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人狼と少女 垣根の上を翔ぶ女 亜依音  作者: 冬忍 金銀花
第十章 エピローグ……新しい命の誕生……

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第130部 派手に……跳んだ!……落ちた!


 1971年5月25日



*)元乗馬クラブ員、誘ったよ


 私は天国にいる大地をこの馬事公苑で姿を探していた。きっと何処かに……。それにね、何かある度に大地の名前を心で呟くようになっているの。



 今朝は元気よく登校できた。だってさ、美保や未来、碧と翠。それに年下の二人の智子と眞澄も誘ったんだ。勿論よ、二つ返事でOKを貰ったわ。


 でも、蛇足が……付いてくるのは仕方がないのだろうね、大地。


「うぉ~~! 俺も行きたい!」


 この悲鳴? 雄叫びをあげる石川海斗くんだ。何処にでも付いて行くと、豪語していたから、ま、当然だろうな。ついては付随する二人の女子がいた。


三浦珠子と岩野夕霧の二人である。三浦珠子まで来るとは予定外だが、それはそれでいい。私のカッコイイ処を見せつけるのだよ、大地。


 う~バカ大地、雷神が寂しがっているよ。美保ではダメみたいと事前にね、ホロお婆さまには伝えておいたよ。今日の放課後には全員で行くかもしれないとね。


 私たちを見たホロお婆さま、それはもうとても喜んでくれたんだ。


「うっひゃっひゃ、若いおなごは……えぇのう……。」

「お婆ちゃん。またお世話になります。」

「おうおうよく来た。馬も待っていたで~の~。美保しゃん。」


「ご無沙汰してました。お世話になります。」

「ほ~……随分とべっぴんさんになりましたな~未来はん。」


 美保ホはたまに遊びに来ていたので、そうでもないのだが未来みくは本当に久しぶりだった。ましてや智子と眞澄には、


「あんた……誰ぞ!」

「お婆ちゃん、それはあんまりです、智子と眞澄ですよ。」

「お~ぉ、そうじゃったのう~。」


 何処まででもボケたふりが上手なお婆ちゃん。遅れてきたというか、紹介をしたいので最後に連れてきた三人。でもね、ホロお婆さまは札幌で見ているよね。忘れたなんて言わせないよ。


 背筋を「シャキーン!」と伸ばして、順次握手して何やら確認しているよね。


「ほう~……あんさんが、石川さんだね。孫を守ってくれた事を亜衣音から聞いているよ。これからもよろしゅうたのんます。」

「はい、全力でお守りいたします。」


「おやおや……岩野夕霧さん、初めまして。それに三浦珠子……さんも、いつも孫がお世話になっちょります。」

「え……はい、亜衣音ちゃんにはこちらがお世話になっている方なんですよ、お婆さま。」

「そう緊張せんでもええ、ほれ、馬が怯えてしまうでの。」


「ブヒ!」「ブルルル……。」

「いえ、そうは思えませんが?」

「ま~可愛い……この黒い目がとても可愛いわ!」

「そうかえ、そうじゃろ……うっひゃっひゃ、」


 冷静な夕霧、それに馬が可愛いと喜んでいる珠子である。お婆ちゃんは多分、クロと雷神の感情を推し量っている事だろうか。だってお婆ちゃんの目が笑っていないよ、口は緩ませて笑っているのだけれどもね。


