸せタイムだ。今日の事は議題にも上がらなかったのだが、最後にその議題が出たのだ。未来だよ、
「え~今日の喧嘩の元はと言いましたら、全てがこの駄女に起因するものだと考えました。よってここのお会計は亜衣音さまにお任せ致します。」
「サンセ~イ!」x7
「先輩……今日の部活は……?」
屯する喫茶店に現れた二人の後輩は、
「ずるいです、私と智子にもパフェを食べさせて下さい。」
「いいよいいよ、座って注文していいよ。」
「ありがとうございます。未来先輩!」
「あ、。・、。ダメ、もうお金無いよ。」
「へ~……払う気、あったんだ!」
「うぐぅ~……、貧乏なのは知ってるよね……藍。」
「未来に言いなさいよね、大地くん?」
(大地の名前を出して……なによ、フン! だ。)
私は目を白黒させてお財布を見ていたらだよ、追加が出来て最後は赤くなる財布。こうなればカバンの小さいポッケに仕舞っておいたヘソクリに手を出すしかない。これは大地の遺産だよ、大地。
「おう……使ってもいいぞ!」
「ありがと~う、大地。」
「今度返せよな!」
「不可能です……。」
「い~や、可能になるんだ!」
「……私、死ぬのね。」
「……?」
「早々に事件とか、起きて堪るものか!」
そうなんだよ、あれから事件は何も無い、平和そのものだよ、大地。
そう言えば藍が意地悪で作った御弁当、ご飯に砂糖と塩と赤くなる程に振りかけた唐辛子の御弁当だよ。誰が食べたのかな、きっとタラコの唇をしていたりしてね。これが所謂……ロシアンルーレットと言うんだよ。たこ焼きに一つだけに辛子を入れてね、夏のバーベキューのグループに売るんだよ。いいと思うんだ。
以後は必ず御弁当の蓋を開けて中を確認する人が居るんだな、誰だろうね。
○────────○
この日、地球の裏側で「ランチボックス」が活躍していたとは、誰も知らないのよね。この意味は1975年になって売り出されたコンピューターなんだ。
真っ赤に染まった***の血のような、差し詰め辛子明太子の友達? かな。持ち運びができる御弁当……パーソナルコンピューター。アメリカでは思いもよらないネーミングがいいよね。1971年にはまだ無いコンピューターだよね。
「ではこのコンピューターで電気信号を送る。」
「はい、お願いします。」
「ピッ……!」
「おい、今動いたぞ、生きているのか?」
「これ位は普通に観察できるよ。」
「まさか……、」
「う……動いた……、」
ヒキガエルの脚だけを分離して、そこに電気信号を送る。するとカエルの脚はピクピクと動くのだという。死んでいるであろう細胞が働く、他にも自然界では多くが観察される。ゾンビ……いやこれはさすがに違うよね~。
それは私の右足だっただよ。どうしてアメリカに渡っているよね、大地。
「俺もさ!」
「身に沁みる」という言葉の意味は、実は間違って使われているのかなって
思うんだ。沁は=しみ出るだよ。泌尿外科の泌はね、しみ出すという意味
なんだ。「身に沁みる」は、心にしみこんで来るという意味だけれどもね、
泌尿とはね、尿がしみ出す、漏らすという意味なんだ。でもね、そんな国語
辞典は少ないかもしれないよ。でもさ、いざ書くとなると使わざるを得ない
のよね。相反する漢字って意外と多いんだよね。例えば、謝意の謝も文章
の流れで変わってくるよ。「秘密漏洩で社長が謝意を表す。」と、「皆様の
ご厚意に謝意を表す社長が素敵……。」誰だろうね社長とは!
bu亜衣音