「おやおや……クロ、どうした。」

「ブヒヒ~ン、」

「おう、そうかい、乗せてもいいなだね。」

「ブヒ!」


「もうクロ。もっとマシな返事は出来ないの。」

「べ~!」

「ブギャー!」


「亜衣音ちゃん、クロと同じなんだね、もうソックリだよ。」

「うぐぅ~……、似てないもん。藍のバカ!」


 クロは「べ~!」とは言えない。藍が言ったのよね。


「お前たちの騎馬民族衣装は、またロッカーに札を書いてなおしておいたよ。着替えてくるといい。」

「もうお婆ちゃん。騎馬民族衣装ってなによ、も~、」

「亜衣音、分るのだろう?」

「そりゃ~分りますがクラブ活動のユニフォームです。変な呼び方はしないでよね、べ~。」


「アハハ……可笑しな亜衣音ちゃんだこと。是非ともその民族衣装とやらを見せてくださいね……亜衣音さま!」

「夕霧さんの意地悪。」

「うんうん、夕霧は意地が悪いよね、そう思うでしょう? 海斗くん。」

「まぁな、俺も時々は思うぞ。」


「海斗、シカトするからね。」

「べ~……、」

「委員長、公平にお願いよ。そんな事は言わないで頂戴。」

「亜衣音さん、ごめんなさい。」

「え”……そ、それでいいのよ。うんシカトとか絶対にいけません。」



「タイムワープ!」


「なによそれ! 頭が壊れたの?」

「ほら、時間の節約なの。これでみんなが着替えたところよ。」

「ぶ~……、」x10


「だって私が着替えるのが恥ずかしいし、藍に手伝って貰わないとね、とても一人では出来ないんだ。」

「そうね、私なら何時でもお手伝い致しますよ。」

「藍ちゃん。ありがとう~……。」

「うんうん。」


 私の乗馬衣装、ロングパンツだから右足が上手に隠せるのよね。でも松葉杖は手放せないよ、大地。


 藍は今の私が視線を泳がせたのを見抜いた。


 私、今でも大地がね、フィールドで雷神を走らせているのかと探していたのは事実よ。もう……散々大地をバカにしてきた馬事公苑、最後にはこの私よりも上達してたわね。駆けっこも負けたままで悔しいわ、バカ大地。


「ブルブルウ……、」

「きゃ~!」

「あら雷神、美保のお尻を囓ったらダメだよ。」

「はいはい雷神。私を乗せてくれるのですね、お願いね。」

「ホロお婆さま、お願いします。」

「あいよ、先に美保ちゃんからだね。で、次は……、」


「はい、未来がクロに乗ります。」


「二人とも同時に走るといいよ。ほれ、そこの男はん。」

「あ、俺? 石川です。」

「あ~そうじゃった、尻を押してやりんしゃい。」

「む~りです、嫌われます。」

「え~若いもんが女の尻を怖がってどうする。亜衣音、教えてやりなさい。」

「無理だよ手が離せない。藍ちゃん。」

「いいわ、この私が教えて……しんぜようか。」

「は~い、」


 美保ホと未来を先ずは手本としてそれぞれに実践させてみる。三人はね、うんうんと言いながら見ていたのよね。


「な~んだ、簡単だね。」x3

「ホ~ッホッホ、次は乗せるからね。」

「はい、お願いします。」


 二人が馬場に出たから私は、


「タイムワープ!」


「ほら、二人の番……誰がババ引いたかな。」

「俺、あとでいいよ。笑ってやりたい。」

「はは~ん、笑われたくないのね。後も今も同じと思うよ。」

「未来、そうよね。でも随分と乗ってなかったよね。」

「そうね、いっぱい緊張したよ。」

「私は全然よ、雷神が喜んでくれて嬉しいわ。」

「美保ホ、良かったね。」


 美保は、いつのまにか名前にホが付けられていた。私が付けたのだけれどもね。美保ホの方が可愛い響きがあるわね。


「ほれ、どちらにするかの~、、、。」

「お馬さんの言う通りにお願い。」

「あいよ、クロ……、おや夕霧さんを選んだかい。」

「雷神……お前もいいようだね。決まったよ亜衣音。」

「はい、お婆ちゃん。……藍ちゃん、またお願いね。」

「うん、任せて。」


「美保ホが背が高いよね、お願いね。」

「いいわ、私がお尻をくすぐってあげる。」

「いやよ、変な処を触らないでね。」


 でも藍と美保は二人をくすぐっているので、ホロお婆さまより叱責を受けて? 以後、乗馬禁止令を受けてしまう。


「もっと真面目にしなさい、落馬して死ぬわよ!」

「は、はい。」


 この二人、クロと雷神が上手に乗せてくれたから落馬は無かった。でもね、いざ乗馬となると怖くて乗れないのよね、最後はキャーと叫んで乗ったわ。


 馬の視点はとても高いから、ま~ダンプカー……に乗ったようなものね。


「亜衣音、丁度いいだろうさ、ナイトの騎士さまと一緒に乗るかえ。」

「う~……そうね、徹さんはもう居ないし、そうしようかな。だって私を守ってくれるのよね?……ナイトさま!」

「お、おう、任せろ。乗馬くらい、何とでもなる。」

「きゃ~、亜衣音先輩!」x2


 この二人は一個下だから私たちの関係は殆ど知らないの。だからね、黄色い声援を送るのよね。一個下とは学年が一つ下という意味よ、年の差ではないよ。


「うるさいわね、貴女たちも二人で乗ったらどうよ、競争する?」

「はい、競争します。」x2

「おいおい亜衣音さん、俺、走れるのかな。」


「大丈夫よ、楽勝よ。」

「そ、それならばいいよ、競争は任せる。」

「うん、任せて!」



 私が左足を鐙に乗せて右脚を大きく跳ねあげるのだけれどもね、膝下が折れてクロの腹に当るだけなの、助けてよ大地。でも藍が創ってくれたマネキンの足を外す勇気はなかった。


 私がクロに必死になって乗馬を挑戦するも中々出来ない。馬事公苑の騎士さまの数人にお願いしてようやく乗馬が叶ったが、腫れ物に触るような騎士さまだ。


 でも後ろで見ている事務員さんの目が、私を呪っているのよね。わ~最悪。


 あんな無様な格好を見せていたら、そりゃ~世の男共は私を丁寧に扱うよね、そうですよね、徹さん。小倉でクシャミしているかな、お兄ちゃん。


 女の敵だと呪われながらクロに乗馬が出来たら次は海斗くん。これはすんなりと出来たわ。だってもの凄く力持ちなんだからね。お婆ちゃんは私の周回が終わるまで、と、騎士さんたちを引き留めてくれたんだ、良かったな。


「嬢ちゃん、いいかな。」

「はい、ありがとうございます。海斗くん、行きます。」

「オ~!!」

「智子……、」

「はい、」x2


 こうやって四人でスタートを切って馬場の周回始めた。


「二周目から競争よ、いい、」

「はい、勝ちます。」x2


 私のお尻、競争でも何とか一周はもつだろうと判断して、


「智子、ごめん、一周だけでお願い。」

「へ~大差で負けるのが怖いんですね。」

「ち、違うわよ。終わったら話してあげる。」

「はい先輩。」


 そうよ、楽に周回は出来たわよ。これならば競争だって……、


「お婆ちゃん。お願いよ。」

「あいよ、合図するよ……ドン!」


 私は……速攻で落ちた。クロの背中を両足で挟む力が足りなかった。それに背中に乗るだけだからやはり無理だった。海斗くんを後ろに乗せていたからね海斗くんも同じく落馬して、私のクッションになってくれたわ。文字通りにね私を守ってくれたのよ。


「キャッ!……ドテ……わ~ドテ……ギャ~~!!!痛~~~!!」

「う~~ごめんなさい、大丈夫かしら。」

「亜衣音さん、ご無事でしょうか。」

「はい、ナイトさま!」


 私は瞬時にしてクロから落馬して、海斗くん上に落ちていた。海斗くんごめんなさい。痛かったよね、痛み止めを今、チューしてあげる。」


 みんなが駆け寄って私たちを起こしてくれたんだ。騎士さんたち、どうもありがとうございます。でもね後ろで女たちが笑っていたわ、呪いに負けて悔しい。


「亜衣音、もう乗馬は禁止っしょ。」

「う~お婆ちゃん悲しいよ~。」

「おうよしよし。もう泣くでない。」

「泣かないから乗せて~お願い。」

「もう諦めろ。でないとな、このワシが苫小牧に帰されてしまうで。」

「う~……うん、もうダダこねません。」


 騎士さんたちに抱えられた海斗くん。医務室で服を脱がされてね、それから全身に近いほどにシップ薬を貼られたんだ。


「使用期限が過ぎたものばかりだから気にしなくいいよ!」


 何だか私、気になったのだがな?


 家に帰れば両親からは、


「ごら~亜衣音、他人よそ様に怪我させるとは、なんですか。」

「亜衣音、もう乗馬は禁止です。」

「うぐぅ~……はい、もう私は乗りません。」


 二人しての次は父が一人で私を長々と説教だよ。お母さんはしきりに海斗くんに謝っていたんだよ、可笑しいね大地。


「亜衣音、全部お前が悪い、バカだから。」


 と、天国から大地の声が聞こえて来たんだ。んで、お母さんが海斗くんの自宅へ電話して、この夜は家に泊めてしまっていたよ。



「だったら私も泊まります。」

「夕霧、帰れ!」

「委員長……そんな~、」


 海斗くんと私が反対したけれども、根負けしたんだ。よっぽど私に信用が無いのだと、悟った日でもあったな。


「違うわ、海斗の方が心配なのよ。」

「へ~私が海斗くんに夜這い掛けるとか、出来ないよね、藍ちゃん。」

「そうよ、これは一人ではな~んも出来んもんね。」


「そ、そうよね、一人では出来ないよね。安心したわ~、」


「それ、どう言う意味かしら、委員長さま!」

「さ、海斗を看病しなくちゃいけないわ。で、亜衣音はドサクサに紛れて海斗にチューしてないよね。」

「さぁ……どうでしょう、海斗にされたかもしれないよ?」


「それ、どう言う意味かしら、亜衣音さま!」


 私をこれ呼ばわりする藍に、嫌に私を警戒している夕霧と、遊び遊ばれのとてもイイ関係なれそうだわ。その夜、藍は夕霧に押し出されて、私は夕霧の監視の下で寝る事になってしまう。


 きっと夕霧は眠れないに違いない、夜は決まって脚が疼くのである、どうしてだろうか。


 この時もそうだが、私ってバカなのかアホなのか、それとも素直なのか、私が失った右足がどうなったのかを詮索すらしていない。


「大地がきっとね、天国で寂しいからと持っていったんだよ。」


 う~……天然で生粋のバカであるかな?


「俺の抱き枕!」

「ウキョー……。」


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